アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
中央区の電波塔付近にあるファミレスチェーン店。11名の団体も学生ならではなのか、店員は慣れた様子で奥のふすまのある空間に案内し、使用する席の数を尋ねる。相談の結果、いつものように、ほかの客のために席を圧迫しないようギリギリの2テーブルを注文。
そこは向かい合うタイプのベンチ席で、1テーブルにつき詰めれば六人は座れる。
Aテーブルの北側ベンチに窓際から木崎衣美里、八雲みかげ、悪魔が座り、向かうの南側ベンチ席に都ひなの、五十鈴れん、綾野梨花が座る。そこから廊下を挟んで真横のBテーブルには、北側ベンチの窓際から保澄雫、毬子あやかが座り、南側ベンチ席に加賀見まさら、粟根こころ、江利あいみが座る。
「あーしこのパフェ食べたーい! でも毎回カロリー高すぎて太るの気になるんだよねー。そんで食べない」
「そうなんだー。でもミィも食べたいなー……そうだ! みんなで分ければいいじゃん!」木崎衣美里は「天才か!?」と叫ぶ。
「ならそれはオレのとして注文してくれ。その《特盛きらめき電パフェ塔分24アワー》ってやつ」
「悪魔それ食べるのか……!? いや、みんなで分けるのか……そうだよな……じゃあアタシも少しだけいいか……?」
「……り、梨花ちゃんは……なに食べる……?」
「あたしはサンドイッチでいいかなー。──あ、見てれんちゃん! このサンドイッチかわいいよー! うさぎさんの形になってるー!」
「私はあやかと同じのでいいよ」
「えっ! あたしカレーライス頼もうと思ってたんだけど……半分こする?」
「こころ。ジュース」
「ありがとう、まさら。今日はマカロンでいいかな?」
「えーなに? 前々からここ来てるのお二人さん? もしかして絶好のデートスポットだったりするー?」
各自、夕飯に差し支えがないよう軽食を注文。ドリンクは飲み放題らしく、木崎衣美里と八雲みかげが張り切って汲みに行く。そして食事が運ばれてくるまでの間、全員ドリンク片手に和やかな歓談を始める。
「ってかさー。四体目のアレはマジでヤバかったよねー」
「うっ……あれは本当に申し訳なかった……」
「いや! みゃーこ先輩はもう気にしなくていいし! 過ぎたことは良いことよ!」
「衣美里……だがリーダーとしては反省して次に活かすべきだ……しかしそれは今じゃないよな。……よし」
都ひなのはドリンク片手に立ち上がる。全員の注目がそちらに向かう。
「みんな、今日はよく頑張ってくれた! 本当に感謝しかない! ありがとう! それで今回は反省も兼ねてアタシの奢りだ! 盛大に飲んで食って疲れを癒してくれ! それじゃあ────乾杯!」
『────乾杯ぃっ!!』
全員ドリンクを掲げて、魔女討伐作戦の完遂を祝う。
「……さて。それを言うなら悪魔にも感謝だな。本当に危ない所を助けられた。ありがとう」
「いや……。どうも」
「君にも助けられたな。改めてアタシは都ひなのだ。助太刀ありがとう」
「えへへー! わたしは八雲みかげだよ! どういたしまして……!」
それから流れるように自己紹介が始まる。
それも終わり、各自談笑に戻る頃、悪魔が質問した。
「なぁひなの。お前は神浜市のリーダーなのか?」
「うん? いや、違うぞ。アタシはリーダーというより……まァ、中央区の代表者だな」
「……ということは、東西にも別の代表者がいるってことか」
「そうなる。もしかして知りたいのか?」
「あぁ。できれば聞かせてほしい」
都ひなのは紙ナプキンを手に取り、ボールペンで簡単に神浜市の地図を描く。
「神浜市は、主に三人の代表者によって勢力が分かれている。西側の代表者は七海やちよ。テリトリーは新西区・参京区・水名区・栄区の辺りだ」
「テリトリーというのは、魔女の奪い合いにならないよう設けられた狩猟範囲……という認識でいいか?」
