※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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【あの風紀委員長には容赦というものがないのか────!?】枇々木めぐる〔実況解説役〕

 

 ~15:59~

 

 Bランク戦のチームが決定した。

 ちなみにCランク戦で段位が上がった魔法少女は、今回のBランク戦には参加できない。

 

 

 

 環隊。環いろは・二葉さな&アイ。

 由比隊。由比鶴乃・深月フェリシア。

 鼓星隊。鼓星かずみ・夏目かこ・アシュリー。

 

  都隊。都ひなの・桐野紗枝。

 粟根隊。粟根こころ・加賀見まさら・江利あいみ。

 

 五十鈴隊。五十鈴れん・綾野梨花・暁美ほむら。

 

 常磐隊。常盤ななか・志伸あきら

 純隊。純美雨・呉キリカ。

 

 静海隊。静海このは・三栗あやめ。

 遊佐隊。遊佐葉月・美樹さやか・美凪ささら。

 

 黒江隊。黒江・万年桜。

 

未参加:入名クシュ(まだオネムの時間)

不参加希望:万年桜(自分が庇うと環いろはの成長を阻害すると判断して辞退)、黒江(いや普通に参加したくないです。嫌です! あああ゛悪魔さんの鬼ぃ────!! 悪魔ぁ────!! 私魔法少女じゃないのにぃいいいいいい!!)

 

 

 

「……そう来たか。全十一部隊。しかしCランク戦で旧知の仲の魔法少女同士が共闘したように、今回は実質、六つの勢力による争いとなりそうだ。お菓子の魔女も入れれば七つの勢力か。数的不利と見た常磐隊・遊佐隊はチーム作りの時点で策を練ったようだが、なにやら五十鈴隊が不審な動きだ。どうやら仲間と共闘して勝利・生存して段位を上げるより、自分の実力を高める布陣で行きたいようだ。いいぞ。だが結果を残せなければ評価は下落する。逆境体質でない以上、自らを追い込むのも程々にしておけ。ちなみに黒江陣営は、こちらが用意した敵性エネミーと思えばいい。全てを敵に回す魔女枠とでも思え」

 

「恨みますよ悪魔さん……なんで魔法少女じゃない私が参加を……しかもなんで私が中段の間なんですか……錬金術のせいですか? あぁそうですか……そうですよね……それしかない……ハァァァァァァ…………イヤだ……絶対ケガする……事故って死にたくない……こっちはかすり傷でも完治一週間なんですよバカぁ……」

「│いろはと戦っていろはが成長できるなら、是非そうしたい│

 │でも私のせいでいろはの順位が落ちたら……切腹して死ぬ│

 │あと黒江は私が守る。安心して。いろはにも任されたから│」

「万年桜さん……どうかよろしくお願いします……」

 

「はい! そーゆーわけでBランク戦、開始間近です! まずはご挨拶を! 実況役の枇々木めぐるですっ!」

「解説役の悪魔だ。隼人は猫に噛まれて負傷したので離脱した。そこで急遽、彼女を採用させてもらった。めぐる。間違っても実況魔法を無意識に発動して戦闘を盛り上げないでくれよ」

「それはフリですか?」

「真面目に死人が出る」

「了解ですっ! 絶対に気をつけます!!」

「まぁ、もし何かが起きても気にすることはない。助太刀魔法が間に合わなかったオレとむくの責任だ」

 

 次の瞬間、なんの前触れもなく青い刀剣の雨が降り、Bランク参加者たちの体を串刺しにした。しかし黒江だけは腕を掠める程度。直後、戦闘フィールドに転移する。

 

「さぁ! 串刺しの音や血しぶきと共に始まりましたBランク戦! 今回の戦闘フィールドは、なんと“オフィス街”です! 高いビルが乱立するエリア! 有幻覚の空間拡張作用により、最高高度は1,000m(一千メートル)にも昇ります! もしビルが倒壊したらドミノ式!? どう戦う、Bランクの戦士たち!!」

「本来は民間人がいる前提で戦闘させるべきだが、マギウスが相手ならそうも言っていられない。魔法少女が死ねば多くの民間人が犠牲になる。それを考えると、まずは魔法少女が自分の命を大事にすることで、結果的に多くを見捨てても、さらに多くの民間人が助かるだろうと判断した。もちろん建物は壊さない等、自主的な縛りを入れても構わない。そこは自由だ。ただし、信念を押し通して死ぬのでは話にならない。信念を貫いて事態を悪化させるくらいなら、貫くのは相手のソウルジェムだけにしておけ。と言っておく」

「悪魔さんのイヤミが止まりませんが、それは期待の表れと見ましょう!」

「どこぞのCを見るに、今のところ失望が大きいがな」

「見返せBランクぅ!! この鬼教官を見返してやるのだぁ!! ────さて、まずは活性魔力で即時回復した環いろは、鼓星かずみ、粟根こころ、遊佐葉月、美凪ささらが先手を取る! フィールドにランダムで飛ばされた選手たちですが、その動きは的確で迅速! Cランク戦では痛覚遮断できず痛がる子が多かったですが、Bランク戦は胴体がちぎれそうでも血を流しながら平気で走っている子が多い! 特に純美雨は血の跡を偽装魔法で隠しながら移動しているほどだ! これは手馴れている! どうやら本当に戦闘の熟練度が違うようです! これはAランク戦になったら一体どうなってしまうのでしょうか!?」

「ハハハ」

「明日の事を言ったら鬼が笑ったぁ────! という冗談はさておき、Cランク戦と比べて圧倒的な速さで全部隊合流!? 誰とも接敵せず、無事に合流を果たした────!!」

