※この作品はR-18です。

アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO!   作:形のない者

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【……覚悟が足りなかった。私の覚悟が】鹿目まどか

 

 時は遡り。悪魔と環いろはが絶交階段に攫われた直後。

 

 学校の廊下から一転、絶交階段に立っていた百江なぎさ・暁美ほむら・鹿目まどかは目を見張る。

 

「こ……ここは、どこなのです……!?」

「私たち、今まで廊下に居たのに……!」

「────っ! あ……あなたは、だれ!?」

 

 段差の下の方には二人の黒赤羽根と黒緑羽根が倒れており、段差の上の方では一人の魔法少女が姿勢の悪い座り方で待っていた。

 

「俺か? 俺はスズレイン。お前らをいたぶって殺す拷問魔法少女。またの名をアルテフォーラ(芸術群像)のスタンド使いだ」

「……ウウウ……」

「……ガアア……」

 

 ゾンビのような呻き声を上げた黒羽根が二人ゆらりと起き上がり、段差を這って三人を狙う。

 

《アラもう聞いた? 誰から聞いた? 絶交階段のそのウワサ

 それは絶交ルールのウワサの続き、知る人ぞ知る仲直りの方法

 無限の階段掃除をしていると、ケンカしたあの子が来てくれるかも?

 そしたら一緒に階段掃除! 永遠に仲良く掃除当番を二人占め!

 でもでも仲良くしすぎると、バケモノが怒って食べに来る!

 どこに逃げる? 逃げ場はないよ? 絶交階段は無限の階段

 バケモノに捕まると、絶交教室に閉じ込められちゃうって

 新西の女の子の間じゃもっぱらのウワサ

 ヒーコワイ!》

 

 神出鬼没のウワサさん。

 

『牙雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄■■■■■■■■■────!!!!!!』

 

 バケモノの雄叫び。

 

 三者三様の敵の出現に困惑する三人だが、すぐに百江なぎさはスズレインを牽制し、暁美ほむらは身構え、変身した鹿目まどかは覚悟の矢を躊躇なく射った。

 

「ごめん!」

 

 まず二連射。這い寄る黒羽根を二人、軽い矢で突き飛ばす。そして階下より迫り来るバケモノに向かって太めの光矢を撃ち出す。が、分厚い毛皮に弾かれた。攻撃が利かない。否、効果が薄い。暁美ほむらは拳銃を取り出して狙いを定める。射撃。魔力を込めた弾丸を受けても、なおバケモノの猛進は止まらない。このままでは襲われる。

 

「うわっ。よっわぁ……」スズレインが呆れるようにつぶやく。

 

 上階より迫り来るバケモノ。スズレインの背後に不可視の気配を放つ恐ろしい存在が出現したかと思うと、ブオンという空を切る音が響いた次の瞬間、バケモノは胴体を殴られたのか風穴が空いて黒い血液を大量に撒き散らした。

 

「汚い血だ。やっぱり純粋な人間の鮮やかな赤い血じゃないとダメだね……魔法少女の穢れた血なんて以ての外だ」

『……!!!』

 

 百江なぎさは決断が早い。

 

「バケモノもコイツもヤバイのです! だったら飛び降りるしかないのです~!」

「えぇ!? いや、それはちょっとおかしいんじゃ────きゃああ!?」

「うぇえ!? ちょっ、引っ張らないでぇえええ~~~!?」

 

 二人の衣服を掴んだ百江なぎさは、躊躇なく絶交階段から飛び降りた。

 

「うわぁお。大胆だねェ……じゃあ俺らも真似しようか。叩き潰せ、お前ら」

「ウアア……」

「グオオ……」

 

 スズレインと黒羽根は跳躍し、三人の後を追う。

 

『きゃあああああああああ────!!?』

 

 悲鳴を上げて自由落下する三人は、やがて虚空の深淵の最下層から光が溢れてくるのを目撃し、絶交裁判所に着地する。

 

《アラもう聞いた? 誰から聞いた? 絶交裁判所のそのウワサ

 それは絶交ルールのウワサの続き、誰も知らない中間点

 教室に◆まったり、岬から飛び◆りると、絶交裁判が始まる合図!

