※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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【ナッツ、どうしてそんなに怯えてるの……?】鼓星かずみ

 

 佐倉杏子は情に篤い。故に、やはり見過ごせないと憤る。

 

「ざっけんな……勝手に他人の命を差し出してんじゃねぇよ!」

「……」

「理屈は分かる。理屈だけなら! アンタは魔女になった妹(グリーフシード)を無くせば、魔法界で戦い抜くことができなくなる! みんなを守れなくなる! だからってなァ……理屈ではそうするしかないって、あたしは分かっても……誰もがそれを受け入れられるわけじゃねぇんだぞ!?」

「…………」

「いろはたちはアンタを信頼してる! そんなアンタがアイツ等の命を勝手に賭けたと知ったら、どう思う!? アンタそんなやり方じゃあ信頼なくすぞ!」

「…………、……そもそもオレは信頼してもらうほど徳の高い人間じゃない。それに敵が増えれば増えるほど逆転勝利の願いの力が増すんだから、むしろ好都合だ」

「────っ! てめぇ……!」

 

 佐倉杏子は柱から降りてもう一発殴りに行こうとするが、立会人から受けた傷が深く膝をつく。

 

「ぐっ……」

「佐倉杏子サマ。これ以上は妨害と見なし排除も考慮に入れなければいけませんが……」

「ゆまを……賭けたんだぞ、このバカは……!」

 

 佐倉杏子は魔力を回して肉体の負傷を治療する。

 

「っ……なんでだよ……わけがわからねぇ……あたしの方がどうかしちまったのか? アンタがそんなことするなんて、まだ信じらんねぇよ……」

「……それと、佐倉」

「!」

「信頼をなくすとお前は言ったが、一人でも理解してくれるなら……あとは許容できなくても、オレはそれでいい。この考えは決して最善ではないが、ヘイトを集めることで強くなるオレからすれば────最高効率だ」

「……普通は効率だけ求める奴は、誰かの信頼とか気持ちとか、そういう部分で効率を損なうもんだが……アンタは違うってのか?」

「皮肉にもな」

「……くっそ。やっぱ理屈は分かっても、理解できねぇよ……クソ野郎……」

 

 本当は誰かの命を賭けるなんて、自分が一番したくないことなのに。それしかみんなを助けるすべがないと知るや否や、問答無用で私情を排して覚悟を決める。

 

(宇宙はアンタ中心で回ってるわけじゃねぇんだぞ……)

 

 勝たなければ全てを救えないと判断したなら、容赦なく救うはずの命をベットして、そして勝つ。完膚なきまでに勝つ。一つの不安要素も残さず一切合切を勝ち取る。

 

 勝たなければいけないと自分を追い込む。それは覚悟の問題ではなく、あくまで逆転勝利の加護を味方につけるため。

 

(あたしは────信じる……信じてやるよ……アンタの愚行を────)

 

「勝たなきゃ殺す」

「勝つ。勝つしかない」

 

 佐倉杏子の信頼を直感した悪魔は、先程までの乾いた薄笑いから一変、男前の顔付きになって幸福に満ちたあしたを睨んだ。

 

(ほんと……自分が一番イヤなことをしなくちゃ発揮できない魔法を持っているなんて……やっぱりアンタは奇(・)跡(・)を(・)願(・)っ(・)て(・)不(・)幸(・)を(・)こ(・)う(・)む(・)る(・)魔(・)法(・)少(・)女(・)の(・)対(・)極(・)だ。破(・)滅(・)を(・)願(・)っ(・)て(・)幸(・)福(・)を(・)勝(・)ち(・)取(・)る(・)悪(・)魔(・)だよ……叛(・)逆(・)の(・)悪(・)魔(・)だ……)

 

(ありがとう、佐倉。お前のその人情味あふれる言葉のおかげで、オ(・)レ(・)は(・)ま(・)だ(・)頑(・)張(・)れ(・)る(・)……)

 

 それは在りし日の記憶。

 

 ────佐倉。オレが苦しみながら勝ち続けるところを見ていてほしい。

 ────いつか必ず、苦しみながら負け続ける魔法少女の運命を────この手で変えてみせるから。

 

(……なぁ、悪魔……いや、ツナ……それ、本気で言ってんのか……? アンタはいったい、どこを目指して突っ走ってんだ……? 教えてくれよ……あたしだって、本当は────)

 