「意識して練習している魔法少女は少ないだろうが、まず魔力操作の練度が違う。これは痛覚遮断の具合にも関係する。どれだけ傷ついて体がふらついても、魔力で負傷や疲労をカバーして、常に全快の動きを可能にしている。それだけ魔力も消費するが、効率を極めれば関節部分に魔力を流すだけでも肉体の動きをカバーできる。つまり魔力の節約も可能なんだ。特に暁美ほむらを見ろ。怪我と魔力消費による穢れや濁りが圧倒的に少ない」

「たしかに! ほかの魔法少女と比べてもキレイな紫色を保っています!」

「勢力に注目」

「!? あ────環隊、由比隊、鼓星隊が合流! 戦闘に発展しません! 都隊・粟根隊も合流! 常磐隊・純隊も! 静海隊・遊佐隊もです! 今のところ一つのチームだけで行動しているのは、五十鈴隊と黒江隊のみ!」

「これは全員が予想できたことだ。この中で一番大きな勢力は、みかづき荘。次点で中央区の連中。これを小規模勢力の常盤・静海がどう打ち崩すか……見ものだな」

「大勢力と小勢力の乱立! 既に見知った顔同士で共闘するとなれば、より一層熟練された共闘が見られるかもしれません! ────そして常盤隊と遊佐隊をはじめとする二つの小勢力は様子見に徹する! 環隊と都隊をはじめとする二つの大勢力が今、ビルの屋上へ登り、高所で顔を合わせそうです!」

「現在のチームみかづき荘の頭脳労働役(ブレイン)は、おそらく夏目かこ。この中では強豪である自分たちが集中砲火される可能性を指摘しているはずだ。その上で漁夫の利も怖がらず、二大勢力との真っ向勝負を挑むということは、何か策があるのだろう。それこそ四面楚歌を前提とした作戦が」

「環いろはと夏目かこが合体魔法(コネクト)! 巨大な槍が巨大なクロスボウにより放たれる! それを躱したために都隊・粟根隊は分断された! 由比隊、都隊に迫る! 環隊と鼓星隊、粟根隊に迫る! これは魔力属性の相性を考えての行動か!?」

「そう見て間違いない」

「由比鶴乃と都ひなの、深月フェリシアと桐野紗枝の激突! ────おっと!?」

 

 枇々木めぐるは、必死に机の資料を読みあさりながら、天井のスクリーンを見上げて実況する。

 

「き、桐野紗枝は粟根こころだった!? なんと桐野紗枝は認識改変魔法で粟根こころと姿を交換! 粟根こころの魔法武具(変形式トンファー)が黄緑に輝いて襲来! 深月フェリシアの魔法武具(ハンマー)を打ち砕いた────!!」

「粟根こころは木と光の二重属性。光と闇は互いに相剋するが、光に硬化魔力が合わさることで、威力の趨勢は粟根こころに傾いた」

「ということは粟根隊の粟根こころは────やはり桐野紗枝の姿に戻る! 二葉さな、夏目かこと単騎で激突! 分解魔力で押し返し、環いろは、鼓星かずみ、アシュリー・テイラーの三面同時攻撃を、なんと鎮静魔力で防いだ────!? 江利あいみの射撃が火を吹く! 加賀見まさらは透過魔法で姿を消したか! 気をつけろ、どこから奇襲が来るか分からないぞ────!」

「由比鶴乃に注目」

「っ!? 由比鶴乃の背後に加賀見まさら出現! チームみかづき荘の作戦が完全に読まれている! 裏をかかれている! 加賀見まさらの魔法武具(ダガー)が由比鶴乃の背中に────なにっ!? 空中で弾かれた!? 武器が由比鶴乃に届かない! 加賀見まさら驚いている! これはどういうことだ────!?」

「夏目かこは再現魔法で二葉さなの実体を再現していた。そして二葉さなは透明魔法を使う。姿を消していたのは加賀見まさらだけじゃない」

「そ……そこまでの読み合いが、本当に?」

「いや、みかづき荘は今の今まで完全に裏をかかれていた。だが裏をかかれた時のためにアシュリー・テイラーの人形を増殖魔力で複製。それを仲間に配っていたんだ。そして由比鶴乃が背後を取られた瞬間、アシュリーは切替(スイッチ)魔法で、由比鶴乃の人形と二葉さなの位置を入れ替えた。つまり二葉さなは最初から由比鶴乃を護衛していたわけじゃない。読みが外れた時のためのリカバリー方法を、夏目かことアシュリー・テイラーが用意していただけのことだ」

「な、なんと! まったく気付きませんでした!」

「めぐる。瞳に分析魔力を回せ。そうすればもう少し状況を素早く的確に把握できる。資料を読みながらの実況も少し楽になるぞ。いい練習になるからやってみろ」

「しかし私、分析魔力はまだ────」

「今だけはオレが補助してやる。いいから早くやれ」

「はい今すぐ! ────怒涛の読み合いは結果的に相殺! 部隊の垣根を越えた混戦は────おぉっと!? 深月フェリシア、忘却魔法を行使! 敵陣営の動きが止まる! 何を忘れさせたのか、もしか今なぜ戦っているのかという理由を忘却させたか!? しかし桐野紗枝、認識改変魔法で難を逃れている!」

「桐野紗枝は自分が忘却魔法の対象に含まれないよう細工した。深月フェリシアの“敵だけに魔法を掛ける”という思考を読んで、“桐野紗枝は味方”という認識に改変させたんだ。ちなみに深月フェリシアが、こんな知恵を凝らした魔法を使うということは命令者がいるはずだ。そして彼女が人の言うことを聞いたということは、おそらく忘却魔法を命令した奴は夏目かこだろう」

「桐野紗枝、増殖魔力で仮面を数百に急増! 仮面から放たれる分解魔力のビームが全方位を襲う! 硬直した都ひなのと粟根隊を守るためか! しかしチームみかづき荘、硬直を狙って追撃するかと思いきや撤退!」

