アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
【私、ほむらちゃんに頼り過ぎていた事に気付いたの……】鹿目まどか
クッキーパーティーが終わり、後片付けのため台所で洗い物をする七海やちよと、それを手伝う環いろは、暁美ほむらがいた。
「そういえば環さんは、妹さんを捜すために神浜へ来たのよね」
「はい。それがどうかしましたか……?」
七海やちよは思う。新米魔法少女である環いろはは実力が伴っていない。ほかの街と比べて異常に魔女が強い神浜市では生き残れる確率が低いだろう。今はチームももこと行動を共にしているようだが、それはあくまで協力関係。いつも一緒にいるわけではない。一人でいる時に魔女と遭遇したらどうするつもりなのか。せめて一人で魔女に対処できる段階でなければ死を待つのみだ。
(……なら教えればいい。後進育成はベテランの役目。でも今の私にそんな余裕はない……)
ウワサ。魔女ガタリ。スタンド。神浜市に跳梁と蔓延る正体不明の脅威。足でまといの面倒を見ながらこれに対処するのはなんとも厳しいものがある。
「……暁美さんは? あなたも神浜市に消えた先輩を捜しているのよね?」
「そうです」
「じゃあ私と同じだね。捜している人は違うけど……きっと見つかるよ!」
そして環いろはに言えることは、暁美ほむらにも言える。環いろはに比べれば、まだ修羅場を潜っており秘めた力も隠しているが、いかんせん覇気に欠ける。実力を出し切ればトップに登り詰める素質があるのに燻っているのは、皮肉にも仲間の存在だろう。見滝原市でも巴マミ・鹿目まどか・美樹さやかと呼ばれる魔法少女と合同で魔女退治を頑張っていたと言っていた。
(神浜市に何度も足を運ぶ気でいる弱い魔法少女が二人……まとめて面倒を見るのはキャパオーバーだわ。でも見捨ててはおけない……これはテストをしてみるべきかしら……)
「……悪いけど、これから環さんと暁美さんの神浜市への出入りを禁じるわ」
「……え?」
「ど、どういうことですか! やちよさん!?」
「もう知っているでしょうけど、神浜市の魔女は他の街と比べて異常に強い。それに一人で対処できる実力がなければ、むやみに死体が増えるだけよ」
「それは……」
「…………つまり、一人でも戦えると証明できればいいんですね?」
七海やちよは目を見張る。見た目は控えめで振る舞いは温厚的だった環いろはが、急に語気を強めて勝負を買って出た。
「私も半端な気持ちで神浜市に来ているわけじゃありません。実力がないのはその通りだけど……だからこそ、やちよさんに心配させないくらい強くなってみせます!」
「別に心配なんかしてないわ。死体清掃はもう懲り懲りってだけよ」
「…………」
やる気を見せた環いろは。対する暁美ほむらは少し考えるため俯いたあと、ある提案をした。
「それじゃあ、もし力を認めてくれたら……この家に住まわせてくれますか?」
「────えっ?」
「あの、今日ずっと考えていたんですけど……私、マミさんの件もあるし、しばらく神浜市に滞在したいんです。毎回、見滝原市から電車で来るのは時間の無駄と感じていて……それに、今よりもっと強くなるため、師事してみたい人がいるから……」
「……師事したい人?」
それは自分ではないと七海やちよは察する。では誰か。暁美ほむらの交友関係がどこまで広いのかは知らないが、もし七海やちよが知っている人の中では、一人だけ心当たりがある。
「……なるほどね。つまり暁美さんには二つの目的があって、そのためにはみかづき荘に住んだ方が効率がいいと」
「そんな合理的に考えているわけじゃなくて、思い付きに近いんですけど……はい……」
暁美ほむらは思う。神浜市に滞在するなら、その間、見滝原市にいる鹿目まどかはどうするのか。美樹さやかが居るから魔女退治による死亡の可能性は心配なさそうだが、それで離れ離れでも大丈夫とは口が裂けても言えない。ぶっちゃけかなりとても寂しい。
「……二人のやる気は分かったわ。ただ決意があっても覚悟が足りないんじゃ意味がない。今からテストを出すわ」
環いろはと暁美ほむらは息を呑む。
「一人で魔女を退治してグリーフシードをゲットしなさい」
七海やちよはウワサの調査があるため、テストを受ける二人の様子を見守り、どこかでズルをしないか監視することができない。そのため監督役は悪魔に任せようと考える。
「分かりました。頑張ろうね、ほむらちゃん!」
「うん……環さんも……!」
────その時、水波レナと秋野かえでの言い合う声が響き渡った。
「何よ! 家庭菜園くらいでメソメソして! ビルが建っちゃったものは仕方ないでしょ!?」
「だって……全部枯れちゃうんだよ!? レナちゃんは植物の気持ちが分からないからそんなこと言えるんだよ!」
「はぁ? 植物の気持ちなんて分かるわけないじゃない! バッカじゃないの!?」
