アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
~17:30~
「続けて授業を執り行う。が、その前に────死ぬ気の炎の灯し方について説明が欲しい者が多数いるようだ。それについて解説してから十一限目に入ろう」
豆知識。死ぬ気の炎の灯し方。
「一言で済む。
突然の根性論に生徒一同は驚きを隠せない。今までの論理的な解説はどこへ投げ飛ばしてしまったのか。
「そうとしか言えないんだから仕方ないだろう。精神論で灯る以上、無理に理屈をつけて変な癖が付いたら永遠に灯らない。死ぬ気の炎はその名の通り、完全感覚派タイプのエネルギーなんだ。ただ────そうだな……」
悪魔は例え話を考える。
「バイク。いや車で例えるなら、できるできないはハンドルを左右どちらに切るかであり、やるかやらないかはアクセルをベタ踏みするかどうかである。実際に例を出そう」
悪魔は視線をやると、他教師がリングに死ぬ気の炎を灯す。
「シトピ隼人はリングに炎を灯す時“とっくに覚悟はできてるぜ”と口にしたが灯らなかった。それはなぜか? 言葉が真実ではなかったから? それは違う。オレは超直感で人の心が読める。その言葉は本心からのものだった。ではなぜ灯らないのか。それはおそらく、前提をクリアせず過程を既に始めていたからだ。生きている以上、既にエンジンキーは回しているものとして、
──そう、物事には順序がある。それは心理も同様だ。隼人の場合は、アクセルを踏むのは当たり前だから“わざわざ踏んでいるか確認しなくてもいいだろう”という横着慢心な考えが、リングに灯る炎を妨げていたと見える。そして、この手の解決策は、とりあえず初心を思い出すことだ。……最後に付け加えておくと、理屈を捏ねるならまず感情をきれいに吐き出してからにしろ、と言いたい。覚悟を語り、自分の言葉に酔いたいなら、まず酒を飲まなければ始まらない。そんな感じだ。────あと、“集中しよう”と考えている時点で集中できてない、という話にも通じるところがある。だから“灯そう”と考えるのは、実のところ得策ではない。灯すためには
悪魔は、理論的な話に見えて、やはり感覚的になっている解説を済ませる。それは本人も分かっている。
「ちなみに笹川了子という女は、常にアクセルをベタ踏みしてハンドルを握らない人間なので、常に死ぬ気の女としてリングは簡単に灯る。
水野むくも似たようなものだ。ハンドルは握っているが、鼻歌を歌いながら目をつむってアクセルを踏んでいる。かなりヤバイ奴だ」
「ははっ! 悪魔は冗談がうまいな!」
「…………」隼人は思う所があるようで、やや引き気味に青ざめていた。
「恭弥は“ムカツキ”で灯すようだ。独自理論だな。凪は
ジュリー凪はハッキリ言わないでほしいと言いたげに赤らむ。
「黒江はどうだった?」
「わ、私ですか? 私の場合は不安定で……灯る時と灯らない時があります……灯る時は大抵、死に瀕した時で……それ以外では灯りません」たとえ目の前で誰かが死にかけても。と、黒江は内心で自嘲する。
「こうした、死ぬ気の炎の灯り方にムラがある場合、それは何かしらの心理的問題を抱えていることがある。といっても思春期の少年少女なら、そこまで重大なことじゃない。いや、本人たちにとっては重大なんだろうが。それほど深く真剣に考えなくていい。というのも、簡単な解決策がある。それは盲目を意味するが、第一歩を踏み出すために必要な黒歴史でもある。それは────」
悪魔は生徒の眼を見据えて教える。