 奇跡も魔法もあるんだと、信じているのだから。

 孤(ひと)りで突っ走る莫迦(バカ)のとなりに、居てやりたいと思っているのだから。

 

「編纂が終了しました。これより第二ゲームの会場を作成し、それに必要な取り立て対象を集めてきます」

 

 ミザリー立会人は具現魔法を行使。

 長方形の透明な壁で囲まれた巨大な結界を形成する。四方がガラスで閉鎖された空間。酸素は充分。仕切りは二つ。二つの陣営の待機所と、長方形の中央に設けられた四角形のバトルフィールド。その広さは十メートル四方。天井までの高さも十メートル程度。空間の中に障害物なし。賭けられた者には、ガラスに囲まれた闘技舞台で踊ってもらう。

 

 刹那、続々と。参京区のウワサ空間・中層に居たみかづき荘の面々と、黒羽根7名、白青羽根、その他……さらに佐倉杏子と、黒黄羽根たる七瀬ゆきかを除いた黒羽根6名、白赤羽根もまた、透明な結界の中に拉致監禁された。

 

『────っ!?』

 

 全員、何が起きているのかと困惑している。

 

「おっと。悪魔サマ。Dキュゥべえサマを一時的にお預かりします」

 

 悪魔は開匣する。保存用匣兵器から飛び出したるは、一本の小瓶。

 

「?」首をひねる七瀬ゆきか。

 

 コルクを抜いて少し飲んだ悪魔は、続けて“火・水・木・光・闇のハーフソウルリング”に水を掛ける。

 

「悪魔サマ?」

 

 開匣。飛び出したるはDキュゥべえ。テーブルの上に乗り、悪魔の顔を見るため振り返る。

 

「キュゥべえ。この小瓶を佐倉に渡してくれ」

「……分かったよ」

 

 Dキュゥべえは小瓶を預かる。

 その時、ハッと気付いた七瀬ゆきかが立ち上がった。

 

「この人っ!! いま飲んだのはまさか────幸運水っ!?」

「何を言っているんだ? ただの水だぜ?」

「立会人! 目の前で違反行為です! イカサマが────」

 

 ……ふと、七瀬ゆきかは停止する。思考がグルグルと回っている。

 

「────イカサマが……どうかしましたか? 七瀬ゆきかサマ」

「…………い、イカサマだと、私が言ったら……この人もきっと、わたしと同じ暴(・)露(・)をする。だから……」

 

 互いに反則負けで第三ゲームとなる。

 つまり今しがた七瀬ゆきかが暴こうとしたイカサマは、暴いても意味がない。

 

 幸運水を飲んでいるのは、お(・)互(・)い(・)様(・)なのだから。

 

 いやだが待て。悪魔は立会人の目の前で飲んだ。ど(・)う(・)あ(・)が(・)い(・)て(・)も(・)弁(・)明(・)不(・)可(・)能(・)な(・)暴(・)露(・)の(・)証(・)拠(・)が(・)あ(・)る(・)。一方、七瀬ゆきかが幸運水を飲んだという証拠はどこにもない。小瓶は捨てた。調べることも不可能なはずだ。

 

 いやだが待て。分析魔力────それを使えば幸運水を飲んだかどうかは分かるはずでは? ならばやはり……意味がない。第一ゲームの時は、白赤羽根の魔力検知によるイカサマ発覚が有効と認められた。立会人も常に魔力を発していると言っていた。であれば、全属性の魔力を超精密に使える悪魔の報告が事実であれば、悪魔が分析魔力を使えない訳が無い。だから、やはり────お互い様となり────意(・)味(・)が(・)な(・)い(・)。

 

 いやだが待て。プレイヤーは魔力を使用できない。悪魔は魔力を使えない。つまり分析魔力を使えば、その場で反則負け。証拠の提示は不可能だ。佐倉杏子も結界の中。まさかあそこから分析魔力を使うなんてことは不可能だろう。

 

 いやだが待て。もし可能だったら? という考えはさておき。そもそも外部からの証言で有効となるなら、佐倉杏子が適当に“分析魔力を使ったら変な魔力があるんだけど”とでも言えば、実際は分析魔力なんて使っていなくても、イカサマの正解を当てられたことで立会人はそ(・)の(・)証(・)言(・)を(・)認(・)め(・)る(・)かもしれない。なんせ立会人は常に魔力を発して、誰がどんなイカサマをしているのかあらかじめ調べている。その上で何も言わない。なにせこの立会人は、プレイヤーが論(・)破(・)するまで待つ、イカサマ上等のディーラーなのだから。

 

 いやだが待て。やってみなければ分からない。やってみなければ……

 

 いやだが待て。悪魔は魔力を使えば反則だが、反則後の物言いは可能だ。きっと可能。可能でないはずがない。反則覚悟で分析魔力を使って、それが決定的証拠となれば……立会人は悪魔の証言を認めるだろう。そうなれば互いに反則負け。やはりお(・)互(・)い(・)様(・)……意味がない……意味がない……!