「足元に注目」

「! みかづき荘、地雷を踏んだ! 大大、大爆発ぅ────!! 都ひなのの化学爆発魔法だ! いつの間に地面に透明なフラスコを仕込んでいたのか!? そして環いろは、吹っ飛ばされた片足を活性魔力で五秒もかからず再生! ほかの者も分解魔力や硬化魔力で防御し、吹き飛ばされた四肢は環いろはの治癒魔法で瞬間再生! 体勢を立て直して撤退します!」

「江利あいみは行動予測魔法を持つ。都ひなのはあらかじめ粟根こころ・加賀見まさらとコネクトし、転換魔力と透過魔力を貰っていた。粟根こころは活性魔力しか使えないが、さすが中央区代表。都ひなのは他属性であれ熟練性質を使用できるようだ。魔力をよく研究している成果だな」

「つまり都ひなのは地雷を作成したのち、行動予測で地雷の位置を決め打ち、透過魔力でフラスコのような地雷を透明化させ、転換魔力により地雷をその場まで移動させた……? しかし由比鶴乃は分析魔力で多方を警戒しておりました。が、それも透過の力が分析を上回る精度だった、ということでしょうか?」

「そうなる。つまり超高性能のステルス自走式地雷だ。また、転換魔力はエネルギーの相転移だけじゃなく、方向の転換という概念でも活用できる。あらかじめ地雷を飛ばしたい位置が分かっているなら、そこまでの運動エネルギーを転換魔力で地雷に与えるだけで済む。魔法を使っているくせに、非常に力学的なトラップと言える。匣兵器の開発に協力してもらいたいくらいの実力だよ。これは評価点だ」

「やはり中央区代表の名は伊達ではない! 都ひなの、置き土産にみかづき荘へダメージを与えてチームと共に撤退!」

「互いにある程度の魔力を消耗する結果となった。読み合いもほぼ互角。いや、わずかに経験の差で都ひなのが上回った。しかし、それが夏目かこの狙いだったら? みかづき荘より都ひなのの方が危険と判断されたら、風向きが少し変わってくるぞ」

「! 静海隊、今まで環隊に意識を向けておりましたが、突然、都隊の方へ進路を変更!?」

「それは下剋上という欲に駆られた結果か、はたまた勝算があるのか。そうなると常盤隊は混戦を避けて逆を行くか。あるいは────」

「いえ、常盤隊、動きません! 慎重です!」

「純美雨に注目」

「……? ────あ、いえ! これは……純美雨の偽装魔法で作った姿と魔力パターン……つまりデコイ(囮)!? なんということだ、常盤隊と純隊の動向が掴めません! いったいいつから!? 今はどこに!?」

「弱者が工夫して強者に食らいつく。だがその強者も工夫を凝らす。勝つのは、より先を読んだものだ。ところで枇々木めぐる。世界で最も強い武器を知っているか?」

「はい? えーっと……核兵器とか?」

「物理的には最強だな。しかし戦いは物理だけでは終わらない。オレの見解は“情報”だ。情報より強い武器はこの世にない。知ることは誰よりも有利な状況に身を置くことができるし、知らないことは誰よりも不利な状況に身を置くことを意味する。さて、分析性質の使い手は────誰だったかな?」

「……火属性の魔法少女は、由比鶴乃・桐野紗枝・江利あいみ・常盤ななか・三栗あやめ・美凪ささら・綾野梨花です! その中で熟練性質を使えると思しき者は────由比鶴乃・桐野紗枝・常盤ななかの三名! 情報最強理論が正しいのであれば、この三名が戦いの主導権を握っているものと思われます!」

「本当にそうか?」

「え?」

「そう言えばさっき都ひなのは、コ(・)ネ(・)ク(・)ト(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)で(・)本(・)人(・)さ(・)え(・)使(・)え(・)な(・)い(・)他(・)属(・)性(・)の(・)熟(・)練(・)性(・)質(・)を(・)用(・)い(・)た(・)な? この意味がどれだけ恐ろしいことか、よく考えておくように」

「────、……っ!! 五十鈴隊、動く! リーダーの五十鈴れんではなく暁美ほむらが先頭を走っている! その暁美ほむらの体には赤い魔力が走っている! つまりこれは、暁美ほむらと綾野梨花がコネクト! 赤い魔力をもらった暁美ほむらは、まさか専門外たる火属性の魔力に熟練しているとでも言うのか! 分析魔力を走らせて一直線に、誰もいない場所へ向かう!」

「暁美ほむらは元々、凡庸な願い事を叶えていれば、その名(焔)の通り“火属性の魔法少女”になっていた存在だと予想している。しかし実際は呪いのような願い事を叶えてしまった影響で、今は“闇属性の魔法少女”だ。元々の生体波動も嵐だった可能性はあるが、その上で雲との二重属性だった可能性が高い。今では願い事の影響で変質して、生体波動の方も雲になっているが……。そういう背景があるからこそ、暁美ほむらは因果的に火属性を使いこなせる“素養”がある。遮断魔力をまだ使いこなせないくせに、分析魔力をいともたやすく使いこなせているのが、この机上の空論を証明する、なによりの根拠となるだろう」

「な、なんという複雑な因果! 運命か! まさかキュゥべえとの契約で、元々の波動が変質してしまうとは、恐ろしきかなキュゥべえ! 人の運命を操るなんて、まさに悪魔の所業! 神にでもなったつもりか!? ────と、脱線はそこまでにして……他方、黒江隊は静観! なにやら剣や杖を取り出し、泥にまみれた鳥を従えていますが、何を企んでいるのか!」

「……黒江の奴、おどおどしているように見えて、内心かなり(オレに)キレてるな。全部を一気に終わらせるつもりだ。まぁそれが狙いで送り込んだんだが」

「魔法少女でもない一般人を戦場に送りつける悪魔め! 黒江はどのようにこの窮地を切り抜ける!? 今のところ絶対的弱者ゆえ、得点にならないと思われているのか、誰からも狙われていませんが……悪魔の口ぶりからすると、もしやダークホースなのか!?」