 裁判官はあのバケモノ、ケンカした子◆の絆を判決!

 もちろんユーザイ! 絶交の取り消しなんてイケナインダー!

 嘘つきは絶交南京錠! 意地悪な子にも南京錠!

 絶交南京錠を取り付けられると、意思を剥ぎ取られちゃうって

 新西の女の子の間じゃもっぱらのウワサ

 キャーオッソロシー!》

 

 ルートを無視してショートカットしたせいなのか、ウワサさんはゲームのバグったキャラのように言動と姿がブレて明滅を繰り返す。

 

「ほむら! まどか! 敵はスタンド使いなのです!」

『……!?』

「あのスズレインとか言う奴なのです! 悪魔とやちよの念話を盗聴していたから、なぎさは知っているのです! スタンド使いは人殺しを厭わず、虐殺に愉悦を感じる、残虐非道、外道の魔法少女なのです! それだけに強力で、スタンドは目に見えないのです!」

「え……それじゃあどうやって倒すの?」

「……そこは話していなかったから、分からないのです!」

 

 質問した鹿目まどかはガクリと肩を滑らせる。

 対する暁美ほむらは、一度スタンド使いとの交戦経験があるため倒す方法を答える。

 

「本体を倒すしかない……んだと思う。魔女に例えるなら、スタンドの本体が魔女で、スタンドは魔女の使い魔だから……」

「じゃあ……」

「なるほど……それならなぎさが手を汚すのです。二人はバックアップをお願いするのですよ!」

 

 さらりと殺害宣言を行なった百江なぎさは変身、ラッパの武器モベホーンを取り出す。

 そこへスズレインと二人の黒羽根が着地。

 周囲に絶交南京錠が飛び交う中、両者は相対する。

 

「おいクソ雑魚、襲え」

「ウウ……アアアア!」

「……ガアアアアア!」

 

 凶暴化した黒赤羽根と黒緑羽根が駆け出す。

 

「モベホーン!」

 

 そこで百江なぎさが、ラッパから吹き出る音の衝撃波で黒羽根の二人を吹き飛ばした。

 

「ねぇ……あなた。あの二人を操っているの!? 変な光線を当ててから様子がおかしいし……」鹿目まどかが問いかける。

「あぁ、その通りさ。アリナ・グレイの芸術性に当てられてサイケデリックな気分なんだろう。今すぐお前らも同じように洗脳してやるよ!」

「やめて! その二人を解放して!」

 

 スズレインの傍らに『立体:生きるモノクロ』そっくりの脇腹骨格が出現。サイケデリックなビームを放ち、鹿目まどかが射出した光矢と激突する。が────

 

「えっ!?」

 

 ────サイケ光線は光矢を打ち砕きながら鹿目まどかに差し迫る。

 

「危ない、まどか!」

 

 鹿目まどかを突き飛ばした暁美ほむら。その胴体にサイケ光線が命中する。

 

「ほむらちゃん!?」

「よしっ一人ゲットだ!」

「きゃぁああ!!? っ────!!」

 

 命中箇所の肩甲骨が焼け焦げている。ゆらりと立ち上がる暁美ほむらは息せき切っているが、しっかりとスズレインを睨みつけていた。

 

「……なに? 傀儡化できないだと? チッ────スタンドパワーが足りなかったか。ほかのものにリソースを割いた弊害だな。仕方ない……」

 

「ほむらちゃん、大丈夫!?」

「う、うん……平気……まどかが攻撃して光線の威力を削減していなかったら危なかった。ありがとう……」

 

 ふとスズレインの傍らに絵画が出現する。それを目にした暁美ほむらは、やっぱりと呟いた。

 

「それ……『絵画:絶叫羅漢』の……」

「……! ほむらちゃん、知ってるの?」

「う、うん……記憶が正しければ……。あれは神浜市に住んでいる芸術家アリナ・グレイの作品で……あの骨格も、たしか作品名は『立体:生きるモノクロ』だったような……」

 

 スズレインはニヤリと笑う。

 

