アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
夕方の新西区・駅チカの商店街。雑踏の喧騒。ネオンが点き始める日陰の通り。
どしどしと早歩きでゲームセンターに入っていく水波レナの後方では、追いかけてきた悪魔が見守っていた。
(……オレは何をしてるんだ。特に超直感で危険を感じたわけでもない……ならばなぜ?)
悪魔は、ただ心配で追い掛けたわけではないことを自覚する。これはお節介に近い。仲直りさせたいなら秋野かえでの方にも気を配ればいいはずだ。なのに水波レナに限定して追い掛けてしまったのは、きっと何か理由があるはず。
(……わからん。だが、それならそれで構わない。ハンカチを送り届けて帰るとしよう)
悪魔は不協和音のゲームセンターに足を踏み入れる。学生などの若い客が多い中、水波レナはすぐに見つかった。彼女はクレーンゲームに没頭しており、ストレス発散のためか大量の飴玉やチョコを落としまくっている。
「……レナ」
「────っ! は? なに? まさか付いてきたわけ?」
「そうだな。嫌な気分なところ悪いが落し物だ」
悪魔は青いハンカチを手渡す。
「! それ……レナのお気にの……」
「そうか。失くさなくてよかったな」
「…………、…………」
水波レナの体がプルプルと震える。
それを見た悪魔は直感した。お礼を言いたそうだが、素直に言い出せないでいる。自らの気持ちを伝える自信がないのだ。
「…………、────そうか。そういうことか……」
「?」
悪魔は理解した。
「似てるんだ」
歳は違うが、素直じゃない所。
ある場所の大きさは全く違うが、背が低い所。
常にツンケンしており、甘い物が好き。
なにより────髪型も顔立ちも違うのに、空を映す髪と海を覗く瞳が……。
「……な、なによ? 人の顔をジロジロと見て……お、お礼は言わないからね。落としたの、たぶんみかづき荘の中でしょ? それなら、やちよさんが拾ってくれてただろうし……」
「…………」
「うっ……で、でも、まぁ……その…………っ。やっぱなんでもない!」
「お前の感謝を貰って嬉しくない奴は居ないよ」
「────え?」
自信の無さはどこから来るのか。それは超直感でも断定できない。故に悪魔は己の人生経験から答えを探し出す。
「オレは昔から自分に自信がなくてな。周りからは事あるごとに“ダメツナ”と呼ばれていた」
「……」
「だがあることで後悔すると不思議と勇気が湧いてくる。それがなぜかは分からない。……お前は、そんなことあるか?」
「…………なに? 遠まわしの説教? それとも自慢話?」
「そういえばレナはチーズを可愛がっていたよな。中身は
「っ!!?」
なぜか悪魔は呼吸するように煽る。水波レナは心の内を見抜かれる事を忌み嫌うため奥歯を噛み締めた。
「……うっさい。ウザイ。消えて」
「心の底からそう思っていたら消えるさ」
水波レナは無視を決め込む。クレーンゲームのボタンがガチャガチャと音を立てて、ザラザラとお菓子が取り出し口に溜まっていく。
「知ってるか? 魔法少女の固有魔法は、願い事に関する心理を反映する傾向にある。そこで思う。レナの
「ッ…………うっさい。そんなの大っ嫌いに決まっているじゃない……」
「なら秋野かえでも嫌いなのか?」
「……は?」
「自分のことが嫌いなのは別に構わない。だが自分の言動が嫌いなら、なぜその嫌いな事をしてしまう? 普通、嫌いなら反抗すればいい。お前は嫌いな自分に従っていて悔しくはないのか?」
悪魔は直感しつつ、腕を組んで悩み出す。
水波レナは“水波レナ”という人間が嫌いだ。トゲのある言葉を使い、態度も辛辣。性格はひねくれており、鋭い目付きと可愛げのない名前まで嫌っている。
