※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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第4.4章 竜真館超特訓 マジーア・インセニャンテ ‐全員集合! 魔法少女たちの悪魔的家庭教師‐



第4.4章 竜真館超特訓 マジーア・インセニャンテ ‐全員集合! 魔法少女たちの悪魔的家庭教師‐
5月17日(水曜)【殺し合いをするから。誰も逃げられないように……】ジュリー凪


 

 未明。神浜市の山脈から白い太陽が顔を出す。日光に照らされて彩りが起き出す街並み。その中に水名区の武術道場《竜心館》が在った。今日も今日とて門下生が心身を鍛えるべく古武術を学びに足を運ぶ。

 

 ────そこから数キロ北西に離れた某所。地図上では四つの区域(新西区・水名区・参京区・北養区)が混じり合い、わずか西側に河川が通る地は、かつて三郷と呼ばれていた。今まさに燦々(さんさん)と夜の闇が払われた其処(そこ)は、竜心館と同名の旧館道場が静謐(せいひつ)と建つ。

 

 旧竜心館。面積は競技場八個分と同規模。

 広大な土塀に囲まれた面積の八割が芝生に埋まっており、そこが鍛錬場となる。

 残り二割の面積が寺子屋の体を成す武家屋敷であり、そこが門下生の勉強処(どころ)となる。

 

 座敷。障子を透き通る陽射し。黒い蚊帳の中、イ草の翠緑から黄金へと色褪せた畳の上に敷布団(しとね)が一枚。眠れる少年少女は相身互いと言うように着物の袖を相手の枕とし、黒と灰の着物を掛け布団のように使って羽織り、夜間の寒さを凌いでいた。

 

「……んぅ~……あ、あさは……フレッシュタイプのモッツァレラチーズを……」

 

 寝返りの際に生じる衣擦れの音。そして少女の寝言によって、少年の瞼(まぶた)はよどみなく開かれた。羽織る着物を払って身を起こす。泥と血と汗と涙に汚れた胴体には、それと同じ分だけ穢れた瘴気と魔力漂う包帯が巻かれている。

 

「……ん~……こどものなまえは……ペコリーノ・ロマーノからとって……」

「アホか」

 

 立て続けの少女の寝言に、少年は呆れてボソリと呟く。嵐の炎の分解によって妊娠の心配はない。そもそも彼女と家庭を持つ予定もないし、ただ色欲に溺れる気もない。体内に蓄積する魔力の毒素を抜いてもらったことには感謝して何か尽くしてやりたいが、百江なぎさという少女を色欲の理由から大罪人にするつもりは微塵もない。

 

 少年は大口を開けて欠伸。目尻に涙。ツッコミは日常を思い出す。しゃっきり目覚めたはずなのに寝ぼけ眼が戻(おそ)ってくる。さりとてのんきにのんびりしているいとまはない。今日は大切な日だ。多くの少女の将来を左右する審判の日。気が緩んでは居られない。死ぬ気でぶつかり、鍛え、教え、導き、こちらを感心させてもらわねば困り果てる。

 

 少年は指を鳴らす。パチンと響く音に驚いて少女はピクリと肩を跳ね、鼻風船を割って片目をしばたたかせる。同時、障子に人影。

 

「──おはようございます、十代目もとい悪魔様。お加減はよろしいでしょうか」

「あぁ。おはよう」

「では入ります。朝の着物をご用意しました」

 

 障子が開かれる。縁側に正座する少女はシトピ隼人。膝の上に折り畳んだ黒い着物を広げると、淡々と素早く悪魔と呼んだ少年に着せ始める。

 

「……自分で着れるんだが」

「是非やらせてください。いつもおひとりでがんばっていらっしゃるのです。悪魔様の右腕としてこれくらいしなければ立つ瀬がありません」

 

 悪魔は直感する。シトピ隼人は、ようやく右腕らしい仕事が出来ていることに歓喜している。座敷というシチュエーションにも興奮しているようで、いかにもジャパニーズボンゴレファミリーらしいと心中で小躍りしている。ガッツポーズまで決め始めた。ふと障子に人影が横切り、竹刀を肩に当てる水野むくが顔を出す。