「芸術に造詣が深いのはイイことだ。感受性が豊かな証拠であるし、人生にどのような彩りを加えれば美しく鮮やかに愉しくなるのか理解している事になる。芸術に興味がないくせに刺激的な体験がしたいと思ってる奴は下衆の中の下衆だ。無価値にして無意味な人生に安易な刺激を求めて身を崩す。未成年の妊娠や飲酒補導が俺たち学生に近い例だ。本当の刺激が欲しいなら芸術に挑むべきだと……私は思うねェ……」

 

 スズレインは語る。

 

「俺のスタンドは芸(・)術(・)の(・)偶(・)像(・)化(・)だ。

 死の象徴たるモノクロの骨格に、生の象徴たる色彩を乗せた、ビビッドあーんどサイケな立体構造物からなる『生きるモノクロ』を偶像化した結果、サイケデリックな光線で人を洗脳するアーティファクトになった。

 そして、生の頂点に至るには本能・感情・理性が最大値となって共存する必要があるとし、そのためには痛覚からくる絶叫が必要だと感じ、実際に強い刺激から創造されたのが『絵画:阿羅漢』だ。それは印象と直感の超表現に挑んだ傑作……これを偶像化した結果、悟りを開いたはずの高僧は何を頓智(トチ)狂ったか、身を以て知る様々な激痛を追体験させて衆生を導かんと絵の中から飛び出てきやがった」

 

 アルテフォーラ(芸術群像)。絵画の中から絶叫する阿羅漢が足を出し、額縁に手を置いて、ぬるりと出てくる。巌のような叫び続ける顔付き。それは石像のような姿でありながら、救わんとする衆生に向かって全速力で駆け出した。

 

「死ねば成仏。なぜ拷問みたいな真似するのか什麼生(そもさん)したら、そう説破された。そいつに触れない方がいいぜ……身が千切れるような思いをしたくなけりゃあな……」

 

 暁美ほむらの射撃。鹿目まどかの光矢速射。それを受けて阿羅漢は一瞬よろめくもダメージはない。やはり本体を倒すしかない。

 

「二人とも、引き撃ちするのです!」

 

 百江なぎさは本体たるスズレインを狙う。帰還した二人の黒羽根が立ちはだかるが敵ではない。モベホーンからシャボン玉を吹いて増殖効果で泡を倍増させ、遮断効果で耐久力を底上げする。が、黒赤羽根が分解の魔力を放射。わずかに遮断効果を削り、身を犠牲にするように突撃。触れれば破裂するシャボン玉に突撃してつゆ払いし、今度は黒緑羽根が硬化性質の魔力で身体強化。硬い体で走り、突撃してくる。

 

「────今だ、阿羅漢! 対象を奴に変更しろッ!!」

『────!?』

 

 鹿目まどかを追い掛けていた阿羅漢は急に方向転換し、百江なぎさに差し迫る。黒緑羽根の突撃を軽くいなした百江なぎさは本体に迫るが、それより早く阿羅漢が百江なぎさの横顔に手を伸ばす。

 

「っ……!」

「百江さん!」

 

 阿羅漢の大きな手が百江なぎさの肩に触れる。次の瞬間、莫大な電撃が百江なぎさを焼き焦がした。

 

「ギャアアアアアア────ッッッ!!!?」

『…………ッ!?』

 

 続いて火炎が百江なぎさの体を包み込み炎上。次は猛吹雪が発生し、火は消えるが凍えた指先が壊死して欠ける。次は猛毒。皮膚が焼け落ちて黒ずむ。さらに阿羅漢は殴り落とし、蹴り上げ、突き穿ちにより打撲痕を残し、鋭い手刀で切り傷を付け、関節技で骨を折り、肘から骨が皮膚を突き破る。そして流れるような早業で肩を脱臼させ、そこから腕を切断しようと引きちぎ────

 

 ────閃光の極矢が阿羅漢を滅却せんと薙ぎ払う。それは鹿目まどかの一射。必殺魔法でもなければ大魔法でもない。義憤が圧縮された救済の一矢だった。

 

「ま、まどか……」

「────ほむらちゃん。あの子をお願い」

「……! う、うん……!」

 

 暁美ほむらは、重傷で倒れ込んだ百江なぎさを拾いに行く。

 

