アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
七海やちよは誤解している。
仲間が死んだら、その仲間の魔法や魔力が使えるようになる現象をネガティブに解釈し、自分は仲間の魂を殺して喰らっていると思い込んでいる。故に自分の固有魔法は《犠牲成就》なのだと言い張る。他者の命を喰らい成長する、悪食の魔女なのだと。
それに対して悪魔は反論する。
今まで、このことを話しても拒絶されてしまい、相手の心を掻き乱すだけで絶望させるだけだと直感し、静観していたが……こうなっては荒療治も辞さない。
「やちよ。お前に、本当の魔法を教えよう」
QB魔法とは、本質的には希望の具現化だ。
QB魔法界にとって、魔法とは希望の象徴。
いかに魔女化促進のため皮肉的な願いの叶え方がされるとしても、QB魔法のシステムは原則、形のない“希望”という概念を雛形とすることで、四次元時空のプレーンに希望という因果物質をくり抜く技術体系だ。
されど希望と絶望は表裏一体。故に七海やちよの言う通り、そんな
「どんな気高い信念も、死ねばゴミのように扱われる。崇高な者がその信念を受け継いだとしても、生物にとって死は切り離せない。全ては繰り返す水の泡だ。けど、ここに例外がある────やちよが持っている魔法はとても素晴らしくて、決してゴミにはならない奇跡なんだよ」
負ければゴミ。死ねば綺麗事はゴミに変わる。
しかし、ここに希望がある。死んでも受け継がれる意志は、やはり継承者に偉大なる力を授ける。
「理子がいれば楽だったんだが……今ここに召喚魔法の使い手がいないため、今だけはTP魔法界の魔術基盤を借りる。オレの技量では施術魔法でも魔術回路は作れないが、オレは魔法遺伝子を持つから魔力血管くらいは作れるだろう。別に回路を作らなくても基盤にアクセスはできるが、郷に入っては郷に従え。それ以外のやり方で失敗するのも怖いからな────」
「悪魔……あなた、なにをしようと……?」
「努力と研鑽と……旅で得た知識の賜物さ」
七海やちよが自身の魔法の真実に気付けば、すぐに自身の固有魔法がなんであるかを悟って使いこなせるようになるだろう。その手伝いをするために、今ここで証明するのだ。
「七海やちよ。お前の、真の魔法とは────」
────固有魔法・
(そして、固有魔法から派生させた派生魔法で────《英霊召喚》を行使する!)
悪魔は《施術》で魔力回路を作成。とある詠唱を以て魔術基盤《召喚》に
ただし、七海やちよの心に響くように、かなり簡略化させて。
「────素に
悪魔の足元に、虹色の魔法陣が展開される。
「捧げられた
故に斧たる
神代。テクスチャの垣根を乗り越えて活躍した、QB魔法界の戦乙女たち。
主神ゼウスはインキュベーターを改造してソレと成り代わることで、割れた頭から娘を産んだ。
大神オーディンはインキュベーターを改造してワルキューレを発明し、ラグナロクを招来した。
聖堂教会はその事実を封印するため、大神を悪魔と吹聴し、
「
閉じよ、未来。満たせ、絶望。
繰り返す都度に永劫。ただ連鎖の
立ちのぼるエーテル粒子は緑と紫に光り輝き、橙と青の旋風を交差させる。
「────
汝の身は継承者の下に、継承者の命運は汝の剣に。
運命の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
語りかける。七海やちよのソウルジェムに宿る“魔法英霊”たちに。
「誓いを此処に。
継承者は常世総ての善と成る者、
継承者は常世総ての悪を敷く者。
汝、希望の継承を纏う七天、
継承者の正負を
七海やちよの手を取り、優しく握り締める。
「汝らは誰知られざる奇跡の
天秤でなく、名も無き民の幸福を願った普遍の少女」
魔法陣が回転する。その勢いは加速度的に高まり────
「いざ 円環の理より来たれ
取り戻すべき 日常の守り手よ────!」