「死んでも譲れないものを、ひとつでもいいから見つけることだ。それが酔うための酒となり、心の着火剤となる」
そのために死ぬ気になれるなら、自分の
そう言って悪魔は話を締める。
「……なに? オレの場合はどうなんだと? オレは……守りたい人の顔を思い浮かべていると、自然と灯っている」
†
~17:50~
ふとジュリー凪は、道場の前に人の気配がしたことを察する。有幻覚で道場全体を覆っているため、人の気配には気付くことができる。それゆえ来客への対応は彼女に一任されている。しかし来客の存在に生徒が勘付いてしまうと脱走を企てられるかもしれない。故に凪は慎重に、幻覚で自分の偽物を作り、誰にも気取られず玄関口に急ぐ。
応接に出るためには、道場を覆う百江なぎさの遮断魔力結界をどうにかしなければいけない。が、特に凪が何をしたわけでもなく結界の一部がゲート化した。扉を開く。その先には一台のトラックが停車していた。運転席の窓が開かれるとリーゼントが顔を出す。
「並盛中学校・風紀委員会・副委員長の草壁哲矢ですっ!! ご無沙汰ですジュリー凪さん!! 委員長に頼まれて“風紀動物園”の子達を匣兵器に格納し、配達してきました。どの子も臆病なので大事に扱ってあげてください」
「わかった……」
ジュリー凪は、軽トラの荷台に積まれた大きな革袋ひとつを背負うと、道場の中に戻る。草壁哲矢も並盛町に戻るためトラックを発進した。
†
十一時限目。座学と実践の併用【魔法学&匣兵器学:魔法生物とは・匣兵器とは・匣兵器の系統・匣兵器の機構】
「さて、間に合わなければ歴史の授業から先に始めようと思っていたが……ようやく届いたか。────それではこれより魔法動物に関する授業を始める! これは命の大切さと、知的生命体としての覚悟を問いかける道徳の授業となる。心して聞くように!」
悪魔の真面目なかんばせを見て、自然と生徒たちの背筋が立つ。
「魔法少女とは、キュゥべえと契約を交わした人間の女性を指す。では、魔法動物とは? その名の通り、キュゥべえと契約を交わした人間以外の動物を指す」
『────!!』
悪魔と他教師・助手たちは、一斉に開匣する。
「魔属性の仔ライオン。火属性の仔猫。水属性の燕。闇属性のハリネズミ。水闇無の三重属性の夜鷹。こいつらは全員、魔法動物だ」
そこで悪魔は直感する。なぜキュゥべえは動物と契約するのか。そもそもなぜ人間の女性だけと契約するのか。
「……まぁ……ここまでくれば気になるか。しかしそれが気になるということは、魔女化や魂についての件は精神的に落ち着いたと判断していいな? では少々脱線するが、キュゥべえの目的を簡潔に話そう。
まずコイツの真名はインキュベーター。地球外生命体だ。目的は宇宙の延命維持。その手段として魔法少女が魔女化する際に得られる莫大な感情エネルギーが必要だ。その手段を果たす尖兵としてインキュベーターは世界中に散らばっている。……だからって殺したらダメだぞ。キュゥべえが居なくなれば地球から魔法少女が消えて魔女だけが残る。この寄生虫とは末永く巧く付き合っていくしかないんだ。────以上。歴史の授業でも話すかもしれないが、あとの詳しいことは、ここにいるインキュベーター以外に聞くといい。まかり間違って激昂して殺されたらたまらないからな。こいつはオレの大切な友人なんだ」
悪魔は腰に提げたDキュゥべえを格納している匣兵器を叩く。
「話を戻す。魔法動物の誕生理由を簡単に説明しよう。当然、歴史も少し混ざる。