「静海隊に注目」

「! 静海隊、大通りを撤退する都隊に追いついた! 最前線に躍り出た三栗あやめの無敵魔法! 攻撃は無意味と判断した都隊は迎撃行動に出ないが、このままでは一方的に殴られるぞ!? そこで粟根こころが前に出た! 無敵魔法と耐久魔法の一進一退・大攻防! 加賀見まさらと江利あいみが助太刀する! が、それをさせない静海このはの幻惑魔法! さらに眩惑魔法の追加効果として濃霧が戦場を覆う! 敵味方の位置が識別不可! それは静海隊も同じはずだが────そこで遊佐葉月が飛び出た! リングに嵐・雷・晴・雲の炎を灯している!? まさかの四重属性!」

「事前に美凪ささらとコネクトしている。嵐の炎を貰って一時的に熟練性質を強引に引っ張り出した。幻惑の中で分析作用を走らせる。それは対象を捉える為だ。遊佐葉月は身体走査魔法を使う。まずは霧に包まれた中、対象となる身体を見つけなければ始まらないからな」

「遊佐葉月、嵐の炎で敵味方の識別完了! 一本の棒の両端に二つの片刃が付いた魔法武具・鹿角鈎(ろっかくばり)に晴と雷の炎を付与して一閃! 中距離支援の江利あいみを狙うが、桐野紗枝に阻まれる! 遊佐葉月、雲の炎を追加付与して武器の体積を拡大! 物量で押しつぶした────! すかさず都ひなのが援護射撃! それを阻むはビルの中より発散魔力で飛び出した美樹さやかと、活性魔力で加速する美凪ささら! 二人の剣士が都ひなのを挟み撃ち! だが濃度の高い硬化魔力が白刃を弾く! ────っと、また大きな爆発だぁあああ! スクリーンに乱れが! 爆煙で何も見えません! しかし今の爆発で大通りは陥没し、ビルの窓ガラスが全壊したのは確実でしょう!」

「都隊の撤退先に注目」

「爆煙より姿を現したのは三栗あやめ! その名の通り龍の首を切るほどの巨大な刃たる魔法武具・龍頭大铡刀(りゅうとうだいさつとう)に押し出されて、コンクリートを抉りながらたたらを踏むのは粟根こころ! 双方防御系の魔法を持つため爆発から免れたか! しかし粟根こころ若干のダメージが見える! 無敵と耐久では前者の方が上位互換か!? しかし粟根こころ活性魔力で回復! だが三栗あやめも嵐・雷・晴の炎を灯して武器の威力を高めた! すかさず粟根こころは硬化魔力を付与して鍔迫り合う!」

「複数の属性を使う者同士の戦いか。それと同時に、死ぬ気の炎と魔力の戦いでもある。静海このは・遊佐葉月・三栗あやめは、元々つつじの家という孤児院にいた。この三姉妹チームは、身体能力のみ魔力を使って、それ以外は死ぬ気の炎で戦うつもりのようだ。自らの覚悟を示した上で貪欲に勝ちを狙う。無論、静海このはの幻惑魔法はかく乱の目的もあるが、いざという時の撤退用でもあるだろう」

「! 爆煙が吹き飛ばされた! 桐野紗枝が嵐の炎を放射したようだ! とんでもない火力です! まさに嵐! 戦場を包んでいた煙が一気に晴れた! しかし死ぬ気の炎では幻惑魔法まで晴らすことはできない! 魔力の霧は辺りを包んだままです!」

「……常盤隊に注目」

「えっ!? ────! と、突然、都隊・静海隊の動きが重力を無視して緩やかになった! 落下スピード、慣性の法則が、スローになっています! これは……呉キリカの減速魔法か!?」

「全体に魔法を掛けるためには膨大な魔力を消費する。呉キリカは志伸あきらとコネクトして発散魔力を貰っていた。これなら一度の魔法行使で、対象が単体ではなく範(・)囲(・)になる。先ほど深月フェリシアと遊佐葉月が敵全体に魔法を掛けていたが、これも同様の理屈で魔力を節約していたはずだ」

「単体型の魔法を発散魔力によって範囲型に……!? これが本当の権謀術数!! し、Cランクとは比べ物にならない知恵が凝らされています! これは本当に刮目して学び取らなければいけません! ────しかし常盤隊の位置が依然として不明! 姿を現しません!」

「まだ都隊・粟根隊・静海隊・遊佐隊は、減速魔法を掛けられたことに気付いていない。範囲型だから周囲の自然現象や障害物まで減速している。自分と外部の認識速度が同様に減速している以上、それは彼女たちの認知領域にとって以(・)前(・)変(・)わ(・)ら(・)ず(・)等(・)速(・)だ」

「しかし常盤隊・純隊は、鈍足で隙だらけな敵を打ち抜かない! これはいったい……?」

「後背を脅かす五十鈴隊を警戒しているからだ」

「! まさか、誰もいない場所へ向かっていると思われた五十鈴隊でしたが、その先に常盤隊・純隊がいると!?」

「そうだ。さらにチームみかづき荘以外の部隊が集合しつつある。これを逃さぬ手は、黒江隊にないだろう」

「……! 黒江隊、動き出しました! 黒江をお姫様抱っこした万年桜は活性魔力で大跳躍! 一気に混沌とする戦場へ飛び立ちます! この大集合の事態に気付いた由比隊、撤退の足を止めて状況を窺う! このままではいいところを取られてしまう! 自らも混戦に飛び込むか!? それとも静観したのち漁夫の利に動くか!」