鏡。それは自らの姿を振り返る為の道具だ。それを魔法で作成できるという事は、水波レナは“水波レナ自身”のことをよく観察している。そして水波レナの悪いところばかり見てしまい、良いところが一つも見つからないことに苦しんでいるがゆえ、長所なく短所ばかりの“水波レナ”を大きく嫌っているのだろう。
水の分身もそうだ。水面は鏡のように自らの姿を映す。水は流動的で傾きがあればどこまでも地に落ちていく。一旦転げ落ちればどこまでも落ち込んでしまう水波レナの危うい心境をよく表している。
では分身は何を意味しているのか。嫌いなものを増やしてなんになる。それは少し違う自分を求めているからだ。水に小石が一つ落ちれば波紋が広がり、
その焦燥感。焦る気持ち。苛立つ思い。それが水波レナを攻撃的な性格に仕立て上げている。
「────おねがい、もうやめてッ!!」
そんな精神分析を本人の前でつらつらと述べた悪魔はとんだサディストである。まさに悪魔という名前に相応しい性格を誇っていると言っても過言ではない。
「そのくせ心は硝子だ。今も自己嫌悪に苛まれている」
それでよく魔女化せずに無事でいられるなと悪魔は思う。
水波レナのソウルジェムが濁りを増す。だがあるところで穢れの蓄積は停滞した。
「……別に、レナはどうなったっていいのよ。自己嫌悪が何? そんなことより、レナは……」
「────……そうか。ならそれを伝えに行け」
水波レナの言葉の続きを直感した悪魔は、佐倉杏子を思い出す。
────そんなことよりレナは、かえでの方が心配なんだから……。
面倒見がいい水波レナは、自らの事を嫌うがゆえ、あまり自らに興味を持たないようにしている。その現実逃避は本人も気付いており、気付いた上で気にしないようにしている。それはある意味で強い心がないとできないことだ。彼女は自らを俯瞰して見ることができるため、既に自らの性格に見切りを付けており、絶望するより前に諦めている。もちろん自らの性格を変えたい気持ちは残っているが、それもまた自覚した上で切り捨てているのだ。人はそんな簡単には変われないと強く断言するように。
その割り切りの良さが魔女化を抑制する一因になっているのかもしれないと悪魔は感心する。良い自己防衛だ。ただし自分を守るためについつい他者を口撃してしまうのは悪い自己防衛だ。そのせいで「またやっちゃった」とひどく後悔しており、激しい自己嫌悪に苛まれている。
「でも……」
「さっき言っただろ? お前の気持ちを貰って嬉しくない奴はいないよ。それに自信がなくても勇気がある」
「レナには、勇気なんてモノもないわよ……」
「だから出してみる価値があるんじゃないか。それともお前は水波レナの
悪魔はそれが正解か不正解かはさておき、それとなく水波レナの自己反発心を刺激して行動を促す。
「…………っ。ほんっとに最悪ねアンタ……エスパーなの? レナより友達いなくなるわよ? ────ハァ……わかったわよ。謝ればいいんでしょ……全面的にレナが悪いんだし……そんなことレナが一番わかってんのよ……」
「いや、喧嘩の理由が分からないからな……」
「かえでの家の前にビルが建っちゃったのよ。それで趣味の家庭菜園が出来なくなっちゃうどうしようって泣き出したの。でもそんなのどうしようもないでしょ。だからレナは……かえでの気持ちも考えず“諦めろ”とか“泣いたって仕方がない”とか言っちゃったから……」
「……そうか……」
「あと……かえでもショックだったのよ。だってかえでの願い事は、家の前に建つ“マンションの建設をなかったことにする”ことだったんだから」
「──なに? それは……」
「そうよ。せっかく願いを叶えて家の家庭菜園を守って魔法少女にされたのに、またマンションが建つことになったんだから。そりゃ泣きたくもなるわよ。キュゥべえに問い詰めようにも、神浜市からキュゥべえは消えちゃったし……」
「…………」
「どうせ願うなら“一生家の前に高層建築物が建たなければいい”とか願えば良かったのに……なんて、そんなこと言ってもしょうがないのにね……」