────七海やちよの青い三日月型ソウルジェムから、二つの影が颯爽と飛び出す。
緑色の火花を散らし、紫色の煙雲を払う二人は、たしかに七海やちよの眼前に雄々しく立っていた。
「────────」
しかし、それは、都合のいいマボロシではないのかと、七海やちよは疑う。
直後、真燃ミトが七海やちよ達に襲いかかる。鼓星かずみをはじめとする敵は仲間に任せたのか、赤いバラのトゲ付きツルをムチやロープのように操り、さらにツルを巻き絞ることで
「《
奏でるは金属音。紫色の魔法少女は、黒煙立ちのぼるパイプで迎え撃ち、魔力の火花が散る。
続けて刺突音。緑色の魔法少女は、多数のタロットカードを投擲し、敵の体に全弾命中させた。
すかさず悪魔が飛び立ち、真燃ミトを蹴り飛ばして戦場を移動する。真燃ミト……その外見は巴マミに似ている。鼓星かずみたちが敗北するのも当然だ。この複製魔法少女だけは、悪魔が相手しなければ務まらない。
そして二人の魔法少女は、それぞれ黒紫と白緑の魔法衣装を着ており、敵を見据えながら七海やちよを守るべく背中で語る。
「やちよ……やっと、会えたね」
「待ちくたびれましたよー? いろはさんと悪魔さんが居なかったらどうなっていたことか」
────声を聞いて、七海やちよは確信した。
彼女たちは正真正銘、雪野かなえと安名メルだと。
たとえ本人たちの
「うそ……かなえ……メルなの……? これ、夢じゃ、ないわよね……?」
「ウソなものか。私たちはやちよの中にずっといた」
「死んでるのは事実ですけどね。でも私たちの希望は、しっかりとやちよさんが受け継いでくれていたんですよ」
魔法とは希望の証。その希望が継承されたという事は、雪野かなえと安名メルの固有魔法が、七海やちよに継承されているのは当然と言える。
「魔法は、魔法少女がいなきゃ始まりませんから」安名メルは振り返り、にっこりとした笑顔をはじけさせる。
「奇跡も同じ。願ったから、私たちは此処にいる」雪野かなえは振り返り、久しぶりの再会が恥ずかしいのか目を逸らす。
「……っ!」
「あ、言っておきますけど、ももこさんもいますよー。今回は召喚されなかったみたいですけど」
「絶交階段で一度死んで、やちよに託したみたいだから。今は生き返っているみたいだけど。なんか、おかしいね」
「天乃鈴音に殺されたことで、またももこさんが来た時はびっくりしましたよ。普段のももこさんと、なんかシスターなももこさん、二人のももこさんがいるんですよ! なんじゃこりゃー! って、最初はなっちゃいました!」
「でも、みふゆは殺されても来なかった。やちよに希望を託さなかった。それはきっと、やちよに頼らず、ひとりで自立するため頑張ろうとしていたからなんだと思う。……たぶん」
雪野かなえと安名メルは、まだまだ言いたいことは沢山あるが。
今は七海やちよを守るため、敵に立ち向かう道を選ぶ。
「さて、とにかく。やちよさんをいじめる奴らは許せませんね」
「もっと話していたいけど……やちよの道は、あたしたちが切り開く。そのためなら死んでも本望」
「それで死んで悲しませちゃうのは悪いと思ってますけどね……でも、どうしようもない時ってあるじゃないですか」
「だからやちよも、そろそろ吹っ切れて。やちよがいるおかげで、私たちはこうして死んでも、やちよのために頑張れるんだから……」
「つまり、私たちの死は無駄じゃなかったんです」
「こうしてまた、やちよを守れるんだから」
七海やちよは嗚咽を噛み殺す。
「あ、でも、あとひとつだけ! いくら大昔のことだからって、自分の願い事を間違えちゃいけませんよ!」
「みふゆから聞いたことがある。やちよは《一番になりたい》とは願ってない。ニュアンスは近いけど……ここ重要だから……。……やちよの、本当の願い事は────」
『────《リーダーとして生き残りたい》────』
「ですよ、大好きな私のリーダー」
「……。あたしたちの、リーダー……」