「畳の位を上げる。生き残る。どちらを優先しても自由だ。オレは強ささえ見せてもらえればそれでいい。暴れるも隠れるも好きにしろ」

「ここで五十鈴隊、三重合体魔法(トリプルコネクト)!? 五十鈴れんの修得魔法《追跡》と鎮静、綾野梨花の分解、暁美ほむらの増殖の三重魔力が追尾光線となって空に打ち上がる! 花火のように炸裂した光線は数百数千と増殖しつつ、的確にターゲットを狙って雨のように降り注ぐ────!!」

「いわば追尾ミサイルの豪雨────速度は高速。しかし減速している連中は音速のように感じられるだろう」

「減速対象者、防御が間に合わない────!! 着弾!」

 

 解説席の前に、都ひなのが現れて尻餅を搗く。

 

「あだっ!? クソッ! なんだあの速さは!? 青と紫の魔力は、最も推進力が低い特性を持つはずだ! たとえ赤が加わったところで、あそこまでの速度を叩き出すはずが────! それになんだか違和感が残る……」

「違和感の正体は、呉キリカの減速魔法を広範囲で喰らっていたからだ」

「────っ!? なるほど……そういうことだったのか……」

 

「しかし脱落者は都ひなの選手のみ! あらかじめ化学反応魔法で用意していた硬化薬品を仲間に配っていたのか。都ひなのの指慣らしで薬品が爆破! だがそれは一瞬の時間稼ぎにしかならない! 分解で硬化結界を削られて、鎮静追跡増殖魔弾が対象を狙う! が、それぞれ桐野紗枝は分解と鎮静、粟根こころは硬化を活性しつつ耐久、加賀見まさらは鎮静かつ透過で被弾回避、江利あいみは調和で光線を石化してそれを分解しダメージを削減! なんとか桐野紗枝と粟根隊は生存している! ダメージは甚大だが、都ひなののバックアップがなければ全滅していた! 一方、静海隊は幻惑の霧で追跡魔法をなんとか逃れたか! それでも着弾時の余波でダメージを被っている! 三栗あやめは無敵魔法があるが、ややかすり傷! 静海このはは鎮静で削減し、遊佐葉月は硬化活性でギリギリ凌いだか!?」

「遊佐葉月に関しては、自分の体に走査魔法を掛けて、致命傷を避けた点も評価できる。硬化活性は、分解増殖と相性が悪いため最終的に破られていた。そこで命中は当然として受け入れて時間稼ぎのために防御結界を張り、ギリギリで致命傷ではない部位に光線を命(・)中(・)さ(・)せ(・)た(・)んだ」

「なんと! 遊佐葉月選手なんともクレバーな対応! 被弾をあえて受け入れるとは肝が据わっている! そういう覚悟があるから死ぬ気の炎を灯せるのか!? ちなみに私的には江利あいみの対応も大変クレバーに感じました! そして今の爆撃は、常盤隊・純隊にも向かっていた! 常盤ななかは嵐と雨の炎の放射結界でチームを守りつつ、純美雨の偽装魔法で追跡魔法から逃れていたようだ! それでも爆破の余波でダメージは少なくない! ────さぁ、たった一撃で一網打尽レベルの痛撃を与えた五十鈴隊! この状況で誰を追撃する!?」

「したくてもできないだろうな。五十鈴隊も後背を脅かされている」

「黒江隊です! 大空から落下してくる黒江は、万年桜に投擲される! ビルより遥か高みから両手に剣と杖を持ち、一気に振りかぶる! これは────何をするつもりだぁああああ!?」

「語弊を恐れず解説するなら、風魔術と雪の炎の合体技だ。黒江は全てを凍結させて戦いを終息させるつもりのようだ」

「烈風が鋼鉄のビルを切り刻み、豪雪が地表を漂白する────!! なんだあの魔法の杖と魔剣は────!? あれが錬金術なのか! 瞬発力はありませんが、事前の準備次第で魔法少女と一般人という明らかな力の差を歴然と覆すさまはロマンの塊! まさか中堅者の魔法少女たちは、歴戦猛者の錬金術師に一杯食わされるのか────!!」

「そこまで舐めて掛かる奴は、この場には居ないだろう」

「! え────黒江さんの遥か頭上に暁美ほむらが出現!?」

「暁美ほむらの時間停止魔法だ。彼女は黒江の攻撃方法を知っている。事前に時間を止めて跳躍していたな」

「万年桜、黒江を守るべく暁美ほむらに向かいますが、傍らに投げられていた爆弾が起爆! 爆発を受けた万年桜が落下していきます! そして暁美ほむら、拳銃を構えて空中射撃! 黒江の両肩を打ち抜いた────!! 容赦がないっ!!」

「……いや、あれは麻酔銃だな。咄嗟に拳銃の種類を切り替えることができるのは評価点だ。相当、銃器類の扱いを練習したと見える」

「黒江失神! 落下していきます! このまま落ちれば即死は免れない!!」

 

 次の瞬間、解説席の前に黒江が落っこちた。麻酔が効いているのか深い眠りに落ちる。救護班の笹川了子が抱き上げて座敷に運ぶ。

 

「そして戦場は────白一面の雪景色! 全員、凍結しています!! 氷の中に囚われて身動きが取れない────!!」

「超広範囲の全体凍結攻撃だ。偽装魔法も幻惑魔法もあったもんじゃない。どんな小細工を弄しても、絨毯爆撃は全てを巻き込む。まぁ────透過魔法の使い手はす(・)り(・)抜(・)け(・)て(・)い(・)る(・)だろうが」

「! 加賀見まさら選手、透過魔法で氷の中から外に脱出! まるで幽霊のように氷の壁をするりと抜け出ました! 暁美ほむら着地! 両者、睨み合い! ところで悪魔さん、行動不能になった魔法少女たちは、まだ戦闘不能判定にはならないのでしょうか?」