「バカじゃないもん! そんなこと言うレナちゃんが一番バカだもん!」
「ハァー?! いつも頭の回転が遅いかえでにだけは言われたくないんですけど!」
「レナちゃんだって全然勉強できないじゃん!」
いつもの喧騒。十咎ももこは頭を掻いてどうしたものかと仲裁に入る。
二階からも悪魔と百江なぎさが降りてきて、一体何事かと様子を見る。
「おいおい待て待て……またケンカしてんのか?」
「っ────ももこは入ってこないでよ! どうせレナが悪いんでしょ! はいはいごめんなさい!」
「それ全然謝ってないよ! なんでレナちゃんはいつもそんなに言葉と当たりがキツイの?! 人の気持ち考えてない証拠だよね!」
「それアンタが言う!? ッ……! もういいわよ! かえでの気持ちなんか分かるわけないし! アンタにとって気持ちが分かる子が友達なのよね! じゃあもうレナたち友達じゃないってこと!? なら絶交でもする!?」
「っ……する! 絶交する!」
「あっそ! じゃあもう話しかけて来ないでよね! 絶交よ!」
フンと鼻息荒く目元に涙を浮かべた水波レナはソファに置いてある学校鞄を掻っ攫い外に走り出していく。
「あちゃ~……」
「…………うぅ……ひくっ……」
「……かえで。アタシの所に寄りかかるか?」
「……っ……いい。もう、帰る…………」
ポロポロと涙がこぼれる秋野かえではソファに置いてある学校鞄を持って外に走り出す。
「ハァ……またか……参るなぁ……さっぱり慣れないや……」
「あの……」
恐る恐る様子を見に来た環いろはは大丈夫なのかと目で問いかける。
「あー……ごめんね、いろはちゃん。みんなも……せっかくパーティーで楽しくしてたのに。あぁでも心配しなくていいよ? あいつらの喧嘩はいつものことだから……」
「でも……絶交って……」
「まぁ……それは流石に言い過ぎってトコもあるよね。でも下手に仲裁に入ってもなぁ……アタシだとタイミングが悪くてこじらせちゃいそうで……」
「ならオレが行くか? 水波レナは任せろ」
唐突に悪魔が進言する。彼は聞いた割に答えを待たず外に出て、扉を閉めようとしたところで七海やちよに呼び止められた。
「待ちなさい。あなた自分が監視対象であることを理解しているの?」
「何か頼み事でもあるのか? 悪いが後にしてくれ。なぜだか放っておけないんだ」
悪魔は外に出る。ふと石畳の隅に青いハンカチを発見。水波レナと秋野かえで、どちらかが落としたものだろうと思い拾い上げる。門扉を出ると、塀のそばには桃色のツインテールに赤いリボンが特徴の、淡いワインレッドの瞳を持つ女の子が立っていた。
「──お前……。なぁ、さっき青い髪の女の子が出て来なかったか? どっちに行った?」
「えっ! あ……あっちの道に……」
「そうか。ありがとう。またな」
悪魔は走り去る。しばらく女の子は門扉の前でモジモジしていると、玄関から暁美ほむらが出てきた。
「────あっ、ほむらちゃん!」
ふと、聞き覚えのある愛しい声が聞こえてきたことに驚いた暁美ほむらは目を疑う。
「え……まどか! なんで神浜市に……? 一人は危険だよ……!」
「それはこっちのセリフだよ! 今日は学校を休んじゃうし、全然連絡も入れてこないし……心配になったから魔力パターンを探ってみたら、見滝原市にいるのに神浜市に向かい始めたから、なんかもう追いかけて来ちゃったよ……」
暁美ほむらの不可解な行動に驚いた旨を伝え、鹿目まどかはとにかく無事でいたことに安堵する。
「ご、ごめんなさい……色々とやらなきゃいけないことが山積みだったから……」
一旦見滝原市に戻ったのは弾丸を補給し、新たな爆弾を作成するためだ。まだ神浜市のどこに裏社会の事務所があるのか突き止めていないため、いつもの事務所から取り急ぎ武器を貯蔵するため帰還した。それ以外にも、放置すれば後々厄介になる使い魔を狩ったりしていた。さらにグリーフシードを落とさない成長途中の弱い魔女を後々のため狩ろうとしたら、なぜかどこを探しても見つからないというイレギュラーも発生し、そんなこんなで報告する暇が無くなっていた。
「ほむらちゃん。私たち友達だよね?」
「え!? う、うん……! 友達だよ! 最高の!」
「ほんと? ありがとう! それなら昨日、何があったのか教えて! 私、ほむらちゃんに頼り過ぎていた事に気付いたの……昨日、一緒にマミさんを探せば良かったって、ずっと後悔してたんだ」
「まどか……。頼り過ぎなんて、そんなことないよ。私の方こそ、まどかの役に立ちたくて……でも、だからって一人で何でもかんでもするのは違うよね? ごめんね……」
「もう謝らなくていいよ、ほむらちゃん。それより……」
「うん。じゃあ……昨日何があったのか全部説明するね?」
暁美ほむらは鹿目まどかの手を取り繋ぎ、近くの公園に向かって連れ立って歩き出した。
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