 

「おっ。悪魔じゃねぇか。おはよっ!」

「テメー朝っぱらから悪魔様に向かってその軽々しさはなんだ!?」

「ハハッ。隼人、悪魔に服を着せてんのか! まるで母ちゃんみたいだな!」

「だ、誰が十代目のお、お母様だ!? 真のお母様に失礼だろうが!!」

 

 悪魔は気恥ずかしくなってシトピ隼人から着物を奪い取ると、自分で着替え始める。

 

「あっ! ま、まだ袴が残ってたのに……」

「おはよう、むく。ランボと了子は?」

「先輩はもう起きて庭を一周しながらシャドーボクシングしてるぜ。ランボはまだぐーすか寝てる。凪は……どこ行ったんだ? あいつ隠れんぼ上手いよな! 昨夜までは一緒に寝てたのに、いつの間にか布団と一緒にドロンと消えたんだ。忍者なのかな?」

「あいつは人付き合いに慣れてなくて逃げただけだ。それより悪魔様。恭弥アーデルハイトのヤローが……」

「呼んだが来なかったんだろ。想定済みだ。なんとかする。とりあえず準備を進めてくれ」

「オレはもうちょっと屋敷を見て回ってくる。なんか冒険心がくすぐられて楽しいんだよなー!」

 

 悪魔は全員に背を向けて着物を身に付けると、目をこすって身を起こした百江なぎさを置いて縁側に出る。悪魔は出入り口のある南側に歩き始め、水野むくはその反対側。シトピ隼人は、目を覚まして早速チーズを要求してきた百江なぎさの生意気さに物申し口喧嘩を始めた。

 

 縁側を渡る悪魔は、ふと障子の奥に人の気配。声を掛ける。

 

「おはよう。誰かいるか」

「あ、お、おはようございます! 悪魔さん!」

 

 それは黒江の声だった。だがもうひとりいるはずだ。

 

「おはよう~。だけど入ってきちゃダメよ~。今お着替え中だから~」

 

 八雲みたまの声。この二人は、今回の道場の助手を務めるべく呼んだ存在である。

 

「ふたりとも。今日はよろしく頼む」

「は、はい! 頑張らせていただきます!」

「報酬分は働くから心配しないでね~」

 

 悪魔は縁側を渡る。前方に神名あすみと八雲みかげを発見。二人は仲良く笑っている。かたや内心でボロクソにこき下ろし、かたや表裏に偽りなく、なんとも滑稽な友人関係が築かれている。

 

「おはよう、二人とも」

「あら。おはようございます、悪魔お兄さま?」

「おはよう、悪魔!」

「みかげは良く眠れたか? 昨日ようやく黒江が結界を張り終えたが……」

 

 八雲みかげは「バッチリ眠れた!」と元気よく返す。

 ちなみに神名あすみは助手であるが、八雲みかげは生徒として来ている。ほかの生徒より一足先に道場の中に居る理由は、八雲みたまや和泉壮月と同様、生贄の烙印による亡霊の襲撃から身を守るためである。それなら今の住所で寝泊まりしてからこちらに来ても良かったはずだが、二人の保護者である八雲みたまがそれを許さなかった。ずっと一緒にいないと心配でたまらないそうだ。

 

 悪魔は縁側を渡る。庭に和泉壮月とバジルを発見。お互い死ぬ気の炎を使うため親近感が湧いたのだろうか。悪くない関係を築けている。

 

「おはよう、壮月。バジル」

「お、悪魔! おはよう! 今日は魔法少女に戦い方を教えるんだってな。やっぱ悪魔はすげぇや。何者なんだ? あ、オレも何か手伝えることがあったら言ってくれよ!」

「おはようございます、悪魔殿! 今日は道場を開くということで、お呼びいただき感謝です! しかし……なぜ急に拙者を呼ぶ気になられたのです?」

「壮月は、もしかしたら魔法少女のアドバイザーとして動いてもらう時があるかもしれない。──そしてバジル。分かっているだろうが、オレはお前のことは嫌いじゃない。ただ巻き込みたくないだけだ。今回は戦いの気配がないから呼んだ。勝手な話だと思うだろうが、手伝ってくれるなら助けてほしい」