「────待て。まさかそれを言って喧嘩になったんじゃないか?」
「うっ……だって、レナは思ったこと言っただけだもん……」
過ぎたことを蒸し返されて、こうすれば良かったと言われても、既にどうしようもない。
そんな無責任な話を有り得ないタイミングで繰り出された時、秋野かえでの鬱憤が弾け飛んだのだろう。
「それはレナが悪いな……」
「だから、そんなの分かってんのよ……。……どうせ空気読めないとか思ってんでしょ?」
「読めないものはしょうがない。学んでいくしかないわけだからな。……で、かえでは?」
「今、魔力パターンを探してる……あ、結構近くにいた」
「一緒に行くか?」
「……結構よ」
悪魔は直感する。少し遠くで見守っておく気配を見せておこうと。
水波レナはクレーンゲームをやめて歩き出す。取り出し口に溜まっているお菓子は残したままだ。いま呼び止めたら気が変わるかもしれないと思った悪魔は、もったいないので保管用匣に収納する。あとで仲直りした二人に渡すつもりなのだ。
†
水波レナは魔力パターンを探知して、同じゲームセンターの中に秋野かえでが来ている事に気が付いた。
キョロキョロと辺りを見渡す水波レナは、秋野かえでの姿を発見する。
「あ、かえで────」
しかし秋野かえでの隣には、見知らぬ女子生徒がいた。見た目は白髪白眼の美少女。泣きつく秋野かえでの頭を撫でており、随分と仲が良さそうだ。秋野かえでは完全に気を許しており、慰められて元気が出たのかニッコリと笑いかける。
「……………………」
ふと、水波レナは180度の方向転換。そのままゲームセンターの外に出ようとし、柱の影で腕を組み待機していた悪魔は「待て」と声を掛ける。
「どこに行く気だ?」
「……別に。アンタには関係ないでしょ」
「ならせめて聞かせてくれ。どうして声を掛けない?」
「…………かえでに、私以外の友達が出来たなら、それでいい」
「いやいや……」
謝るのをやめて逃げ帰ろうとする水波レナ。それにツッコミを入れる悪魔はどうしたものかと考えあぐね、ひとまず付いていく。
「付いてこないで」
「なんでそう思うのか知りたくてな。口に出しても損にはなるまい」
「……っ……かえでが幸せならそれでいいのよ。だってレナ、
「────?」
それがどうしたのか。その発言を取り消すために謝るのではないのか。悪魔は首をかしげる。
「そういううわさがあるのよ。“絶交ルールのうわさ”ってのが……」
「……うわさ?」
「絶交って言ったのに後悔して謝ると、嘘つき呼ばわりされて怖い化け物に攫われちゃうの……しかも謝った方が攫われるのか、謝られた方が攫われるのかは、化け物が現れるまで分からないっていう……」
「なんだそれ」
悪魔は直感する。そんな荒唐無稽な話を建前にして、秋野かえでとの仲直りから逃げているわけじゃない。本当にそう信じているからこそ怖がっているのだ。もし本当だったらどうしようと。それは多感な時期の子供らしい怖がり方だった。
「……お前、意外と子供っぽい所あるんだな」
「なに!? ケンカ売ってるわけ!? 一応レナ中3なんだけど! アンタ年いくつよ!」
「マジか。じゃあオレは高2になっちまうな」
悪魔は今年で中学二年生になる。妹に似ていると思ったら、まさかの一個上だったことに複雑な感情を抱いた悪魔は実年齢を隠そうとし、水波レナの詮索をけむに巻く。
「────レナちゃん!」
「っ!?」
秋野かえでの声が響く。悪魔と水波レナが振り返ると、そこには息せき切る秋野かえでが立っていた。
「やっぱり……見間違いじゃなかった。あ、あのね……私……」
「……っ! 待って、かえで! 謝らないで! 悪いのはレナで……」
「うん、そうだね。でも私も、あんなに取り乱すこと無かったかなって思って……だから、レナちゃん」
「あ……違うの、かえで!」
「絶交って言って────ごめんなさいっ!」