三百万年前。地球に降り立ったインキュベーターは、まず感情を持つ生命体たる人間に目をつけた。最初期は実験として人間以外の動物と契約したこともある。それが魔物化した姿として有名なのは、ギリシャ神話のヒュドラが代表的かな。しかし動物は人間と比べて意思疎通が難しく、契約までの道のりが困難であるため、神代が過ぎる頃には諦めて、契約対象を人間だけに絞った。やがて人間の中でも思春期の少女に絞る。なぜかというと、思春期の少女の方が感情の波が強いからな。魔女化の際に強い感情エネルギーを得ることができる。血も涙もない合理性だ」
悪魔は、生徒たちが話についてこられるよう一拍置く。
「だが、打ち切られたはずの魔法動物は、その後も生まれてきた。中世期における妖怪の雷獣、魔物のコカトリスなどがそれに当たる。それはなぜか? Dキュゥべえ。代わりに解説してくれ」
悪魔は開匣する。結界の中で尻尾を振るキュゥべえは、無機質な赤い目を微動だにさせず答えた。
「ではおさらいしながら話そうか。確かに悪魔の言う通り、僕たちは人理────魔術世界における人類史において、多くの動物と契約を交わし、数え切れないほどの魔法動物を生み出してきた。そして実験と検証の繰り返しの結果、それが非効率的なものだと分かればすぐに手を切ったよ。それなのに僕たちが非知的生命体の動物と契約を結び続けるわけがない」
「ということは、黒幕がいるんだな」
「そうとも。人間の少女なら喜んで契約を結ぶけど、動物なんてもうお払い箱さ。つまり僕たちは好きで動物と契約しているわけじゃない。僕たちを捕まえて拷問して無理やり動物と契約させる存在がいるんだ」
「たとえば? 順を追って話してくれ」
「最初期の実験といえば神代だ。北欧では大神オーディンが、ギリシャでは天空神ゼウスや海神ポセイドンが、時おり僕たちと交渉してきた。こちらも魔女化を促進させるため、お互いに利用する場合もあった」
「しかし神代は廃れて人間の時代が始まった。神代の動物は幻獣と言って、人間以上の知性と感情を有していたから契約していた側面がある。だがそれも消えた今、先史時代以降、インキュベーターは動物との契約を非効率的だと言ってやめた」
「でも島国では神秘が残りやすい特性もあって、ブリテン諸島や日本列島では、中世期において悪いシャーマンや悪い陰陽師が僕たちと利害関係を結ぶことがあった。妖精や妖怪の誕生は、大抵こうした場合に因むものだ」
「誰かの魔女化を促すためなら協力する時もあったが、あくまで拷問されて無理やり契約させられた、という点を強調するんだな」
「まるで僕が被害者になりたがっているような物言いはやめてほしいな。こちらとしても本意ではない場面が多かったんだ。魔法動物の魔女化を魔物化と言うんだけどね。魔物は神代において、常に人類を苦しめてきた。時には人類が滅んでしまう危険も多々あった。僕らとしても穏便に事を進めたいんだよ」
なんだか口論のようになってきた悪魔とインキュベーターの会話。
悪魔は一旦落ち着いてDキュゥべえを匣に戻し、話をまとめる。
「こうした様々な事情……主に人間の欲望によって、魔法動物は誕生する場合が多い。もちろん知性の高い動物は感情も豊かな場合が多く、自らインキュベーターと契約を交わすことがある。オレのナッツがそうだ」
「ガフッ!」
「魔法動物の誕生由来はこの程度でいいだろう。次は現状の問題を話す。魔法動物は基本的に知能が低い。人間の子供かそれ以下だ。つまり大抵の魔法動物は“グリーフシードの有用性を理解していない”」
『────!』
