※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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第4.9章 水着魔法少女 カミハマ・フェスティバル ‐薄暑の海宴in時女一族‐



第4.9章 水着魔法少女 カミハマ・フェスティバル ‐薄暑の海宴in時女一族‐
5月30日(火曜)【明日から始まるお祭りは、みんなでいっしょに楽しもう!!!!!】木崎衣美里


 

 悪魔一行がフランスから帰還して五日。今日も今日とてみかづき荘は日常的な朝を迎える。

 

 早朝六時。七海やちよ起床。陽射しを迎える天窓の下、洗面所で溜まった洗濯機を回し、いつものルーティンで洗顔・化粧水・美容液を使いこなし、美肌を保つ。さらに健康的な美肌のアクセントとして魔力を少々。発散魔力は毛穴汚れの除去に活用でき、鎮静魔力はニキビ予防に最適。その後、台所へ向かい、エプロンを着て朝食の支度を始める。

 

 一方その頃。二階の空き部屋では、現代風のパジャマを着たタルトが窓を開けて伸びをしていた。窓辺から顔を出して裏庭を見下ろせば、桜を降らせる万年桜を中心として、多種多様な愛らしい動物が駆け回って遊んでいる。タルトは、日本はこうもかわいらしい動物がいるのか、フランスではお目にかかれなかった、眼福です、などと言うが、聖杯の知識を得ているリズは、それは少し違う、あれはポケモンというフィクションの存在だ、と言い返す。ならば、なぜ現実に存在しているのか? ふたりは首をひねる。タルトは、奇跡も魔法もあるのだから、そんなこともあるだろう、と納得。対するリズは、それでいいのか、と納得しかねていた。

 

 ふと裏庭倉庫から黒江が顔を出す。手元には錬金術の壺(アルケミーキット)。挨拶を交わすタルトと黒江。黒江は壺の中をかき混ぜると、たくさんの食べ物の素材を錬成して裏庭中にばらまく。それを取り合いながら食べるポケモンたちや、仲良く分けて食べるポケモンたち。

 

 やがてジュリー凪とイーピンも顔を出す。寝ぼけ眼のフゥ太も出てきて、黒江と共に四人は洗面所へ。

 

「はー。都会ってこんなに騒がしいんだなー。朝日が昇ったばかりなのに自動車がビュンビュン走ってるー。これはワクワクが止まりませんねー。今日はゲーセン行こうかなー、レストランもいいなー。おいお前らー、放課後はわかってるよなー」

 

 ふと屋根の上からフランの声。タルトが「危ないですよ」と注意するが、当のフランは「どこにいようとミーの勝手ですのでー」と跳躍。黒江から貰った霧系リングによって、悪魔が用意した匣からゲッコウガを開匣。今日も神浜中を散歩して遊び呆けるようだ。そして放課後になれば学校帰りのフゥ太、百江なぎさや環ういと合流し、イーピンや千歳ゆまも混ざって門限まで遊ぶ。ただし深月フェリシアとランボはクソうざいので、えんがちょする。すると深月フェリシアは涙目で唸って怒り、ランボに至ってはバズーカぶっぱなしてくるので、これは面倒だ逃げるに限る。

 

 本邸の一階。階段から環姉妹とリリスが降りてくる。それに続き、二葉さなと背後霊のように付き従うアイ、暁美ほむらも同じタイミングで起きた様子。彼女たちはポケモンたちの鳴き声に起こされたことについて苦笑まじりに話しながら洗面所に向かう。黒江一行と鉢合わせして挨拶。これだけの人数が揃っても洗面所を使う順番を作る必要はなく、広場の洗面台でそれぞれ朝の支度をする。

 

「なぎさー、かずみー、フェリシアー、ゆまー、フランー、もうすぐ朝ごはんよー、起きなさーい」

「なぎさは大人なので呼ばれなくても起きてるのです~」

 

 七海やちよの呼び声。ちょうど階段を下りてくる百江なぎさは目をこすっている。朝ごはんという名前に反応して即時覚醒した大食漢の鼓星かずみはドタドタと階段を降りる。深月フェリシアは無理やり起こしに行かないと自分では起きてこないだろう。目を覚ました千歳ゆまはあくびしつつゆっくりと歩き出す。フランに関しては、冷蔵庫から食材が少し減っているので、おそらく勝手に食べてまたどこかへ行ったのだろうと七海やちよは判断する。

