※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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【小さなキュゥべえって知っていますか?】環いろは

 

 まだ早朝の時間帯。神浜市・新西区の廃墟街。

 悪魔と環いろはは錆びついた路地裏を静かに歩く。

 

「…………」

「……」

 

 悪魔は俯いて何かを考え込んでおり、環いろははそれを見て気まずそうに俯いている。それも仕方ない。悪魔はキュゥべえの異変のことで頭がいっぱいだった。

 対する環いろはは、なぜ悪魔はキュゥべえを首に巻いているのか、なぜキュゥべえはあれから一言も喋らないのか、色々と事情が分からないものの、ともかく悪魔が必死で考え事をしていることを察して気遣うあまり、押し黙ってばかりで何も出来ないでいた。

 しかし、しばらく歩き通して、それではいけないと思ったのか、環いろはは意を決して声を掛ける。

 

「あ、あの……! その……さっきから気になっていたんですけど……キュゥべえマフラー(それ)って……」

「……? ……あぁ。キュゥべえ(こいつ)のことか?」

「は、はい! その、なんでキュゥべえをマフラーのように巻いているのかなと思って……」

「特に意味はない。キュゥべえが動かないのも眠っているだけだ」

「……そ、そうなんですか……」

 

 会話が止まる。それではいけないと思って環いろはは本題を口にした。

 

「あの……キュゥべえと言えば、なんですが……小さなキュゥべえって知っていますか?」

「────小さなキュゥべえ?」

 

 悪魔は思わぬ言葉に耳を疑い聞き返す。小さなキュゥべえとは、文字通り通常のキュゥべえより、サイズが小さなキュゥべえという意味だろうか。しかしキュゥべえに個体差は存在しないはず。だが悪魔の口付けによる個体の特徴付けは悪魔本人が既に実践していることでもある。そういった外的要因なら個体差のあるキュゥべえが存在していてもおかしくはない。少なくとも有り得なくはない。

 そこまで考察した上で、悪魔は「知らない」と即答した。

 

「その小さなキュゥべえとやらは、実際に見たことがあるのか?」

「はい。近くの病院で……でも、それっきり見かけなくて……」

「見間違いじゃないのか?」

「いえ、はっきり見ました! それで小さなキュゥべえを見つけた日から、変な夢ばっかり見るようになって……私、その原因を突き止めるために、また小さなキュゥべえに会いたいんです」

「……それでこの街に来たのか。分かった。オレもキュゥべえの別個体には興味がある。見かけたら捕まえて報告するよ」

「えっ……ホントですか!?」

「あぁ。だが連絡手段はどうする? スマホは持っているんだが」

「あ、じゃあ、えっと……それなら連絡先を交換しましょう!」

 

 スマホを取り出した悪魔と環いろははアプリを起動して、その場で互いのIDを交換する。

 

「しかし奇遇だな。実はオレも人を探しているんだ」

「え……それじゃあ悪魔さんも、その人を探しにこの街へ……?」

「あぁ。だが名前も居場所も知っている。キュゥべえ(こいつ)がいなくても探すのに苦労はしないはずだ」

「見つかるといいですね」

 

 連絡先を交換して世間話を済ませた悪魔といろはは歩みを再開する。

 次の瞬間、悪魔の右目に痛みが走り、いろはは魔女反応を感知した。

 

「────っ! 魔女……!」

「やはりか。今日は多いな……。いろは、魔女の所まで案内してくれ。オレは魔女反応を感知して、ある程度の方角を知ることはできても、より詳しく居場所を探ることはできないんだ」

「そうなんですか! でもたしかに悪魔さんは魔法少女? ではないですもんね。分かりました、任せてください!」

 

 二人は走り出す。魔女反応を感知した場所は、廃墟街を抜けた先の住宅街のT道路。その中心に魔女結界に繋がる出入り口(ゲート)が開いていた。

 

「あった……魔女結界!」

「移動する前に飛び込むぞ」

 

 魔女結界に侵入した悪魔といろは。そこで悪魔の首に巻かれたキュゥべえの瞳に赤味が戻る。

 

「────おや。これは……」

(────っ!? キュゥべえ……! まさか生き返ったのか! なぜ?!)

