※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

155 / 260
第2.8章 神浜抗争勃発 フォルミカ・ジョーカー ‐主役級一般人トリオ‐

着想元:ポリスノーツ、土竜の唄etc



第2.8章 神浜抗争勃発 フォルミカ・ジョーカー ‐主役級一般人トリオ‐
4月28日【秀一殿は自慢の従兄弟でございます!】竜城明日香


 

 ────紅谷慶志郎の日記。

 

 4月26日。一人の少女の行動によって、神浜市に騒乱が招かれた。トマゾファミリーの守護者・パンテーラは、黒江という少女に恩を返すため神浜市に訪れた。しかし彼女は置き手紙すら残さず旅立ったため、トマゾファミリーはパンテーラを探して総出で神浜市に訪れた。結果、トマゾファミリーが襲撃してきたと誤解した神浜市の裏社会が迎撃。抗争が勃発する。

 

 さらにトマゾファミリーは並盛町で桃巨会とも抗争していた。桃巨会はトマゾファミリーが逃げたと誤解し、追撃を仕掛けるためトマゾファミリーを追いかけ神浜市に訪れた。結果、並盛町の二大マフィアが神浜市に侵攻を仕掛けてきたと誤解した神浜市の裏社会の勢力が、本格的に迎え撃つ用意を始めた。大抗争の勃発である。

 

 さらに事態は更なる盛り上がりを見せる。神浜市の裏社会によって大打撃を受けたトマゾファミリーと桃巨会は、腐っても並盛町の勢力である。つまり並盛町の秩序を守る恭弥アーデルハイトが黙ってはいなかった。

 

「君たちの行為を並盛への攻撃とみなし、僕が制裁を加えよう」

 

 かくして、たった一夜で半壊したトマゾファミリーと桃巨会と神浜市の裏社会。恭弥アーデルハイトは気が済んだのかスタスタと家に帰った。しかし後処理を放置したことで、残党勢力による小規模な抗争が各地で頻発するようになった。

 

 4月27日。黒江という少女がパンテーラと再会を果たした。しかしパンテーラを狙う桃巨会と神浜市の裏社会の攻撃によって黒江は抗争に巻き込まれてしまう。さらに神浜の不良王たる壮月ファミリーと蒼海幇が、この抗争に終止符を打とうと動き出した。

 

 そうして事態の収拾に努める彼らではあるが……実は今回の抗争、事はそう単純ではなかった。

 

          †

 

 竜城明日香の従兄弟である竜城秀一。父親の汚職という事件があったものの、彼は──竜城明日香の願いによって──晴れて警察官に就任。しかし初めての仕事で緊張し、特に怒られるようなことではない失敗をしてしまう。そこで嫌味な上司から突然、父親の汚職事件を蒸し返され、「やはりクビ!」と言い渡されてしまう。これに納得できない竜城秀一は抗議し、親の罪は子に関係ない、自分は正義のために尽くすつもりです! と力説するが、上司は聞く耳を持たない。結局、竜城秀一は警官バッジを取り上げられてしまう。本来ならありえない横暴だ。これは訴えれば勝てる。だが訴えたいわけじゃない。この嫌味な上司の性根を叩き直さねばならない。熱くなった竜城秀一は、とうとう上司の胸ぐらを掴んで説教を始めた。このせいで警官を辞職することになっても後悔はなかった。────その時いきなり上司は「合格! 合格だから胸ぐら掴むのやめて!」と訳の分からないことを言う。急にいやみったらしさがなくなり、ずれたネクタイを直した上官は、事の経緯を説明する。

 

「実はね。君をテストしていたんだ。どんな困難にも屈せず立ち向かう気概! 上司の胸ぐらさえ掴む根性! 勇気! 君のような熱い若者を探していたんだ。────というのもだね。これから君には────《土竜(もぐら)》になってもらう……」

 

 土竜とは、平たく言えばスパイである。潜入先は極道やマフィア。スパイとバレたら即殺される危険な仕事である。

 

「実は最近、裏社会で禁断の麻薬が流通しているという噂が入ってね……ヤクの売人と製造元を叩き潰したいんだ」

 