「おおむねその認識で構わない。ただ、まァ……慣例的に東西が分かれている側面もあるにはあるが……」
「東西対立というやつか」
「あぁ。少しばかし、歴史に引っ張られる人間が多くてな……。──で、東側の代表者は和泉十七夜。テリトリーは大東区・工匠区・東南凪区方面の辺りだ」
※
北養区 山岳
参京区
新西区 水名区 中央区 工匠区 大東区
栄区
空白地帯 南凪区 東南凪区方面
※
「東の範囲は狭いんだな」
「あぁ。だがその代わり魔法少女が多い」
「──……なるほど。治安や階級の差か」
「え?」
「いや、なんでもない。──それで、中央側の代表者は都ひなので、テリトリーは中央区・栄区・南凪区の中央辺りか」
「その通りだ」
「西南の凪区方面はどうなっているんだ?」
「空白地帯だ。住宅地じゃないから魔法少女の数が少ない。だから取りまとめるほどの場所じゃないんだ」
「なるほど」
「あと……東西の対立が深刻化しそうになった時、中央が仲裁に入る場合がある」
「……いわゆる中立地帯か」
「察しがいいな」
悪魔は思った。おそらく西から東に掛けて
なぜなら悪魔は日本各地を旅する一年間で、一つの街に住む魔法少女の統計を取っていた時期がある。それでデータに表れたものは、治安の悪い街ほど魔法少女が多く、かつ魔力係数の低い魔法少女が多い、ということだ。体感に近い憶測も混じっているが、もっと深掘りすれば政治的・経済的な背景が密接に絡んでくる気配もある。
平たく言えば、社会的に混乱している者ほどキュゥべえ契約を結びやすい傾向にある、という話だ。
「…………これは直感なんだが。最近、東側で何らかの勢力が強さを増している……なんてことはないか?」
「……? いや、知らないな。そんな話があれば和泉からアタシに報告が入るはずだ」
「そうか」
悪魔は神浜市の簡易地図が書かれた紙ナプキンを貰い、オレンジジュースを一杯呷る。
「……情報提供感謝する。お返しに何か知りたい事はないか?」
「ん? そういうのじゃないから別にいいよ」
「そうか。……なら一つ聞きたいことがある。魔力には幾つ性質がある?」
「────! ……大体、五つ……」
悪魔は頷く。
「基本的な性質は七種類ある。ただし七つのうち二つはレアだから知らなくても無理はない。……この話、聞いてくれるか? これからの戦闘の助けになると思うんだが……祝勝会の妨げになると言うのなら今回は遠慮しよう」
「…………」
「ただ中央を取りまとめる代表者ならば、知っておいて損はないと思ったんだ」
都ひなのは全員の顔を一瞥する。隣のテーブル席は談笑に夢中だが、ふと梨花やれん、衣美里と目があった。
「いいじゃん! みゃこ先輩! この人なにか知ってそうだし、話だけでも聞こうよ!」
「あ……ず……」
「ほら、れんぱすも『私たちの事は気にせず』って言ってるしさ!」
「お前ら……サンキューな。よし、悪魔。情報交換と行こうじゃないか」
「助かる。了解だ」
悪魔は新品の紙ナプキンを取り、都ひなのからボールペンを貸してもらって七つの属性について記す。
「まず魔力には七つの性質がある。性質の見分け方は色々あるが、ポピュラーなのはやはり“色”だな。だが色だけでは不完全だ。よって正しく魔力の性質を認識するために“性質の効果を表す象徴法”が使われる。たとえば地水火風空とか、木火土金水とか……中には天候で表す命名法もある」
「へー!」
「いや衣美里。まだ性質の話はしてないだろ」
「いやいやみゃこ先輩! 地水火風空とか木火土金水とか、なんかマンガやゲームみたいじゃん!」
「そうなのか? でもそれは仏法の色法やら五行説やらで実際にあるものだからな」
「デジマ!? さすがみゃーこ先輩くっわしー!」
「……続きいいか? 魔力の性質と色は密接に絡み合っている。たとえば赤は分解、青は鎮静、緑は硬化、黄色は活性、紫は増殖……そしてレアな橙色は調和、藍色は構築と言った具合にな」
「えみりんがボケて、みゃこ先輩が突っ込んだのに、平然と解説できてる……」
