アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
突如として悪魔の前に現れたのは、まさかまさかの二木市の魔法少女たち。
そんな彼女は、悪魔が二木市で面倒を見て育てた一線級の魔法少女。つまり悪魔との関係は、師弟にして戦友であり、仲間にして友人である。────だが今は違う。今は二木市で起きた“血の惨劇”のせいで、混沌と渦巻く執着の鎖に
「だ、誰ですか!? あなたたちは……!」
橙色のソウルジェムを持つ魔法少女が問い掛ける。
智珠らんかたちは、二木市における門前橋を縄張りとする魔法少女集団である。その頭目は“門前橋の
そんな部下たちは、尊敬する智珠らんかのイメージカラー“ワインレッド”をグループカラーとしており、その色のパーカーを着ることで
「アタシたちが誰かだって? 聞いて驚け。アタシたちは“
「なっ────!?」
突然の悪魔殺害宣言。あるいは悪魔強奪宣言。
これには黒いローブの魔法少女集団も動揺と敵意をあらわにする。
「な、なんですか急に! 今、彼は私たちと取引をしていて……」
「だーかーら。そういうのどうでもいいから早く悪魔を寄越せって言ってんの。じゃなきゃ分かってんよね?」
智珠らんかの部下たちが戦闘態勢に入る。各々、多種多様な武器を構えてソウルジェムを光らせていた。魔法行使の前兆である。それは拳銃で例えるならセーフティーを下ろすようなもの。明らかな挑発行為であり、一触即発の緊迫した空気が流れる。
「────ちょっと待て。智珠らんか。お前たちも悪魔契約を求めているんだろう? それなら順番に対応する。だから……」
「ハッ! 二木市から逃げた奴が何を……いいか。これはケジメの戦いだ」
「どこが……どこがケジメだ! 論理が破綻している……お前たちは悪魔契約を望んでいるくせに、ただ怒りの矛先を……八つ当たりの対象を探しているだけだ! それでオレを攻撃するのは構わない……だが、彼女たちと事を構えるのはやめろ!」
「────フッ。どこまで行っても甘ちゃんなんだから笑えるね。でも残念。こっちはもう……憂さ晴らししたくてたまんねぇんだよッ!!」
智珠らんかの気迫。それが合図となって部下たちのソウルジェムに魔力が漲る。
それに対応するため、黒いローブの魔法少女たちも怯えながら臨戦態勢を取る。
集団対集団。これは非常にまずい展開になった。
彼女たちは悪魔を巡って口論となり、今や実力行使に出ようとしている。
これでは、これでは────
「行くぞォ!」『オオオオオオオオオオオォ────!!!!』
「っ……! 全員、迎撃態勢! やられそうなら全力で逃げて!」『っ────!!』
黒いローブの魔法少女集団と、ワインレッドの魔法少女集団が一斉に飛びかかって激突する。
次の瞬間、率先して最前線を切った橙色のソウルジェムの魔法少女と智珠らんかの間に入った悪魔が、両者の攻撃を受け止めた。
「待て! やめるんだ! 戦うならオレと戦え、智珠らんか!!」
「だったらコイツラを撤退させろよ!」
「くっ────彼は、渡さない……! 絶望していた私たちにとって、やっと見えた希望かもしれないんだ……!」
互いに退く気は皆無。悪魔を巡って戦闘が始まる。
「ッ────チクショウ!!」
悪魔の契約魔法を求めて争いになる例は珍しくない。治安が悪い街ほど独占支配を狙う魔法少女は多い。だからこそ悪魔は、自身の魔法を明かす際は慎重に動く。だがその“慎重さ”でも不足だったのか。悪魔にとって絶対に避けるべき展開を避けられなかった。
歯がゆくも唇を切った悪魔は、総勢四十名もの魔法乱戦が行われる様子を見下ろし、額に炎を灯した。
(この不毛な戦闘……死ぬ気で止めるッ!!)