 

「まったく……せっかく悪魔が準備したのに、フラン(あの子)は学校にも行かないで……」

 

 呼び鈴が鳴る。直後、玄関が開かれて由比鶴乃の声が響く。

 

「おっはよー! 出前帰りに寄っちゃったー! やちよー、私の朝食のぶん、あるー?」

「おはよう、鶴乃。魔力パターンの反応が近かったから、どうせ寄ると思って作っておいたわ」

「さすがやちよー! それじゃあ、おじゃましまーす!」

「ついでにフェリシアを起こしに行ってくれる? 」

 

 由比鶴乃は靴を脱いで揃えると、居間(リビング)へ向かいながら作業服(万々歳の白エプロン)を脱いで学生服をあらわにする。途中、靴箱の隣りにある立ち見鏡で一つ結び(ポニーテール)が微妙にズレていることを発見した由比鶴乃は、紐を口に咥えて結び直す。居間と台所を通り過ぎて階段を駆け上がる際、裏庭に続く廊下にて、洗面所から出てきた環いろはたちと顔を合わせ、にこやかに挨拶。二階に到着すると部屋から出てきたタルトと鉢合わせして「おはようボンジュール!」と元気に挨拶。タルトは流暢な日本語で「おはようございます」と返し、手を振ってすれ違う。

 

「さぁ、おきろーフェリシアー!」

 

 深月フェリシアの自室に突入した由比鶴乃は、あたたかい毛布にくるまる金髪の美少女から布団を剥ぎ取り、そのかわいらしい寝顔が一転、歯ぎしりして唸り声を発する獣の顔に変わる様子を見つめる。

 

「うぅ~なにするんだ鶴乃~……────ふぎゅ! ふは、アハハハハやめろくすぐったいって!!」

 

 笑顔の由比鶴乃は無言のこちょこちょ攻撃を仕掛ける。それでようやく目を覚ました深月フェリシアはお返しとばかりに両脇腹をつかみに行こうとするが、由比鶴乃は階段脇の廊下まで逃走。そこで掴まり反撃されるが、計画通り。布団どころか自室から出てきた手前、わざわざ戻って二度寝するのも手間だと感じた深月フェリシアは、ふわぁとあくびしつつ仕方ないと呟いて一階に降りる。

 

「やちよー! 由比鶴乃、任務完了しました!」

「ありがとう、鶴乃。────って、こらフェリシア。なにしれっと食卓に着いてるの。顔を洗ってきなさい!」

「えーめんど~」

 

 深月フェリシアが洗顔を終える頃、みかづき荘の住人は、そのほとんどが食卓に集まっている。悪魔は食事をしない上、寝室にも居なかった。フランは冷蔵庫から食材を盗み食いしてからの単独行動。しかもレンジでチンを覚えたのか、肉類の冷凍食品しか食べていないとわかる。

 裏庭で遊びまわっていたポケモンたちも戻ってきて、それぞれの主(あるじ)の匣兵器の中に引っ込む。同時に万年桜も戻ってきた。彼女は裏庭にウワサ空間を展開することで、外部の人間がポケモンを目撃しないよう目を光らせており、さらにポケモンが外へ逃げ出さないよう見守る役目も任されている。ポケモンたちによる動物園のような喧騒があっても近所から一件も苦情が入らないのは、ひとえに万年桜のおかげである。

 

「もう七時よ。早く食べないと学校に遅刻しちゃうわ。さぁはい、いただきます」

『いただきます!!!!』

 

 エプロンを脱いで食卓に着いた七海やちよは合掌。そうして賑やかな朝食が始まった。

 

          †

 

 正午、下校時刻。午前中に大学の講義や高校の授業、騎士団構成員の指導が終わった七海やちよ・都ひなの・和泉十七夜(エッダ)は、神浜市における東西不可侵地帯の中央区に集結。

 

 時計台の内部。文字盤の裏側が日光に透ける。そこに三つの影が現れる。中央と東西の代表者が一堂に会す理由は、現状においてただの一件のみ。

 