 

 和泉壮月は「了解!」と胸を叩き、バジルは快活に「もちろんです!」とお辞儀する。

 

 悪魔は縁側を渡る。開けっ放しの障子。座敷の中には腹を出していびきをかくランボの姿。悪魔は黙って服を引っ張り腹を隠し、布団がわりに着物を掛けて部屋を後にする。ふと曲がり角の先から足音。青い髪をたなびかせて和装に薙刀を担う少女が現れた。

 

「──! これはこれは、おはようございます! 悪魔殿!」

「おはよう、明日香。今日はありがとな。こんな立派な道場を貸してくれて。しかし良かったのか?」

「はい! この、いにしえより伝わる伝説の戦国道場を秘蔵するよりかは、大義のために使用するべきだと独断しました! 竜心館の当主様も、きっとお許しくださるはずです!」

「……は(・)ず(・)だと? まさか事後承諾するつもりか?」

 

 悪魔は、道理で簡単に道場を貸切にできたはずだと呆れる。そもそも無断借用だったのだ。

 

「まぁいい……なぎさの遮断魔力で建物全体を覆っているから何も壊れない。仮に建物が壊れても凪たち術士の構築で修復する予定だ。それと、ここを一週間近く使う予定だが、暗示を掛けて人払いも済ませてある。バレなきゃ不法侵入も犯罪じゃない」

「なんと! 我が名君が闇堕ち発言!?」

「まぁ……今日に限っては間違いではない」

 

 悪魔は意味深長なことを言い捨てて歩き出す。そうしてようやく玄関口に到着。近場の洗面所で顔を洗ってから、門のかんぬきを開けて来館者を出迎える。開かれた門の先に広がるは田んぼとあぜ道。まだ朝も早い。授業開始は学校と同じ時間帯にした。今は起床して朝食の最中だろう。ふと後方から黒江が小走りしてくる。

 

「悪魔さん。受付は任せてください。それとも、どれくらい人が来るか心配ですか?」

「そうだな。できれば“キリサキさん事件”の件で関わった魔法少女には来てほしいが……いや、もとよりその件に関わった魔法少女しか来ないものと見ている」

「みなさん、悪魔さんには何かしらの恩義がありますからね。きっと門を叩きに来ますよ」

 

 不意に自動車の排気音が鳴り響く。猛スピードであぜ道を走って門の前で急停止した大型キャンプカーは、かのピュエラケアの車だった。扉が開いて三人の魔法少女──リヴィア・メディロス、篠目ヨヅル、佐和月出里──が降りてくる。

 

「よぉ悪魔~冷やかしにきたで~」

「黒江さんも、お久しぶりです」

「ふんむふむふむ!」「お手伝いできることがあったら任せて、と言っています」

 

 それに悪魔は答える。

 

「月出里(すだち)。お手伝いより、なんならお前も生徒として参加してもいいんだぞ」

「おぉそりゃあいいわぁ。月出里もまだまだ未熟やからな~」

「私も賛成です」

「ふむふむっ!!」「バカにするな、と言っています」

 

 そこでリヴィアは、受付の準備をする黒江の肩に腕を回す。アルケミーブックの図鑑が埋まったかどうか、今まで何を合成したか、その中で何を売ってくれるか、などのことを色々と話している。金の話に興味はないため悪魔は視線を逸らし、篠目ヨヅルと佐和月出里に言う。

 

「まぁ好きにしていけ。他人の弟子には手を出さない。ピクニック気分で観光すればいい」

「ではそのように」

「ふむー! ふむ!」「アツアツのふりかけおにぎりを作ってきた、と言っています」

 

 ふとリヴィアはため息をついて黒江の下を離れ、悪魔の首に腕を回す。

 

「はぁ~こらあかん。『受付の邪魔です』の一点張りで交渉にならんわ。黒江はんも商売上手になりましたなぁ~? おい、あんさんの入れ知恵やろ。うちらピュエラケアに売るより、みたまに売る方が秘匿性が高いと思っているようやわ」