「……こ、……ひ!」
五十鈴れんは「話の腰を折られても折れない強かな人!」と言いたいようだ。
そして悪魔は紙ナプキンを差し出す。
※
色分け :元素分け:共通する性質:
橙(オレンジ) : 魔 : 調和 :
赤(レッド) : 火 : 分解 :
青(ブルー) : 水 : 鎮静 :
緑(グリーン) : 雷 : 硬化 :
黄(イエロー) : 光 : 活性 :
紫(バイオレット): 闇 : 増殖 :
藍(インディゴ) : 無 : 構築 :
※
「おー! なるほどー! だからみゃーこ先輩は緑やら紫やら言ってたのかー」
「いや魔力の色によって性質が分かれているのは何度も口を酸っぱくして教えてただろうが!」
「いやーめんごめんご! なんか難しくて全部は覚えきれなくてさー! あーしが紫ってのは覚えてんだけどさ!」
「アタシは赤だよね。そしてれんちゃんは……あれ? 青っぽいけど、藍色だよね?」
「……?」
「ソウルジェムの色を見れば一発で分かる。色が混じっているように見える場合、大抵は複数の属性性質を持っていると判断していい。だが最も確実な確認方法は────そうだな。実践して見せようか」
五十鈴れんのソウルジェムは青色である。だが彼女は濃い青……つまり藍色の魔力を多用する。故に鎮静と構築、どちらの使い手なのか、梨花とれんが首をかしげる中、悪魔は借りた
「今から
悪魔は透明な水をグラスに注ぐ。
「このグラスに自分の魔力を通す。すると水に反応が起きる。面白いからってやりすぎるなよ。魔力とグリーフシードの無駄遣いだからな」
悪魔は魔力────ではなく、死ぬ気の炎を通す。本来は魔力だが、死ぬ気の炎でも結果は変わらない。悪魔の空系リングに火が灯り、調和の効果が水に満たされる。すると、みるみるグラスの水の色が橙色に変わっていき、やがて藍色と混ざり合い、さらにグラスの奥底に水銀のような不純物が出来上がった。
『えー!!!?』
八雲みかげ、木崎衣美里、綾野梨花の歓声が一致する。五十鈴れんも目を見開いて驚いているが、都ひなのだけは属性による水の色の変化を知っていたように観察していた。
「グラスと水が調和して、水銀のような不純物が構築された。つまりオレは魔属性と無属性の二重属性というわけだ」
「え? それってレア属性を二つも持ってる……ってことォ!? チョー激レアじゃん! クマ吉すげー!」
「その呼び方やめろ」
「ねぇねぇクマ吉! ミィもやっていい!?」
「浸透すんな。あと水見式を使った水は飲むなよ。腹が痛くなっても知らないぞ。そんで注ぐ水は半分くらいにしておけ」
悪魔はピッチャーを八雲みかげに手渡して、グラスの水を捨てに行く。
「……そんなにやりたがるものか? ソウルジェムの色を見れば何属性か分かるんだぞ?」
「もー、みゃこ先輩! こういうのは体験すんのが面白いんだよ! それにみゃこ先輩のあんまり驚いてない様子から察するに、実は既に試して知ってたんでしょ? なんで教えてくんないかなーこんな面白い遊び!」
「いやーそれは…………だってそもそもお前らが「むずかしー」とか言ってけむにまいて話を聞いてくんないから……」
「はっはー! それはマジでメンゴね? みゃーこ先輩! ドンマイドンマイ!!」
「あのなァ……」
都ひなのは化学的好奇心こそ旺盛だが、それに関して他人に興味を持ってもらう事が少し苦手らしい。
そして八雲みかげが水見式を試した結果、突然グラスの水量が増えていき、グラスから水が溢れ出してしまった。さらにグラスの奥底に微量な不純物が構築されている。
「わー! なんか水があふれちゃった! どうして!?」
「増殖効果によるものだ。水が増殖したんだよ。性質ごとのメモも残そうか」
「あと水が紫色になって、底に不純物ができたよ? ちょっと水が藍色っぽい感じもする!」
悪魔は紙ナプキンに、水見式による水の変化を書き記す。
※
橙・魔:調和によって、様々な事が起きる。