「揃ったか。やちよ、十七夜」

「十七夜ではない。エッダだ」

「……。十七夜の天然ぶりは慣れたものだからさておき。お互いの日程が取れたことで、ようやく始められるわね」

「あぁ、そうだな……前々から二人には相談したいと思っていたが、日常面の忙しさを理由に引き伸ばしていた。その顛末があれ(聖杯戦争)では、さすがに笑えない……これでは代表者失格だ。そのため今回は無理をしてでも集まってもらった。火急の案件だからな」

「聖杯戦争か……あれに関しては無理もない。悪魔のおかげで世界は救われたが、あれを予測できる者はここに誰ひとりとしていまい。故にそう肩を落とすな、ひなの」

「そうよ、あなただけの問題じゃないわ。それより、完全にマギウスのいいようにされたのが問題よ。私は既に覚悟を決めているわ。たとえ死人が出ても事態の収拾を図る所存よ」

「……そうか。それでは始めよう。対マギウスの作戦会議を」

 

 マギウス。魔法少女至上主義を謳い、全ての魔法少女を救済すると宣言する秘密組織。だがその実態は非道徳の極みにある。魔女と似て非なるウワサなる存在を生み出して使役し、多くの一般人の生命力を奪っている。そのことをマギウスの翼と呼ばれる配下には黙っており、下位の配下たる黒羽根には洗脳まで施している。だが上位の配下たる白羽根は、マギウスの実態を知った上で従っている者もいるようだ。

 

「そういった白羽根は、自らが悪に堕ちた決意があるから、そうそう話し合いには持ち込めないでしょうね。道徳面を諭しても、かえって頑なになるだけだわ」

「一度悪事を働いた自覚が、かえって元の道には戻れないという心理的な自罰効果も働かせている、ということか。シンプルにクソな奴もいるだろうが、やちよの言い分には覚えがある。というのも我が常闇騎士団の構成員は、そのほとんどが元々は白羽根や黒羽根だ。彼女たちは今も自分たちが犯した罪に悩んでいる。夜毎悪夢さえ見るほどだ」

「不憫だな……ともあれ交渉は難しい。となれば、残るは戦いだけ……しかし、本当にそれしかないのか? 私は嫌だぞ……仲間を危険に晒したくない。私だけが戦って解決できることなら、殺し合いだってしてやる。だが……マギウス自体を相手取れば、それはもはや“戦争”だ。殺し合いの規模がバカみたいにデカくなる。洗脳されている黒羽根は、問答無用で命を奪ってくるだろう。白羽根もそうだ」

「殺らなきゃ殺られるだけよ、ひなの」

「……右に同じく」

「…………わかってる。もう状況は手遅れで、戦う以外、生き残る道が無さそうっていうのは……。やちよたちは今まで何度もマギウスの翼に襲われてきた。ウワサと戦い、死にかけた。私の仲間(綾野梨花や五十鈴れん)も巻き込まれた。そして先週の聖杯戦争。過去の英雄をサーヴァントというコピー品として召喚し、使役するTP魔法界の大魔術儀式。……はは。とんでもない相手だ。今度はあらゆる願いを叶える聖杯なんて代物はないぞ。死人は死人だ。蘇ることはない」

「悪魔契約があるわ」

「…………やちよ。そういえばお前は、悪魔契約がどういうものか知らなかったな。おそらく悪魔は渋りつつも受けると思うが……あまり悪魔契約を当てにしないほうがいい」

「? どういうことだ? 私も噂には聞いているぞ。悪魔は人を蘇らせることができると」

「えぇ……レナやかえで、ももこもそれで生き返った。でも、なんで当てにしない方がいいの? 十七夜」

「エッダだ。……訳は聞くな。ただ悪魔の心労に負担がかかる。契約する魔法少女に関しても同じことだ。あれはなかなかエグい魔法だからな」

 

 エッダは、いつかどこかで悪魔の心を読んだことで、悪魔契約の内容について知っている様子。だが背に腹は代えられぬ。七海やちよは戦争方面で作戦会議を進めつつ、都ひなのの心情も汲み取って意見する。しかしそれは意味を成さない意見であることも了解した上で煽り立てる。

 

