アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
夜のみかづき荘。居間ではみかづき荘の面々が揃っていた。
七海やちよ・環いろはを中心として会議が行われる。周囲には、住居者の百江なぎさ、環うい、万年桜、リリス、暁美ほむら。そして黒江、ジュリー凪。通い組の鹿目まどか、由比鶴乃。
「今日の夕方、みんな受け取ったと思うけど……強力な魔力の念が発せられたわ。おそらく神浜市中……あるいは、もしかしたら世界中の魔法少女の脳内に響き渡った念話……それはソウルセルゲームの概要だった……」
「具体的な開催場所は万年桜さんが教えてくれました。ソウルセルゲームの会場には、わたしが案内できると思います」
「そして悪魔を尾行・監視していたなぎさの報告によると、昴さんは六人の魔法少女を吸収して変貌した。その映像も、黒江さんが貸し出してくれた《
そして七海やちよは覚悟を問う。
「敵は強い。少なくとも七人分の魔法少女の強さを誇る。ソウルセルゲームは一対一だけど、大抵の魔法少女ではまず勝てない。いい勝負ができるのは、私か鹿目さんくらいよ。それでも確実ではない」
「でもししょー。勝ち目はあるんでしょ?」
「えぇ。ソウルセルゲームのルールは単純明快。タイマンで殴り合って勝敗を決める。全ての挑戦者がいなくなれば昴かずみの勝利。全ての魔法少女を襲って吸収を始める。でもそれは裏を返せば、ゲーム中は吸収されないってことよ。彼女の言葉を信じるならね……確証はないし、前言を撤回する可能性は充分にある。それでも
七海やちよは作戦を語る。
「希望的観測だけど、彼女の念話からは善良さが感じられた。彼女の宣言中も、ソウルセルゲームは棄権アリってことも、明言はされていないけどルール上はアリという気配も感じられた。“逃げてもいい。ただしその場合はわたしの勝ちだ”と言っていたし。それが本当なら、人海戦術で立ち向かう。────弱い魔法少女からソウルセルゲームに挑戦し、確実にダメージを与えて、怪我する前に棄権を宣言。そうやってバトンを渡していき、倒せる見込みが付いたら……私が大将として出る」
「おぉ! つまりは団体戦だね!」
「先鋒は敵の力を試して引き出すため、ある程度頑丈で強い魔法少女がベストよ。次鋒からは状況に応じてその都度選出する」
まずは先鋒の選抜。そこで環いろはが手を挙げた。
「先鋒は私が行きます。スタンドを使えば少しだけ無敵になれるので。キモチも総動員すれば敵の力を引き出すことも可能なはずです」
「……異論はないわ。でも危険と判断したらすぐに────」
「はい。そのつもりです」
続いて次鋒以降の挙手制。それに鹿目まどかが真っ先に手を挙げた。
「私なんかで役に立てるなら、全力で挑みます!」
「……まどか……」
「大丈夫だよ、ほむらちゃん。私、頑張るから!」
「…………まどかはそうよね。やちよさん、私も参加します」
暁美ほむらも挙手。続いて百江なぎさも見滝原市の先輩として溜め息をつきながら手を挙げる。
「これは最強の魔法少女・由比鶴乃の出番だね! 別に中堅で倒してしまっても構わないんでしょう!?」
立ち上がる由比鶴乃。
そこで環ういが手を挙げた。
「あの、わたしも……!」
「ういはダメだよ! お姉ちゃんたちに任せて!」
「でも……」
「環さんの言う通りよ。魔法少女に年齢は関係ないけど、それでもあなたは幼すぎる。特にタイマンなんて危険すぎるわ。もし敵に口を塞がれたら棄権を宣言できなくなる。そういう可能性も考えると、妹さんには荷が重いわ」
環いろはと七海やちよに止められて、環ういは渋々うなずく。
「│私も戦う。自分の居場所を取られて黙ってられない│」
「モッキュ!」
「万年桜さん! リリスは……冗談だよね?」
「モキュ!?」
一方、ジュリー凪は俯いている。それを見た黒江が肩に手を置いた。
「無理することないよ。それより凪さんは《施術》の魔法が使えるんだから、ほかにやることがある」
「……!」
「そうね。ジュリーさんには怪我した魔法少女の治療をお願いできるかしら。環さんも参加するから魔力不足になるだろうし、鹿目さんの魔力も温存しておきたいし」
凪はこくりと頷く。
(ただ────)
七海やちよは憂うように思う。
(もしも私たちが負けるようなことがあった場合……強硬手段に出るしかない。ゲームに負けたからって、ハイそうですかと殺人者を野放しにはできない。不意打ちで確実に仕留める……たとえ相討ちになっても……この切り札で……!)
七海やちよは懐に忍ばせた死神のペルソナカードを秘める。
その時、上階からフゥ太が駆け下りてきた。
「みんな! ツナ兄が目覚めたよ!」
「ホント? フゥ太……」黒江が問う。
「うん! 事情を説明したら、すぐに倒れるように眠っちゃったけど。それで伝言。──ツナ兄もソウルセルゲームに参加するって!」
「そんな……あんなに体がアザだらけなのに……」環いろはの心配。
「でも彼は、私たちにとってジョーカーよ。それに言っても聞かないでしょう。もちろん、けが人が体を押して出るまでもなく、私たちで決着をつける。それが理想的な試合運びよ。環さんも、昴さんとの話し合いを望んでいるし。……それじゃあ今夜はしっかりと休んで英気を養いましょう」
場は解散。各自、寝室に立ち去った。
†
深夜の植物園。月夜に照らされる柊ねむと里見灯花は円卓にて紅茶を嗜む。
「やはり思い通りには行かないね」
「そもそもトランクを落としたのが悪いのよ。あの黒羽根にはオシオキをしたわ。一週間の要塞清掃よ! 全区画のね!」
「それは大変だ。しかし、あのまま記憶ミュージアムに運んで思想教育ができれば、完全体になった時、我々マギウスの最終兵器として、究極の使い魔になっていたんだけど……まさかソウルセルゲームとはね……」
「あれはマギウスに対する挑戦状よ。全世界の魔法少女を吸収するなんてさせないし! 被造物が創造主の上に立つなんて許されないことだわ!」
「ではアレを出そうか」
「そうね。アレを出せば確実に葬ることができるわ。先刻、完全体スバミによってバイオロイド研究所が襲撃されて被検体を持ち去られたし……そのお返しも兼ねて、ね」
月光をかざす木陰から黄金純白のリボンが伸びてくる。
「────お呼びかしら。主たるマギウスの天啓とあらば、すぐに救済を」
「いいや。それは明日の朝でいいよ」
「ソウルセルゲームの主催者を撃滅してね。お菓子作りが上手なあなたなら簡単にできるでしょう?」
白金聖女はにこやかに微笑むと、全身がリボンの束となって姿を消す。つまり今そこに立っていた聖女は分身体だった。それは結んで繋ぐ魔法。分身体が記憶した情報を繋ぐことで本体が受け取る。そうして本体は要塞の中にある豪邸で出撃の支度を始めた。
†