赤・火:分解によって、水の味が変わる。魔力が強いと、グラスが割れる。
青・水:鎮静によって、水の揺れが止まる。魔力が強いと、どんなに振動を加えても水面が波立たない。
緑・木:硬化によって、グラスが硬くなる。魔力が強いと、水も固形化したように硬くなる。
黄・光:活性によって、水が激しく波打つ。魔力が強いと、水が噴水のように噴き出す。
紫・闇:増殖によって、水の量が増える。魔力が強いと、グラスの本数が増えたり、グラスが巨大化したりする。
藍・無:構築によって、水の中に不純物が出現する。
※
そこでBテーブルの魔法少女たちが興味を持って寄ってきた。
「うわー! なんかすごそうなことしてるー!」
「なになに? 面白そうだね! まさら、ちょっとこっち来て!」
「えーそれマジック!? あたしにも教えてよー! 雫ちゃんも来ーい!」
みんなが水見式で興奮する中、悪魔は内緒話ができる位置に都ひなのを呼び出して質問する。
「なぁ。こいつらの魔法少女歴は何年だ?」
「まだ一年か二年って奴らが多いかな。まだまだペーペーの新米だよ」
「じゃあ今まで魔力の七属性を教えなかったワケは?」
「アタシの教え方が悪かったのか、あんま興味を持ってくれなくてね。だから感謝してるよ」
「そうか。本当は段階を踏んで教える気なのかと思ってた」
「────!」
「本当は全員の“やる気”が問題だったんだろう? 魔女戦闘は命懸けだ。それは頭の中で分かっていても、魔法少女は大体ゴリ押しでなんとか出来てしまう。だから魔法少女に対する憧憬が邪魔をしたり、学業との二足のわらじだったりして、なかなか学ぶ意欲を持ちにくい。ならば、魔女に苦戦でもすれば考え直してくれるかもしれない……だがそんな危険な真似はできない。そうこうしている内に時は過ぎゆくが、全員魔法少女をやっていればいつか気付くこと……ならば無理して教えることでもないか……とも思っていた。そんな感じか?」
「……驚いたな。そこまで見透かされていたか」
だが少し違うと都ひなのは語る。
「それでも教えるべきだ。命に関わる事なんだからな。だから今回、本当は……みんなには内緒で、ある
「応援?」
「あぁ。当初の計画では“二体の魔女が出る”と言って討伐隊を編成し、三体目の奇襲でピンチを演出。だが本当に被害が出ないよう応援が助けに来る……そういう筋書きを作っていた。しかしその応援の役割を果たしてくれる奴に断られてしまってな……」
「そいつの名前は?」
「七海やちよだ。なんか最近切羽詰まってるみたいで変なんだ。いつもなら、こういった後輩の育成には二つ返事で了解してくれるんだが……」
「そうか。だが彼女に断られたことで計画は白紙。最初から三体の魔女が出現すると伝えて、通常の討伐作戦を始めたつもりだった。しかし期せずして四体目の魔女が出現。さらに期せずして“応援”の役割を果たし、全員に反省を促す
「あぁ。まさに渡りに舟って感じだったよ。それはそれとして四体目の魔女に関しては、ガチのヘマだから落ち込むけどな……」
都ひなのは重い溜め息をつく。その両肩にはかなりの疲れが溜まっているものと見た。
「なに。お前もお前で、これだけ大量にいる後輩の育成に、今まで心血注いできたんだろ。それなら一つくらいミスはする。人間なんだからな。今日はそれをカバーできて良かったよ」
「お前…………。悪魔って名前の割に、ぜんぜん悪魔らしくないな」
「悪魔は総じて親切さ。契約を結ぶ為なら善人だって演じてみせる。インキュベーターみたいにな」
「……なぁ、訊いてもいいか? お前、何者なんだ?」
魔法少女ではないのに、なぜ魔法少女の世界の事を知っているのか。魔女も普通の人間には見えないはずだ。インキュベーターの事も知っている。数々の疑問は全員が同時に思っていることだ。悪魔は返答する。
「キュゥべえにでも訊くんだな」
「……そうか。悪い」