「私は徹底抗戦派よ。でも死人を出したくないなら、非戦闘員として市街に逃せばいいわ」

「……やめてくれ、やちよ。逃がしてどうなる? 家族も友達も捨てて、マギウスとは遠いところで暮らせと? マギウスは世界征服まで考えていた。一度世界は滅びかけたんだぞ。逃げ場なんて、どこにもない……」

「ひなのは考えがまとまらないか。ならば木崎たちに相談してみてはどうだ。あいつはエミリー相談所なるものを開いていただろう。少なくとも中央区の魔法少女は助け合いの精神が強い。代表者が部下に相談することを情けないと思う奴なんて誰ひとりとしていないさ」

「そうね。私と十七夜は東西の代表者と言(・)わ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)けど、実際それは言われているだけだわ。自分がそう思ったことはないし。ただ周りからそう望まれた手前、代表者らしいことをやらなきゃって思ってたけど……正直、それっぽいことを出来た試しがない。でもひなのはちがう。あなたは最初から、神浜市の全体を考えている人よ。だから、こうして相談を持ちかけた。つまり神浜市(本当)の代表者である貴方がしっかりしてくれなきゃ、神浜の魔法少女の一致団結なんて不可能よ。私、人望とかあまりないタイプだし」

「……」

「やちよはスルメだからな。それか“さきいか”でもいい」

「噛めば噛むほど味が出るって? うるさいわね。なら十七夜は岩石ね。消しゴムでもいいわ。よくわからない味。でも確かな存在感がある。貴方ほど噛んでも底が見えない人はいないわ」

「…………そうだな。ちょっと頭を冷やしてくる。だが答え自体は決まってるんだ。頭では決まっていても、心が追いついていないというか」

 

 深呼吸した都ひなのは、聖杯戦争からずっと考えていた二択を選ぶ。

 

「私の答えも徹底抗戦だ。ただし! 極力死人が出ない方針を取りたい。危険な目に遭うのは私たちだけで充分だ」

「難しい注文ね。でも了解。こっちだって死人が前提の作戦を取るつもりはない」

「甘いな、やちよ。我が常闇騎士団は命を賭す準備が出来ている。もし兵士の大量投入を強いられ、どうしても死亡率が高そうな作戦があるなら、その全てはこちらに回せ。我が愛しの部下には、死に急がなければ報われない奴らも多いからな」

 

 不意に七つの魔力パターンが三者の頭上にきらめく。橙色の死ぬ気の炎を灯して飛び降りてきた人影は、開口一番、策を授けた。

 

「極力死者を出さない兵法か。簡単なことだ」

『悪魔!!?』

「オレか水野むくの叛逆助太刀魔法を使えばいい。まず叛逆魔法を掛けた助太刀魔法による小刀を全兵士に持たせる。そこから方法は二分化される。──オレの場合、命の危険を直感した瞬間、オレの傍らに転移させる。──水野むくの場合、その兵士の自発的な魔法行使(ベイルアウト)が必要になる。転移先は、助太刀魔法の真の使い手たる水野むくなら、ある程度は転移先を操作できる。……死者を出さない兵法としては、この作戦が最適だろう」

 

 驚く三者を見据えて、悪魔は話を続ける。

 

「ただし欠点も存在する。たとえばオレの傍らに転移させる場合、オレは決戦に参加できない。転移先は安全圏じゃないと意味がない。そしてオレが決戦に参加しないことはありえない。よって水野むくの方法を取らざるを得ない。だがこちらも、本人の自主的な魔法行使(ベイルアウト)が間に合わなければ、その時点で命を落とすことになる。訓練と工夫が必要だ。もちろんその訓練には、並盛町の魔法少女も協力する。工夫の面でもそうだ。たとえば偽装系の魔法と組み合わせれば、頭部破壊およびソウルジェムの破壊の憂き目に遭っても、それを一回だけ“偽装(ウソ)”として処理できる。そうなった瞬間にベイルアウトすれば、不意の一撃にも対応できるだろう。注意事項としては、一(・)度(・)偽(・)装(・)魔(・)法(・)で(・)即(・)死(・)を(・)回(・)避(・)し(・)た(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)ま(・)だ(・)戦(・)っ(・)て(・)も(・)大(・)丈(・)夫(・)だ(・)、と兵士に思わせないことだな。偽装魔法はあくまでベイルアウトするまでの時間稼ぎとして使う。これを叩き込むことができれば問題ない。それだけでどんなに弱い駒も使い物になる」