「そうだ。動物とインキュベーターは基本的に会話できない。契約した魔法動物は超常的な力を手に入れたことで私欲を満たすが、すぐにソウルジェムが濁りきって“魔物化”する。オレはそういった魔物を何度か退治したことがある。その背景には、常に黒幕がいた。魔女化やソウルジェムの真実を知った魔法少女がインキュベーターを捕まえて、無理やり動物と契約させて魔法動物を手駒にしていたんだ。まぁそんなことがあったのは両手で数えるほどしかないが……いつの世も技術を悪用する人間はいるってことだな」
その時、障子が開かれた。あくびをしながら恭弥アーデルハイトが入ってくる。
「でも僕たちは、そんな魔法動物を保護している。魔物化しないようにね」
『────!!?』
「主に悪魔が“魔法動物を捕まえたから魔物化しないよう世話してやってほしい”って言って、勝手に僕に預けてくるんだけどね。そんなことが何百回も続いて、うちの庭はもう動物園さ」
「悪いな。本当に助かってる」
「礼は要らないよ。たまに獰猛な魔法動物がやってくる時は
恭弥アーデルハイトの凶暴な顔つき。それに生徒たちは冷や汗をかく。
「でも、魔法動物が何百匹もいると、その全てのソウルジェムを浄化する手段がない。つまり圧倒的にグリーフシードが足りないんだ。魔女はどこにでもいるけど、常に近くにいるわけじゃないからね。そこで僕らは一計を案じた。────匣兵器だよ」
「元々は死炎界に伝わる現在進行形の極秘プロジェクトなんだが、死炎界に詳しい
「彼の知恵を借りるのは癪だったけど、小動物に罪はないからね。そこの銀髪不良とジュリー凪の助け──彼女たちの知恵と施術魔法──を借りて、魔法型匣兵器を開発したんだ」
悪魔は匣兵器を掲げる。
「匣兵器とは、死ぬ気の炎または魔力を原動力とする新兵器だ。おそらく十年後には死炎界で主流となる武器になるだろう。死炎型匣兵器の場合、武器は元々ミニパーツとして作製し、動物は拡縮実験を施して匣兵器に格納する。魔法型匣兵器の場合、単純に施術魔法で武器も魔法動物も
「その精神面の問題も、動物的心理学の観点からメンタルケアを施している。たとえば僕は動物会話魔法を持つんだけど、それで少し話をすれば分かってくれる子が多い」
「動物は合理的だ。以前の自分より優れると証明されたなら素直に従う奴が多い。もちろんそうじゃない奴もいるけどな」
「話を戻すよ。魔法型匣兵器の最大の特徴は、その中に格納されている間、
「そして匣兵器はエネルギーさえ注入すれば中身が飛び出す。裏を返せばエネルギーを注入しなければ実質、魔法動物はコールドスリープ状態のままというわけだ」
「けれど、それは少し寂しい」
恭弥アーデルハイトから“寂しい”という言葉が出てくるとは思わなかった生徒たちは困惑する。戦闘を愉しむ怖い人かと思いきや、小動物には優しいという側面があるようだった。
「オレも同感だ。そこで恭弥は“里親”を捜したいと言ってきた。オレは考えに考えた末、ほかの街と比べて神浜市の魔法少女に“優しい奴が多い”という事実を利用することにした」
『────?』
「まぁ魔法少女の母数が多いから優しい奴も多いだけで、同様に悪い奴も多くいる。全体の民度が高いわけではない。というか民度は希に見るクソ加減だと思っている。特に東西問題に関しては辛辣に」
急に神浜市を上げてきたかと思えば下げてきた悪魔。好感度調整の一環だろうか。
しかし神浜市の魔法少女たちは、特に言い訳を述べることはない。民度に関する問題は事実だからだ。さらに言えば、その問題を解決しようと魔法少女になった子達も多いからだ。
「悪魔」
「分かってる。……今回の道場は、お前らを強化するためでもあるが、恭弥の頼みを達成するためでもある。────凪」