神浜市にキュゥべえは居ない。もしそれを分かった上で言っているなら、遠まわしに聞くなという皮肉を言っているも同然だ。それに気付いた都ひなのは詮索したことについて謝罪する。だが悪魔も悪意はないため、それを示す手のひらを掲げて見せた。
一方、キャーキャーと騒いで水見式を楽しむ魔法少女たち。
どうやら今は、粟根こころが黄色と緑、つまり光と木の二重属性であることが分かり、知的好奇心を刺激されているようだ。そこで八雲みかげが質問してくる。
「ねぇ悪魔! どうしてみんな水の中に不純物が出来るの?」
「…………さて、なんでだろうな。魔法少女には全員、無属性の才能があるのかもしれないな」
「ふーん……そっか!」
八雲みかげは立ち去る。そこで都ひなのが聞いた。
「で、実際どうなんだ。お前、明らかに知ってるだろ。嘘つくの下手くそか!」
「ハハ。……知りたいですか? たとえば、ソウルジェムに穢れが溜まり切るとどうなるのか……とか」
「そんなの、魔法の性能が低下する、だろ?」
「…………まぁ、そうですね。では、このことは内密にしてほしいんですけど、有り体に言えば呪われてるんですよ」
「は? 呪われてる?」
「えぇ。魔法少女は全員、呪われている。キュゥべえと契約した時点でね。だから藍色や無属性は“呪い”の象徴と思ってもらっても結構です。海外の呼び方では、藍色の魔力は“カース”とも呼ばれているようですし」
「…………そうか。────ところで、なんで急に敬語なんだ?」
都ひなのは首をかしげる。対する悪魔は動揺していた。
「いや……見た目に反して相当年上であることに今しがた直感したんです。みかげと同い年か一個下だと思っていたんですけど……もしかして本当は?」
「……高三だよ……」
「……そうですか。タメ聞いてすいませんでした」
「急に下手に出るな! なんか調子狂うわ! さっきまでの“
都ひなのの身長は145cmである。体型はいわゆる幼児体型。故に悪魔は小学五年生か六年生くらいと思っていた。しかしながら、年齢にそぐわぬ風格とベテランの才覚、そして周りからの慕われようから、すぐに最年長であることに気付いても良かったのだが……どうやら悪魔の超直感でも気付きにくいレベルのロリ具合だったようだ。
「じゃあ普段通りで」
「あぁ、そうしてくれ」
悪魔は壁時計を見上げて時刻を確認。もう夕暮れ時だ。そろそろ出立しようと思ったのか、都ひなのに目配せする。
「それじゃあ、また機会があれば。──あ、それと。この流れで魔力属性の相性についても教えてやってくれ」
「おう、了解だ。何から何までありがとな!」
そこで八雲みかげが勘付いた。
「あれ!? 悪魔もう帰っちゃうの!? まだパフェ食べてないよ!」
「食べればいいじゃないか。みんなで小分けにして」
「そんなぁ! ……あ、まさか! ミィをパフェに釘付けにするつもりだったんだ! この策士め!」
ピクっと悪魔は立ち止まる。
それを見た八雲みかげは、少し言い過ぎたのかと思ってビクついた。
「……いや、策士は言いすぎたかなー? てへっ?」
「……そうだ。お前ら、小さなキュゥべえって知ってるか?」
悪魔の質問に、全員は首をかしげる。
「それなら“魔法少女をやめられるうわさ”は?」
「あ、それなら聞いたことあるかも! SNSで、だけど……」
「え、マジで? あーしはアレ都市伝説的なもんかと思ってたー!」
綾野梨花と木崎衣美里はSNS経由で知っているらしい。ほかの魔法少女も見渡してみるが、保澄雫が少し不思議そうに首をかしげていた程度で、興味を持っている子はあまり居なさそうだった。ただしそれは魔女化の真実を知らないからである。あるいは、うわさの内容をまだよく知らず、熟考したことがないからか。ともあれ可能性はゼロではない。だが今ではないことを悪魔は直感した。
「そうか。答えてくれてありがとう。じゃあな」
かくして悪魔は店を出て、次の街へと流れていった。
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