 

 ふとしたキュゥべえの息の吹き返しに驚いた悪魔は、首に結んだ白い耳をほどいて地面に下ろす。

 

「悪魔さん?」

「すまん、いろは。少しだけ待っていてくれ。キュゥべえと話がしたい。あるいは先に行っても構わないから。────それでキュゥべえ。何があったか説明しろ」

「うーん。仕方ない。もう少し充分な考察を重ねたいところだけど、その時間もなさそうだ。またいつ意識を奪われるか分からない。憶測でも構わなければ、結論から話してもいいかい?」

「さっさとしろ」

「この神浜市には、ボクの力を奪う“なにか”がある。そして今、ボクが機能停止から再起動できた理由は、外界から隔絶された空間に移動したからだ」

「……どういうことだ?」

「まず状況から考えよう。ボクは魔女迷宮が破壊された瞬間、意識を失った。そして今、再び魔女結界に足を踏み入れた途端、ボクの意識は回復した。合ってるよね? そしてボクが機能停止に陥った時、君を監視するためのスペアが神浜市に足を踏み入れた。その瞬間、悪魔監視用のスペアはボクと同じように機能を停止した。それに続いて、さらに二体のスペアが送り込まれたが、いずれも新西区、北養区、大東区に面する神浜市の領域に侵入した途端、機能停止に陥った情報が届いてきた。このことから神浜市という街全体に、なんらかのインキュベーター妨害対策が施されていると考えていい」

「そこまではオレも考えた。オレの周囲には常に複数のインキュベーターが尾行している。お前が死亡あるいは機能停止した段階で、新手が現れないのはおかしいと感じていた」

「そこまで分かっているなら、今度はボクが意識を回復できた理由について考えよう。それは空間位相の差異が功を奏したからだ。魔女結界は基本的に現実世界の空間とは位相が異なる場所に存在している。つまり神浜市全体にインキュベーターの意識を奪うなんらかの対策が取られている場合、それは“神浜市のみ”に限定されるものだから、空間が異なる魔女結界には効果が働かないという仮説が成り立つ」

「……なるほど。要は“圏外”というわけか。お前らの意識を刈り取る“なにかの力”は、魔女結界までは及ばない、と……」

「及ばない、とは言い切れない。微弱だが今もその“なにかの力”はボクの意識を奪おうとしている。正直、頭の中が異常発生(エラー)の通知ばかりでうるさいったらありゃしないよ。それでもボクが今こうして君と話せているのは、おそらく優先順位が異なるからだ」

「……優先順位?」

「ボクの意識を奪う“なにかの力”は、ボ(・)ク(・)の(・)意(・)識(・)を(・)奪(・)う(・)た(・)め(・)だ(・)け(・)に(・)あ(・)る(・)わ(・)け(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)、ということさ」

「……なぜ、そんなことが分かる」

「さぁ? ただそう感じたから、としか言えないよ。というのも、この“なにかの力”は、ボクの機能と少し……いや、かなり似ている気がするんだ。一種の指向性が働いているから同一とは言い切れないけど、うーん……元は同じ? いや、まさか……」

「……お前が不確定要素を勘で予想するなんて珍しいな。だが……そうか。なんにせよ、それだけ分かっただけでも収穫だ。とにかく今は魔女の討伐を優先したい。付いてこい」

「分かったよ。でもこれだけは聞かせてくれ。ボ(・)ク(・)を(・)神(・)浜(・)市(・)で(・)活(・)動(・)さ(・)せ(・)る(・)方(・)法(・)、(・)も(・)う(・)閃(・)い(・)た(・)ん(・)だ(・)ろ(・)う(・)?(・)」

「あぁ。オレにとって、友の死は敗北に等しいからな」

 

 悪魔は逆転勝利の魔法によって、インキュベーターを神浜市で活動させる方法を直感した。それに安心したキュゥべえはそれ以上何も言わず、悪魔は立ち上がって背後の少女に振り返る。

 

「いろは、待たせたな。行くぞ」

「あ、はい……!」

 

 いろはは悪魔とキュゥべえの話を半分も理解できなかったが、とにかく今は魔女を倒すことが先決だ。悪魔といろはとキュゥべえは走り出し、魔女結界の中心地に急ぐ。

 

