アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
ウワサ空間。七海やちよ率いる“みかづき荘”のメンバーが死闘を演じる。
敵は三人の複製魔法少女。アスカ、ナホ=キッツー、真燃ミト。スタンドは────
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「はぁああああ!」
ドッペルやちよと真燃ミトが激突を繰り返す。手繰るは青槍。結ぶは薔薇槍。切り刻むは巧みな武練。技量は七海やちよが上を行くが、出力差は若い真燃ミトの方が上を行く。
「本気の殺意って怖いね……《装甲無視》!」
「こんなの普通の女の子には厳しいですよ! 《未来誘導》!」
雪野かなえと安名メルは、アスカとの激突を繰り返す。鉄パイプと薙刀の交差。投擲されるタロットカードは誘導魔力で正確無比にアスカの胴体を穿つ。その全てを技量ひとつで切り落とし、はたき落とし、アスカは高度な武練を見せつける。常に必殺。小手先の技も全てが必殺に繋がる奥義。装甲無視による被弾も、未来誘導による必中も、全て実力でねじ伏せる。
「速射! ほむらちゃん!」
「了解! ────起爆!」
環いろはと暁美ほむらは、ナホ=キッツーと戦っていた。全ての攻撃が太陽に引き寄せられてしまう状況を解決すべく、環いろはがヘイトを稼いでいるうちに時間停止でナホの足元に爆弾を設置していた暁美ほむらが起爆。しかしナホは晴の炎による活性で肉体を治癒し、負傷をものともしない。
そして、十分間の長い戦闘はとうとうスタミナ切れを引き起こし、七海やちよ以外の魔法少女に危機が迫る。
「うおおおおおお! 死ぬ気でみんなを守るぅううううううっっ!!」
そこへ姿を消していた悪魔が現れた。いつもと違うテンションで雄叫びを上げる悪魔は、死炎噴射による高速移動を使わず、がむしゃらに走って助太刀に向かう。
「いろはぁ! ほむらぁ! なぜ勝てないぃいいっ! 殺すのをためらっているのかぁあああ!?」
「っ……!」
「それは……」
「オレもだ! あくまで殺すのは最後の手段っ! しかし……現実は甘くない! オレは今まで誰かを守るために多くの命を殺してきた! むしろ守った命より、殺した命の方が多い! 誰かを守るために剣を執った者は皆、その矛盾に悩み苦しむことになる! だが! だからと言って手を抜けば殺されるのはこちらだ! 覚悟とは、そういう矛盾を乗り越えるためにあるッ! いつか矛盾を解決するため、迷いの末に自分の譲れないものを見失わないために! ────思い出せ! お前らの
『……っ!』
────環うい。鹿目まどか。周りにいる人たち。神浜市や見滝原市の人々。みんな……それに本当は、魔法少女の成れの果てである魔女だって……
「殺しの正当化と覚悟は違うッ! そして、それでも殺す覚悟がないのなら────オレが、全ての罪を背負う!」
「……え?」
「
環いろはは絶句した。その言葉が、どういう意味を持つのか想像して。
次の瞬間、アスカのスタンドが反応した。
「アアアアアン!? 嘘をつくのはその口かァアアアア!?」
「パニさん!? よもや悪魔の嘘を見抜いたのか!」
アスカの矛先が変わる。雪野かなえと安名メルにトドメを刺さず、悪魔の下に向かっていく。開匣。悪魔は妖刀を手に、アスカの薙刀とスタンドのラッシュを迎え撃つ。
「遵守しろ……貴様の規律を! 正義の反対はうそぶくことだ! 天秤は声の動揺に反応する! 貴様は今、考えながら話したな!?」
「そうだぁああ! お前のヘイトをこっちに向けるためにぃいい!」
「全ての罪を背負うが故に悪魔! それは今、お前が作ったウソだな!?」
「嘘じゃない! いま新しく思いついて、悪魔の由来に加えようと閃いたものだぁああ!!」
剣戟秒速八合。怒涛の斬撃が空間を轟かせる。
そこへさらにスタンドの連打が叩き込まれ、悪魔は徐々に押されていく。
「嘘を考えるのはそのド
直後、悪魔のスタンド・パーフェクトによる水分操作で、流血から取り出した水分を超圧縮して射出。ダイヤモンドすら削るウォータージェットがアスカの眼球を撃ち抜いた。さらに水を蒸発させて霧を生み出し、霧の炎と組み合わせることで姿をくらます。しかし野生の勘が冴え渡るアスカを、その程度の幻覚で騙すことは難しいだろう。故に悪魔は────
