アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
砂のような黄色い空。バケツのような青い太陽。リボンのような赤い雲。それは使い魔の結界が見せる幻想の光景。結界に囚われた十数の車両は、その連結部分を全て破壊されて、それぞれ使い魔に弄ばれている。それを見据える悪魔は列車の屋根から屋根へ飛び移り、その後を環いろはが追いかける。
「あ……あの! 使い魔と話すって、どういうことですか……?」
「説明している暇はない。理解したいなら見て察しろ」
悪魔が観察する使い魔。彼らは列を作り、先頭の使い魔の後を後ろの使い魔が追い掛けている。その光景から連想できるものは何か。悪魔は思考の翼を広げていく。
「……なぁ、いろは。あいつら電車ごっこが好きみたいだな。輪になってポッポーと言って遊んでいるように見えないか?」
「え? そうですか? ……でも、たしかに……そう見えなくもないですけど……」
「こうして列車をさらった以上、何かしら列車に思い入れがあると見ていい。だが
ふと悪魔は右腕の袖をまくる。手首には腕時計が巻かれていた。それはただの腕時計ではない。文字盤があるため時計の役割も果たせるが、文字盤の邪魔にならない部分にへこみがあり、そこに少しの水が浸されている。その水は本来、透明のはずだが────
(使い魔の属性は
「────あっ! 危ない、悪魔さん!」
「□▽★※◎◆♯ポッー!」
不意に、仲間はずれの使い魔が一匹、汽笛のような声を上げて襲いかかってくる。環いろはの声がなくともそれに気付いていた悪魔は裏拳の一撃で打ち倒す。そして悪魔は、今しがた倒した使い魔が砂のように崩れ去って消滅した瞬間を見逃さなかった。
(倒すと
やがて先頭車両の近くに到着した悪魔は、上空で蠢く使い魔の集団に声をかけた。
「おーい! あーそーぼー! オレも入れてくれー!」
『────?!?! ……□▽★※◎◆♯ポッポー!!』
悪魔の呼び声に驚いて目を向けたのも束の間、使い魔の集団は猛烈な回転を始めて突撃を開始。それを炎の逆噴射で回避した悪魔は残念そうに呟いた。
「なんだ。遊びに入れてくれないのか。わがままな奴らだな」
『□▽★※◎◆♯ポッー!!!!』
「なら遊んでくれなくてもいいぜ。その代わり、もっといい遊びを教えてやる」
空を飛ぶ悪魔は、攻撃してくる使い魔を難なく躱す。そしてすれ違う瞬間、使い魔の側面から耳打ちするように囁いた。
「────この列車、お前らの魔女にぶつけたら面白くないか?」
「…………?!?!」
『□▽★※◎◆♯ポッポー!!!!!!』
「────わっ!?」
急な進路変更に結界全体が揺れ動き、悪魔と環いろははたたらを踏む。
「け、結界の行き先が変わった……? あの、これはどういう……」
「使い魔が判断したのさ。
「……!?」
環いろはは困惑していた。なぜ魔女の手下である使い魔が、自分たちの親玉とも言える魔女に攻撃を加える提案を良しとしたのか。しかし環いろはは、そもそも魔女や使い魔について何も知らない。今まで考えなしに魔女や使い魔を倒していたので、その習性を研究しようと思ったことはなかった。そのような魔法少女はごまんといる。
そんな新米魔法少女の困惑ぶりを見て察した悪魔は、目的地に到着するまでの間、簡単に説明する。
「実は使い魔は、自分の親玉である魔女を好いていることは少ないんだ」
「え……そうなんですか?」
「さすがに《殺せ》と言われても、自分たちの衣食住が掛かっているからそれは受け入れないが……どうやらこの使い魔は遊び好きみたいだからな。魔女に
それを聞いた環いろはは、新しい知識に感心する。だが、それでこの先どうなるのか思考した結果、状況は依然として変わっていないことに気が付いた。
「いえ、でも……もし使い魔が本当に列車を魔女にぶつけるつもりだとしたら、それは墜落と変わりません! このままじゃ列車が魔女に激突して、乗客の人たちが無事では済みません……っ!」
「それについては既に対策を立ててある」
高速でどこかに向かう結界。それは地上に下降してビル群を掻い潜り、工事途中のトンネルに侵入。どうやら地下に向かっているらしく、やがて暗闇の前方に莫大な魔力反応を感知する。それは魔女の反応でもあり、さらに大きな結界が存在することを示す反応でもあった。
「……! 魔女結界だ! 今から魔女迷宮に突入する! 衝撃に備えろ!」
「……!?」
新幹線より速く移動する結界が、さらに大きな結界の中に突入。その瞬間、周囲の景色は様変わりした。一変した世界の有り様は、まさしく魔女の心象風景に等しい。天井は暗く赤い。壁は遊園地のようなジェットコースターの線路がひしめき、その上を使い魔が走っている。床は公園の砂場のようで、多くの遊具と砂場で満ちていた。
幻想的で不思議な遊園地。
そこは魔女迷宮。本体の魔女が鎮座する空間であり、魔女が自身の身を守る城塞でもある。魔女に会うためには魔女迷宮の階層を深く潜る必要があり、その終着点に魔女は居座っている。
そして使い魔の結界は魔女迷宮の外周を飛行して、どんどん深くまで降りていく。
「一階、二階、三階、四階……まだ深くなるのか!? どうやらそんじょそこらの魔女ではなさそうだな……」
「あの……深いと何かまずいんですか……?」
「魔女迷宮の階層の深さは、すなわち魔女の強さと言っていい。ゲーム的にたとえるなら、階層の深さイコール魔女の
「……!」
やがて移動結界は魔女迷宮の最終階層に到着。悪魔と環いろはは前方に巨大な魔女を目視し、それとの衝突まであと十秒もないことを悟る。
「あ、あの……! このままじゃ……!!」
「
「えっ……!? そ、そんな急に言われても……!」
「習うより慣れよ、だぜ。参考にはならないだろうが、こういう戦い方もあるということだ」
悪魔の額に不規則な炎がまたたき、ノッキングするような火花の音が弾かれる。同時に
(
そして悪魔は独特な両手の構えを取ったあと、至高の魔法を披露した。
「────
†