アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
悪魔と暁美ほむら(と爆睡するランボ)は、固い地面からゴツゴツとした川砂利を踏み締めて谷底の合流点にやって来た。
川べりに張られたチーズ柄のテント。その周囲は豪華なキャンプ場みたく、あらゆるキャンプ用品が配置されている。チーズ柄のテーブルと椅子とテントの間に設けられたチーズ柄のランタン。チーズ柄のアウトドアチェア。川の水に浸された水玉模様の調理器具。焼けたチーズの匂いが漂う水玉模様の焚き火台。水玉模様の箱型ゴミ袋。放置されている釣竿と水玉クーラーボックス。バーベキューでもするのか水玉模様のカセットコンロも置かれている。さらにチーズと水玉が描かれた三角旗がロープ状に連綿と吊るされて万国旗のように飾られている。
「こんな山奥でキャンプするなんて、どんな人なんでしょう……?」
「自分だけの人生を自由に楽しんでいるだけさ。思う存分。
ふとテントの中から小学生くらいの少女が鼻歌を歌いながら出てくる。谷底は寒いためモフモフの耳当てを付けており、白いマフラーを巻いていた。茶色系のコートを羽織っており、白い息を吐いて面を上げると、少女と悪魔の目と目が合う。彼女は驚いたように目をぱちくりさせて目をこすると、悪魔の顔をしっかりと認識した途端、見るからに表情がぱぁっと明るくなった。
「おぅわぁ! まさかの来客にびっくりなのです! お久しぶりなのですよ、クマ吉!」
「あぁ。久しぶり、なぎさ」
悪魔をクマ吉というあだ名で呼ぶは、白髪琥珀眼の魔法少女。悪魔と巴マミの友人である。
「む? そちらはどなたなのです?」
「暁美ほむらだ」
「どうも……えっと、なぎささん?」
「よろしくなのです! あ、そう言えばマミから『かわいい後輩ができた』というメールが来て、すごく嬉しそうにしていたのを思い出したのです。その話で出た名前に、たしか『暁美ほむら』があったのです。ようやく会えて嬉しいのです!」
百江なぎさ。見滝原市の魔法少女。巴マミの友人。
その情報を全く知らなかった暁美ほむらは、つくづく今回のループは一切の状況が変わっている事を改めて認識する。
「それで、なぎさ。お前こんなところで何やってんだ?」
「マミが帰ってこないので迎えに来たのです。途中まで魔力パターンを追うことはできたのですが、この辺りで途切れてしまって……数日ほど山を巡って捜していたのですが、マミの影も形もないのです! 気付いたら夕暮れだったので、今夜は野宿なのです」
「そうか。オレたちもマミがこの辺りにいると踏んでいたんだが……なぎさが数日も掛けて見つからないとなると、どうやら一筋縄じゃ行かないようだな。助太刀魔法も妨害されたことだし、おそらく結界のような物で外界からの干渉を遮断している可能性が高くなってきた」
「なら普通の探索じゃ発見は不可能に近いのです。その上、魔法を使った搜索も妨害されるとあっては、もう手詰まりなのです」
悪魔は顎に手を当てて熟考する。
背後の暁美ほむらは巴マミの発見が絶望的と知って俯き、それを見ていた百江なぎさが言った。
「難しいことを長々と考えていても仕方ないのです。クマ吉もボロボロなのですから、今夜は諦めて寝るのです! これは先輩命令なのですよ!」
「……あぁ、そうだな。了解した。もう今日は限界に近かった……まぁ、いつものことだが」
「クマ吉は頑張りすぎなのです! もう少し自分を大事にするのです!」
「……悪い」
百江なぎさは固有魔法《野営》を行使して、紫と緑からなる水玉模様のテントを作成する。
「あっちがほむらと
「……! あ、ありがとうございます……」
「ちなみにオレは?」
「もちろん、なぎさと一緒なのです!」
えっへんと胸を張る百江なぎさは、逃がさないと言いたげに悪魔の腕に抱きつく。
悪魔は「やっぱりか」と目を閉じて後ろ髪を掻き、複雑な心情を悟られないよう振る舞う。
「それじゃあ、ほむら。今日の捜索はここまでだ。しっかり朝まで休もう」
「はい……分かりました」
「ところで腹は減ってないか?」
「あ……そう言えば夕飯を抜いていました……お腹がぺこぺこです……」
そこで百江なぎさが沢山の保存食を持ってくる。
「コンロを使えば五分で完成なのです! 白米にハンバーグ、カレーに牛丼、なんでもあるのですよ! 好きなものを選ぶのです!」
「わぁ……! ありがとうございます、なぎささん!」
「なぎさで良いのですよ!」
悪魔はクーラーボックスを開けてキンキンに冷えた飲料水を飲み干す。かなり喉が渇いていたようだ。
暁美ほむらは夕飯を温めていると、美味しそうな匂いに釣られてランボが目をこすりながら起床。一緒に食べることになり、女の子三人の食卓が開かれる。
「……」
それを眺めていた悪魔は、楽しげな食卓を邪魔しないよう下流に移動。
岩の上に座り込み、光り輝く星空を仰いで一息つく。
「────だれ?」
不意に後方から、聞き覚えのない女性の声。敵意はない。ただ警戒されている。
悪魔は敵対の意思がないことを示すため無警戒で振り返ると、そこには月光が似合う美少女が立っていた。
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