※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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【仮称────金星の魔女、銀星の魔女を捕捉!】都ひなの

 

 魔女迷宮。その心象風景は、満天の星空に一対の双星が輝く美しき世界。

 

「総員前方確認! 仮称────金星の魔女、銀星の魔女を捕捉! どちらも黄色い魔力を使う! 弱点は紫色の魔力だ! 前々から何度も口を酸っぱく言っているように、紫色の魔力を使う奴は、絶対に黄色い魔力に当たるなよ! 黄色と紫色はお互いに弱点だからな!」

 

 都ひなのの号令に応じて、アタッカーたる黄色い魔力使いの保澄雫と加賀見まさらが打って出る。

 それに合わせて紫色の魔力を持つ三名の魔法少女────木崎衣美里、毬子あやか、五十鈴れんが遠隔攻撃で支援を開始。ただし五十鈴れんはトリを務めるため魔力消費は最低限に抑える。

 

「使い魔の群れを確認」

「保澄雫と殲滅する」

 

 金星と銀星の双子魔女の使い魔たちが侵入者に対して一斉に襲いかかる。

 使い魔の形態は三種類あり、それぞれ黄色・緑色・茶色の魔力を使用。

 

「赤青緑黄紫(五大色)に当て嵌らない魔力色は、複数の魔力を組み合わせた複合魔力と思え! おそらく茶色は赤と緑の混合だ! 緑色と青色の魔法少女は被弾に注意しろ!」

 

 都ひなのの助言を受けたアタッカーは、チャクラムとダガーによる連続攻撃で使い魔を斬り捨て続ける。攻撃に特化している二人にとって、魔力の相性関係は些事でしかない。

 

「────! 敵後方から魔力反応感知! ディフェンダー!」

 

 都ひなのの指示に従い、毬子あやかと粟根こころが出陣。

 

「固有魔法《ジョーク》発動! ────布団が吹っ飛んだ!」

 

 おもちゃのハンマーを振るう毬子あやかのギャグ。その寒さに思わず滑った使い魔の魔力光弾は、がくんと軌道を下げて魔法少女たちまで届かず、味方である使い魔たちの頭上に誤って着弾する。

 

「危ない、まさら! 固有魔法《耐久》────発動ォ!」

 

 一方の粟根こころは友人をかばうため黄緑色の魔力を鎧として身に纏い、光り輝く頑健な肉体とトンファーで、別方向から襲ってきた使い魔の魔力攻撃を弾き返した。

 

「……! こころ。ごめん」

「なんのなんの! 謝る必要ないよ。まさらを守るのが私の役目だもん!」

 

「気を抜くな! 衣美里、行くぞ! アタッカーは一瞬後退だ!」

「おぉっ! ついにあれをやるのか、みゃーこ先輩! りょーっかいっだ! 喰らえ────これがクリティカル爆撃じゃぁああああ!」

「変な技名も前口上も要らんから、さっさとコネクトしろォ!」

 

 都ひなのと木崎衣美里は手のひらを合わせる。すると都ひなのの全身に木崎衣美里の紫魔力が流れて漲り、一気に魔力係数が増大する。

 

「固有魔法《化学爆発》────! 紫魔力の増殖効果で、爆薬入りのフラスコ爆弾を百個に増やす!」

「しかもみゃーこ先輩の爆弾には、あーしの魅了付きだよーん!」

 

 敵陣に投げ入れた一個のフラスコが百数個に増殖。それが一斉に起爆する事で、他のフラスコにも誘爆し、連鎖怒涛の絨毯爆撃が魔女迷宮の一帯を更地に変える。

 

「よし……これで露払いは済んだはずだ! これより魔女討伐を開始する! 使い魔の残党はサポーターが狩るから、そのほかは魔女狩りに専念しろ!」

『ラジャー!』

 

 優秀な指揮官により統率の取れた戦術が展開される。

 それを目にした悪魔は一言。「見事だ」と口にした。

 

          †

 

 金星の魔女と銀星の魔女。二体の魔女の麓まで接近した魔法少女たちは本格戦闘を開始する。

 

「よし、こっからだ! ピンチヒッター! 魔女のヘイトはこちらで稼ぐ! お前らは裏手に回って不意打ちの狙撃をお見舞いしてくれ!」

「っ────了解です!」

「……!」

 

 いよいよ綾野梨花と五十鈴れんは別働隊として動き、二体の魔女の背後に回ろうと身を潜めて移動する。

 

