アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
美樹さやかが上条恭介に告白して大失恋を迎えている頃。
悪魔は助太刀魔法で志筑仁美のところに転移していた。
「というわけで、上条恭介と恋人になりたいなら、僕と契や────あ」
刹那、悪魔は晴拳銃を開匣。野良のインキュベーターの額を撃ち抜いて射殺した。
「きゃあああ────ッ!?」
志筑仁美は、突如現れた銃を持つ少年に怯え、グロテスクな珍獣の死体を前にしたショックで気絶する。悪魔はインキュベーターの死体を回収して周りをきれいに掃除。霧の炎の構築で志筑仁美の脳内を少しいじり、インキュベーターのことは夢だと思えという暗示をかける。そして娘の絶叫を聞いて家の者が駆けつけてくる前に《助太刀魔法》で転移した。
†
一方。劇場の舞台からレッドカーペットを越えた先にいる両扉の向こうで、美樹さやかが鹿目まどかに抱かれて泣いている頃。
暁美ほむらは、美樹さやかが無事、魔女化せず生存したことに安堵する。
そこで神名あすみは、不幸なはずの失恋をまるで幸福であるかのように誘導した悪魔に敵意が湧いてきたのか、八つ当たりするように茶々を入れてきた。
「
「っ!? それは、ちがう……佐倉さんと美樹さんは、友達になれる可能性があって……! それに今回は佐倉さんに関係なく、美樹さんはソウルジェムの真実を知ることになった……だから、その理論は通らない!」
「でも友達になったら美樹さやかは死ぬんでしょ? だからよかったじゃない。これで
暁美ほむらの表情に殺意が灯る。
なぜ神名あすみがそこまで知っているのかという疑問を脇に置いて睨みつける。
「────そういう言い方は、
「おぉ怖い怖い。あなたって意外とキレたら殺るのね?」
暁美ほむらに対する《精神攻撃》は、かなり強く効いたようだ。紫色のソウルジェムの底に溜まる濁りがゆらゆらと昇って穢れが増えていく。
次の瞬間、転移してきた悪魔が神名あすみの隣に降り立つと同時、事の次第を直感して頭頂をひっぱたいた。
「いったぁっ!?」
「たしかにオレも必要に応じてひどいことを言うが、趣味で他人を貶めるために暴言を吐くことはない。まぁ煽りはするが。精神攻撃はもっと人のためになることに使え」
「う、うるさい……! あたしを叱るな! 説教もしないで……!」
「ほむら、すまない」
「い、いえ……私も大人気なかったです……。でも、なんで悪魔さんが謝るんですか……?」
「さぁな。口の悪い妹が居たからじゃないか」
「誰が妹だヌッ殺すぞロリコン野郎」
神名あすみはビキビキと顔面の血管を浮き上がらせる。どうやら神名あすみは相当、悪魔の事を嫌っているようだ。
「……」
そこで神名あすみは、近くで突っ立つ環いろはを凝視して標的を変更する。
環いろはは見つめられていることに気付いてビクッと萎縮した。
「おい、お前」
「……な、なにかな?」
「魔法少女の衣装は本心の表れって知ってた? それで言うならあんた、清廉な修道女を思わせるケープの下には、おへそ丸見え黒インナーとか、うっわ
「……っ!?」
「スッケスケッ! そんなに周りに
「ち、ちが……! わ、私、そんな……!?」
「真に受けなくていいぞ、いろは」
精神攻撃魔法は、あくまで対象が嫌がる言動をするというもの。故に言われたことが対象の本心とは限らない。
「あすみ、お前もう帰れ」
「ハァ~? 見滝原市から勝手に連れ出したくせに帰れって勝手すぎない?」
「因果応報だ。最悪な奴はそれ相応の対応をする」
「あーそ。それじゃあ道場の件は受けてやんない」
「それは無理だ。無理やり連れて行く」
「────チッ。お前マジでいつか覚えてろよ……? 笹川京子を目の中に監禁してる自慰野郎が」
「あまり暴言を吐きすぎるとクオリティが下がるぞ。しばらく使った語彙力を養うため図書館へ行ったらどうだ?」
悪魔は
神名あすみは一瞬受け取ろうとしたが、よくよく見れば子供用ではないことに気が付いた。
「死ねッ!」
その図書カードは霧の炎の構築で作った偽物である。
それは神名あすみも分かっていたが、どうも悪魔からの煽りには耐性が低いようだ。
「もうソウルジェムを指の上で回したり、ソウルジェムでお手玉したりするなよ。危ないからな」
「~~~~っ!」
最後に神名あすみは客席の一部を蹴っ飛ばして破壊しようとするが、百江なぎさの遮断魔力によって客席は無傷。神名あすみは藍色の魔力を光らせて姿を消した。
「ふぅ……まったくヤンチャな奴なのです。品位のカケラもないのです!」
「それはオレの前でだけだろ」
悪魔は事態の収束を確認して一息つく。
「よし。それじゃあ帰るか」
悪魔は、綾野梨花と五十鈴れんに礼を言って、空穂夏希と共に道場へ来てほしいと告げてから帰路に就く。
鹿目まどかと美樹さやかは見滝原市へ帰ることになり、環いろはと暁美ほむらは手を振って再会を約束する。
しかし悪魔は既に背中を見せて立ち去っていた。
その後ろ姿を眺める美樹さやかは大声で叫ぶ。
「おーい! 乙女の心を踏み荒らしまくった正真正銘の悪魔やい! この借りは、いつか必ず返させてもらうからね~……!」
「ならば道場に来い。お前はまだまだ未熟で不安定だ」
美樹さやかは「ちぇっ」とムカついて落胆する。
しかし最後まで謎の多い男だったが、その心根の優しさは本物だろう。
「なぁまどか。悪魔ってさ。ホントにマミさんと師弟同士だったの?」
「うん。悪魔さんの戦いを見たら、きっとさやかちゃんも信じると思うよ」
「ふーん」
ならば道場に行ってみるのも悪くないかもしれない。だが今は痛んだ心を癒したい。そう思う美樹さやかであった。
……。
夜の曇天が少し晴れる。
雲の合間に隠れ見えた月は、美樹さやかの帰る先をおぼろげにだが照らしていた。
完