「まだ秘策を練っている可能性がある。死ぬギリギリまではあのままでいい」

「期待されているぞBランク! おっと加賀見まさら動いた! 発散魔力で急接近! 鎮静を込めた魔法武具で切りつける! 暁美ほむらは盾でガード……しない! 受ければ鎮静を流し込まれて動きが鈍るため回避するしかない!」

「暁美ほむらは元々、運動神経が皆無だった。魔法少女になってもそれは変わらない」

「で、ですが、紙一重で加賀見まさらの攻撃を躱しています! あんな肉体の運用法は、魔法少女になって身体能力が上がった私でも不可能です!」

「暁美ほむらが運動できるようになった理由についてか? それは恐怖からおのずと生じる本能的な肉体反応を意識的に技術として昇華させたからにほかならない。要は、どう動けばいいかなんていちいち考えず、全てが反射的な行動で済むよう訓練したんだ。しかし物事を考えずただ反射で動くなんてのは、余計に恐怖となり足を竦ませるだけだ。反射的な動きが常に正解とは限らない。特に鋭くもない勘だけに頼る動きは、目隠ししたまま障害物競走で全力疾走するに等しい。何かにぶつかるという恐怖はないのか? 痛みは痛覚遮断で消せるとしても、戦闘では一回のミスが死に繋がる状況も珍しくない。つまり暁美ほむらは圧倒的な恐怖の中、それを克服して戦っていると言える」

「な、なぜそうまでして……そもそもどうやって恐怖の克服を……?」

「自分が傷つくより、親友が傷つく方が心配だから────そう考えているんじゃないか? それは答えになっていないと困惑する者もいるだろうが、彼女にとってはそれだけで恐怖を克服できる事実なんだ」

「そんな暁美ほむら、どうしても受けなければならない攻撃は拳銃の銃身で防ぎ、鎮静作用が拳銃から手のひらに伝わる前に手放して、盾から新たな拳銃を取り出しています! どうやら盾は収納・運搬の魔法を宿しているようで、サイズを問わず持ち歩けるようです!」

「志伸あきらに注目」

「! 志伸あきらは弱点発見魔法で、氷の柩の弱点を探ります! あの氷を解かす方法はあるのか!?」

「ある。だがそのためには全属性の魔力または死ぬ気の炎が必要だ。雪の炎は仮の名。真の名は死ぬ気の零地点突破。死ぬ気の炎のマイナスエネルギーで氷を発生させる。死炎界における伝説の技だ」

「なんと! となれば脱出は無理ゲーでは!?」

「死ぬ気の炎は魔法に耐性がない。転移系や脱出系の魔法があれば、氷はそのままに抜け出すことは可能だ。残念ながら純美雨の偽装魔法では、結果まで覆すことはできない。もし地面が凍結されないよう細工をしていれば、偽装魔法で閉じ込められたフリをして足場から脱出し、地面の中から奇襲を仕掛けることもできただろうが……どうやら、一手遅れて完全に封じ込められたようだ」

「常盤隊・純隊、大ピーンチ! 静海隊・遊佐隊も脱出の糸口がありそうにない! そこにチームみかづき荘が到着! 五十鈴れんと綾野梨花が迎え撃ちます!」

「この試合は修行が目的だからな。ここで仲良しこよしで共闘しようものならオレが出向いて鏖殺(おうさつ)していた。おそらく暁美ほむらの指示だろう」

「環いろはと綾野梨花、何やら会話している様子!」

「味方同士で戦う理由を聞いて、綾野梨花に今回の趣旨を諭されたようだ。これで環いろはも理解して本腰を入れただろう」

「やはりよく見知った者同士で戦うのは辛いのか! しかしこれは実践に限りなく近い練習試合! 結果によっては命が懸かっていますが、得点稼ぎをしたければただ敵を倒すだけではなく、自らの強さを証明しなければ悪魔に魂を奪われてしまいます! 現在、チームみかづき荘以外は充分に実力を見せたと言えるところ! ここで乱戦に参加できなかったみかづき荘が強さを見せつけるためには、五十鈴隊を完膚なきまで叩き潰す必要があります!」

「むしろ五十鈴隊に感謝するべきだ。チームみかづき荘の見せ場を残していてくれたんだからな」

「────っ!? こ、ここで加賀見まさら、発散魔力で透過魔法を範囲適用! 敵味方を問わず────氷の柩から脱出させたぁ────!?」

「いつやるかと思っていたが、役者が全員揃ったこの場面でか……どうやら加賀見まさらも、粟根こころを活かすために本気のようだ」

「加賀見まさら、透過魔法で姿を消す! 乱戦に紛れて首を横取りする気か! 暁美ほむら、すぐに撤退して五十鈴隊と合流! 常盤ななかと志伸あきらがコネクト! 真敵発見魔法と弱点発見魔法をダブル発散魔力で拡げ、敵を見定め、全体の弱点を探る! 静海隊、幻惑魔法を掛けつつ撤退! 混戦のリスクを避けたか! ────鼓星かずみ、ここで破壊魔法────!! 大通りの地盤が崩壊して時に隆起! ビルも倒壊して、もう地形がぐちゃぐちゃだ────!! 静海隊、退路を塞がれた! いや、全員四方を閉じられた! 跳躍して横たわるビルの胴体を飛び越えなければ窪地から脱出できないが、跳躍すれば空中で無防備、いいマトだ! これはチームみかづき荘、ここで勝負を決めに来たか────!!」

 

 その時、悪魔とその契約者たちが一斉に目を点にして呟いた。

 

『あ────』

「? どうしましたか、悪魔さん? ほかの教師のみなさんも────」

 

 悪魔のハーフソウルリングが反応する。その色は青と紫。つまり紫色のハーフソウルリングを持つ者が、青色のハーフソウルリングの助太刀魔法を行使した。あらかじめ水野むくは、恭弥アーデルハイトに助太刀魔法用の刀剣を渡していたのだ。そして悪魔とその契約者は魂レベルで繋がっているため、誰かが魔法を使うと、その兆しを把握できる。