玄関口から戻ってきたジュリー凪は、サンタクロースのように大きな袋を担いできた。その中身を床に大放出。コロコロと匣兵器が転がり、すぐに山のように積み重なった。
「この匣兵器の中身は、全て魔法動物だ。そしてオレは、この魔法型匣兵器の魔法動物たちを、お前ら生徒に預けたいと思っている」
『────っ!?!?』
「しかしオレは友情のみを信じて動く人間じゃない。オレは隼人と凪に頼み、魔法動物が自分の飼い主となる魔法少女と
『────?!』
「何を驚いているんだい? 飼い主が死んだら誰がペットの魔物化を止めるの? 周りに被害をもたらす前に一緒の墓に入るなら、そっちの方が風紀を守れる」
「ただし
『────ッ!!?』
一方的なリンクとはそのことかと、魔法少女たちは恐れおののく。
「つまり、どうしても魔法生物を死なせたくなかったら、
それは憐憫。可哀想という上から目線。その傲慢さに少女たちは気付くだろうか。それでも使命感さえ持ってもらえればそれでいい。良くない教導のやり方だが、悪魔は魔法動物を利用することで、魔法少女たちの心を、真摯に命と向き合わせる。
そこで恭弥が言った。
「僕としては、魔法少女も魔法動物も
「だが身勝手な安心だけはするな。基本的に相打ちならば上々。大抵は魔女を倒せず負けて死んで終わる。自らの穢れた魔女の手でペットを殺したくなければ……ペットに殺されたくなければ……魔女化する前に潔く自害しろ」
「もちろん君たちがそんな潔く自害できるとは露ほども思っていない。だからそこまで深く考え込まなくていいよ」
悪魔は教卓を叩き、魔法少女の意識を集中させる。
「いいか。これは覚悟の授業だ。命を賭けて彼ら魔法動物を、より良い幸福な明日に導きたいと思えるなら────この悪魔の所業とも言える業を背負い、これからを逞しく生きてほしい。責任は、覚悟なくして生まれない。お前らにその覚悟ができたのなら……お前たちのリングは、じきに炎を灯すだろう」
悪魔は目配せする。すると教師一同は一斉にリングを灯し、莫大な死ぬ気の炎のエネルギーを全ての匣兵器に注入した。次の瞬間、様々な魔法動物が庭先に飛び出して草原を駆ける。一気に動物園となった道場の修練場。種々様々な鳴き声が響き渡り、一転して道場はアニマル天国となった。
「全員、庭に出ろ。そして自分だけの相棒を見つけろ。嫌とは言わせん。こっちは
「遺憾ながら我が風紀財団も、この数の動物を養うのは難しくなってきてね。ただ────君たちに預けた後も様子を見に行く。もしその時、魔法動物の具合が悪そうだったら────容赦なく飼い主を咬み殺すから、そのつもりで」
悪魔は庭に出る。そこで右肩を恭弥アーデルハイトに掴まれた。
「まって。あっちは君がいなくても勝手にやるさ。その間……僕は君を並中に連れ帰らなければいけない」
「…………風紀委員長は仕事が多くて大変だな」
「その仕事の半分は君のせいだよ」
瞬間、グローブとトンファーが激突する轟音が爆発した。全ての少女と動物が驚き、最強の悪魔と最凶の風紀委員長の激戦に目を点にする。その戦いは互角。否、悪魔が押されている。だが逆転勝利魔法で趨勢がひっくり返る。そこで恭弥はさらにパワーとスピードを引き上げて追い抜く。それは頂上決戦とも言える熾烈な激闘。
そこでシトピ隼人が慣れたように手を叩いた。
「おい! 後ろは気にすんな! それより動物たちがビビってる! さっさと落ち着かせねぇか! 凪! さっさと幻覚で十代目とあの風紀野郎を隔離しろ!」
「いまやってる……」
「ははっ! あのふたりは相変わらずだな! ──あ、それとアドバイスだ。自分と同じ属性の魔法動物を仲間にした方がいいぜ! 違う属性だと相性が悪くて、魔力や死ぬ気の炎を注入するとき、パワーにならないからな!」
