アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
灼熱地獄と化したゴーストタウンの北端では、環いろはと日向カガリが戦闘していた。全員が生き返るまで時間を稼げば良いと考える環いろはは、殺さず生け捕りにしようと考える。その甘い考えに日向カガリは助けられていたが、捕まるくらいなら魔女化してやろうと神浜市郊外に向かっていた。舞台は森林での戦闘に映る。
ちなみに伊勢崎隼人は山の麓から頂上を仰いで戦局を見守っていた。
ふと、その隣を通過する紫色の影。
「待って! それ以上先に行ったら魔女化しちゃう……! もうあなたのソウルジェムが……!」
「あはっ! じゃあ殺せばいいじゃん! このまま私を生け捕りにできなかったら、どのみちスズネちゃんと変わらない人殺しだよ、あんた!」
「……っ!」
どれだけ挑発されたからといって命までは奪えない。だが殺る時には殺るしかないのだろう。しかし今はその時ではない気がする。ほかに方法がある。その可能性を環いろはは模索し続ける。
次の瞬間、木陰から増殖魔力が爆発した。
(え! まさか────
日向カガリは、あらかじめ逃走用経路に罠を配置していたのか。
「そのまま死んじゃえ!」
逃げ腰は見せかけだった。日向カガリは容赦なく環いろはを罠に嵌めて殺そうとする。接近するまでもない。小石に増殖魔力を注入。本来なら個数が殖えるか面積が増えるかだが、コツによっては内部破裂効果を付与できる。それは天乃鈴音の戦いぶりを見て学んだことだ。
桃色のソウルジェムを狙って投擲する。当たれば増殖魔力が流れ込んで破裂する。環いろははトラップに陥って回避できない。
「しまっ────!」
「いろは! 遠くても油断するな!」
不意に上空から深月フェリシアのハンマーが打ち下ろされる。同じ闇属性の魔法少女として、その戦い方には覚えがあったのか、環いろはをピンチから救出した。
「え、フェリシアちゃん!? 死んだはずじゃあ……!?」
「あぁ! 実際死にかけた! でもギリギリ死んでなかったんだ! けどトドメを刺しに来られると困るから忘却魔法を掛けてやった! するとオレが死んだと勘違いして、気持ち悪い方の天乃鈴音は去っていったんだ!」
「そうなんだ……とにかく生きてて良かった!」
深月フェリシアはゴールドフィンガーというスタンドの性格に助けられていた。もし相手が本物の天乃鈴音だったら、抜け目なく死体撃ちで生死を確認されてトドメを刺されていただろう。しかし一回、本物の天乃鈴音に見つかっても殺されなかった事を考えるに、深月フェリシアの忘却魔法がゴールドフィンガーを通して天乃鈴音にも効いていたのだろうと推測できる。
「でも、なんでこっちに!?」
「あいつと戦闘してるのが見えたんだ。オレは傭兵だろ? いろはたちを守るのがオレの仕事だ。だからもう誰も殺させねぇ!」
深月フェリシアは跳躍する。日向カガリは二人の
(やっぱり、こっちの射程距離を完全に見切られてる……! 鈴音さんのことをずっと監視していたようだし、それで戦闘経験の目は肥えているのかも……)
(だったら無理やり近付くまでだ!)
深月フェリシアは咆哮を上げて必殺魔法を行使する。巨大ハンマーが地を叩き、軽い土砂崩れが発生。
「なっ……! これだから量産型ゴリ押し系魔法少女はツマンナイんだよね! スズネちゃんみたいにもっとアタマ使って戦ったら!?」
「うるせぇ! アタマなら使っただろうが! 行け、いろは!」
「うん! 射程距離内に入ったよ……カガリさん!」
土砂崩れに足を取られた日向カガリは地を滑り、知らぬ間に環いろはの射程距離に入っていた。速射。日向カガリの肩を撃ち抜く。
「────ッ!? チッ……ソウルジェムを狙えばいいのにさ! ホント甘ちゃんだよね! でもそのおかげで神浜市の結界境界線から外に出られる! はい、あと一歩で魔女化だぁ!」
「そうは問屋が卸さないってね」
黄色い電流が樹木を伝って迸る。感電した日向カガリは動きが一瞬停止、そこに不可視の斬撃が首を獲る。トドメにソウルジェムが破壊されて、驚愕する日向カガリは訳も分からず殺された。
「え────」
「なんだ!? 何がどうなってんだ!?」
困惑する環いろはと深月フェリシアを置いて、加賀見まさらと遊佐葉月は撤退する。特に挨拶を交わす理由もない。諸悪の根源は断ち切った。あとは悪魔の話が本当であることを信じて帰還するのみである。
その時、ゴーストタウンの中心から極限の光が解き放たれた。
世界を包み込む赤燈色の光────それは生を願うふたりの少女が遺した、贖罪の片道切符。
†
一方その頃。黒江は常闇騎士団構成員の救助活動を終えていた。トンネル崩落で生き埋めになっていた魔法少女や、ドッペル化して倒れていた子を助けていたのだ。それも終わり、急いで山を駆け上がる。
「みんな普通に生き埋めになった子たちを無視していくから驚いちゃった……それもこれも環さんがおかしくなっちゃったのと同じ理屈なのかな……? みんな程度の差はあるけど、やっぱり復讐に急ぐあまり、ちょっとおかしくなってた気がする……」
頂上に到達。眼前の景色に唖然。真っ赤な大地。亀裂からマグマが噴き上げる。なんか熱いなとは思っていたが、まさか山を登りきったら地獄がこんにちはするとは予想だにしていなかった。
「な、にこれ……み、みんなは……!?」
黒江は滑るように下山して地上に到達し、こけそうになりながら走り続ける。
(はぁ、はぁ……! く、空気が……酸素が、少なすぎる……! すぐ息切れしちゃう……!)
最高気温70度を越える高熱の大地。
まさにサウナのような空間を走る黒江は、汗だくの体でキョロキョロと辺りを見渡す。
「────? あの人影……悪魔さんだ!」
急いで駆けつける。すると反対方向から環いろはと深月フェリシア、伊勢崎隼人が走ってきた。全員悪魔のもとに集う。
「悪魔さん! みんなを生き返らせることに成功したんですね! あちこちから魔力パターンが復活しているのが分かります……! やちよさんのも……!」
「すげぇな。悪魔ってそんなことできんのか……」
「えっ……それじゃあ、あいみも!? あいみも生き返ってるのか!?」
悪魔は両手と両膝を土につけて微動だにしない。その様子が気になった黒江は傍らに寄り添う。
「……悪魔さん?」
「あの、悪魔さん。また助けられちゃいましたね……鈴音さんも被害者だっていうことが分かりましたし、カガリさんは残念でしたけど……改めて。みんなを生き返らせてくれて、ありがとうございます! ……あれ? でも、鈴音さんはどこに……」
悪魔は震える声で否定する。
「こんな下世話な結末で礼を口にするな。死にたくなる」
何が救いだ。何が死者蘇生だ。生死は貴重なものであるべきだ。でなければ現代的な倫理観が損なわれていく。でなければ人間性が喪失崩壊していく。女を犯して救われる方がちゃんちゃらおかしい。たとえ詳細な交渉の上で同意のもとであったとしても、それは
「ふざけるな……」
「────悪魔さん……」
この中で悪魔契約の内容を知る黒江は、悪魔の苦悩を理解する。
かくして戦いは終息した。本日の死者は天乃鈴音と美琴椿、日向カガリの三名である。こうして悪魔は、また
完