「それは黒江の考えだ。オレは特に関わっていない」

「そうなんか。……ところで、あんたはほんまに自分が教師たりえると思ってるんか?」

「心配無用だ。教師五者は心得ている。学者として彼を知り己を知れば百戦して殆(あやう)からず故の知識を授け、かつ逆にこちらも何かあれば教えてもらう心持ちだ。医者として超直感だけに頼らず経験則からも生徒のメンタルケアを欠かさない。易者としては敢えて一本道に誘導するつもりだ。嫌ならオレを超えて別の道を模索すればいい。さもなくば死ぬ。そういう世界だと分からせる。役者としては愉快さと無駄さの授業を前面に押し出しつつ、一切無駄なく最短で最効率の吸収をさせる。芸者としては……吐き気を催すやり方だが、恋愛魔法を使えば一発だ」

 

 リヴィア・メディロスは深々とため息をつく。

 

「なんや。あれだけ毛嫌いしていた恋愛性質を利用するとか、随分と吹っ切れてまぁ……道場を開くと聞いた辺りから妙やなとは思っていたが、あんた今なにを考えてん。また何か仕出かすつもりやろ」

「心配は要らないと言ったはずだ。忠告は受け取るが、我(が)は通させてもらう」

 

 どいつもこいつも話が通じないと言いたげに、リヴィア・メディロスは肩をすくめて屋敷の中に立ち去った。

 

          †

 

 早朝。神浜市の通学路が朝部活の生徒で賑わう頃。

 はたして学校を休んででも道場に来たいと思う魔法少女はどのくらい居るのだろうか。そこへ今回の立役者が訪れた。

 

「おっはっぴー!」

「おはようございます。名前をお願いします」

「木崎衣美里でっす! クマ吉に誘われたら断れないよね! ぶっちゃけ命の恩人だしぃ!? この道場を出たあかつきには……あーしチョーぜつ強くなっちゃってるかもー!」

「木崎衣美里さん、ですね。今回はお越しいただきありがとうございます。いらっしゃった理由は……もう話されてますね。奥へどうぞ。看板に従って教室で待機してください」

 

 木崎衣美里。彼女は“魔法少女SNS”を開いている。悪魔はそのSNSを使ってメッセージを送信した。

 

 ────『某月某日某所にて、悪魔が道場を開く。魔法少女として生き残りたい者は門を叩け。死ぬ気で奥義を教える。対価は一割の魔力のみ。後悔はさせない』と。

 

 それを読んで来てくれる気になったのかどうかは定かではないが、やがて続々と魔法少女が訪れる。

 

「常盤ななかです。今回は敵情視察のようなものです。悪魔さんは私たち以上に魔法の知識を持っているようですので、学び盗めるところはとことん絞り尽くす所存です」

「志伸あきらです。まぁ普通に勉強しに来たよってことで!」

「純美雨ヨ。悪魔には借りがアルネ。それに手合わせできると聞いた。ぜひ一度拳を合わせてみたいと思っていたところネ」

 

「遊佐葉月です。……ほら、このは。大丈夫だからこっちきて」

「…………静海このはです。特に収穫がないと判断したら帰らせていただきます。……来た理由についてですか? えっと……」

「三栗あやめだよ! フェリシアとかこはまだ来てないのか? ふたりの紹介があって、なんか楽しそうだと思ったから来たんだ! 別にあちしだけでもいいって言ったんだけど、このはが心配だから付いてくるって! あ、でも、最初は行っちゃダメって言ってたんだけど、葉月が説得してくれたんだ!」

 

 しかして道場の受付に列ができる。

 

「空穂夏希です。来館理由は……私、魔法少女としてもっと強くなる必要があるんです。だって、大切な人が増えたから……!」

 

「おはようございます。梢麻友です。悪魔さんのメッセージを見て来ました」

「史乃沙優希です。私も似たようなもので……それにキリサキさんの件で命を救われたので、一度ちゃんとお礼が言いたくて来ました! あ、もちろんちゃんと授業は受けますよ!?」