「……覚悟が足りなかった」

「あ?」

「私の覚悟が。……そっちがその気なら、こっちにも考えがある」

「……お? なんだ、殺すのか? 俺を? お前が? ハッハァー! そんじょそこらの女の子が、殺人をォ? いくら俺が外道だからって、口で言うのと自ら引き金を引くのとじゃ大違いだぜ? なよなよした感じバリバリのテメェに、そんなだいそれたことできるわけ────」

 

 刹那、音より速い光の矢がスズレインの頬を掠めた。

 

「……ハ?」

「今のはわざと外した。なぜかは教えない。次は頭を狙うけど、私はあなたを殺さない。ただ、二度とこんなひどいことができないよう、再起不能に(リタイア)させるッ!!」

 

 鹿目まどかの瞳は義憤に燃える。直後、高速の一射が頭部めがけて放たれた。

 

(ナニィイイイイ────ッ!?)

 

 スズレインは横に倒れて頭上を掠めた一矢を見送る。

 

(コイツ、マジで顔面を狙ってきやがった!? だがさっきと比べて断然遅い! 舐めてんのか!?)

 

 次の瞬間、スズレインの右腕が弾け飛ぶ。

 

「────ハ?」

 

 今度は左脚、右脚、左腕の順に吹き飛ばされた。それは閃光の如し四連射。捉えきれない矢の速度は、地面に胴体を打って倒れたスズレインの顔に動揺の汗を流させる。

 

(ま……まさか、コイツ……俺が避けるのを見越して、的確に四肢を……いや、だが待て。それでも並みの魔法少女なら死ぬぞ? ────いや、いいや、そうじゃない! そうじゃない! 認識を間違えていた! コイツ、俺がこのくらいじゃ死なないことを知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)!

 このピンク野郎……魔法少女の本体がソウルジェムであることを知(・)っ(・)て(・)や(・)が(・)る(・)のか……ッッ!!)

 

「────アルテフォーラ(芸術群像)ァッ!! 何をやってるッッ!? 俺様を守りやがれェエエエエエ!!!!」

 

 鹿目まどかの背後に大小異なる四つの魔法陣が展開される。彼女自身の弓も含めた一斉射撃を開始。光輝する怒涛の百連射が敵の急所以外を的確に狙撃する。

 

「アールアルアルアルアルアルアルアルアルアル────アルゥウウウウウウウウウウテフォーラッッッッ!!!!」

 

 それをスズレインはスタンドのラッシュで迎撃。スタンドにダメージはないが、もし打ち漏らせば本体にダメージが入る。

 

「ハ────ハハハハハハッ! スタンドで受ければワケねぇぜ! スタンドはスタンドでしか倒せない! このまま魔力が尽きて魔女化しろォ!」

「たしかに前を狙うだけじゃあ全部防がれちゃうね。それじゃあ頭上注意も追加で」

「────ハイ?」

 

 鹿目まどかは片足を引き下げ、膝が地面に突きかかるほど姿勢を低くし、弓を天上に向ける。その合間も四つの魔法陣は高速連射を続けており、スタンドによる前面防御を促していた。

 

「私が絶対にやっつけるから────《降り注げ、天上の矢(プルウィア☆マギカ)》ッ!」

 

 桃色の光り輝く極矢が射られる。それは天上で爆発し、無数の光矢の雨となる。

 

「な……ナニィイイイイイイ────ッ!?」

「まだまだ終わらないよ! 狩り立てる光矢(ホーミングアロー)三連射だぁ────っ!!!」

 

 それはスズレイン、脇腹骨格、阿羅漢に向けて射った追尾性のある矢。莫大な魔力を圧縮した事により、どんな迎撃を受けても追尾をやめず、長時間標的を追い続ける不朽の猟犬となって襲いかかる。

 

「っ──ッッ!! アルテフォーラ! 洗脳を解除しろ! ……いやっ! 全ての偶像化を解除して、とにかく俺を守りきれェエエエ!!」

 

 生きるモノクロの立体骨格と絶対羅漢の阿羅漢が消滅し、黒赤羽根と黒緑羽根が洗脳から解放される。

 刹那、無限の矢が到来した。周囲の絶交南京錠もろとも絶交裁判所の床もろとも破壊し尽くす極大魔力の暴力。その中でスタンドは本体を庇うように縮こまっていた。

 