そこで魔法少女たちは問いかける。魔法動物なのに、注入するのは魔力ではなく死ぬ気の炎でも良いのかと。
「あぁ。それはオレが設計して凪が発明した、死ぬ気の炎を魔力に変換する機能が匣兵器に搭載されているからできることだ。だから死ぬ気の炎でも問題なく魔法型匣兵器の魔法動物は動き出すぜ。(ただ死炎から魔力の変換効率がちょっと悪くて、魔力を注入するより性能は若干落ちるが……それも誤差の範囲だ。戦闘で使う分にはなんの問題もねえ) わかったらさっさと相棒を選ばねぇか!」
魔法少女たちは、自分より生き抜けない弱い命を前にして、様々な感情が揺れ動く。
命とは何か。魔法少女とは何か。魔法動物とは何か。飼い主・ペット。仲間、相棒。
命に対する責任。考えれば考えるほど重くなっていく覚悟。今までにない倫理思考。
庭先にホワイトボードを持ってきた笹川了子が図を貼る。それは魔法動物の原種名をまとめた一覧。つまり、今この庭で自由に遊んでいる動物たちの種類である。
アライグマ、レッサーパンダ、アナグマ、カワウソ、クズリ、スカンク、フェレット*、ラッコ、犬、狐、コヨーテ、オオカミ、ジャッカル、タヌキ、ドール、フェネック、リカオン、ヤブイヌ、クマ、ヒグマ、パンダ、シロクマ、マレーグマ、ハクビシン、マングース、ミーアキャット、ハイエナ、アムールトラ、ヤマネコ、ライオン、オセロット、カラカル、チーター、ジャガー、ヒョウ、黒ジャガー、クロヒョウ、トラ、ピューマ、ベンガルトラ、ホワイトタイガー、ユキヒョウ、アシカ、オットセイ、アザラシ、セイウチ、サル(モンキー)、マントヒヒ、マンドリル、リスザル、ゴリラ、チンパンジー、オラウータン、スローロリス、テナガザル、キツネザル、ヤマアラシ、カピバラ、ネズミ、リス、プレーリードック、ムササビ、モモンガ、ビーバー、カバ、イノシシ、牛、水牛、バイソン、オリックス、ツノヒツジ、羊、カモシカ、ヤギ、ローンアンテロープ、キリン、アルパカ、ラクダ、リャマ、鹿、トナカイ、ヘラジカ、馬、シマウマ、ポニー、ロバ、サイ、クロサイ、シロサイ、バク、マレーバク、ウォンバット、コアラ、タスマニアデビル、カンガルー、ワラビー、コウモリ、マナティー、ジュゴン、イルカ、シャチ、ゾウ、ウサギ、ハイラックス、トガリネズミ、アルマジロ、アリクイ、ナマケモノ、イタチ、モグラ、ハムスター、ゴリラ、オコジョ、シマエナガ、ハリネズミ、スズメ、インコ、アヒル、ハト、カラス、コンドル、フラミンゴ、ツル、コウノトリ、サギ、ハシビロコウ、タカ、ワシ、フクロウ、キジ、カモ、ハクチョウ、カモメ、カワセミ、チドリ、カメ、カエル、イモリ、ヘビ、トカゲ、カメレオン、イグアナ、ワニ、アゲハチョウ、モンシロチョウ、ルリタテハ、カイコガ、蛾、ホタル、トンボ、ハンミョウ、クワガタ、カブトムシ、コガネムシ、カナブン、ホタル、テントウムシ、蜂、セミ、アメンボ、蟻、バッタ、キリギリス、スズムシ、イナゴ、コオロギ、カマキリ、ゴキブリ、クモ、サソリ、ムカデ、カニ、エビ、フジツボ、ミジンコ、ダンゴムシ、カブトガニ、トビムシ、カタツムリ、メダカ、キンギョ、カクレクマノミ、アンコウ、クラゲ、フグ、ヤドカリ、ウミヘビ、タコ、イカ、ナマコ、イソギンチャク、シャコ、ウツボ、エンゼルフィッシュ、ハリセンボン、タツノオトシゴ、マンボウ、シーラカンス、クジラ、トド、ウミガメ、ペンギン、サメ、エイ、ウニ────ここから先はホワイトボードからはみ出しており、かつランボの鼻水で汚れてしまって読めない。
