アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
魔女結界に不意の落雷が発生する。それは魔女による攻撃ではなく、遥か遠方から落雷した“何者か”であった。
「Л俟ヰ喇猗藕欐懿厨────!!?」
“何者か”は魔女の胴体に落雷。
大きなダメージを受けた魔女は悲痛な叫びを上げる。
そして落雷の衝撃波が魔女結界全体を襲い、全ての使い魔を薙ぎ払った。
「きゃっ……!」
「なんデスカ!?」
「っ────!!」
悪魔、理子、アシュリーの前に着弾した“何者か”は、蒼白髪の赤眼で、青紫色を基調とした派手な衣装を身にまとっており、紫色の魔力を放って閃光のように着弾した。その登場の仕方から見るに、明らかに魔法少女然とした立ち居振る舞いをしている。だが……。
だが、しかし強烈な違和感が残る。悪魔の超直感が何度も疑問を呈するのだ。
突如として現れた彼女は────
「アラもう聞いた? 誰から聞いた? 神秘のペルソナのそのウワサ────なんてね☆」
(! ウワサ────だと……!?)
先刻、南凪区で遭遇した“ウワサ”なる謎に満ちた怪異的存在。その単語を冗談っぽく発言した振る舞いから見るに、彼女は
「お前……何者だ!」
「そっちこそ、魔法少女の世界に男とか要らないんだけどォ? だからさぁ……とっとと死んで土に還れやァアアアア!」
「!?」
年齢は中学生くらい。可愛らしい外見にそぐわぬ超攻撃的な性格。正気を疑うほどのハイテンションぶりに理子は怯え、アシュリーは絶句し、悪魔は冷や汗を流しながら臨戦態勢を整える。
「そういえば……私に名前を聞いたわね? 私は
赫々とした眼光から放たれるは、総身にぶつかる純粋な殺意。そこに憎悪はなく、殺人への快楽のみが渦巻いている。
中空に突然、一枚のコインを出現させた彼女は、まさか生まれついての殺人鬼なのか。悪魔は超直感により、彼女が人間かどうか疑ったが……それは生物学的な話に限らず、常人の精神性から乖離・逸脱している事に関する
つまり命輪は
(じょ……冗談だろ……! なんでいきなり、こんな形で、
数々の修羅場を潜ってきた悪魔でも冷や汗を流した理由はそこにある。
突如として現れた命輪は、確かな理由もないまま、確実な殺気を飛ばして三人と対峙していたのだから。
† ♪~IMAGINE DRAGONS‐Natural~♪ †
「既に私は
車輪が描かれたコインが弾かれた瞬間。
悪魔は腹の底から声を絞り出すように、怒り
「────理子! アシュリー! 今すぐ逃げろ! こいつはオレが相手するッ!!」
『……!?』
その怒号に目を見張った
「いい覚悟だ! 貴様を殺すのは後回しにしてやるッ!!」
「ふざけるな!」
宙を舞うコインが地に落ちて跳ね、ぐわんぐわんと回転して表裏を
刹那、悪魔は匣兵器を開匣。両手にクリスタル光るグローブを嵌めて、オレンジの死ぬ気の炎の逆噴射で
「出た! コイントスの結果は“不運の裏”だ!」
「!?」
突如、悪魔の横っ腹に一匹の使い魔が激突した。
「不運の正体は交通事故! 貴様の横っ腹に“破滅のコイン”を一枚、付けてやったぜ!」
「ガハッ!」
激突の衝撃で突き飛ばされた悪魔は地を転がる。だが大したダメージはない。骨折もしていない。ふらりと足元がぐらついたが、すぐに立ち上がる。命中箇所の右脇腹に激痛が走る。それはわかる。負傷なのだから。だが妙に右脇腹が
「あ……悪魔さん!」
「悪魔……!」
突然の理解不能な戦闘に身が竦んでいるのか、理子とアシュリーは状況の判断に迷っている。
対する悪魔は、今の攻撃の考察を始めていた。
(ぐっ……今のは
「……おいおい。時速40km越えの交通事故でピンピンしてるとか笑えるな! ぶつかる瞬間、硬化の性質で身を守ったのか!」
(しかも魔力に宿る七つの性質を知っているのか……これはベテラン魔法少女を相手にしていると考えた方がいいな。しかし……おかしい……使い魔を転移させてぶつけてきたと仮定した場合、
「匕┣蚪焚捫几屟────!!」
そのとき魔女が動いた。命輪に攻撃を加えようと槍のような触手を伸ばす。それは赤い閃光のように迸った。
「…………」
命輪のコイントス。出た目は“不運の裏”……次の瞬間、魔女が繰り出した赤い槍のような触手は、手元が狂ったのか、なぜか魔女の胴体に突き刺さって貫通した。
「紅ω馗丨ニlレ────!!?」
魔女の断末魔。そこで悪魔は目撃する。魔女の胴体に一つのコインが浮き出た。コインの彫刻は車輪。命輪が弾いたコインと同じ模様をしている。そしてよくよく見れば、ほかにも大小さまざまなコインが魔女の体に引っ付いており、全部で十個のコインが現れていた。
「これで終わりだ。“不運の裏”のコインが十個付いた奴は……“最大の不運”が襲いかかって