 

「本当にそうか?」

「……っ!?」

 

 悪魔は視線を逸らして独りごちる。

 

「意味がなくても……した方がいいことは、あると思うぞ……?」

「────、……それは……どういう、意味ですか……?」

「そうだな……たとえば、ゲームの内容を変えることができる」

 

 第一ゲームはコイントスの結果、七瀬ゆきかが希望するゲームを執り行った。

 であれば必然、第二ゲームは悪魔が希望するゲームを執り行うのが公正だ。

 

「……」

「先を考えろ」

「……っ……暴露し合って、互いに反則負けで、仕切り直しの第三ゲームで、ゲーム内容はまたコイントスで決定する……でもあなたは幸運水を飲んでいるから、コイントスで必ず勝てる……意味がない……! 暴露しても、私の有利にはならない……っ!」

「ではこうしよう。オレの水を少しだけ飲んでもいい」

「えっ!?」

 

 悪魔は霧の炎でグラスを構築すると、それに幸運水を少し注いで差し出す。

 

「飲めよ。毒見は済んでる。目の前で見たろ。これで第三ゲームのコイントスは公平だ」

「……っ!!」

 

 七瀬ゆきかは思う。この悪魔はさっきからそうだった。いったい何を考えているのか。わからない……。そしてこちらの考えを全て見透かされているような……恐ろしい気配を感じる。そう、まさに悪魔がせせら笑って座っているかのような……死の気配。

 

「────いいでしょう……飲みますよ……これが毒かどうかの可能性も……あり、ますし……!」

「さすがだ。スリルジャンキー」

 

 七瀬ゆきかはグラスを手に取り、高鳴る心臓の赴くままにグラスを呷る。ゴクリ…ゴクリ…と飲み干すと、グラスは霧となって消え去った。

 

「……ずっと考えていました。あなたは第三ゲームを望んでいるのか、望んでいないのか。何を企んでいるのかさっぱりですが……憶測ばかりで論拠がなく、知力の限界と思考体力の限界を悟りつつ、頑張って考えていました」

「それで?」

「立会人。この人は目の前で幸運水を使用しました。反則負けです」

「七瀬ゆきかは幸運水を飲んでいる。ゲ(・)ー(・)ム(・)前(・)か(・)ら(・)飲(・)ん(・)で(・)い(・)た(・)場(・)合(・)は(・)イ(・)カ(・)サ(・)マ(・)に(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)が、い(・)ま(・)飲(・)ん(・)だ(・)か(・)ら(・)反(・)則(・)だ」

「────ふぇ!?」

 

 七瀬ゆきかは目を丸くする。ということは、いま自分が飲まずに“悪魔は幸運水を飲んだ”と報告していれば、それだけで勝てた!? と。

 

 白赤羽根は「ハァ……天然……」と頭を抱える。天然な部下を持つと可愛くて困る上司のようだ。

 

「それでは。両者反則負けです。仕切り直しとし、第三ゲームを始めます」

「あ……あああ……あなた……って人は……!?」

「正直、第三ゲームは望んでいなかった。それでもお前はバ(・)カ(・)じ(・)ゃ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。きっと意味がなくても、最終的には第三ゲームを望むと判断した。だから幸運水を飲ませるように誘導した。これでいいか?」

「────っ!」

「先を考えすぎた結果だな。前に追いつこうと無理に走れば、いざ疲れて失速した時に、後ろの石橋作りがおざなりになっていて足を滑らせる。谷底への落下だ。だから……ありのままのお前でいい。それに毒見と言えば勘ぐってくれて飲んでくれるのも想定内だった。ありがとうよ、天(・)然(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)」

「っ~~~~!」

 

 赤面する七瀬ゆきかは椅子にドサッと落ち座る。

 

「ではコイントスを行います」

「表」

「裏で……お願いします……」

 