 そして結界の奥で爆発音。何らかの戦闘音が聞こえる。

 

「誰か戦っているのか……? いろは、教えてくれ。オレは魔法少女の存在を感知できないんだ」

「あ、えっと……どうやら既に二人くらいの魔法少女が戦っているみたいです!」

「そうか。劣勢の場合は加勢しよう」

「? 戦いに勝っている場合は加勢しないんですか……?」

「魔法少女には縄張り意識が強い奴がいるからな。余計な面倒は避けたい。グリーフシードを取られると誤解されて攻撃される恐れがある。いろはも気を付けろよ」

「!」

 

 環いろはは(魔法少女には縄張りがある……知らなかった……)と内心で驚きつつ「は、はい!」とハッキリ返事する。

 

「□▽★※◎◆♯ポッー!」

 

 不意に前方から使い魔が接近してくる。その外見には見覚えがあり、先ほど列車で戦った使い魔と同一の姿をしていた。それを一撃で払い除けた悪魔は周囲を観察。使い魔の数が少ないことから、先客の魔法少女たちが既にあらかたの使い魔を掃討した後だと悟る。

 

 やがて結界の中心地に近付くと、やはり先ほど倒した魔女と同じ姿の魔女が、二人の魔法少女と戦闘していた。

 

「同じ魔女!? 前から気になっていたけど、これってどういう……」

「魔女は使い魔を擁し、使い魔は人を食べることで魔女へと成長する。そうやって成長した元使い魔の魔女は、親元の魔女と同じ姿になり、かつての自分と同じ姿をした使い魔を生成する。その繰り返しで魔女と使い魔は増殖していく」

「な、なるほど……そういうことだったんだ……」

「基礎知識だ。新米魔法少女とはいえ、その様子だとキュゥべえとまともに会話したことがないな?」

「そ、そんなことありません! 一緒にお昼のお弁当も食べたことがある仲です!」

「それでも魔女や使い魔について詳しく聞かなかったのは事実だろう。脳死の戦闘は危険だ。どうか気をつけてほしい」

「は、はい……」

 

 不意の突風で悪魔と環いろはの足が止まる。前方では砂で作られた長い髪に黒を基調とした独特なドレスを身に付けた魔女が猛威を振るっており、幾本もの砂の竜巻を起こしていた。

 

「ズシャアア▲◇◎◎◇▼☆☆ー!!!!」

『きゃあああああ!!』

 

 そして二人の少女の叫び声。魔女の攻撃で吹き飛ばされた二人の魔法少女は地面に激突して倒れてしまう。そこに駆け付けた悪魔は誰よりも前に出て迎撃の構えを取り、環いろははダメージの激しい茶髪の魔法少女に向かって治癒魔法を掛けた。

 

「だ、大丈夫ですか!? 今キズを治します!」

「っ……はっ! か、かえで!?」

 

 ダメージの少ない青髪の魔法少女はいち早く起き上がり、茶髪の魔法少女を“かえで”と呼んで心配する。

 

「かえで! 早く起きなさいよ、かえで!」

「うぅ……レナちゃん……?」

「────っ! はぁ……無事でよかった……」

 

 環いろはの治癒魔法によって一瞬でかえでのケガが治り、“レナ”と呼ばれた青髪の魔法少女は安堵する。そんな彼女もまた右腕にかすり傷程度だがケガをしていた。それを見つけた環いろはは彼女に近付き治癒魔法を掛けようとする。

 

「っ! な、なによ!?」

「えっ? いや、えっと……」

 

 しかしなぜか逃げられてしまう。青髪の魔法少女レナは警戒しているのか、環いろはの接近を許そうとしない。

 

「その、右腕にかすり傷があるから、それを治そうと思って……わ、私、治癒魔法が使えるんです! だから治させてください!」

「あ……ほんとだ……ちょっと切れてる……で、でもっ! 別にこのくらいどうってことないわ! ケガってほどじゃないし……」

「え? あの、でも、一応……」

 

 そこで茶髪の魔法少女かえでが起き上がり、レナに物申す。

 

「そうだよレナちゃん! 遠慮しちゃダメだよ! せっかく助けに来てくれたんだから!」

「だから要らないって言ってるでしょ! それに助けなんて別に要らないし! あともう少しで倒せそうだったんだから!」

「え? でもさっき、思いっきり魔女に吹き飛ばされて……」

 