「阿見莉愛です。それで? 七海やちよはトーゼン来るんですよね!?」

 

「胡桃まなかです。来た理由は気まぐれって言うか……いえ、来たからにはきちんと相対させてもらいますが。特に理由が……強いて言えば命の恩人らしいので?」

「若菜つむぎです! まなか先輩が来るというので付いてきました!」

 

「矢宵かのこです。理由? さぁ……気付いたら足を運んでいて……」

 

「ど、ども……七瀬ゆきかです……そ、その節は大変ご迷惑をおかけして……も、元黒羽根ですが……構いませんか? あ、ダメですよね! ずびばぜん!!」

「ゆきかサマ。黒江サマはまだ何も言っていませんよ。さて、改めてわたくし立会人のウワサのミザリーと申します。学びに来たというより、ぶっちゃけ見物に来ました。別によろしいですよね?」

 

「たのもー! 香春ゆうなと申します! あの方に憧れて来ました! ……え? 理由になっていない? あの方はあの方です! わたくしはあの方に近付くためにも強くなる必要があるのです!」

 

 ここまでの顔ぶれで、黒江は内心思うところがあった。

 

(正直、悪魔さんとあまり面識がない人もいっぱい来ている気がする……もしかして“キリサキさん”の件で、全員を蘇生させるために叛逆魔法を使ったから……その影響で恋愛性質が働いて、みんな悪魔さんの声に応じやすくなっているのかな……?)

 

 だとすれば当然、悪魔はこの効果を狙って道場を開いたに違いない。洗脳しているようなものだから内心穏やかではないだろうが、それでも電波塔の一件を通して、悪魔なりに思うところがあったのだろう。みんなを鍛えることで何を企んでいるのか。その真意は分からないが、今は悪魔を信じるしかない。

 

(……あっ)

 

 黒江は思わず席を立つ。

 

「おはよう黒江さん。チームみかづき荘の環いろはです。来館理由は、悪魔さんに教えを請いに来ました」

「由比鶴乃だよー! 最強の魔法少女になりにきたー!」

「七海やちよ」

「二葉さなです……と、隣の子はアイちゃんと言います……どちらも生徒希望で……」

「環ういです。隣の人は万年桜さん。私は生徒志望で、万年桜さんは参観希望です!」

「深月フェリシアだ! 勉強は嫌いだけどみんな来るって言うから来たぜ! 眠くなったら悪魔のせいだから怒るなよ!」

「モキュー! モキュモキュー! モキュッ!」

 

「さな。がんばりましょうね」

「│いろは、うい。私も手伝えることがあれば手を貸すから│」

 

「黒江姉! フゥ太が来たよ! あ、もちろん三人とも参観希望ね!」

「イーピン、がっこー、たのしみ!」

「ゆまも来た! ゆまの名前は千歳ゆま!」

 

 そうして列は、時に途絶え、時に成す。

 

「おはよー。十咎ももこが来たぞー」

「水波レナ。……別に来た理由は大層なものじゃないわ」

「秋野かえでです。悪魔さんに教えてもらうことはいっぱいありそうだと思って来ました。きっと役に立つだろうからって、ももこちゃんが」

 

「春名このみです。かえでちゃんの紹介で来ました。悪魔さんにも命を救われた件でお礼と、あと感謝のお花を贈りたくて……」

 

「美凪ささらと言います! 来館理由は、明日香に誘われたのもそうですが、悪魔騎士殿の教えを受けて更なる高みを目指すためです!」

 

「い、五十鈴れん、です……ども……え、り、りゆう、は……その……いろいろと……です……」

 

「おはようございます! 相野みとと言います! 今日はよろしくお願いします!」

「伊吹れいらです。来館理由? は……」

「桑水せいか。シンプルに強くなるため。魔女退治がしやすくなると嬉しいから」

 

「都ひなのだ。中央区の魔法少女には“行かない方がいい”と言ったんだがな……最終的には自己責任だ。代表者といえども強制はできない。……つまるところ、監視をしに来た。悪魔が何を仕出かすか、をな」