 禁断の麻薬というのは、なんと市販で流通しているという薬品。麻薬を四つの物質に分けて販売することで警察の捜査を掻い潜り、それぞれの店で嵐のカプセル(インドメタシンZL)・雨のカプセル(パラディソ)・晴雷のカプセル(ハイファイトミン)・雪のカプセル(フェドリジン)を購入し、この四つの薬品を決められた順番で混ぜれば、合成麻薬が完成するというのだ。巧妙な密売である。このままでは薬物の売買で裏社会の勢力が拡大し、民間に合成麻薬が流通してしまう危険性がある。そのため急遽、ごく一部の警察上層部は土竜を立てることにした。

 

 その土竜に選ばれたのが、正義感の鬼。竜城一門・期待の星────竜城秀一である。

 

          †

 

 深夜。風紀財団・トマゾファミリー・桃巨会・神浜市の裏社会は、中央区の郊外を舞台にドンパチやっていた。そこに黒江とパンテーラ、和泉壮月と神浜中の不良たち、純美雨率いる蒼海幇が割って入り、抗争は大乱戦に発展する。

 

 そして薬物の製造元を見つけ出し、且つ抗争を食い止めようと必死だった竜城秀一は、抗争を未然に防ぐ事こそできなかったが、乱戦の中で純美雨と出会う。そこで竜城秀一は、土竜をやっている中で知り得た極秘の情報を純美雨に渡すことで、形勢逆転の布石を打った。

 

「頼む! 合成麻薬は普(・)通(・)の(・)方(・)法(・)で(・)は(・)破(・)壊(・)で(・)き(・)な(・)い(・)んだ! 合成麻薬の破壊のためには、死ぬ気の炎という特殊なエネルギーが必要らしい! 僕が調べた結果、蒼海幇は死ぬ気の炎を灯せるリングを所持していることが分かった。普通のリングではダメなんだ。蒼海幇が有する正義のリングでなきゃ、この騒動は止められないんだよ!

 なぜって? 神浜市の裏社会がここまで殺気立っているのは、合成麻薬の製造元が発覚しかかっているからなんだ。つまり僕はもう製造元の会社を突き止めている! でもこのままだと警察が押収する前に合成麻薬が燃やされてしまい、神浜市を合成麻薬の粉末が覆い尽くしてしまう! それを食い止めるためには、ボンゴレ8代目が蒼海幇の初代女帝に託したAランクの雨系リングが必要なんだ! だから頼む! 君のご先祖様は、きっとこの時のためにリングを残してくれていたんだ! 急いでくれ! もう時間は残されていない!」

 

 竜城秀一から希望のバトンを託された純美雨は、合成麻薬の燃焼粉末が神浜市を襲う悲劇を回避するべく、蒼海幇の旧アジトに駆け込んだ。

 

          †

 

 蒼海幇は世界大戦の真っ只中で創立したマフィアである。敵国の空爆から愛する街を守るため、最初期のメンバー(第一世代)は裏社会のツテを辿り、イタリアの最大手マフィアグループ・ボンゴレファミリーと接触した。

 

 第一世代のボスとして君臨し、蒼海幇を背負って立つ女帝は、そこで初めて死ぬ気の炎の存在を知り、裏社会の新事実に驚きつつ、ボンゴレに忠誠を誓うなら死ぬ気の炎を操れるリングを譲渡しよう、とボンゴレ8代目から言い渡される。

 

 女帝は故郷を守るため、その提案を受け入れた。手段を選んではいられなかった。ボンゴレ八代目に忠誠を誓い、Aランクの雨系リングを受け取って日本に帰国。雨の炎の鎮静効果で、降り注ぐ爆弾を不発弾に変え、現南凪区の中央部を空爆と火災から守り抜いてみせたのだ。

 

 戦後、女帝は蒼海幇に今後の方針を宣言した。自分たちは街を守りたいという一心で、裏社会の闇(死ぬ気の炎)に手を出してしまった。このリングの力を後世に残せば、力を持つ存在として蒼海幇は認識され、裏社会との関係は切っても切れなくなり、ほかのマフィアとの抗争も避けられなくなる。よって、ボンゴレ8代目から預かった雨系リングは封印する。