†
────悪魔争奪戦、勃発。
その戦局は、智珠らんか勢力が圧倒的だった。
「アハハ! バッカみたい! なんでアンタたち固有魔法を使わないわけ? 敵に温存して得とかないっしょ! どうしても見せたくないなら派生魔法や修得魔法でも使えば? あぁ無理か……アンタらみたいな弱小が、そんな高度な魔法を使えるわけないもんねぇ!」
高笑いして煽り散らかす智珠らんかはベクトル魔法を発動する。彼女の願い事は「自分の好きなゲーセンが潰れないよう聖地にしてほしい」というもの。その願い事に直結するはずの
それこそがベクトル魔法である。それは強制的に聖地を巡礼させる因果として、対象の
その魔法に掛かった者は、本来の行き先とは別の方向へ体が勝手に動き、射出した魔力攻撃もあさっての方向に飛んでいき、術者が指定した“聖地”へと収束するように着弾する。その“聖地”とは、ゲームセンターの概念を内包する智珠らんかの武器・マジックハンドである。敵の魔力光弾をキャッチしたマジックハンドは、お返しとばかりに投げ返す。自らが放ったはずの魔力光弾をキャッチされて投げ返された魔法少女は、思わぬ反撃を受けて悲鳴と共に吹き飛ばされる。
「らんか!」
「悪魔ァ! ────グッ!?」
悪魔の
「ガッ! ぐはっ……! ギィッ……! ちょ、容赦なさすぎでしょーがァッ……!!」「姐さん!」「らんか姐さん!」
智珠らんかの部下たちが、頭目を助けるため跳躍する。だが空中での高速移動方法を持たない魔法少女たちは、次々と悪魔の拳や蹴りを喰らって撃墜される。
「っ……! やっぱアタシたちは空中戦じゃ分が悪すぎるでしょ……!」
ならばと智珠らんかは号令を発する。
「総員、ハメ技用意! 敵を一掃し、袋叩きで悪魔を捕縛せよ!」
「ラジャー! 姐さん!」「姐さんの為に鍛えた私たちの魔法を喰らえェ!」
緑色の魔法少女から《
「ほらほら! 上に足場があるぜ! さっさと茨を解いてそっちに逃げな!」
「────ッ! ダメだ! こっちも魔法を使って荊棘を振り払え! 言う通りにしてはダメだ!」
しかし黒いローブの魔法少女集団は悪魔の指示を聞かず、意地でも固有魔法を使わないで跳躍。踏み絵のような床に着地した瞬間、不意に悪魔は
「っ! これは……!」
そこで黒いローブの魔法少女集団も気付いた。踏み絵の床に描いてある絵は、誰がどう見ても悪魔の顔であった。
「キャハハハハ! バッカじゃないの!?」
集中的に顔面へダメージを受けた悪魔は、とうとう墜落し地に激突。それっきり微動だにしなくなる。
「そ、そんな……私たちのせいで……」
「トドメだお前ら! 悪魔を捕縛しろ!」「ラジャーです! 姐さん!」
赤色の魔法少女が魔法を行使。悪魔が伏せる地面の上を《沈殿》させて地中に引きずり込もうとする。
黒いローブの魔法少女集団は、悪魔を奪われまいとして地に降り立ちたいが、感電する荊棘を恐れて踏み絵の床から移動できない。
一方、悪魔の首はミシミシと軋みを上げていた。それも当然である。二十人分の体重が悪魔の顔面に掛かっているのだ。悪魔は咄嗟に雷の硬化性質で首の骨をコーティングしたが、それでも限界というものがある。
「おい! 悪魔が死ぬ! 《踏み絵》を解除しろ!」「了解です姐さん!」
「っ!?」「キャー!」
突如として空中の床が消失した。黒いローブの魔法少女集団は次々に落下し、地表を覆う荊棘に突き刺さって感電。断末魔を上げる。下手すればソウルジェムにヒビが入って死んでしまう。だが殺し合いに慣れている二木市の魔法少女にとっては、さほど気にすることではない事態であった。
やがて智珠らんかは手のひらを上げる。それは
「ふふ……なんて無様なのかしら。さぁ悪魔、観念しなさい……」
「ッ……らんか……」
「────問答は不要。アンタはここでアタシと死ぬのよ」
「……ッ!!」
智珠らんかのマジックハンドが、悪魔の片目に廻るグリーフシードを狙う。眼球ごと刳り貫くつもりか。このままでは妹を奪われ殺される。絶体絶命のピンチの中、突如として悪魔のヴァイオレットソウルリングが光り輝いた。
「っ! なにっ!?」
助太刀魔法の刀剣をポイッと放り捨て、悪魔の窮地に馳せ参じたのは────孤高の浮雲。最強の戦士。
「……君、何も反省してないね。まだそんな(魔法少女を人間に戻す)慈善事業やってるの? 弱いだけの小動物は好きじゃないな。君はその泥の上で、生き汚く足掻いているといいよ」
「────恭弥……」
「さて、僕の獲物を横取りする不届き者は────咬み殺すよ」
†