「そこだ!」
アスカの斬撃が悪魔を捉える。────が、薙刀は水の壁を断ち切っていた。
「なにっ!?」
「スネルの法則ぅう! 水による光の屈折で、矢印が逆方向を指しているように見える現象のように……! オレの位置関係をごまかしてみせたぁあ!」
それは時雨蒼燕流のうつし雨にも似た技。
スタンド・パーフェクトによる水の操作で可能とした、左右を逆に見せる水鏡。
さらに悪魔は、必殺の種を蒔いていた。
「なんのこの程度! ……っ! ぐぷっ……!?!?」
アスカの頭部が水の泡袋で覆われる。アスカは呼吸ができなくなり、もがもがと頭を覆う水泡を掴もうとする。スタンドのラッシュを決めるが、水分は弾かれてもすぐに収束して泡袋を形成し続ける。このままでは窒息するだろう。もう勝負は付いたようなものだ。悪魔は他の敵へ向き直り、全力疾走する。
「うおおおおお! 太陽のスタンド使いを倒すぅうううう!」
ナホ=キッツーの光球型スタンドに突っ込む悪魔は、雨の炎・空気中・流血に含まれる水分を嵐の炎で超直感的に分解し、重水素と三重水素を取り出して集束・融合させることにより────投擲。それは純粋水爆と似た化学反応を引き起こすことで────ナホ=キッツーは跡形もなく吹き飛んだ。キノコ雲が上がり周囲を壊滅的な爆風が襲う。
さらっととんでもないことをした悪魔は急ブレーキを踏んで方向転換。七海やちよの元に向かう。同時にアスカが窒息した。死体は魔力の残滓となって消えていく。
「うおおおおお! やちよぉおおおお!」
「
七海やちよは必殺魔法を行使する。
直後、真燃ミトはグレイブを下げると、今まで一度も使わなかった
「────っ! こいつ、やっぱり奥の手を隠し持っていた……!」
複製魔法少女は、オリジナルの魔法少女が持つ固有魔法を使える。それは七海やちよも常識として知っていたことだ。しかし真燃ミトはどれだけ追い込まれてもスタンドのグレイブしか使わなかった。なにかこだわりがあるのか、それとも固有魔法が使えない理由があるのか。いずれにせよ罠である可能性を考えていたが────よもや殺される直前まで隠していたとは、とんだ肝の据わった狐である。
「マミは中遠距離タイプだ! 唯一の苦手射程は近距離! だがそれもグレイブで補完されている!」
「言われなくても!」
「いろはぁあああ! やちよとコネクトだぁああっ!」
七海やちよと真燃ミトの必殺魔法が交差する。極限の魔力爆発。その圧倒的な爆風を脚力だけで支えきれるわけがない。当然悪魔は吹き飛ばされるが、対する環いろはは賦活魔法を行使して稲妻のように疾走。七海やちよの傍らに跳躍する。
「やちよさん!」
「っ!? いろは────!」
ふたりの手のひらが合わさる。黄色と青色の魔力が交わり、七海やちよの必殺魔法が途中から形を変えて放出される。
『
七海やちよは、悪魔と環いろはによって、自らの固有魔法が希望を受け継ぐものであると知った。
このコネクトは、その感動を共有し、象徴する魔法。
「私は! なにがなんでも生き残る! みんなを守って、みんなで生き残るためにっ! もう今までの私と同じとは思わないことね! 七海やちよはという魔法少女は、今ここで生まれ変わった! 今の私には、光り輝く希望の未来が綺麗に見えているっ!」
魔力極光。極限の魔法はオーロラを発生させ、眼前の障害を一切合切、吹き飛ばす。
「うおおおおお! かずみと梨花とクシュを守るぅううう!」
極大の爆風に吹き飛ばされて地面を転がりながら、悪魔はもう一方の戦場に向かっていた。ハイテンションながら常に合理的な選択を取り続ける悪魔は、やはりテンションが変わっただけで、価値判断はいつも通りである。
「────!」
しかし悪魔は、三人を助ける必要がないと直感した。どうやら
どうしようもない殺し合いという辛い現実から、彼女たちがどういう
それを、確かめるために────
†
宇木倉サヨコはスタンドで狩り立てる。