 ミザリー立会人はコインを指で弾く。テーブルに落ちて回転し静止。上になっている面は────裏に見せかけて、表だった。

 

 悪魔は体内の激痛に顔を歪める。逆転勝利の呪いによって、叛逆魔法が強制的に発動した。

 

(こうなることは……分かっていた……互いに幸運水を飲んだ状態……しかしオレは大量の不運水を被っている……オレの幸運は不運水と相殺して一気に無くなった……18回分の不運が一気に凝縮された1発の不運────内臓に……孔が、空いたな……)

 

 左胸の奥で小さな臓器がドクドクと、液体が流れ落ちる音がする。それは血液か、何かの分泌液か。

 胃腸の表面に沿って垂れ落ちるサラリとしたひんやり感触は、端的に言って怖気が走る。鳥肌ものだ。

 

 水泳の魔女の性質たる《叛逆》が自動発動。

 ジュリー凪の固有魔法《施術》を誘発して、心の臓に空いた孔を縫い塞ぐ。

 

「公正なコイントスの結果、ゲーム内容は悪魔サマがご希望した【大空ゲーム】となりました。悪魔サマ、Dキュゥべえを預かります」

「あぁ。キュゥべえ」

「分かってるよ。この小瓶を佐倉杏子に渡せばいいんだろう?」

「────っ! ちょっと待ってください! その幸運水を使って何をするつもりですか!? もしイカサマをするのであれば、たとえ外部で起きることでも、プレイヤーが介入したんです! つまりこの発覚は認められ────」

「認められません。第(・)三(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)が(・)始(・)ま(・)る(・)時(・)に(・)は(・)、(・)既(・)に(・)幸(・)運(・)水(・)は(・)D(・)キ(・)ュ(・)ゥ(・)べ(・)え(・)が(・)保(・)有(・)し(・)て(・)お(・)り(・)ま(・)し(・)た(・)。悪魔サマが幸運水を保有していたのは第二ゲームまでです」

 

 そんな理屈が通るのか。と言おうとしたが、立会人がルールである。これ以上は“言いがかり”として遅延行為や妨害行為と見なされる。というより立会人は、そ(・)ろ(・)そ(・)ろ(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)を(・)始(・)め(・)た(・)い(・)だ(・)け(・)のように見えた。歯噛みする七瀬ゆきかの想像は正解である。

 

「えー。皆様。お待たせしました。これで役者は揃ったことですし……これより【大空ゲーム】のルール説明をさせていただきます! 悪魔サマ考案のオリジナルゲームです。盛り上がると良いですねぇ……!」

 

 ウッキウキのミザリー立会人は、具現魔法でホワイトボードを作り出し、分かりやすく図に描いて説明する。第一ゲームに居合わせた者は、その内容を既に知っているが、今一度よく聞いておこうと注意を向ける。

 

 

 

 

 

《大空ゲームのルール》

・用意するものは全部で50枚のカード。カードの属性は「大空・嵐・雨・雷・晴・雲・霧・亜種」と八種類あり、1枚の亜種カードを除いて各種7枚ある。

・図解「大空7枚・嵐7枚・雨7枚・雷7枚・晴7枚・雲7枚・霧7枚・亜種1枚」=50枚。

 

・ルールはポーカーと似ている。まず幾つかの“配役”が存在し、これはポーカーの“役”と同じ意味を持つ。

・配役の型は「ハイカード(ブタ)・ペア・スリーカード・フォーカード・ファイブカード・ウロボロス」と六種類ある。細かい配役の一覧は後述する。

・配役ができるとポイントが稼げる。最終的にポイントの多い方が勝利する。

・全七回勝負。7ターン目に同点等で決着がつかない場合はターン延長。そのターンで1点差がつくまで延長を繰り返す。

・6ターン目から「ハイカード宣言」を認める。ハイカード宣言とは、既に作られている自分の配役から一枚だけ選び、選んだカードを強制的にハイカードにすることができる。

・なお大空ゲームには「余興」が存在する。別名「チョイス」とも。それはプレイヤーの配役(ペア以上)に合わせて、その属性に当てはまる魔法少女をプレイヤーが選出し、四角形の舞台に上がらせて戦わせる余興! 戦闘時間は五分。殺害有り。互いに戦闘を嫌ってダメージを与えない場合、一方的に悪魔の敗北とする。なお細かい余興参加者(チョイスプレイヤー)の保有属性一覧は後述する。