 

 都ひなのは目を見開いて驚く。

 

「本当にそんなことができるのか? それより並盛町って……」

「オレの故郷だ。今度の戦いを“第一次マギウス決戦”と呼称するなら、並盛町も全面協力する。並盛町の秩序を守る二人の魔法少女(恭弥アーデルハイトと笹川了子)は、さすがに来られないがな」

 

 第一次。その発言にエッダは、仮面の奥で眉をしかめる。まさか第二次があるとでも言うのか。悪魔の心は読めない。叛逆魔法で閉心術と同じ効果を受けているようだ。

 そこで七海やちよが言う。

 

「なるほど。その手が……というか悪魔、あなた今までどこに行ってたのよ?」

「並盛町に戻ってベイルアウト戦術の準備を進めていた。あと佐倉の様子を見に行ったが、どうも捕まらなくてな。無意識に幻惑魔法を使っているようで、オレから逃げてやがる。──それついでに報告だが。見滝原市の魔法少女もマギウスとの決戦に臨むつもりのようだ。あとで鹿目まどかと美樹さやかが、みかづき荘に来ると思う。相手してやれ。ほむらと喧嘩しないよう仲裁に入ってくれるとありがたい」

「……わかったわ。でもあなた、まるで私たちがマギウスと戦うことを知っていたような行動ぶりね? この五日間でどれだけ先手を打って動いたわけ?」

「美国織莉子の未来予知を借りた。オレと織莉子のせいで神浜市の未来が固定されているから、まだ未来視で固定されていない並盛町と見滝原市の面々を視てもらい、いい具合に未来を変動させてもらった。そうしないと神浜市の魔法少女の多くが死ぬところだったんだ。陰ながらのファインプレーだと褒めてほしいくらいだぜ」

 

 悪魔は振り返って背中を見せる。そして一枚の白い羽を懐から取り出して、三人に見せるように振る。

 

「? その羽は?」

「神白羽、あるいはシンプルに神の羽と名付けた。これから話すプロパガンダの合言葉のようなものと思え。神浜市の魔法少女が一致団結するための象徴とでも言おうか」

 

 悪魔は白い羽もとい神の羽を懐にしまう。

 

「さて、キリサキ事件と聖杯戦争の件で、神浜市の魔法少女のストレスは限界が近い。そして明日から神浜フェスってのが始まる。そこで中央東西に関係なく、この祭りを利用した垣根なしの親睦会を開け」

「神浜フェス……フェリシアが行きたいとダダをこねていたやつね。もちろんみかづき荘は疲れを癒す、というより年相応に楽しむため、全員で行く予定だったけど……ほかの魔法少女とも合同で行けってこと?」

「そういうテイにしておくだけでいい。結束力を高めるプロパガンダだ。特に明日は“歴史村”という催しが開かれる。古今東西あらゆる偉人・神話の人物や名物を展示し、当時の風景を再現した街並みが、栄区と南凪区をつなぐ大通りに設けられるそうだ。……サーヴァントに殺されたことで、歴史や神話の存在がトラウマになっている者もいるだろうが、あえて自分が殺された英霊の記録と触れ合うことで整理できる気持ちもあるだろう。荒療治だろうが、嫌がっても無理やり連れていけ。決戦前にトラウマを除くことが未来のためだ。なぜなら────神浜中に解き放たれたシャドウサーヴァントを、マギウスが再利用しない手はないからな」

『……っ!!?』

「そういうことだ。オレがいない間、シャドウサーヴァントの掃討は代表者主導で行ったそうだな。ってことは、それ以外の魔法少女は何かしらの理由で戦えなかったってことだ。──トラウマで戦えずに戦死するってのは、一番周囲の士気が落ちる負け方だ。このままサーヴァントに苦手意識を抱いたまま決戦に臨まれても困る。三人とも、よろしく頼むぞ」

 

 悪魔は両手のグローブから死ぬ気の炎を灯すと飛び去る。

 そこで都ひなのが感心と呆れの溜め息を洩らした。

 