七海やちよは声にならない声を吐き出す。
「かなえ……メル……っ!」
「モデルさんなのに、ぐっちゃぐちゃな鼻水顔ですねー」
「整えたら来て。指示も欲しい。スタンドとか、よくわからないから……」
雪野かなえと安名メルは飛び出し、劣勢の悪魔に助太刀する。
「────やちよさん」
「っ! い、いろは……わたし、私……!!」
「あ、あの! これで、涙、拭いてください……」
暁美ほむらからハンカチを受け取った七海やちよは、しっかりと涙を拭い、今までの醜悪な姿を振り切って、眼光閃き前を見る。
「やちよさん!」
「────迷惑かけたわね。でも、ちょっと待って」
「あ……ソウルジェムが……!?」
暁美ほむらが叫ぶと同時、七海やちよの真っ黒なソウルジェムは瘴気の臨界点を突破した。雪野かなえと安名メルを目にして、言葉をもらい、自らの固有魔法が希望継承であることを悟って、絶望から希望へ一気に流れるものと思ったが────英霊召喚はそれだけで莫大な魔力を消費し、それが二騎ともなれば一気にソウルジェムは濁ってしまう。
しかし七海やちよの気持ちは晴れやかだった。魂は真っ黒で、瘴気により肉体が蝕み、痛覚遮断しても抑えきれない痛みが魂を襲うはずなのに────七海やちよの魂は、絶望から希望への相転移を遂げながら、暗黒に光り輝いていた。
「危険だから退いて。……まだ駄々を捏ねているわけじゃないわよ。これから希望のドッペルを出す」
「希望の……?」
「ドッペル……」
本来魔法少女は希望から絶望への相転移エネルギーを発し、その係数分だけ魔女としての強さが増して魂が穢れ、魔女化する。だが七海やちよは、その逆をやろうとしていた。すなわち絶望から希望への相転移エネルギー。それはなかなかお目にかかれない事態だ。この貴重な体験を堅固な力に変えるべく、ただドッペルを出すだけではなく、希望の力にしてやろうと意気込む。
「私の固有魔法は《希望継承》────だったら、
「やちよさん……!」
「……!」
雄々しい啖呵を切る。いつもより調子のいい七海やちよが戻ってきた。
その時、状況を静観していた複製魔法少女・カナエが告げる。
「そろそろいいだろう。──俺は悪魔を殺したい。アリナ・グレイも始末したいため、人質に御園かりんが欲しい。ロココ、火神、その戦闘を切り上げて手伝え」
『
「七海やちよは危険だ。アスカ、ナホ、ミトの三人で相手しろ」
『了解っ!』
「サヨコは好きに暴れるといい」
「言われるまでもねえや!」
悪魔と戦闘していた真燃ミトが引き上げる。代わりにカナエが接敵。ロココと火神は御園かりんを追い立ててアリナ・グレイと接敵。双方の戦場が合流する。
一方、七海やちよはモギリのドッペルを発現した。初めて前向きな気持ちでドッペルを使用したことで、心なしかランタンの赤い灯りが旅立つ者を見送り、時に迎え入れる暖かな光のように周囲を照らし出す。
ドッペルの欠点はその高い依存性だが、どうやら絶望から希望へ移ろう中でのドッペル化は、その欠点が帳消しとなるようだ。その代わり全体性能は著しく低下する。だが、どれだけ火力が超一流でもコントロールできなければ三流にも劣る。特に技巧派の七海やちよにとって、全体性能の低下はもはや弱点にならず、完全制御下に置いたドッペルを駆使することで無双すら尽くすだろう。
「悪魔、そっちは任せるわ! ──いろは、ほむら、力を貸してくれる?」
「もちろんです!」
「はい!」
「かなえ、メル! 合流して!」
「了解です!」
「了解!」
気がかりなのは宇木倉サヨコと戦う鼓星かずみ、綾野梨花、入名クシュの戦場だが────
「気にしないで! こっちはなんとか持たせてみせる!」
鼓星かずみの必死な声が叫ばれる。七海やちよは、その仲間の言葉を信じることにした。
「かずみたちに助太刀するため、最短でケリをつけるわ! 気を引き締めて!」
『