・ゲーム終了後、何らかの“ミス”があっても不問とする。

 

《配役》

※ハイカード(別名:ブタ)

・配役が作れず余った1枚のカードにも点数が発生する。

「大空:5点」「雲・霧:4点」「嵐・雨:3点」「晴:2点」「雷:1点」「亜種:1~4点」

・亜種カードは、他の配役ごとに点数が変わる。場にハイカードしかない場合は1点。場にペアがあるなら2点。なお“ハイカードしかない場合は1点”という説明の通り、場にペアが二つ(ツーペアが)あるからといって点数が重複することはない。スリーカードで3点。フォーカードで4点。

 

※ペア

・全て2点として扱う。

「嵐・雷」役名:兄弟

「晴・大空」役名:義兄弟

「雲・霧」役名:静寂

「嵐・雨」役名:相棒

「雷・霧」役名:イタリア語レッスン

 

※スリーカード

・全て3点として扱う。

「雲・雨・霧」役名:凶兆

「晴・嵐・雷」役名:嵐の前の静けさ

 

※フォーカード

・全て4点として扱う。

「嵐・雲・雨・雷」役名:疾風怒濤

「大空・嵐・雨・晴」役名:仲間

 

※ファイブカード

・全て5点として扱う。

「大空・嵐・雨・雷・晴」役名:家族

「大空×5」役名:包容

「嵐×5」役名:疾風

「雨×5」役名:鎮魂歌

「雷×5」役名:避雷針

「晴×5」役名:逆境

「雲×5」役名:孤高

「霧×5」役名:幻影

 

※ウロボロス

「?・?・?・?・雲」役名:壊滅

「?・?・?・?・霧」役名:嘲笑

・場にフォーカードが出た際、残り1枚のハイカードが「雲」または「霧」だった場合、自分の場にある全てのカードが破壊されて「雲」または「霧」のハイカードが一人勝ちする。つまり自分の場に残るカードが「雲」または「霧」のハイカードのみとなるため、そのターンの最高点数は「4点」に固定されてしまう。ちなみに二つのペア(ツーペア)が出てもウロボロスにはならない。あくまで「四人の群れをまとめて咬み殺す」「多勢に無勢で勝てると思ったところを幻影で無双する」……これが大事。

 

《一覧:悪魔陣営のチョイスプレイヤーの保有属性》

 ○環いろは:晴・大空・霧 ○環うい:大空・霧 ○リリス:霧 ○万年桜:晴・大空・嵐・雷

 ○七海やちよ:雨・雷・雲・霧 ○由比鶴乃:嵐・大空・霧

 ○鹿目まどか:大空・晴・霧 ○暁美ほむら:雲・霧 百江なぎさ:霧・雲 ○佐倉杏子:雲・嵐・霧

 ○黒江:雲・霧・雨 ○フゥ太:大空 ○凪:霧 ○イーピン:晴

 ○ランボ:雷・霧 ○千歳ゆま:雷

 ○鼓星かずみ:大空・晴・雲・霧 ○ナッツ:大空・霧 ○チーズ:雲・霧 ○武蔵:雨・霧

 ○千秋理子:晴・霧 ○マメジ:晴 ○アシュリー:雲・霧 ○深月フェリシア:雲・嵐・霧

 ○Dキュゥべえ:霧

 

《一覧:七瀬ゆきか陣営のチョイスプレイヤーの保有属性》

 ○白赤羽根:嵐・霧 ○白赤羽根:雨・霧

 ○橙羽根A:大空・霧 ○赤羽根A:嵐・霧 ○青羽根A:雨・霧 ○緑羽根A:雷・霧 ○黄羽根A:晴・霧 ○紫羽根A:雲・霧 ○藍羽根A:霧

 ○橙羽根B:大空・霧 ○赤羽根B:嵐・霧 ○青羽根B:雨・霧 ○緑羽根B:雷・霧 ○黄羽根B:晴・霧 ○紫羽根B:雲・霧 ○藍羽根B:霧

 

 

 

 

 

「お分かりいただけましたかな!?」

「配役は自動で作られる……複数の配役ができる場合は選択式……ペア以上の配役よりハイカードの方が強い……そして“ハイカード宣言”のルールにより後半からポイントを上げやすい、追い上げ支援仕様……」

 