「江利あいみ!」

「OK! 固有魔法《行動予測》────発動! えぇっと、このあと二体の魔女は……私たち狙いで、三体目の魔女を呼び出すみたい!」

「……そうか。どうやら向こうは初手全力ぶっぱで来るようだ! こっちは軽くあしらいつつヘイトを稼ぐぞ!」

『ラジャー!!』

 

 次の瞬間、三体目の魔女────仮称・銅星の魔女が闇の中から姿を現した。三体の魔女が連携を組んで襲いかかる。

 対するアタッカーは攻撃を加え、ディフェンダーは敵の攻撃を捌き、サポーターは支援を欠かさず、バランサーは猫の手も借りたい所へ迅速に加勢する。

 

 そしてピンチヒッターの綾野梨花と五十鈴れんは戦線を離脱し、魔女迷宮の端っこにある無限階段を走っていた。無限階段は魔女迷宮の外周に設けられており、大きく弧を描く螺旋状に連なっている。

 

「急ぐよ、れん! 三体目の魔女が出てきた! 早くしないとみんなやられちゃうかも!」

「うん……! 急ごう……!」

 

 そこへ立ち塞がる使い魔の集団。満天の星空から流星群のように降り注ぐ使い魔は、一切の着地体勢を取らず、まるで隕石のように高速着弾、爆発、一掃する。

 

「ぐわ……!」

「きゃ……!」

 

 先ほど行ったフラスコ絨毯爆撃の仕返しだろうか。止めどない隕石の雨に無限階段の一部が崩落する。

 

「っ! 危ない、梨花ちゃん……!」

 

 そのとき五十鈴れんが動いた。天使の羽を携える杖を振るい固有魔法《鎮魂》を行使する。それは穢れた魂である魔女や使い魔であっても癒し、鎮める、玉を転がすような夜想曲。美しき魔力の音色を耳にした使い魔たちは微睡(まどろ)み、鎮静化して眠りに就く。そこへ容赦なく五十鈴れんの必殺魔法(マギア)《魂の救済(ソウル・サルベーション)》が行使される。杖の先端から青白く燃え上がる魔力の塊。それが花火のように打ち上がると中空で荒ぶり炸裂し、魂を持つ存在へと自動追尾する絶対命中の魔力光弾として着撃を繰り返した。

 

 怒涛の攻撃は使い魔を一掃し、戦場となった無限階段は完全に崩落する。その中で綾野梨花は、爆風の威力に驚き目をつむり、爆煙に咳き込んで、なぜか浮遊している感覚を得ていた。目を開けるとその体は落下しておらず、青白い炎に首元の襟を掴まれて急上昇。まだ崩落していない無限階段の場所へ運ばれていた。

 

「そんな……れん……!」

「わ、私は大丈夫……だから、梨花ちゃん……あとは任せました……!」

 

 無限階段の崩落と共に地表へ落下していく五十鈴れん。その姿に手を伸ばした綾野梨花は、相棒が作ってくれた反撃の糸口に感謝して握り拳を作り、無限階段の上層を見据える。

 

「オッケー。任された!」

 

 綾野梨花は走り出す。だが五十鈴れんというピンチヒッターが欠けた今、たった一人で三体の魔女を倒せるほどの魔法を放てるのか。そんな不安を打ち消すように、綾野梨花は叫んで登る。

 

「できるできないじゃない。やらなきゃいけないんだ!」

 

 地表では三体の魔女が乱舞。仲間たちは追い詰められているのだろうか。もはや下層は砂煙に包まれており、小型の存在は何も見えない。しかし大型の存在、すなわち魔女の位置は分かりやすい。脚に魔力を込めて数十段ずつ飛び越える綾野梨花は、ふと違和感に気付く。

 

 三体の魔女が背(・)中(・)合(・)わ(・)せ(・)で攻撃を繰り返しているのだ。つまり一箇所に集中している。つまり仲間たちは、多勢に無勢の状況の中、魔女を囲い込むように追い立てているという事。ならばこの絶好のチャンスを逃してはならない。

 

「ひとりでやるなら、魔力の充填率を……もっと……!」

 

 既に80%程度の充填率を、終着100%ではなく、過剰120%にするよう充填速度を引き上げる。軋むように小刻みと震えるソウルジェム。心身の高鳴りを感じる綾野梨花は、仲間のために全てを投げ打つ快感を得る。

 

 ────限界を超えてはならない。

 

「……え?」

 

 突然、綾野梨花の耳に謎の声が響く。声の主は少年のようで、警告を発するように戒めてくる。

 

 ────限界を超えれば心身が耐え切れず死に至る。いっときの興奮で身を滅ぼすな。

 

 綾野梨花は困惑する。だが今は一刻も早くピンチヒッターとしての役割をこなさなければならない。

 

 ────魔法とは簡単に奇跡を起こせる代物だ。そして奇跡には必ず代償がある。魔法少女なら知っているはずだ。

 

 綾野梨花は狙撃に最も適した標高地点へ到着。きらびやかなコンパクトを取り出して大魔法の準備に取り掛かる。

 

 ────100%を三回撃て。それで事足りる。120%以上を一回撃てば、それだけで魔法少女は死亡する。

 

 充填率97%。

 

「それじゃあ時間が掛かりすぎる!」

 

 ────その掛かる時間は仲間が稼ぐ。お前は仲間を信じられないのか?

