※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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第4章 孤独塔電脳姫 アイ・ディ・ソリトゥディネ ‐ひとりぼっちの人工世界‐



第4章 孤独塔電脳姫 アイ・ディ・ソリトゥディネ ‐ひとりぼっちの人工世界‐
5月10日【私、明日から悪魔さんを捜しに行こうかなって】環いろは


 

 夜のみかづき荘にて。庭に座って星空を眺める環いろはは、今までの出来事を振り返る。

 

          …

 

 “キリサキさん”こと天乃鈴音、そして黒幕の日向カガリによる魔(・)法(・)少(・)女(・)連(・)続(・)殺(・)人(・)事(・)件(・)から早くも三日が経った。

 

 殺された魔法少女たちは突として生き返り困惑。天乃鈴音に暗殺された瞬間の記憶を保持する者は、最初は単なる悪夢かと思っていたが、周囲の魔法少女の反応を見て、自分が死んだのは事実だと悟る。たった二日で100名以上の死者を出し、それを遥かに上回る数百名の魔法少女(一般人や魔法生物を含む)が一斉に生き返った謎の大事件は、関東一帯の魔法界に“救済の悪魔のうわさ”として広まった。

 

 死亡が報道されていた魔法少女は、その死亡報道そのものが無かったことになっていた不思議。

 しかし一般人の記憶が書き換えられただけで、魔法少女たちの記憶までは書き換えられていない不思議。

 つまりそれは魔法少女を除く歴史の改竄(かいざん)にほかならない。

 

 そのワケを環いろはは知っている。天乃鈴音との最終決戦で最後まで生き残り、日向カガリの陰謀を直(じか)に聞かされた環いろはは知っている。それは悪魔も同様。だが彼は戦いの後すぐに行方をくらましてしまった。

 

 事の経緯は次の通り。

 

 世界に極光が広がり、莫大な魔女反応が一瞬で消失したあと、各地で魔法少女の魔力パターンが続々と出現し、天乃鈴音と日向カガリに殺された魔法少女が一斉に蘇った。すると蘇生者たちは、戦いを最後まで見届けた環いろはに、いったい何があったのかと質問攻めを始める。環いろはが困っていると、そこに七海やちよ・都ひなの・和泉十七夜(エッダ)が到着した。そして、まずは休憩を取り、神浜市の代表者が環いろはから事情聴取し、その内容を後日正式に伝えるという話で騒ぎは落ち着き、全員帰路に着く。

 

 環いろははワケを話す。日向カガリの陰謀。悪魔と天乃鈴音の“悪魔契約”により大量の死者が蘇生したこと。すると神浜市の代表者は長い相談の末、ソウルジェムの真実や魔女化については、うまく伏せた上で発表した。その内容は木崎衣美里によってまとめられて“神浜魔法少女SNS”でも拡散されたという。

 

【キリサキさん=天乃鈴音による魔法少女連続殺人事件は、日向カガリの記憶操作魔法による陰謀が発端となった出来事である】

【関東一帯で多くの魔法少女が殺された悲劇的事件は、悪魔と名乗る少年の手によって救済された】

【手段は不明だが、悪魔と天乃鈴音が不思議な契約を結ぶことで、天乃鈴音と日向カガリに殺された全ての魔法少女が蘇った】

【そして環いろはたちの活躍によって、元凶たる日向カガリは打ち倒された】

 

 そうして簡潔な情報を伝えた。────はずだが、神浜市は話に尾ひれが付いて広まりやすい風土があるのか。発表の翌日から“救済の悪魔のうわさ”が流れ始めた。しかも神浜市を飛び出して、それは関東一帯まで広まったという。

 

【悪魔と名乗るキュゥべえを連れた少年は、契約を交わすと死者を蘇らせてくれる】

【東北でも悪魔と名乗るキュゥべえを連れた少年を目撃した。関西でも目撃例があるらしい】

 