 七瀬ゆきかは細かいルールを頭に叩き込む。どうやらポーカーは少しやったことがあるようだ。ちなみに悪魔は一度もやったことがない。仮にやったことがあっても昔すぎて覚えてない。興味ないから忘れた、というのも大きい。

 

「────ちょっと待って。理解が追いつかないわ。これはいったい……どういうこと?」

「七海やちよサマ。参京区のウワサ空間・浅層でのブラックジャック、お見事でございました。万年桜も代理立会人として尽力してくれて御礼申し上げます」

「│気にしないで。困った時は友達?│」

「それを言うなら“お互い様”ですよ、万年桜さん」

「でも“友達だから困った時に助けるのは当たり前”って意味もあるんだもんね?」

 

 環姉妹の訂正。が、のほほんと話している場合ではない。

 

「えー。皆々様、かなり混乱されているようなので、ズバリ簡潔に事情をご説明いたします。ここは工匠区のウワサ空間・中層であり、現在、悪魔サマと七瀬ゆきかサマがゲームに興じられております。そこで悪魔サマは────あ(・)な(・)た(・)方(・)の(・)身(・)柄(・)を(・)賭(・)け(・)た(・)のでございます」

 

『────っっッ!???』

 

「えっ。今……あの人、なんて言ったの……?」各々の魔法少女が呟く。

「おっとこれは申し遅れました。わたくし、ミザリー立会人のウワサと申します。お気軽にミザリーや立会人とでも。そして事実を告げますが、悪魔サマは自分の命が惜しいということで賭けられたのですよ。その結界の中にいるお(・)仲(・)間(・)の(・)方(・)々(・)の将(・)来(・)的(・)な(・)命(・)を」

 

「そ……そんなこと、悪魔さんがするはずありません!」環いろはが叫ぶ。

「そ……そうです! 信じ、られません……」暁美ほむらの驚愕と動揺。

 

 それを一蹴するかのように佐倉杏子が苛立つ。

 

「ホントのことだよ。あいつはアンタたちを賭けたんだ」

『────っ!?』

「この耳で聞いた。……《仲間を賭ける》と……だからあたしもこうして、この透明な結界の中に居るんだ」

『っ……!!』

 

「悪魔! あなた……いったい何を考えているの!?」七海やちよは空間を仕切るガラスを叩いて悪魔に叫ぶ。

「悪魔! 何かの間違い、だよね……? 違うの? こっち向いてよ!」由比鶴乃は呆然と立ち尽くす。

「あ……悪魔さん! 何か……何か、ワケがあるんですよね?」喉が震えている黒江の問いかけ。

 

 悪魔は顔を向けることができない。面を上げると、そこには七瀬ゆきかの顔。その顔をまっすぐと見据えながら、結界の中に閉じ込められている仲間たちに語りかけた。

 

「今、オレの口からみんなに言えることは一つだけだ」

『……?』

「────今まで何回、幸運を消費した? 総数の概算で構わない」

「ふざけないでっ!!」七海やちよの怒号。ガラスを粉々に砕くつもりで殴ったが結界はビクともしない。

「幸運水を飲んだことに気付いたのはかなり後なのです。なので総数は不明……概算も立てられないのです。ただ少なくともブラックジャックで数回は使ったのです。誰(・)の(・)幸運を使ったのかは、まったく分からなかったのですが」

「そうか……幸運残機が分かれば、少し精神的に楽だったんだが……さて、どう持っていくか────」

 

 環いろはと黒江が悪魔の名を呼ぶ。しかし悪魔は集中しているのか聞こえていない。まさか無視しているとは思いたくない。

 

「みんな、どいて!」

 

 そこで鹿目まどかが迷いなく光矢を射る。結界に命中して魔力が炸裂するが、傷一つ付かない。

 

「そんな……全力だったのに!」

「皆様はゲームを円滑に進めるため、且つ、取り立て対象なのもあり、絶対にこの私、ミザリー立会人のウワサには逆らえません。無害ゆえに無敵! そのため皆々様はルールに従うしかないのです。ご容赦をば」

 

 そこで白青羽根が叫んだ。

 

「ちょっと待って。だからってなんで私たちまで?」

「羽根の方々は取り立て対象ではないので良いではありませんか。ただの余興ですよ、余興。楽しく参りましょう。……それとも、まさか《確殺賭博場ミネルヴァのウワサ》に立ち入って、自分たちだけは安全だと……思っちゃったりしてます?」