「っ……! …………それを言うのは、私の方よ……なんか、キツイ言い方しちゃって、ごめん……でもレナ、思ったこと言っただけだからね……。……でも、絶交だけは、言い過ぎた……ごめん……」
「レナちゃん……! ふゆぅ!」
感極まって駆け出した秋野かえでは水波レナを抱き締める。
「ちょ、やめてよ! 恥ずかしいじゃない……!」
「だって……だって……“絶交ルールのうわさ”が怖かったから……!」
「は……はぁ? かえでもそれ気にしてたの……?」
「……かえで“も”? もしかしてレナちゃんも、あのうわさ知ってたの……?」
「────ッ! いや、知らないし!」
「……あ、そっか! だからさっき謝らないでって叫んでたんだ!」
「だからちがう! あーもう!」
絶交ルールのうわさ。そんなものは現実にない。ほっと安堵した二人は目に涙を貯めており、ちょっとそこに座ろうかとベンチに移動する。
「レナちゃん。ハンカチ使わないの?」
「あっ……落としちゃって汚れてるから……」
「じゃあ私の貸すよ」
「い、いいの……?」
「もちろん」
「…………り、がと……」
「え? 声が小さくて聞こえないよ~」
「うっさい! はい! 拭いたから返すわよ! かえでもさっさと涙拭きなさいよ!」
さっきまで大声で言い合って喧嘩していた二人だが、今は穏やかに会話している。子供の喧嘩と仲直りなんてこんなものかと、悪魔は微笑ましそうに見守る。そこで二人の為に取っておいた匣のことを思い出した悪魔は、しばらく様子を見守り、邪魔しないタイミングで現れた。
「よぉ」
「げっ……! そういえば居たわ……存在を忘れてた……レナとしたことがなんたる不覚……!」
「悪魔さん……! あ、そっかぁ……思えばレナちゃんがこんな素直に謝れるわけないもんね! 悪魔さんがレナちゃんを慰めてくれたの?」
「なんだか放っておけなくてな。オレはつまらん説教をしただけだよ」
「…………で、何よ。笑いに来たの? うわさなんて無かっただろって?」
「いいや。これを渡そうと思ってな」
一個の匣を渡す。それを物珍しそうに見つめる水波レナと秋野かえで。
「開けてみろ。水属性と木属性の魔力を同時に注入しないと開かないようロックしてある」
水波レナと秋野かえでは互いの顔を見合わせると、力を込めるようにうんと目を閉じて魔力を流し込む。すると匣の片側が青く発光し、もう片側が緑色に発光する。次の瞬間、開かれた匣から盛りだくさんの飴玉とチョコが噴出し、雨のように、花が舞い散るように、キラキラと降り注いだ。
びっくりする二人の頭や肩に当たって跳ね、膝下に落ち、辺りに散らばる。
「ははっ。仲直り、おつかれさま」
悪魔は手を振って立ち去る。
その後ろ姿を赤らむ頬で見送る秋野かえで。それを見た水波レナは人知れず頬を膨らませた。
「悪魔さんって、かっこいいね……」
「……ま、そうね。でも顔だけの奴を好きになるのは趣味悪いわよ」
「えー! 優しい人だと思うよ? だってあのレナちゃんと根気強く付き合える人だよ?」
「アンタ一言多いのよ! ったく……でもどうかしら。アイツ意外とドSよ。かえでより煽ってくるし……まぁ煽り仲間で気は合うんじゃない?」
「……私、人を煽るようなことしないよ?」
「ぐっ……自覚なしが一番タチ悪い……!」
「でも……レナちゃんがそんなに悪く言うなんて、なにかされたの?」
「別に? ……ってかこれ、全部拾ったりするの面倒なんだけど……」
「あ、たしかに。でもポップコーンみたいに跳ねたのは楽しかったね!」
「ま、まぁね……あの一瞬だけは、まぁ……うん……」
二人は床に散らばったお菓子を拾い集めようと立ち上がり、空っぽの匣が床を跳ねて転がった。
†
一方、悪魔がゲームセンターを出た直後。
「────ッ!?」
超直感が激しく反応する。いつになく明滅する意識。それは人の命が懸かっている時の感覚だ。
(っ……助太刀魔法────ッ!)