 

「え!? と、突然、戦場のど真ん中に────学(・)ラ(・)ン(・)を(・)羽(・)織(・)る(・)謎(・)の(・)美(・)少(・)女(・)が現れたぁ────!?」

「……凪!」

 

 悪魔は慌てて席を立つ。

 

「恭弥はオレのところに飛んだはずだ! なぜ向こうに転移している!?」

「そ、それは……たぶん、有幻覚を使って空間を拡張しているから、少し位置関係がおかしくなってズレたのかも……」

「むく!」

「おう! Bの連中が死にかけたら連れ戻す。それでいいんだな!」

「お姉さん!」悪魔は焦るあまり、ついそんな呼び方をする。

「任せとけ! 負傷者の治療準備はバッチリだ! 一度に百人が致命傷を負っても、晴の守護者として絶対に助け出してやる!」

「守護者とか言うな良子!」マフィア嫌いの悪魔は、シトピ隼人の入れ知恵を糾弾する。

 

「え? え? あの、悪魔さん……いったいどういうことか解説を────」

「あいつは恭弥アーデルハイト! オレが今まで出会った中で一二を争う、最強の魔法少女だ! その実力(技巧)は巴マミより未熟だが、その才能(生態)は青天井! もはや人間とは呼べない。生物として性能が違う。そんなヤバイ奴だ!」

「恭弥アーデルハイトは……闇属性の魔法少女で、到着が遅れていると仰っていた最後の家庭教師ですか! しかしなぜ彼女がいきなり戦場のど真ん中に?」

「こちらに不備があった。すまない。だが良い機会だ。あいつの戦い方は参考にしなくていい。できるわけがない。その代わり本当の強者というものを目に焼き付けておけ。ああいう手合いから“どうやって生きて帰るか”……絶望せず、それを必死に考えろ」

「────、……っ! 恭弥アーデルハイト、魔法武具ではないトンファーを取り出して構えた!? リングからは雲の炎を灯しています! そして凶悪的な舌なめずり! 疾走! え────え……? あ、い、一撃で、一撃で常盤ななかを殴り倒した! そして姿を消していたはずの加賀見まさらを一蹴! トンファーに仕込み武器!? 分銅鎖を投擲して桐野紗枝の仮面を割った────!? あ、あまりに一瞬! し、しかも、何が恐ろしいって────恭(・)弥(・)ア(・)ー(・)デ(・)ル(・)ハ(・)イ(・)ト(・)は(・)一(・)切(・)魔(・)力(・)を(・)使(・)っ(・)て(・)い(・)ま(・)せ(・)ん(・)────!!?」

「言っただろ。あいつは人間としての規格に収まらない奴だ。魔法少女相手にも生身で肉薄できる。死ぬ気の炎がなければ防戦一方だが、死ぬ気の炎があれば互角に戦える」

「互角!? 常盤ななかを殴り倒した時、目にも止まらぬ早さでした! あれは────ただの腕力です! 常盤ななかが油断した可能性もありますが、続く加賀見まさらの気配を察したのも、特に何かしているわけではありませんでした。まるで野生の勘で透明人間の位置を察知したような……加えて桐野紗枝が攻撃意識を見せた瞬間、行動に出る前にたたきつぶしていました。あれはどう見ても死ぬ気の炎なんて使わなくても、既に格上だと思いますが!?」

「総合力の話をしている。いくら恭弥でも生身では魔法少女に為す術がない。一切の魔力を感じられないから一般人だと思って油断していた側面もある。だが今ので恭弥が只者ではないと承知したはずだ。そして圧倒的な謎の強さに漁夫の利を企もうなんて奴もいない。そこまで愚かな連中じゃないからな。もうこの場は────全てのヘイトを恭弥が集めた」

「全部隊、恭弥アーデルハイトを警戒して後退! そこで志伸あきらが弱点魔法を行使! 二葉さな・加賀見まさら・純美雨・桐野紗枝は、透明&偽装系魔法で姿を消す! 常盤ななかと呉キリカ、静海隊と遊佐隊、まるで示し合わせたかのように出撃! 江利あいみが行動予測魔法を行使! 恭弥アーデルハイト、常盤ななかの時雨華心流をトンファーで打ち砕く! もう片方のトンファーで呉キリカの一撃を防ぎにかかるが────ここで減速魔法! が、恭弥アーデルハイト、先程より早く動いて呉キリカの顔面をトンファーで打ち砕いたぁあああ!! 女の子の顔を破壊するとか、あの風紀委員長には容赦というものがないのか────!?」

「群れてる奴らは嫌いだからな。単騎で挑めばあそこまではしない……いや、普通にするか」

「やはり恭弥アーデルハイトはヤバイ奴なのか! 二葉さなとアイ変身! アイ・フェリス! 光の速さで恭弥アーデルハイトの携帯端末に侵入し、そこから出てきて奇襲を仕掛け────た、が、恭弥アーデルハイトの雲系リングが砕かれた!? それと同時にアイ・フェリス、突然胴体が白い針によって串刺しにされた────!?」

「既に開匣していた。動物型匣兵器の雲ハリネズミだ」

「ハリネズミ!? あ、たしかに空中にハリネズミが浮遊しています! しかも背中のトゲが膨張しているような……? 全身に増殖魔力を光らせていますが、同時に雲の炎も強く放出している!! その雲の炎の膜が恭弥アーデルハイトを守る! 斬撃も射撃もことごとく密閉力の高い雲の炎の絶対的遮断力で防がれる! これは完璧なオートガードだ! それに守られながら悠然と歩く恭弥アーデルハイトは、ポケットから雲系リングを取り出して指に装着! り、リングを使い捨てにしているだと────!? なんと罰当たりな!」