 その環いろはの一言が思春期乙女心にトドメを刺したのか、レナは「ぐぅっ……」と何も言えなくなる。その隙を突いて環いろはは治癒魔法を掛けた。

 

「痛っ! ……って、あれ? 痛くなくなった……?」

「やっぱりレナちゃん痛かったんだ! でも右腕、きれいに治ってよかったね!」

「えっと、これでいいかな……?」

「ちょ、アンタなに勝手に治してんのよ! レナはホントのホントに大丈夫だったんだからね!」

「レナちゃん! お礼は?」

「あ、いいよ別に……私が勝手にしたことだから……」

「っ……! じ、じゃあ、ホントにお礼なんて言わないからね!」

「レナちゃん!」

「あ、本当にいいから……それより今は魔女との戦闘に集中しないと────」

 

 環いろはは魔女がいる方向に振り向く。すると自動的に悪魔の背中が目に入った。一方のレナとかえでは悪魔の姿を見て心底驚く。なぜ男(・)の(・)子(・)が魔女の口付けも受けずに、しかも臨戦態勢で、三人の魔法少女を守るように佇んでいるのか、諸々の疑問を抱いているようだった。

 

 そして悪魔は視線だけ後ろにやると、三人の魔法少女に向かって文句を言う。

 

「お前ら話が長い。仮称・砂場の魔女の性質が没頭じゃなければ、そんなのんびりと会話できなかったぞ」

 

 砂場の魔女。その性質は没頭。

 戦闘中であるにもかかわらず、その魔女は自分の陣地である砂場から外敵を排除したと判断すれば、すぐに砂の城作りを再開していた。三人の魔法少女が傷を治すかどうか言い争っている間にも、砂の城を作っては納得がいかないのか叩き壊し、また作ってはこだわりが非常に強いのか切り崩し、またまた作った時にはそれなりに立派なお城が作れたことに喜び鼻歌を歌ってご機嫌になっていた。……のだが、結局また崩して新しい砂の城を作ろうとしている。どうやら砂場の魔女は妥協を知らないようだ。

 

「だが好都合だ。使い魔もいないことだし作戦会議ができる。オレの名前は悪魔。そっちの治癒魔法の使い手は環いろはだ。お前らは?」

 

 悪魔の自己紹介。

 それにレナはすぐ反応できず、かえでもボーッと悪魔の顔を見つめていた。

 

「いや、ちょ……男ぉ!? えっ……なんでぇ!?」

「ま、魔法少女じゃないのに……どうして無事でいられるの……?」

 

 魔法少女であれば当然の反応。その疑問に悪魔は答える。

 

「オレの話は後でいいはずだ。ただ少なくともオレは魔法少女の味方であり、君たち魔法少女に共闘を申し出ている。ちなみにグリーフシードはそちらの戦利品で構わない。これでいいか? いいなら話を進めよう。まずは自己紹介だ」

「わ、私は……秋野かえで、です……」

「水波レナ……」

 

 そうして自己紹介を終えた悪魔は、即座に作戦会議に入る。

 

「では次は二人の属性を教えてほしい。ソウルジェムの色から推察するに、レナは水属性(アクア)、かえでは木属性(フォレスト)のようだが? 砂場の魔女はおそらく火属性(フレイム)だ。そして火属性は水属性に弱く、火属性は木属性に強い。よってオレの見立てが正しい場合、レナの方が砂場の魔女を相手に有利に戦える。つまり、かえでといろははレナのサポートに徹するのが最善だ」

 

 話が早い悪魔。だがそれは何も知らない相手からしたら、ただまくし立てられているも同然の会話内容。それにレナが物申す。

 

「はぁ? ちょっと待ってよ。なによその火属性とか水属性とか……これはゲームじゃないのよ!? アンタもしかしてふざけてんの!?」

「神浜市の魔法界隈では別の名称が付いているのか? ……そういうわけでもなさそうだな。とにかくオレは真剣に話を進めている。これは魔女に勝つための作戦会議だ。それを念頭に入れた上で話を聞いてほしい。というわけで次に、二人がどんな魔法を使えるのか教えてほしい。固有魔法が教えづらい場合は修得魔法でも構わない」

