※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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【Film.3 DAY.71】愛生まばゆ

 

 朝方の海水浴場。燦々と照りつける陽射し。熱い砂浜。押し寄せる波打際。青い海。

 

 しかし、

 ────さすがに6月1日に海開きは、ちょっと早いんじゃないの?

 と誰かが言う。四半世紀前は、まさにその認識が常識だったようだが……現在は地球温暖化とやらで、海開きが六月となるのも、さほど珍しいことではなくなっていた。むしろ現在の中高生にとっては、六月の海開きは子供の頃からの当たり前。それについて悪魔が説明すると、お小遣いの少なさから不機嫌になっていた深月フェリシアが“やっぱりババアじゃん”と暴言を吐く。対する七海やちよはジェネレーションギャップにショックを受けつつ、減らず口のガキに容赦ないデコピン刑を与えた。

 

 

 というわけで、いざ魔法少女(若者)たちは水着に転身。

 

 その中には時女一族の三人も含まれていた。悪魔によって“時女静香・土岐すなお・広江ちはる”の名前が名簿に追加されたことで、豪華客船のドレスルームで水着や着物を選んで着ることができるようになったのだ。

 

「仕方がないわ。こうなれば悪魔くんの言う通り、マギウスの戦いの前に、この神浜フェスなるお祭りを満喫する!」

(あれ? “様”付けしなくなった……?)

(しかも静香ちゃん。男の子に“くん”付けしてる……いつもなら“さん”付けなのに。一応は許嫁の関係だから、距離感が近めの認識なのかな? なんか新鮮)

 

「それでいいわね? 悪魔くん!」

「……いいけど、付いてくるなよ。あとそのなんか……“くん”付けもやめてくれ。聞いててなんか、かゆいんだ」

 

 まるで“ツナくん”と呼ばれているように聞こえる。笹川京子の呼び声を思い出す。

 

 その時、ランボのアフロからリリスが顔を出す。そのランボを頭の上に乗せた千歳ゆま。その千歳ゆまを肩車する悪魔は、フゥ太と百江なぎさに両手を引かれて波打ち際に走る。フランは波の上でうつ伏せに浮いて溺れたフリ。環ういが慌てて抱き起こす。近くには浮き輪でプカプカと浮かぶイーピン。環いろはと黒江は、年少組が浅瀬で遊ぶ様子を見守りながら談笑する。

 

 その様子を目にした時女静香は、近くに立っていたジュリー凪に問いかけた。

 

「あの。悪魔様はああやって、よく子供に好かれるの?」

(戻した)

(しかも沢田綱吉の……悪魔のことを知ろうとしてる。これは静香ちゃん、諦めてないな……)

「え…………うん。ボスは、日常会話をするぶんには、いつも温かいから」

 

「なるほど。さすがはボンゴレ。まさに大空のような包容力があるというわけね!」

「……──あの。それ、やめた方が、いいと思う……」

「へ?」

「ボスは、ボンゴレって呼ばれるの……嫌がってるから。そういう私も、ボスって言っちゃうクセが、抜けてないんだけど……」

「へぇ……なるほどね! いくら名高きボンゴレファミリーといえど、マフィアはマフィア。それを嫌いになるとは、やはり善き人に違いない! かの沢田家康様も、最初は自警団として始めた組織が、みるみると膨らみすぎて横暴になっていく様子をお嘆きになられていた。そう考えると悪魔様は、外見も中身も、沢田家康様の生き写しだわ!」

 

 そう言った時女静香は、突として海に駆ける。跳んで着水。川遊びとはまた違った水の質感に驚き、快活な声で土岐すなおと広江ちはるを呼びかけると、誰よりも都会の海遊びを楽しむ。

 

 

 

 一方、悪魔と年少組の周囲では、見滝原市の面々が遊んでいた。浅瀬の上でボールをトスして回す美樹さやかと鹿目まどか。そして暁美ほむらのトス加減が強く、悪魔の近くにボールが落ちる。

 

「うおお! かっとばしたねー! どこ飛ばしてんのほむらー!」

「ご、ごめんなさい……!」

「ふふ。ほむらちゃん。こんな時もトレーニングしてる」

「え? まどか、それどゆこと?」

「あ……悪魔さん! そのボール、取ってくれますか?」

 

 悪魔は背後にあるボールを見つけると、雨のマーレリングから死ぬ気の炎を灯し、発散する炎の力をボールにぶつけることで、暁美ほむらの方へ突き飛ばす。

 

「わっ!」

「雲のマーレリングの炎圧でボールを跳ね返す練習か。強すぎると今みたいに大きく飛ばしすぎる。確かに炎圧調整の練習には持って来いだな。いいアイデアだ。……狙撃銃の件と言い、ほむらは着実に強くなってる。もう教えることは無さそうだな」

「そんな……ありがとうございます! でも……狙撃銃は、悪魔さんがプレゼントしてくれたんじゃないですか。私のアイデアじゃないですよ」

「……なに?」

 

 悪魔はそんなことをした覚えがない。道場でポケモンを選ぶ時、気付いたら暁美ほむらが使いだしていたのだ。そのことを伝えると、暁美ほむらは不思議そうに首をかしげる。

 

「あれ? 気付いたら私のとなりに落ちてたので、てっきり悪魔さんが置いていってくれたのかと思ってたんですけど……まさか、違うんですか?」

「あぁ、オレじゃない。……仮にオレだとしても、どっから狙撃銃なんか調達してくんだ」

「そ、それもそうですね……でも、じゃあ、いったい誰が……? 気付いたら狙撃銃が隣に落ちてることなんて、あるわけないですし……だれかの落し物ってわけでも、なさそうですし……?」

 

 悪魔と暁美ほむらは首をひねる。その時、美樹さやかが叫んだ。

 

「おーい! いつまで話してんのー! ボール回せー!」

「あ、美樹さん。ごめんなさい! ────はいっ!」

 

 今度は絶妙な死炎コントロールでボールを飛ばした暁美ほむらは、見事ボールを美樹さやかの頭上に落とす。

 

 ────やばっ。これ映画なら伏線になる流れじゃん!

 

 不意に悪魔は、誰かの心の声を直感する。その直感方向に振り向くが、不思議なことに誰もいない。否、もしかしたら見(・)え(・)な(・)い(・)のかもしれないと、悪魔は直感した。

 

「……さな?」

(────はい。どうかしましたか?)

 

 二葉さなの声は聞こえないが、全く同じセリフを心の中で言っているのか。

 環いろはの背後から、二葉さなの心の声を直感する。そこは、先ほど感じた直感方向とは真逆の方向だった。

 

(さなではない……だれか、ほかに知らない奴がいるのか?)「──……きちんと楽しんでるか?」

(はい。おかげさまで。ありがとうございます)

 

 存在を隠す何者か。悪魔は一旦、この件について忘れることにした。正体を隠すからにはそれなりの理由があるはず。だが先ほどの心の声に、一切の敵意や害意は感じなかった。むしろ傍観者としての罪悪感と、助けになりたい善意の気持ち、その板挟みを強く感じた。

 

(……いろはに“さなという座敷わらし”が付いているように。ほむらにも誰か付いているのか……?)

 

 悪魔は、その日が来るまで知らない。

 いろはとほむらの座敷わらしは、その髪色や透明能力が共通点であるという事に。

 

          †

 

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