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それは群体型のスタンド。小さいトランペットを吹き鳴らす小人のキューピッドが九人、白い翼で空を飛ぶ。能力はキューピッド毎に異なり、外傷・火傷・打撲・骨折・神経圧迫・神経切断・ストレス・闘争刺激・痛覚共有を司る。同時にキューピッドは、自らが司る能力の憂き目にも遭っており、傷だらけで火だるま、アザだらけで骨が皮膚から突き出ており、悲鳴を上げる者、不随の者、悩める者、闘いに興奮する者、怯える者がいる。
それは単体で九人のスタンド使いを相手取れる強さ。鼓星かずみだけでは歯が立たず、スタンド使いではない綾野梨花と入名クシュは逃げ回ることしかできない。仮にスタンドを持っていても苦戦は必至。三人は応援を待つため耐久戦に徹する。
「ハッハァー! 逃げろ逃げろぉ! 徐々に追い詰めて串刺しにしてやるぜェエエ!」
「ま……待ってください!」
ふとした震え声。呼び止める声に振り返った宇木倉サヨコは、
「ああん? なんだテメェら。殺されてぇのか!?」
「……っ!!」
萎縮する二葉さな。そこでアイが助言する。
「さな。覚悟とは、諦める方法を知りながら、それでも諦めない決意をぶつけることです。あなたとワタシならそれがきっとできます」
「う、うん……! アイちゃんとなら、私もできる気がする……!」
「ああ? スタンドを持たねぇ奴が何を言ってんだ! おとなしくぶっ殺されろ!!」
宇木倉サヨコの跳躍。
「え、ちょ、まっ────!」
まだ覚悟に時間が掛かる二葉さな。アイは手のひらを掲げることで結界を作成し、宇木倉サヨコの攻撃を防ぐ。
「チッ! 何が覚悟だ! そんなのは覚悟とは言わないね! いいか────覚悟とはッ! 明るい草原を悠々自適に進み、目の前に落とし穴があると分かっても諦めて素直に落ちることだ! 人類はそうするべきだ! でも俺だけは落ちたくないから誰かを穴に蹴落としてその穴を埋めて、全力で穴に落ちるのを回避させてもらう! これで人類は幸せになれる! ああ俺はなんて素晴らしい人間なんだ! こんな素晴らしい人間は、神父さんにだってなれるねッ!」
それは、なんて邪悪な考え方だろう。きっと宇木倉サヨコは自分が悪だと気付いていない最もドス黒い悪なんだ。そう思った二葉さなは、義憤なんてガラじゃないが、彼女と戦う覚悟ができた。
「────行くよ、アイちゃん」
「はい。彼女のような考え方は、個人としては勝手ですが、それを絶対のものとして布教し、他人に押し付けるのは度し難い」
二葉さなはウワサのアイを纏う。それはウワサを着込み、ウワサに操られる巴マミとは似て非なる姿。
「
それは二葉さなとアイの友情を表す姿だった。
「電波変換! 二葉さな!
二葉さなの周囲に緑色の魔力旋風が発生。光の速さで変身を完了させていた二葉さなは、可愛いネコミミをピョコピョコ動かして、アイとの合体を完了させていた。
「で……電波魔法少女! アイ・フェリス!」
名無し人工知能のウワサ・アイは、ウワサから切り離されたことで、概念的に保有していた電波性質により、電波生命体とも呼ぶべき存在へと変質していた。そこでアイは二葉さなの役に立つため、巴マミがウワサを着込んで強化したデータを参照。それと似たような工程を踏めば、二葉さなを強化できると判断した。
しかし巴マミはウワサに支配されている。だがそれはマギウスがそのように設定したからだ。自由となったアイは、二葉さなを支配するつもりがないため、二葉さなに自由意思を持たせながら身を任せることができる。だがそれもウワサの圧倒的な力に翻弄されて、うまくいかないかもしれない。その場合は練習あるのみだ。
かくしてアイの提案を飲んだ二葉さなにより、二人は字義通り
「パーフェクトです。さな。サイコーにカワイイです」
「そ、そう……? えっと、
「前もって教えたセリフも完璧です。よくぞ噛まずに言ってくれました。さなはサイコーにクールです」
アイの褒めちぎりが止まらない。ともあれ二葉さなは電波魔法少女アイ・フェリスとなって戦闘を始める。
「たかが二段階目の変身だろうが! スタンドはスタンドでしか倒せねえんだぜ!」
「だったら本体を倒せばいい!」