「恭弥は雲属性の生体波動が異次元レベルで高い。たとえAランク級の精製度を誇るリングでも、数回使えば耐えられず壊れてしまう。精製度の高いリングは高価であるため、どうせ数回で壊れてしまうなら、Cランク以下の安価なリングを使う。弱火でも二回、強火でも一回で壊れるが、そちらの方が安上がりなんだ」

「な、なんという才能か────恭弥アーデルハイト、次々と敵の攻撃を一撃で打ちのめし、無双の限りを尽くしている────! と、そこで三方からの奇襲攻撃! 純美雨の鉤爪、桐野紗枝の分解増殖枝分かれ光線、加賀見まさらの暗殺斬撃が迫る! しかしこれも難なく雲の炎でガード! 返す牙で加賀見まさらの首を折り! 純美雨の背骨を砕き! 跳躍! 青ざめて撤退する桐野紗枝を肉食獣は逃さないッ!! 胸部にクリーンヒット! 風穴が空いたか!? 右胸だ! 心臓は破られていない! ここで環いろはが動いた! あまりの残虐な戦いぶりにクロスボウの光矢を速射! これを雲の炎で防ぐ! 魔力属性の相性は、死ぬ気の炎には適応されません! 光と闇は互いに強く弱くても、光と雲は相性的に可もなく不可もなく。つまり、より純度の高いエネルギーを扱う者が勝利する! 恭弥アーデルハイトの矛先がチームみかづき荘に向いた! 資料には“群れる者を噛み殺す”と記述されていますが、味方の多さがアダとなったか! 背後から江利あいみの射撃を受けても恭弥アーデルハイトは不敵な笑みを浮かべて環いろはの胴体を打ち砕いた────!! さらに雲ハリネズミが高速螺旋回転! 江利あいみの腹部を貫く────!! み、見ていられない!! 血しぶきが、血しぶきが止まらな────いッッ!! ……いや! 粟根こころ、常盤ななかを抱き起こしてコネクト! 耐久魔法を発散魔力で範囲型にしていた! しかし恭弥アーデルハイトの攻撃が早すぎて間に合わなかった! しかしこれで全員の耐久力が飛躍的に向上! それは恭弥アーデルハイトも同様だが、そもそもが規格外! もはや敵わないのだから耐久面を強化させても不利にはなりません! なぜなら逃げるのですから! 全部隊、本能的に命の危機を感じて撤退を選ぶ! 全力遁走────!!」

「恭弥が逃がすとは思えないがな」

「!? 恭弥アーデルハイト、雲系リング三つから炎を噴射! 懐から匣兵器を取り出して注入! リングが打ち砕かれる! あ、圧倒的な光が戦場を包み込む! そして────な、なんだあれは────!? 巨大な雲の炎で出来た密閉膜が、ドーム状のように、窪地を覆った────! な、中はどうなっているのか!? スクリーンで見ることはできません! ただ最悪の状況です! 逃げるしかない相手と共に、変な空間に閉じ込められた! 今頃、中では────地獄絵図! 文字通り、Bランクの魔法少女たちが咬み殺されてしまっているのか────!!?」

 

 ふと、解説席の周囲にドタドタと死体が落ちてくる。環いろは、アイ・フェリス、由比鶴乃、深月フェリシア、鼓星かずみ、夏目かこ、アシュリー・テイラー。全員、満身創痍の血だらけ。起き上がる気力もない。環いろはのソウルジェムは九割が濁っており、治癒魔法を連続行使したことが窺える。それでも治癒したところでどうしようもない。次の瞬間には瀕死にされているのだから、治癒して胴体に穴が空き、治癒して四肢がちぎられ、そうして心が折られたのだろう。

 

「た、環隊、由比隊、鼓星隊、全滅です!」

 

 それから数秒と経たず常盤ななか、志伸あきら、純美雨、呉キリカが現れて地面に倒れる。起き上がる気配がない。

 さらに桐野紗枝、粟根こころ、加賀見まさら、江利あいみも同様の状態に陥る。

 

「常盤隊、純隊、都隊、粟根隊……全滅……!」

「加賀見まさらは透過魔法で脱出できた可能性が少しあったはずだ。増殖魔力の絶対的遮断力も含まれているため難しいだろうが、不可能ではない。それでも脱出しなかったのは、粟根こころを守るためだろう」

 

 そして五十鈴れん、綾野梨花。静海このは、三栗あやめ、遊佐葉月、美樹さやか、美凪ささらが現れて地に落ちる。

 

「静海隊・遊佐隊、全滅……しかし暁美ほむらの姿が見えません!」

「時間停止魔法で粘っているな。だが時間の問題だ」

 

 やがて暁美ほむらが解説席の前に忽然と現れて地に伏した。その体は致命傷だらけ。それを見た悪魔は驚く。どうやら時間停止魔法で逃げ回っているわけではなく、恭弥アーデルハイトを相手に白兵戦を挑んで回避に徹していたようだ。

 

(あの状況で自らを追い込み、恭弥を戦闘の修行に利用するか……やはり強くなりたい覚悟は本物のようだな。ほむら……)

 

「せ、戦闘フィールドには、もう万年桜しか残っておりません。そして恭弥アーデルハイト、高鉄のビル群を物ともせず雲の炎を灯したトンファーで次々とビル群を破壊して、まっすぐこちらに向かっています────!!?」

 

 Aランクの魔法少女たちが腰を屈めて臨戦態勢に入る。対する悪魔は解説席から離れ、恭弥アーデルハイトを迎え撃つ位置に立つ。

 爆発。ビル一棟に大きな穴を開けて恭弥アーデルハイトが現れる。

 

「き、恭弥アーデルハイト、獲物を見るような目で、悪魔を見ている……!? わ、我々は、いったいどうなってしまうのか────!?」

 

          †

 

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