 今まで流れていた“魔法少女を助けてくれる悪魔のうわさ”と混ざって広まったうわさ。その影響は、まさかのみかづき荘まで波及してきた。どこで情報を掴んだのか、悪魔を捜してみかづき荘に訪問してくる魔法少女が現れ始めたのだ。

 

 応接に出る七海やちよは決まって「あの子はもうここにはいない」とだけ言って追い返していた。そして七海やちよが不在の時、代わって応接していた環いろはの知る限りでは、“保澄雫”や“入名クシュ”という魔法少女が訪れた。悪魔の所在は分からないと返すと、ふたりは「諦めず捜す」とだけ告げて夜の街に消えていった光景を、環いろははよく覚えている。

 

 といっても訪問者の種類はそれだけではなく。悪魔に一言、生き返らせてくれたお礼を言うために訪れる人もいた。チームももこがその筆頭であり、ほかにも竜城明日香と美凪ささら、千秋理子とアシュリー・テイラー、和泉壮月と八雲みかげ、綾野梨花と木崎衣美里、伊勢崎隼人と江利あいみ。さらに夏目かこ、御園かりん、七瀬ゆきか等といった数え切れないほどの人々が訪れて、みかづき荘の面々は一気に知り合いが増えたことに戸惑いつつも、仲間が増えたみたいで喜ばしく思っていた。

 

          …

 

 そうして日が経ち、現在に至る。

 

「……悪魔さん。今どこで何をしているんだろう……」

 

 もう寝る時間だ。風呂上がりに冷えたら風邪を引く。屋内に戻った環いろはは、環ういを抱き締めてお姫様抱っこし、万年桜やリリスを連れ立って寝室に向かう。天乃鈴音のスタンド能力によって多少行動が操作されていたとはいえ、妹をロープで縛り付けるという非道な行為を働いてしまった。それについて環ういはもうなんとも思っていないが、環いろはの良心がそれを許さない。これは連日かけて妹を可愛がり、贖罪を果たすほかないだろうと、環いろはは鼻息荒く環ういをベッドの上に押し倒す。

 

 こしょこしょ攻撃と環ういの笑い声が、みかづき荘に響き渡る。取り戻された日常、その平和は尊いものだ。しかし、こうしている間にも、悪魔はどこかで自分を犠牲にし、誰かを助け続けているのだろう。それを放っておいて良いものか。みかづき荘から追い出したところで悪化するだけではないのか。誰かが歯止めにならないと“確殺賭博場ミネルヴァのウワサ”の時のように、また無茶をするのではないか。

 

 環いろはは思い悩む。

 どうして七海やちよは悪魔を追い出したのか。その本当の理由を知りたい。

 どうして悪魔はそこまで他人のために戦い続けるのか。その本当の理由を知りたい。

 この二人を仲直りさせることはできないのか。再び悪魔に師事したいという私欲もあるが、それらのためにも今こそ行動を始めるべきではないのか。七海やちよの顔色を窺って萎縮するばかりでは事態は好転しない。マギウスとの戦いも迫っている予感がする。再びキリサキさん(日向カガリが操る天乃鈴音)のような殺人鬼が現れた時のためにも、悪魔は必要な存在だと思う。なにより同じ家に住む仲間なのだから放ってはおけない。

 

「……お姉ちゃん。どうしたの? 何か悩み事……?」

「ううん。ただ……私、明日から悪魔さんを捜しに行こうかなって考えてて……」

「……」

「やちよさんは嫌な顔するだろうけど……このままじゃ何も変わらない気がするから」

「そっか……うん。いいと思う。わたしも手伝うよ!」

「ありがとう、うい」

 

 環いろはがおやすみのキスをすると、万年桜がスイッチを押して消灯し、リリスと共に二人が入る布団へモゾモゾと潜り込む。小さな笑い声。それは次第にしずまり、やがて四つの寝息となった。

 

          †

 

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