 

 充填率98%。

 

「っ…………もしバレたら!? 次弾を撃つ時、魔女にはあたしの位置がバレてんだよ!!」

 

 ────そうか。ならばオレが援護しよう。

 

 充填率100%。綾野梨花は撃つべきか迷う。謎の声の正体に従っても良いものか。もしや魔女の声で、必殺の一撃を邪魔しているのではないか。

 小刻みに振動するソウルジェムは、今か今かと高密度魔力の大放出を待っている。だが今撃てば一体の魔女を倒せる程度。やはり限界を超えて撃たなければ三体の魔女は倒せない。

 

 ────ソウルジェムにヒビが入れば……魔法少女としての戦闘能力を失う。それでもか? ……それでもかッ!

 

「……ッ!」

 

 充填率102%。次の瞬間、綾野梨花は大魔法(マギア)を行使した。収束する真紅の魔力は閃光のように金星の魔女の背中を穿ち抜く。

 

「ホo櫨琥£────!!」

 

 金星の魔女は断末魔を上げて崩れ落ちる。すかさず綾野梨花はコンパクトの魔力充填を再開。が、銀星の魔女に目を付けられる。

 

「ほら来た! だから言ったじゃん!」

 

 ────こちらの思惑通りだ。登り続けろ。そして80%で迎え撃て。

 

 綾野梨花は駆け出した。無限階段を必死に駆け上り、下層から怒り狂うように猛追飛行してくる魔女から逃げ続ける。

 

 しかし魔女の方が素早い。無限階段に頭突きして頭だけ段差の上に顔を出した魔女は、残像が見えるスピードで両手を動かす。その顔面は醜悪そのものだった。思わず「キモッ!」と叫んだ綾野梨花。その声を聞いて位置を把握した魔女は、暗中模索ながら蚊をたたきつぶすように階段へのビンタを繰り返した。

 

 狂涛の地団駄で崩落する無限階段。綾野梨花は「やばいやばいやばいヤバイ!」と叫んで駆け登る。

 次の瞬間、傍らに白刃のような光と青い炎が揺らめき、それが魔女の頭部に命中した。

 

「れんちゃん!?」

 

 五十鈴れんの魔力色と似ていたため誤認したが、彼女の魔力パターンは下層にある。ならば今の青い炎はなんだったのだろうかと考える綾野梨花は、ふと思考の余裕があることに気付いた。というのも魔女の動きが鈍くなっている。それでも気を抜けば追いつかれるため、綾野梨花は背後で崩落する階段と猛追してくる魔女に冷や汗を流しながら、不意にコンパクトをチラ見、充填率80%の到達を確認して急ブレーキを踏み、振り返る。

 

「やっとこっちの番が回ってきた! これでも喰らえ、あたしの大魔法(マギア)!!」

 

 上層にて真紅の閃光が弾ける。

 同時期、下層でも黄色の二重閃光が弾けた。アタッカーの二人が大魔法を行使したのだろう。

 

「窩£攬臚────!!!!」

 

 銀星の魔女の断末魔が響く。やがて金星の魔女と銀星の魔女は瘴気を天上に放出しながら消滅した。

 地表でも銅製の魔女が容赦なく切り刻まれており、瘴気を噴き出して消滅する。

 

「……お、終わった……? ……や、やったー……!」

 

 地上を覗き見て魔女反応が三体とも消失した事を確認した綾野梨花は、安堵したのか膝同士を小突き合わせてへたりと座り込む。

 今まで登ってきた無限階段はボロボロで降りることは難しい。だが魔法少女の身体能力なら、どんな高さから飛び降りても大丈夫だろう。綾野梨花は仲間と合流するため立ち上がる。

 

 その時だった。

 

「笆郲йё────!!!!」

 

 突然の轟音絶叫と共に魔女迷宮が震撼し、銀河の景色が描かれた壁を砕き割って四(・)体(・)目(・)の(・)魔(・)女(・)が姿を現した。

 

          †

 

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