「加賀見まさら。都さんの助言を受けて、こころを守るために来た。悪魔とも一度手合わせしてみたい気持ちもある。刺激のために」

「もー! 二人とも警戒しすぎ! 顔怖すぎ! せめて思っても口に出さないでよ失礼でしょ? あ、粟根こころです! もっと魔法少女として、周りの人を守れるようになるため来ました! 今日はよろしくお願いします!」

「江利あいみです。私もこころちゃんと同じで、大事な人をきちんと守れるようになるため来ました。よろしくお願いします!」

 

「毬子あやかでーす! 来館理由? うーん……独りになっちゃったから、かな? あーいや冗談冗談! 保澄雫って子がさ。来た方がいいかもって勧めてくれたのさ。今その子は彼氏さんと海外を旅してるんだけど……って、どーでもいいよね! ごめんごめん!」

 

「ふわぁ……由良蛍です……」

「真井あかりです! 来た理由は……もっと強くなって、好きな────あぁいや、周りの人を守れる力を身に付けるためです!」

 

「御園かりんなの! デビ太郎に頭を下げられたから来ちゃったの! ちなみにアリナ先輩は断ったの。デビ太郎も先輩を誘うなんて正気じゃないと思うの」

「恵萌花です。かりんちゃんが行くなら、私もやってみようかなって……」

 

「桐野紗枝。都さんから忠告はあったけど、悪魔から教わることは多そうだから来た。正直時間を作って来たんだから、きちんとした指導を求める」

「由貴真里愛です。……悪魔さんが何をしようと思っているのか、なんとなく分かっちゃったから来ました……見て見ぬふりもできなかったので、何かみんなに力添えができればと思って……」

 

「枇々木めぐるでーす! 悪魔って人には命を救われたらしいので、一応見に来ようかな? って軽いノリですけど、大丈夫ですか!?」

 

「古町みくらです」

「吉良てまりよ」

「三穂野せいら! 理由? 命の恩人の顔を見に来たってだけじゃ……ダメかな?」

 

「水樹塁……この真剣(ガチ)邪気眼を封印する方法を教えてもらいたくて……割と切実な悩みで……でなければ私は神すらも殺してしまいそうで……」

 

「エッダだ。エッダダではないぞ。エッダだ。……和泉十七夜と書こうとするんじゃあないっ!! ところで壮月は元気か? みたまやみかげも健在か。ならば良し。能のある舎弟どもも連れて来た。受けた教えは今回来なかった舎弟に叩き込むつもりだ。技術を盗むことになるが、よもやそれが嫌だとは言うまいな?」

 

「観鳥令です。来館理由は……悪魔に聞けば? どうせ心を読まれるんでしょ。────そもそもが土台無理な話なのよね……」

「ま、牧野郁美です! 魔力の衰えを感じていて……それについて相談しに来ました!」

 

「呉キリカ。理由? どうでもいいだろう! 織莉子を守れるよう強くなりに来た。それだけだ!」

 

「遅くなっちゃった! チーム・ベナンダンティのリーダー・鼓星かずみです! 黒江ちゃんおはよー!」

「れんちゃんはもう来たかな? 綾野梨花でっす!」

「夏目かこです。魔法戦闘を学びに来ました」

「千秋理子です! 今日はがんばりますっ!」

「アシュリー・テイラーでーす! 背中で寝ている子は入名クシュデース! 遅れた理由は、彼女のご家族に見つからないよう、おうちから連れ出すのに時間が掛かってしまって……来館理由ですか? もちろん悪魔のために来ました! なにやら来てほしそうだったので!」

 

 かくして〆切の時刻が近付く。ぱったりと来館者も絶った。黒江は時間ぴったりに門の外を覗き、〆切であることを声高に告げて門を閉ざす。すると屋敷からジュリー凪が現れた。彼女は悪魔の命令通り、唯一の出入り口たる門に幻術を施す。誰も外に出られないように。誰もが道場の中に幽閉されて迷子になるように。なぜそんなことをしたのか黒江は尋ねる。すると凪は真顔で告げた。

 

「────殺し合いをするから。誰も逃げられないように……」

 

          †

 

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