かくして七海やちよが復帰し、カナエが指揮を執り参戦したことで、本格的な戦闘が始まる。
真の死闘の幕は、今こそ切って落とされた。
†
一方その頃。二葉さなは、名無し人工知能のウワサ・アイと眺めていた。
環いろはとアリナ・グレイの戦い。
悪魔の言葉と、悪魔から貰った鍵。
七海やちよの絶望から転じた希望。
「……あの人たち、すごい……」
「あれが人間の可能性です。しかしマギウスは、その可能性を摘み取ろうとしている」
「魔法少女至上主義……だっけ?」
「はい。結局それは羽根たちに言うことをきかせるための方便であり、マギウスの目的は、ただ私欲を満たすこと。里見灯花は宇宙の開拓を、柊ねむは宇宙を物語ることを、アリナ・グレイは宇宙をアートにすることを」
「……マギウスや翼の幹部たちが、自分勝手な人たちだってことは、このウワサの中に居たことでよくわかってた……でも私は、特に何かしようとは思っていなかった……ううん。なにかしても、何もできないって……思ってた。勇気が、なかった……」
しかし二葉さなは今、胸に熱いものが込み上げている。
「さなは優しいですから。優しさの定義が、困っている人を放っておけない事なら……さなは、困っているワタシを助けてくれました」
「アイちゃん……」
二葉さなの胸元に秘められた魔法の鍵。それは今の今まで怖くて使えなかった。心の準備が整うまで時間が掛かった。でも、それを悪魔は許してくれた。きっと、ほかの魔法少女も、二葉さなの参戦は期待していない。当てにしていない。そもそも忘れてるかも。なぜなら二葉さなは、透明になりたいと願った女の子なのだから。
「それでも……取り返せるかな」
「はい。あの人たちなら、きっとさなに居場所を与えてくれます」
「じゃあ……アイちゃんは?」
「……」
「アイちゃんは……私と居たい? 私と生きたいって思わない? 私と一緒に……あの人たちのところに行きたいって……」
「…………」
二葉さなは応えを待つ。それが、自分の理想通りだったらいいなと思って。
「────ワタシは……やはり、狂った人工知能ですから────」
でも、環いろはは頑固だった。悪魔は頬をひっぱたいた。七海やちよは、前を見た。
「選んで」
「────え?」
「このまま消えちゃうか、私と生きるか!」
「……さな……」
アイのホログラムが揺れる。
「その質問は────とても、卑怯です……」
「応えてっ!」
二葉さなは願うように叫ぶ。
対するアイは────合理的な言葉を並べるべきだと考えつつ、感情的な言葉を吐き出した。
「言語系の乱れを検知。あゝ、コレガ……胸ガ震エルト、言ウノデスネ……」
「アイちゃんっ!!」
感傷的になればなるほど、それが感情だと自覚すればするほど、なぜか発話プログラムが不具合を示す。
それが、人は泣きたくなると声が震える、という現象と同一なのだと気付いて────
「サナ……ワタシハ────サナト、イキタイ……ッ!!」
二葉さなは、アイの胸元に、
†
ウワサ空間が轟然と震撼する。
『っ!?』
それぞれ困惑する中、悪魔が理由を述べた。
「さながアイを、ひとりぼっちの最果てのウワサから切り離した! ウワサの構造体を支える頭脳が失われた今、電波塔のウワサ空間が空中分解を始める! 船で例えるなら竜骨が引っこ抜かれたのと同じことだ。崩壊まで時間は掛かるだろうが、なるべく早く脱出した方がいい! 焦らずケリをつけろ!」
もしや悪魔はこの展開を見越して、別働隊たる
「ウワサ空間の崩壊か……ならば、
「!?」
悪魔は直感する。
マンドムファミリーのボスたるカナエは、ひとつの成功から確信を得た陶酔の戦闘狂であると。
†
────ふたりの囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。ひとりは泥を見た。ひとりは星を見た。
雪野カナエは複製魔法少女である。鏡の魔女の使い魔によって“雪野かなえ”から複製され、柊ねむのウワサによってペルソナカードを埋め込まれた、マギウスの忠実なる兵士。不滅の兵隊の