「み、見ず知らずの奴に、そんな重要なこと教えるわけ無いでしょ!」

 

 そこで何か考えるように俯いていたかえでは、勢いよく顔を上げて悪魔の瞳を見据えた。

 

「わ、私は“一時消去”です! レナちゃんは“変身能力”で……」

「ちょ、かえで!?」

「一時消去と変身魔法……どちらも搦手か。よし、今回はそれらの魔法は使わずに勝つ。通常の魔力攻撃と必殺技(マギア)のみで趨勢を決する。それでレナ。君のマギアは攻撃型か?」

「そ、そうです! レナちゃんはたくさんの水の鏡の中に入ったり出たりして、最後にドーンってするんです!」

「ちょっとかえで! なにペラペラと話してんのよ!」

「機動力を兼ね備えた攻撃……速攻型か。砂場の魔女は機動力が低い。没頭の性質の影響だろう。ここまで分かれば楽勝だ。これより作戦を決める。戦術的役割(ポジション)はこうだ。常にレナを攻撃の主軸とし、かえでがサポート、いろはが回復役(ヒーラー)兼準攻撃手(サブアタッカー)として機能する展開を前提とする。オレはこの前提が崩れないよう常に援護(フォロー)に回る。ここまではいいな?」

「はい!」

「え、いや、ちょ……なんでアンタが当たり前のように仕切ってんのよ! っていうか悪魔って名前なに!? それ偽名でしょ絶対!?」

 

 今更すぎるレナのツッコミにいろはは苦笑いしつつ首をかしげ、悪魔とかえでは完全放置で話を進める。

 

「では具体的な動きを指示する。まずレナは魔女の攻撃に専念し、いろはとかえでは魔女の攻撃を捌き、使い魔の乱入を妨害する。ある程度レナが攻撃を加えた後に、オレが魔女に隙を作るような一撃を叩き込む。それに合わせてレナはマギアを発動してくれ。狙うなら魔女の頭部が最良だろう」

「っ……なによ。随分と偉そうに仕切っておいて、要は力押しじゃないのよ!」

「そうだ。今まで策を弄することなくゴリ押しで戦ってきた魔法少女にとっては非常に分かりやすい作戦だろう?」

「なっ……!」

 

 とつぜん煽られたレナは不快感をあらわにし、いよいよ悪魔に対して犬猫のような威嚇を始める。

 対する悪魔は彼女の性格をこの短時間で理解したのか、ひょうひょうと受け流していた。そして懐から新品のグリーフシードを取り出すと、嫌がるレナ、大人しいかえでといろはのソウルジェムを浄化して回る。

 

「これでよし。準備が完了次第、作戦を開始する。文句がある奴はオレを無視して砂場の魔女を一人で倒せばいい」

「っ────言われなくても!」

 

 水波レナは走り出し、一人で砂場の魔女に向かっていく。それに驚くいろはと、呆れるかえで。

 

「えっ!? ちょっと待って! 一人は危ないよ!」

「レナちゃん……気付いているのかな……今の絶対、悪魔さんに誘導されてたことに……」

 

 作戦に肯定的な目で見ていたのは環いろはと秋野かえでのみだった。対する水波レナは作戦に懐疑的な目をしており、悪魔の仕切るような物言いにふつふつと不満を募らせていた。

 

「何も問題はない。作戦開始だ」

 

 悪魔はグローブを匣の中にしまうと、刀剣作成魔法で一本の日本刀を作成する。そして左手中指のリング(水野武薫のハーフリング)から青色の炎を灯して時雨蒼燕流の構えを取り疾走開始。

 

 そこでかえでといろはが呟いた。

 

「あのレナちゃんが、あんなにうまく乗せられるなんて……結局一緒に戦う構図になってるし……」

「悪魔さんって、ああいう子の扱い方うまいんだ……」

 

 子(・)供(・)慣(・)れ(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。そう感じたかえでといろは。

 そして場に残された二人はお互いの顔を見合わせると、戦いへの決意を固くするように頷いて共に駆け出した。鳥より早く、音より早く、あっという間に悪魔を抜き去った二人は、砂場の魔女と戦闘するレナと合流し、そのサポートに徹した。

 

   †

 

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