 

「このリングはあくまで降りかかる火の粉を払うための守護の道具であり、決して富や名声を得るための道具として使ってはならない。争いの道具ではなく、争いを鎮める道具として使うべきだ。そして、そのことを深く知る者。例えば、正しい心を持ち、このリングの力を正しい事のために使える者が、再び現れた時……このリングの封印は解かれるものとする。その時が来るということは、この街が滅亡の危機に晒されるということだから……その時が来ないことを祈る。だがもし世界大戦のような大きな災いが我らの故郷を襲うのなら、これを鎮めるためにリングの封印は解かれるだろう……」

 

 かくして女帝は裏社会としての機能を解除し、蒼海幇をただの互助組織に戻した。しかし女帝はボンゴレファミリーに忠誠を誓っているため、その約束を反故にするわけには行かない。故に女帝は蒼海幇を抜けて、自分の子供たち(第二世代)に後を託し、イタリアに飛んだ。

 

 その後、蒼海幇の初代女帝は、ボンゴレ8代目のオッターヴォに忠実に仕え、その優れた統率能力から参謀となり、雨のボンゴレリングを託された。以降、女帝は雨の守護者として8代目を守り抜き、ボンゴレファミリーの歴史に大きく貢献したと言われている。

 

 

 

 一方、蒼海幇の第二世代は裏社会との関係を絶とうとしたが、そうは問屋が卸さない。一度は闇の世界に片足を踏み入れたのだ。やすやすと逃がしてはもらえない。第二世代の中では裏社会から逃れるべく、仕方なく裏社会と取引を続けるという矛盾に悩まされて、裏社会との切り離しに四苦八苦していた。

 

 加えて戦後直後の蒼海幇は“切除派”と“継続派”で勢力が二分されていた。すなわち穏健派と過激派である。穏健派は女帝の方針を守るべく奔走するが、過激派は裏社会の甘美に取りつかれて闇市で勢力を拡大し、終いには女帝が封印した雨系リングの奪取計画さえ企てた。そして深く深く裏社会に沈んでいくことで違法行為を繰り返していった。

 

 これに穏健派は激怒し、蒼海幇の看板を守るべく、とうとう過激派と全面対立。そこで或る手打ちが行われたという。穏健派も過激派も街を愛する気持ちに変わりはない。であれば、これ以上蒼海幇がマフィアとして拡大すれば、必然ほかのマフィアとの抗争は避けられず、守るべき街に市民に被害が出る。これはどう落とし前をつけるのか。

 

 結果、過激派は蒼海幇と縁を切ることを宣言し、新たな組織を立ち上げた。そして死ぬ気の炎に魅入られた者たちの末路なのか、新たな旗を立てたはいいものの抗争を繰り返し、ほかのマフィアに負けて取り込まれたのか、裏社会の底なし沼に沈み込んでしまった。

 

 そうして過激派が闇の底へ消えたことで、第二世代の子供たち(第三世代)が生まれてくる頃には、蒼海幇はすっかり自警団としての内実しか持たなくなり、街のお祭りの運営や清掃活動などを率先して行う、ただの互助組織に返り咲くことに成功した。

 

          †

 

 純美雨は蒼海幇の長老から、蒼海幇の歴史を記す巻物を読ませてもらい、上記の内容を知った。

 

 初代女帝の名は純暴雨(チュン バオユイ)……どことなく純美雨と似ている絶世の美女だったとか。蒼碧拳(そうへきけん)の達人であり、武器は手甲三剣(手甲から三本の日本刀が伸びた鉤爪)……それに雨の炎をまとわせて、功夫と組み合わせた戦闘を得意とした。それぞ死炎功夫刀術(しえんカンフーとうじゅつ)。

 

 かくして純美雨は、秘蔵されたAランクの雨系リングを入手した。未だ抗争が続く中央区の郊外に駆け戻ると、抗争のど真ん中で竜城秀一が裸となって注目を集めていた。

 