「っ……いいえ。覚悟の上よ。マギウスの悲願を成就するために集められた決死隊、その16名が、私たちだもの……」

「えぇ、えぇ! その意気でございます! これは悪魔陣営の皆様、手ごわくなってきましたよぉ!? 決死隊ですって! 決死隊! まさに死闘の予感がいたしますねぇ!! ホッホー!」

 

 ミザリー立会人のテンションが高い。その耳障りな嘲笑を黙らせるため、ガラスにへばりつく七海やちよが鉄拳を叩いた。結界が激震する。

 

「ホ……おやおや。もし結界を破れば即刻静粛対象ですので気を付けてくださいね。気絶している間は無論のこと余興に参加できませんので、その間に誰かが殺されても知りませんよ? 七海やちよサマは、この中で一番強いのですから、もう少し慎重に行動できないものですかねぇ?」

「悪魔……あなた……自分が何をしているのか……」

「分かった上でやっている。すまないが黙っててくれ。思(・)考(・)の(・)邪(・)魔(・)だ(・)」

「────っ!?」

 

 七海やちよは憤怒を通り越して放心する。彼はどういう人間性だっただろうか? もうそれすらあやふやになってきた気がする。信じられない。信じたい気持ちが、信じたくない気持ちに覆われていき、もう何もかもが信じられなくなっていく。

 

「悪魔さん……」「そんな……」「モッキュ……」「│いろはとういを危険に晒したのは許せない│」「……」「やちよ、しっかり……」「……」「まどかまで賭けに……悪魔さん……」「みんな賭けられたことにショックを受けすぎて冷静じゃないのです。具体的にどういうふうに賭けられたのか立会人が言わないあたり、何か裏がありそうなのです。だから落ち込むより先のことを考えるのです」「……チッ……」「……もし負けたらどうなるんだろう……悪魔さん……」「ツナ兄……」「……ボスは勝つ。私は信じる……」「……マージャン?」「スピー、スピー……フガッ! ん? ここどこ? ランボさんお腹すいたー」「キョーコ! ゆま、ホテルに居たのに……ここ、どこ?」「……。……? ナッツ、どうしてそんなに怯えてるの……?」「ガ、ガォ……ガォ……ッッ!!!」「キュー?」「ピィ?」「あ、あの……わたし、マメジと会えて嬉しくて、よく話を聞いてなくて……」「ワンッ!」「理子……私たちは、デスネ……」「おい! こっから出せよ! なんだこのガラス、硬すぎてビクともしねぇ! 一体全体なんだってんだ!? わけがわかんねぇよ!」

 

 消沈する者。憤る者。冷静な者。無知な者。

 各々の魂と感情が不安と動揺で鬱屈する中、ただひとり、赤い目を丸く光らせる無感情な者がいた。

 

「悪魔」

「?」

「僕の心を読めるかい?」

「……、────っッ!? 獣の数……そう、か……そういう、ことか……! だからオレと隼人たち、キュゥべえと佐倉は、幸運水を飲む必要が……!」

「どうやら読めたようだね。そして幸いにも必要な情報だったようだ。健闘を祈るよ」

「待てキュゥべえ。なぜオレに……そんな助言を? 不都合なことは訊かれなければ答えないお前が……なぜ……」

 

 瞠目する悪魔は問いかける。

 

「簡単なことさ。この状況は僕にとって都合が悪い。おそらくマギウスの狙いは優先的に君を殺すことだが、それは君の能力を高く評価している裏返しでもある。つまり君の能力に興味関心を抱いている可能性が高い。彼女(巴マミ)が入れ知恵したのなら尚更ね。僕らとしては貴重なサンプルを奪われるのは困る。だから君には勝ってもらう必要がある。君の命自体はどうでもいいけどね」

「…………そうか。そうだよな……お前はそういう生き物だ。────でも……ありがとう、キュゥべえ」

 

 悪魔は首を傾けて笑いかける。

 その表情を観察したキュゥべえは、ふと言葉が衝いて出た。

 

「相変わらず君が何を考えているのか皆目見当がつかない。だけど君がまた無茶をしようとしていることは予想できる。君の行動理念上、それは承(・)知(・)し(・)て(・)い(・)る(・)と言い換えてもいい。長い付き合いだからね。ともすれば君は勝利の代わりに自動的な死亡を迎えるかもしれない。仮に負けても僕らは助かり、君だけ自動的に死亡するだろう。もう引き返せないところまで来ているから聞いても無駄だけど、それでも一応聞いておくよ。────おそらく、その先は人間の価値観にとって地獄だ。僕らのような精神構造でもないのに、それでも君は突き進むのかい?」