複製魔法少女はオリジナルと真逆の性格になる。が、そもそも“真逆”とは何か。どの方向から真逆だとモノを言っているのか。
中でも
暗闇の実験室。手術で無理やり埋め込まれたペルソナカードに拒絶反応を示し、絶命する複製魔法少女の数は一日に百を超える。マギウスの駒となる
複製魔法少女は死ぬと魔力の残滓となって跡形も残らない。故に死体の清掃をする手間が掛からず、実験が失敗すれば余韻もないまま、速やかに次の実験へ着手する完璧な流れ作業が出来上がっていた。助手としてその手伝いをスピーディーにこなしていた987号は、
オリジナルの雪野かなえの記憶を持っていても、今の自分は別人として造り出された。自分は、鏡の魔女の手下が生み出した精巧なる人形。道徳というものは端からなく、感性も非人間的と自覚。主体性がなく、ただ
自分はそうあるべき存在だ。なぜなら生まれつきそのように始まっていたのだから。
なので、987号は考え始めた。
マギウスに従う気はない。だが逆らう気もない。マギウスの理念は執念的で合理的だ。ただ我欲を満たすべく他の魔法少女を有効利用しており、外敵を排除するべく魔法軍隊を作成している。特に自らが仕える秘匿研究部署の複製魔法少女スタンド使い製造工場は合理の極みだ。まず、ひとりの複製魔法少女を生み出すためには多くの魔力を必要とする。何度も生み出せる代物ではない。そこで死体となり魔力の残滓となったソレを、幸福の魔女の性質・回収の力で効率よく還元し、通常より少ない魔力で新たな複製魔法少女を生み出し、実験の流れ作業を執り行い続ける。その完全無欠の合理性に、987号は一種の美さえ感じた。
ある日、987号は
────マギウスは自分の好き勝手に生きている。なら、なぜ俺は好き勝手に生きることを許されない?
────そして、薬を打たれて苦しんで死ぬ1歳のモルモットのように扱われる複製魔法少女の現状に、マギウスの執念と合理性を理解し許容できても……納得までは示せなかった。
もし自分が実験に失敗して死ぬ
987号は、当然のように自らの名を欲した。いつからアイデンティティが芽生えてきたのだろう。やかんが徐々に沸騰するのではなく、見えないところで溜まっていたマグマのふきだまりが突然爆発して噴火を起こすように。987号は雪野カナエと名乗った。そして知り合いの複製魔法少女を勧誘する。やがて、それを告げ口する者が現れ、雪野カナエとその仲間たちは監獄に収監された。
暗闇の牢屋の中で、命輪は泥を見ていた。雪野カナエは自分に対して罵詈雑言を吐く仲間たちを見ていた。非常に感情的でくだらない論争だ。合理を美として好む雪野カナエは、いつの間にか星を見ていた。自由と納得を手に入れるためには、お行儀が良くてもいけない。なにがなんでも目的を遂行する“覚悟”が必要だと悟った。
それは、黒い……とても黒い覚悟だった。
雪野カナエの行動は早かった。仲間の足を引っ張る存在をいの一番に切り落とすべく、その体にペルソナカードをぶち込んで五体を爆発させた。牢屋の扉が吹き飛ぶ。スタンドは強い精神力がなければ発現しない。雪野カナエは自らの体にペルソナカードをぶち込んでスタンドを発現した。その力で立ち塞がるモノを全て殺してきた。
そのおかげで雪野カナエは自由を手に入れた。
初めて目にした太陽は、燦々と光り輝く道を照らしてくれた。
†
「覚悟が人を成長させるッ! 納得が歩むべき道を見つけ出すッ! 俺は学んだ! 数多の死を見て“自らに試練を課す事こそが己の正義”なのだと知った! 故に問おう。悪魔、貴様は────俺の太陽を
カナエは期待するように鉄パイプを奮う。その右手の指に嵌められたリングからは大空の炎が燃え盛っていた。殺した
「ロココ!」
「《
カナエの指示に呼応して、ロココがスタンドを発現する。直後、悪魔たちは別次元の空間へと移送された。
†