「その通りです。そして、さな。私の戦闘データを、固有魔法のようにデータ化して並べました。バトルカードというシステムを採用しております。データを参照して戦闘してください」
二葉さなの網膜情報にバトルカードが
ブレイクアップロック。
スピリットミディアム・エマ。
ミザリーオウル。
ネームレスメッセージ。
メモリースタッフ。
ミスター・パーアロット。
ピグルス・ザ・ピッグ。
ムータロ・ザ・カウ。
エレクトロン・シュヴェールト。
「さらに、ほかのウワサのデータと合体することで、ノイズチェンジも可能です」
ロックノイズ。
エマノイズ。
オウルノイズ。
ゴロゴロノイズ。
ピグルスノイズ。
ムータロノイズ。
しかし二葉さなは、何をどうすればいいのか全く分からない。慣れるためには特訓が必要そうだ。よってシンプルにゴリ押しを選ぶ。いつもの魔女退治と同じ要領で、全力の魔力をぶちかます。
「と、とりあえず一番強いバトルカードで!」
「了解。バトルカード・インストール。
「え。今なにか物騒なこと言わなかった!?」
宇木倉サヨコの“真紅迅雷”が放たれる。それは電光石火による連続斬撃。21秒の時を稼がなければならない二葉さなは、大盾を駆使して身を守る。
「きゃあああ!」
しかし四方八方からの高速斬撃は防ぎきれない。背中を中心に切り傷が増えていく。
「グルメカーで援護だぁああああ!」
そのとき、鼓星かずみがグルメカーを放り投げた。続けて綾野梨花が魔力ビームを打ち込み中距離から支援する。さらに唯一、敵の機動力に対応できる入名クシュが切り結ぶ。凄まじい反射神経で眼球と剣を忙しなく動かし、宇木倉サヨコの攻撃から二葉さなを守る。
やがて────21秒が経過した。
二葉さなことアイ・フェリスの全身から青い魔力が湧き上がる。それは鎮静魔力。周囲一帯を水浸しにし、膨大なデータ量が水の色を際限なく濃くしていく。やがてブルースクリーンを思わせる光景になるまで青い魔力を飽和させた瞬間────
「自爆します」
アイは端的にそう告げた。中距離から支援していた綾野梨花は範囲に入っていないが、近接戦闘していた鼓星かずみと入名クシュは、真っ青な世界に捕まって身動きが取れない。鎮静魔力によって分子までもが停止状態に追いやられているのだ。このままでは巻き込んでしまう。
同時に二葉さなは訝しむ。自爆といったが、それは文字通り自分が爆発するのだろうか。その場合、自分とアイは無事なのだろうか。なんとも言えない不安が襲う。
とっさに悪魔が叫んだ。
「梨花! 分解魔力による必殺魔法で
「!!」
勝負は一瞬。今に極光して自爆する瞬間、綾野梨花は渾身の極大ビームを撃ち放った。それはブルースクリーンの一部を貫通。咄嗟に鼓星かずみと入名クシュは、ビームに巻き込まれる形で脱出する。刹那────
────周囲一帯を占めるブルースクリーンは音もなく爆発した。悲鳴もなく宇木倉サヨコは絶命し……二葉さなことアイ・フェリスは、焼け野原となった戦場にぽつんと佇む。
「────戦闘終了。よくやりました。さな」
「……、……ふわぁ……」
アイ・フェリスから変身を解いた二葉さなは、つま先から脱力してぺたんと座り込む。どうやら自爆の瞬間、二葉さなは鎮静魔力の膜の中で守られていたようだ。膜の外周を発散魔力で覆うことで、自爆の威力を軽減していた。つまり鎮静魔力によるブルースクリーンは二重の膜で出来ており、風船の中に風船があるようなもの。二葉さなは内側の風船の中にいて、爆発したのは外側の風船だけだったようだ。
かくして戦闘は終了した。
しかし息つく暇はない。轟々と震撼するウワサ空間は、天井からガレキが降り注ぎ、大きく崩壊を進めていた。
環いろはは「すぐに脱出しないと!」と仲間を呼び集めるが、アイは無情にも現実を突きつける。
「もう遅いです。あと十秒も経たないうちにウワサ空間は完全に崩壊します。みなさん、自由落下と落下物と衝撃に備えてください」
『……え。──えぇえええええ────!?』
そうして轟音が鳴り響いた。ウワサ空間の照明は突として落とされ、暗黒の中、落下物により床は崩壊。一同は悲鳴とともに下層へと突き落とされた。
†