「愚問」

「どうして君は人間なんだろうね。人間が作ったロボットのように動きに迷いがない。わけがわからないよ」

 

 こんな人間を見るのは久しく初めてだ。似たような自己犠牲型の個体は数多くいたが、ここまで狂気的な個体は中々いない。

 

 家族。一族。国家。組織。仲間。大小あれど全体の為に個体たる自己を犠牲にする英雄的な人間は少なくなかった。しかし、それは成人した人間の、そのまたさらにごく一部の話だ。第二次性徴期の少年少女の中で、ここまで覚悟を決めながら深く物事を考えて実行に移せる個体は中々いない。自ら茨の道を進み、全てを救うべく邁進する。人間の可能性には驚かされてばかりだ。今の彼は地球人類の中で、最もインキュベーターの感性と似ている少年かもしれない。……否、似(・)て(・)対(・)比(・)す(・)る(・)少年と言った方が適切か。

 

「佐倉杏子。この幸運水を飲んでくれないかな」

「……」

「でも全部飲んではいけないよ。僕も飲まなければいけない」

「…………キュゥべえ。そりゃいったい、どういう風の吹き回しだ?」

「お願いだよ。悪魔が勝つためには必要なことなんだ」

「……そうかい。じゃなきゃテメェに持たせねぇよな……ったく。幸運水ねぇ……随分とうさんくさい飲み物だけど、モノは使いようって言うしな……あのクソ野郎が勝つのに必要だって言うなら、仕方ねぇ。ゆまの命も懸かってるし、あぁ……飲んでやるよ」

 

 佐倉杏子はコルクを開けて幸運水の半分を飲む。そして残り半分をインキュベーターの顔にぶっかけた。

 

「わぷっ! ……飲めたから良かったけど……どうして顔に引っ掛けるんだい?」

「アンタが気に食わないからだよ」

 

 佐倉杏子はお菓子の袋を開けてかじり、珍しく不味そうな顔をする。

 

「それでは互いの賭物を秤に掛けます。

 悪魔サマが賭けるモノは、指定した魔法少女と一般人の身柄。

 七瀬ゆきかサマが賭けるモノは、自らの命たるソウルジェム。

 ────ふむ……悪魔サマの賭物が少々オーバー気味ですね……何か追加でご所望なモノはありますか? 小さめでお願いします」

 

「それならこのスリルジャンキーをどうにかしてくれ。二度と他人を巻き込んで危険な賭け事に臨むなと。……そうだな。七瀬ゆきかが賭け事をする時だけ見張っていてくれれば、それでいい」

「ハイ? つまり一生、七瀬ゆきかサマのおそばに仕えていろと? それはさすがに────」

「どうせウワサの本体は倒すんだ。それで自由になることがあったら、こいつと一緒に遊んでやれ。それなら小(・)さ(・)め(・)だろ?」

「なるほど! その約束を取り立てる為には私が本体を倒す必要があると言いかけましたが、そちらが倒してくれるのであれば確かに代償は小さく済みますね。なんせ私の苦労が減りますので! つまり悪魔サマが本体を倒すまでは、その約束を一旦保留にするということでよろしいので? であれば制限時間を設けさせていただきます! ゲーム終了時から一時間以内に本体を倒せなかった場合は、その約束の取り立てを無効にさせていただきます!」

「充分だ」

「あぁ愉快適悦! それでは────ゲームを始めましょう!」

 

 そこで悪魔は思った。ミザリー立会人の悪質さを。

 

(オレの賭物は身柄と言ったが、ゆきかの賭物はわざわざ命と言った……そもそも本当にその秤は釣り合っているのかも怪しい。最初のゲームの時もそうだったが、あまりに賭けるものに関しての裁量が曖昧模糊とし過ぎている。これはつまり……身柄を生かすか殺すか、七瀬ゆきかのソウルジェムを押収するか粉砕するか……全ては立会人の気分次第と考えた方がいいってことか。なんせ立会人がルール、だもんな……まったく厄介で凶悪なウワサだぜ……)

 

 悪魔は一世一代の勝負に臨む。

 このゲームで多くの信頼を損なおうとも、守るべきものを守り抜くために。

 

          †

 

 

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