「オレは土竜だ! 警察官だ! これよりテメェらヤク中を一斉検挙する! 製造会社も割れている! 今からこの情報を警察に届けてやる! オレを殺せば真実は闇に葬り去られる! さぁ掛かってこい!」

 

 それは決死の作戦だった。竜城秀一は壮月ファミリーに救援を依頼し、追ってくる神浜市の裏社会を引きつけておく。その間、竜城秀一から事の次第を聞かされていた黒江とパンテーラが、純美雨を製造会社まで案内し、合成麻薬を守る神浜市の裏社会どもをバッタバッタと薙ぎ倒していく。

 

 そして合成麻薬が大量に積まれた倉庫を発見。普通の炎で燃やせば風に攫われて神浜の市民全員が薬物中毒に陥る。それを避けるためには、ただの炎ではない────超高密度のエネルギーの塊である死ぬ気の炎で破壊し、さらに雨の炎の鎮静効果で合成麻薬の成分を鎮めることができれば、完全に合成麻薬を破壊することができる。

 

 そこに神浜市の裏社会・二大勢力の────水名会・参京院のボスが出現。

 

 水名会とは、戦後から神浜の西側を取り仕切る極道であり、なんとボスは水名区の区長だった。幹部は新西区と栄区の区長でもある。まさに汚職だらけの神浜市。それを垣間見た純美雨たちは絶句する。

 

 一方、参京院とは、仏教系の極道であり、本拠地は参京院教育学園の地下施設・伽藍堂(がらんのどう)にあるという。そしてボスは、なんとまさかの参京院学園の校長であった。これを知ったら常盤ななかは激怒するだろうと思いつつ、純美雨たちは最終決戦に望む。

 

 そこで踏み台の魔女が出現。かつて黒江を殺そうとした灰泡が魔女化した姿である。踏み台の魔女は使い魔を持たない代わり、ほかの魔女やその使い魔を操る。そして、どうやら踏み台の魔女が操る魔女の中に“飛蝗”に類するものがいると分かる。戦後から長いこと神浜市に根ざした新西区・栄区・参京区の魔女たちは強く、さらにそれを踏み台の魔女が束ねて連携を取ってくることから苦戦を強いられる。

 

 そこに竜真館が助太刀に駆けつける。水名会や参京院の構成員は竜真館が相手取り、彼らの目に見えない魔女たちは黒江や純美雨、そして助太刀に現れた竜城明日香が相手取る。

 

 手ごわい魔女たちを各個撃破し、やがて踏み台の魔女は逃走。純美雨がAランク級の雨の炎で合成麻薬を破却したことで、神浜市の裏社会の合成麻薬計画は頓挫した。

 

 一方、竜城秀一と壮月ファミリーも、極道と真正面からやり合って勝利し、命からがら生き残る。

 

 かくして長い夜は、赤い日の出と共に終幕を迎える。

 

          †

 

 4月28日。合成麻薬に関わった裏社会と製造元は、土竜・竜城秀一が集めた証拠をもとに、警察が一斉検挙に乗り出して逮捕した。そして竜城秀一はお礼参り(報復)を防ぐため、しばらく(数年)は海外で隠遁生活をしなければならないという。これに竜城明日香は「しばらく会えなくなるのは残念ですが、秀一殿は自慢の従兄弟でございます!」と歓喜の涙を流した。

 

 かくして風紀財団は並盛町に帰還。トマゾファミリーはパンテーラを連れて並盛町に帰り、ただ巻き込まれただけの桃巨会も並盛町に逃げ帰った。黒江もみかづき荘に帰宅し、和泉壮月は八雲姉妹の所に帰宅。純美雨もリングを再封印し────みんなは元の日常に戻っていった。

 

          ◆

 

 第1.8章 土竜竜城秀一 ブラッド・オブ・ウノルーポ ‐土竜の正体は竜城明日香の従兄なり‐

 第2.8章 神浜抗争勃発 フォルミカ・ジョーカー ‐主役級一般人トリオ‐

 

          完

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。