「……毎回思うが、本当に悪魔は何者なんだ?」

「犠牲を最小限に抑えたいだけの子供よ。一人で無理してカッコつけてるの。私の予想では、きっと決戦日の一日前には単身マギウスに突っ込んで、一人で解決する腹積もりだと見たわ。自分だけが犠牲になればいいと考えてるのよ。ほんと困った子だわ」

「……まぁ叛逆と逆転勝利の組み合わせは例外(チート)だからな。もうあいつひとりでいいじゃないかな、と思うのも納得だが……殴られた側が相手に殴り返さないと根底から信じきっているのは、とんだお人よしと言っていいだろう。平和主義の権化とも言おうか」

 

 あいにく魔法少女はそこまでおとなしくない。少なくともインキュベーターと契約し、戦いの道に飛び込んだ瞬間から、血気盛んな側面を自覚するようになっている。というより、血気盛んな部分を持ち合わせていない魔法少女は、疾うに魔女か使い魔に殺されているか、とっくに魔女化している。

 

 そう考えると、魔法少女とサーヴァントには似たものを感じざるを得ない。聖杯戦争は戦わなければ意味がない催しだ。故に英霊は、多少好戦的な側面が強い状態で召喚される。そのため何か問題が起きれば、すぐに戦って解決しようとする。今では時計塔で一般魔術師に公開されている人理修復の旅路の記録の中でも、そのような記述があった。

 

 ともあれ、魔法少女とサーヴァントの間に原理こそ異なれど。人間とは、己が戦いのために生み出されたものだと知ると、その戦いに順応しようとする心理が働くのかもしれない。

 

「……たしかに、マギウスと決戦に応じると伝えた時……それを断るみんなの顔が、あまり思い浮かばないな……それは魔法という強い力を手に入れたからだろうか……たとえそうだとしても、みんなは普通の女の子なのに……」

「中央区ですらそうなんだから。みかづき荘なら当然よ。常盤ななかのチームも黙ってはいないでしょうね。西の子たちも最初は怖がるだろうけど、すぐに覚悟を決めるでしょう。天乃鈴音との戦いでも、殺し合いができたんだもの。殺る時は殺るのよ、魔法少女は。なにより今回(聖杯戦争)の件は、まごうことなき“ブチギレ案件”よ。あんな地獄みたいな騒ぎで殺されて、ただ黙っている奴なんて一人たりともいやしないわ」

「東の魔法少女も同様だ。伊達に魔女との殺し合いで生き残っていない。魔法少女同士でもグリーフシードを巡る殺し合いは少なからずあった。そして蹂躙されて狸寝入りするような軟弱な奴らでもない。……まぁ、だからこそマギウスの翼の構成員に、東の連中が多いのやもしれんが……そのあたりは洗脳を解き次第、丁寧に処理すればいい」

 

 エッダは振り返り、帰路に着きながら話し続ける。

 

「ともあれ、やることは決まったな。マギウスとの決戦に備えての親睦会か。我が常闇騎士団の構成員にも伝えておこう。そちらはこちらの顔を知らないだろうが、こちらはそちらの顔を知っている。元マギウスの翼として罪悪感があるだろうから、ソウルジェムの魔力パターンは構築魔力を使って極力隠しつつ、神浜フェスに参加するだろう。一緒に参加している感覚は薄まるだろうが、一応、我らも近くにいることを伝えてほしい」

「分かったわ。それじゃあ、ひなの。私の名前を使っていいから、神浜の魔法少女SNSで声明を出してくれない? ベイルアウトの訓練に関しては、並盛町の人たちが到着してから、また作戦会議を開くとしましょう」

「わかった。衣美里に伝えておく。じゃ、また明日な。神浜フェス、楽しもうぜ」

「あぁ」

「えぇ」

 

 そうして時計台の文字盤から、三つの影が飛び立った。

 

          †

 

 魔法少女SNSにメッセージが流れる。

 

『この意味が分かる魔法少女は神浜フェスに大集合! 明日から始まるお祭りは、みんなでいっしょに楽しもう!!!!!』#神の羽 #みゃこ先輩 #やーさん #えっだん #エミリーお悩み相談室

 

          †

 

 

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