生命力を魔力に変換。雨刀を開匣して瞬間移動する。降り立った場所は先ほどのベンチ。辺りにお菓子が散乱しており、どこにも水波レナと秋野かえでの姿がない。
「なにっ! どういうことだ!?」
足元に落ちている空っぽの匣を発見。それを拾い上げた悪魔は背筋に悪寒が這い登る。
「もう一度だ……助太刀魔法────ッ!」
次の瞬間、悪魔の全身を包む青い魔力が弾けた。その現象は覚えがある。最初は巴マミの所に飛ぼうとした時。二回目は北養区の山中で巴マミの所に飛ぼうとした時。
「
助太刀魔法は空間位相を無視して瞬間移動することができる。つまり現実世界から魔女結界へ、魔女結界から現実世界へ移動することが可能だ。となれば二人は魔女結界に連れ去られたわけではない。ではどこへ? 超直感は一向に反応しない。
「…………っ!!」
何者かの妨害。それは助太刀魔法を無効化するほどの妨害だ。考えられるとすれば強固な概念防御。特定の条件を満たせば誰でもクリアできるが、特定の条件を満たさなければ絶対にクリアできない制約。あえて抜け道を作ることで、その抜け道を知らない者に無理を強いる方法は魔術の基本とも言える。であれば、その条件とやらは、いったいどこで満たせばいいのか……。
悪魔は走る。自動ドアの前で減速し、開かれると同時にゲーセンを飛び出す。そこで人とぶつかった。白い髪を靡かせる少女と腕がぶつかった。
「あ! ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそ……」
悪魔は道路まで走って開匣。飛び出したバイクに飛び乗ってハンドルを回転回転、ギュンギュンと轟くエンジン、前傾姿勢で跨り急発進する。
それは《
悪魔は今後の展開を予想して、死ぬ気の炎による逆噴射で空は飛ばず、なるべく体力を温存してみかづき荘に急ぐ。運転しつつスマホを持って環いろはに電話。
『────はい、悪魔さん?』
「いろは! 七海やちよに代わってくれ!」
『えっ? あ、分かりました……やちよさーん。悪魔さんから電話です!』
電話の向こうで話し声が聴こえる。
『────もしもし? 代わったわ』
「絶交ルールのウワサって知ってるか!? 水波レナと秋野かえでが神隠しに遭った!」
『……そう……』
七海やちよの淡白な返事。それで悪魔は直感する。
「……っ!? お前、まさか知ってて……!」
『可能性がある……そう予測していただけよ。誤解しないで。それにあの二人は神浜市を生き抜いている魔法少女。まだ生きている可能性は高いわ。それで、消えた場所は?』
「新西区の駅チカ、商店街のゲーセンだ! 転移系の魔法は妨害されて弾かれた! おそらく特定の条件を満たさなければ侵入できない領域に二人はいる!」
電話の向こうでコツコツと響く足音。階段が軋む音。扉を開ける音。本をパラパラとめくるような音の後、七海やちよのハッとした息遣いが耳を打つ。
『────神浜市立大学の附属学校、中等部、東塔の北側で、四階から屋上へと続く階段の六段目と七段目……』
「……?!」
『そこに向かって。場所が分からなければ途中で拾う。とにかくそこへ……急いで!』
「今バイクで向かっている! 地図を開きたいから切るぞ!」
新西区の大通りを直進爆走するバイクの
法定速度を超過した速度で突っ走る悪魔は、神浜市立大学附属学校へ急いだ。
†