「────ッ!」
刹那、魔女の体内が膨れ上がり、体の中央から爆発する。再び魔女結界を襲う爆風。魔女の肉片が辺りに飛び散り、主を失った魔女結界は消失し、悪魔達は現実────神浜競馬場に存在位相が引き戻される。生き残った使い魔は四方八方に逃げ始めていた。
「何が起きているのか全く分からないって顔してるね。なら冥土の土産に教えてやろうか」
命輪は一枚のコインを取り出す。
「我がスタンド名は
「……スタンド……?」
「コインの表は“幸運”を司り、コインの裏は“不運”を司る。本体は目視範囲に存在する対象(自分自身を含む)にコイントスを行い、未来の幸不幸を占うことができる。もし“幸運の表”が出れば、対象には好機が舞い込む。だが、もし“不運の裏”が出れば、対象には誤算が舞い込む。さらに!」
「!」
「“不運の裏”が舞い込んだ対象の体には、一枚のコインが引っ付くように浮かび上がる。引っ付いたコインを無理やり剥がすことは不可能! そして全部で十枚のコインが引っ付くと、そいつには“最大の不運”が襲いかかる! バーンとな! 破滅だ! 破滅破滅ゥ!」
……。悪魔は直感する。命輪は真実を語っている。それに能力的なメリットはない。ただの酔狂で教えているのだ。よほど自分の能力に自信があるらしい。決してスペル・オブ・アイアンという能力は破られないという自信が垣間見える。
「つまり……さっきからオレの右脇腹が重いのは……」
悪魔は恐る恐る、ちらりと自らの右脇腹を覗き見た。そこにはこぶし大のコインが一枚引っ付いており、確かな重量が感じられる。取り外そうとしても服と融合しているのか取り外せない。すかさずパーカーを脱ごうとしたら、パーカーの布地を貫通してTシャツに張り付いた。ならばとTシャツを脱ごうとしたら、最後は皮膚に接着した。今度は力尽くで剥がそうとする。だがそれは自らの皮膚を傷付けるだけだと悟った。
「無駄だ無駄無駄! これで分かっただろう……私の能力は無敵だ!」
「…………」
スタンド。スペル・オブ・アイアン。鉄貨の呪縛。幸運と不運と破滅を呼ぶコイン。それは魔法か否か。
悪魔の脳裏を駆け巡る奇妙な情報。打開策はあるのか? ────悪魔は想起する。
「そういえば……さっきお前……こう言っていたな?」
「アン?」
────既に私は
「矛盾している。先程の能力の説明に「十分先」なんていう、時間が関係する話は出てこなかった」
「ほう? 覚えていたか。で? それがなんだ? それがぁ……どうしたってんだヨォー!!」
「お前は嘘を付いていない。スペル・オブ・アイアンという能力についても
「────」
悪魔の考察は進む。それを遮り愉しむように、命輪は右手の指の間に三枚のコインを挟んでいた。
「!」
「スタンドは成長する。今! 強敵を前にした事で進化した! その結果、コインは増えた! これは私の見た未来通りの展開だ!」
「────理子、アシュリー! 逃げろと言ったのが聞こえなかったのか!?」
二度目に渡る悪魔の叱咤。それに驚いた理子とアシュリーは、悪魔の威圧に押されて一歩足を引くが、どうやら悪魔を見捨てる気はないらしい。
「クソッ……!」
「今度は三人とも占ってやる!」
悪魔は逆噴射による高速移動で瞬く間に命輪の背後に回る。後頭部に一撃。炸裂した大空の炎は、しかし命輪のダメージにはなっていなかった。
「なにッ!?」
「スタンドはスタンド使いにしか見えない! よって貴様に我がスタンドを見破ることは不可能だ!」
不可視の存在からの拳が飛ぶ。それに殴られた悪魔は吹き飛ばされるが、回転して慣性を受け流し中空に留まる。
「スタンドはスタンド使いにしか見えない……? だが、そのコインは……」
「それも教えてやる。私は全知全能の神だからな。コインは実物だ。スタンド能力をコインに宿したに過ぎない」
「ならばコインが増えた理由は?」
「貴様は
(紫色の魔力……闇属性の増殖効果か……厄介だな……しかもさっきまでは能力を宿せるコインは一枚のみだったようだが、なぜか三枚とも能力を宿せるよう進化したらしい……クソッ。なんだこれは……何かとんでもない相乗効果が働いている気がする……)
スタンドと魔力の合わせ技。それに加えてもう一つ、何かがある気がする。
「……命輪。お前の
「────イイね。イイ線だ。イイ所まで行っている。だがそれを聞く前に、三枚のコインの出目を気にした方がァ……いいんじゃあないか……?」
いつの間にか放り投げられていた三枚のコインが地に落ちる。
その出目はなんと────どれも“不運の裏”を見せていた。
「バカなッ!」
「喰らえッ! 我がスペル・オブ・アイアンの恐ろしさをッ!!」
奇妙な戦闘は、残酷なまでに苛烈さを増していく……
†