「ランボさん恐竜がいいー! 強くてすごくて簡単に勝てちゃうもんねー! 魔女なんてイチコロころころ~!」
「ここに恐竜なんているわきゃねぇだろアホ牛! ……だがまぁ、戦力面を重視して選ぶのも悪かねぇ。互いに生き残る為だからな」
魔法少女と魔法動物のふれあい。その中で、互いに
そこでシトピ隼人は、いま恭弥アーデルハイトと戦っている悪魔に代わり、教鞭をとる。
「ちなみに。今お忙しい悪魔様の代わりに言ってやるが────死ぬ気の炎を灯せねぇ軟弱野郎は“
『────!』
「反対に炎をともせた奴は、覚悟があって、果たすべき責任をしっかりと自覚できている奴だと判断する」
シトピ隼人は、この道場を開いた悪魔の思惑を、まだ十二分には理解していない。だが自分の思う十代目の素晴らしさを信じて、きっと悪魔ならこう言うだろうと代弁する。
「それでも炎を灯せねぇ奴は……その理由を十把一絡げに言っちまえば、
シトピ隼人は腕を組んで仁王立つ。
「そしてこれはオレの考えだが────今! 死ぬ気の炎を灯せる奴らに言わせてもらう! 覚悟があっても事情があって無理で、どうしても魔法動物を飼える気がしないってんなら、手を引くのも英断だ。炎を灯せたからっていう半端な覚悟で引き取られても困るからな! それに魔法動物を引き取らなかったからといって覚悟がないわけでもねぇ。その反対も同じことで、魔法動物を
そのシトピ隼人の言葉に気付かされた魔法少女も多いのか。真剣な眼差しになる生徒が多い。
そして魔法動物と真摯に向き合うことで、死ぬ気の炎を灯す者がぽつぽつと現れる。
それを実際に目にしてシトピ隼人は感激した。
(さすが十代目兼悪魔様だぜ! 神浜市の魔法少女は、東西分裂に躍起になる祖世代・親世代を反面教師にしているためか、倫理的に優れている奴らが多いと仰っていた。ならば魔法動物を通すことで“守る覚悟”に目覚めやすいのではないか。そうすれば灯すのが難しい死ぬ気の炎も、自然と発現する────その予想はドンピシャで当たっていた! 特にCランクの連中は、優しい気持ちは本物でも実力が伴わないことで自信なさげ、死ぬ気の炎が灯らない奴が多かった。けど今、魔法動物と交流し、彼らと一緒にこれからを戦い抜くというなら、
次の瞬間、有幻覚の隔離空間を打ち破って悪魔が撃墜した。着弾。周囲の魔法少女と魔法動物たちは吹き飛ばされてクレーターが形成される。
「ぐっ……!!」
一方、道場の屋根では片腕を抑える恭弥アーデルハイトがいた。どうやら戦いは痛み分けで一旦終わったようだ。
そして悪魔は全方位の心を直感する。
「────隼人。オレが居ない間によくやってくれた。オレが言うべきことを言ってくれたようだな。台本も用意していないのに……」
「十代目兼悪魔様! ご無事ですか!? ────いえ、オレはオレが信じる十代目兼悪魔様の言いそうなセリフを言っただけで……勝手なことしてすみません!」
「その兼ってやつやめてくれないか? ……まぁ結果オーライだ。これで
「
「……お前、器用なことするな?」
口では悪魔様。心では十代目。
悪魔は溜め息をつくと、特に何も言わず首を回す。調和の力で折れた骨をボキボキと直してコーティング。
「あー……ところで、お前ら。ある程度自分の相棒を見繕ったなら、まだ決定していなくてもいい。話を進めたい」
『…………??』
まさか死ぬ気の炎を灯させるために魔法動物を預けると嘘をついた。なんてことは言わないだろうか。と、一部の心を直感する。もちろんそんなことはないと言いたげに、悪魔は今までで一番、真剣な表情で口にした。
「ポケモンって、知ってるか?」
†