 やがて砂塵が晴れ、本体の周囲で何度も何度も弾かれる三本の追尾矢が目撃される。

 

「……動かない方がいいよ。もし少しでも、その完全防御状態を解けば、三本の矢のどれかがあなたのソウルジェムを穿つ」

「…………ッッッ!!?」

 

 スズレインは困惑する。なぜ一本の矢ではなく、追尾相手が居なくなった残り二本の矢も本体を狙っているのかと。

 

「……ま、まさか!」

「今さら気付いても遅いよ。ホーミングアローの二本をモノクロと阿羅漢に撃ったのは見せかけ。初めからあなたを狙うよう撃っていた。きっと能力を解除すると思っていたから……無限に狙い続ける三本の矢に怯えながら後悔するんだね」

「────ッ…………な、何を勝ち誇った顔してやがる! どうせテメェらはウワサに殺されるんだッ! 勝者の気分を味わっていられるのも今のうちだぜッ! エェ!?」

 

 無視する鹿目まどかは百江なぎさの下に駆けつけて、治癒魔法を掛けることで完璧に負傷を治す。

 

「っ……あ、ありがとうなのです、まどか……」

「……無事で良かった。でも……」

「大丈夫なのです。すぐに痛覚を遮断したから痛くなかったのです」

 

 百江なぎさは元気百倍と言った感じで飛び起きる。暁美ほむらはほっと一息。

 

「しかし、奴はトドメを刺さねばならないのです。なぎさが殺るのですよ。まどかは黒いローブを着た魔法少女の治癒をお願いするのです」

「う、うん……でも、なぎさちゃんが、そんな役目を担わなくても……」

「では、まどかがトドメを刺すのですか? ……別に、後輩の手を汚したくないという話ではないのです。これは覚悟の問題。なぎさは殺し合いには慣れているのです。だから人の命を断つという事にある程度の達観が持てている。つまりは精神的に不安定にならないのです。でもまどかは違うのです。いざ殺し合いになれば心臓を撃ち抜く覚悟はできても、そのあとの罪悪感に耐え切れるだけの決意が、まだ無いように見えるのです」

「──……うん。たぶん、その通りだと思う……」

 

 百江なぎさはにこりと微笑む。

 

「だから、これはなぎさの役目なのです。なぎさに汚れ仕事を押し付けたとか思わないように。これからのまどかの成長に期待するのですよ」

 

 百江なぎさはモベホーンから特大の泡を作る。それには遮断効果の魔力を織り交ぜており、スズレインの方に向かわせた。

 その間に鹿目まどかは黒羽根の治癒を終える。肉体は治っても、洗脳による精神的ダメージが大きいようで目を覚まさない。とりあえず暁美ほむらと一人ずつ背負うことに。こんなところに置いては行けない。

 

「……っ!? な、何をする気だ……!!」

「テメェには窒息死がお似合いなのです。既に泡の中の酸素は抜いたのです。絶対的遮断力を持つ紫色の泡の中で、最期に良い夢を見るのですよ────」

「……ッ!! ま、待て……やめろッ! やめろォ────ッッッ!!?!?」

 

 スタンドを解いて泡を壊せば、三本の追尾矢にソウルジェムを砕かれる。かといって三本の追尾矢から逃れるためスタンドを全身に覆ったままでは泡の中に入ってしまい窒息死する。

 

 百江なぎさの魔力熟練度(コントロール)は高い。特大の泡は光矢に触れても割れることはなく、光矢は泡の膜を透き通るように脱出と侵入を繰り返す。やがてスズレインとそのスタンドを泡の中に入れて、泡の膜は真っ黒に覆われた。

 

「あまり見るものじゃないのです。さ、クマ吉を捜しに行くのですよ」

 

 百江なぎさは、鹿目まどかと暁美ほむらの手を引いて、外に通じる金色の両扉に進む。

 

「世の中にはどうしようもない糞な奴が腐るほどいるのです。そいつらの死をいちいち気にしていたらキリがないのです。身が持たないのです。分かったら切り替えなのですよ!」

「……うん。そうだね……」

「…………」

 

 かくして見滝原組のスタンドバトルは、スタンドを持たない魔法少女たちの圧勝で終わったのだった。

 

          †

 

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