アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
夜の街が電灯で輝く。
「わぁ。綺麗だね……」
神浜市を一望できる中央区の電波塔・屋上フロア。そこには二人の人間が世界を見下ろしていた。
────“王を
「神浜市。人口約300万を超える新興都市。あらゆる交通網を発展させたが故の
紅谷慶志郎の翠緑の瞳は、物静かに“王の器”と成り得る者を探している。
「そういうわけで“拳王”……お願い」
紅谷慶志郎の傍らに立つ屈強なアメリカ人。
目深の青髪。部分部分が細く太く、血管が浮き出るほど張り詰めて鍛え上げられた全身の筋肉。手首に包帯を巻き、腰にボクシンググローブを提げる男は、シンプルな無地の白Tシャツにカーキの上着を腰に巻く。
彼の名はロバート・フレージャー。金で雇われたアメリカの元プロボクサー。日本語は勉強中でカタコトになりがち。だがボクサーとしての実力は確かで、その拳はまさしく武器。紅谷慶志郎が見初めた“王の器の持ち主”を鍛え上げる事を依頼されている。
「……You fool……オマエハ、バカダ……」
“拳王”と呼ばれる男の右ストレートは、外と中を仕切る強化ガラスを一撃で粉砕した。周囲の客から悲鳴が上がる。内外の温度差で突風が発生し、紅谷慶志郎とロバート・フレージャーの髪と衣服が激しくたなびく。
「ありがとう。随分と見通しが良くなった」
「……
「君なら朝飯前だろ?」
「…………」
警備室から現れた警備員が数名。警棒を取り出して二人を取り囲む。避難する客たち。騒然とする電波塔の屋上フロア。されど紅谷慶志郎は気にも留めず翠緑の眼を凝らしに凝らして地表を静かに眺める。
それは周囲の騒がしさに流されることのない、ゆったりとした佇まい。まるで大空のような
「うーん。王の器を持っている人って中々いないね……」
「…………」
ロバート・フレージャーはファイティングスタイルを取る。数名の警備員は、身の丈を越す外人に一瞬怯むが、人々の安全を守るため意気込むように怒号を撒き散らす。しかし、そのような取るに足らない雑音は紅谷慶志郎の耳には入らず、そのような陳腐な罵詈雑言はロバート・フレージャーの苛立ちを増すだけだ。
「ドケ……オレは、カエル……」
戦闘は一瞬で終了した。ロバート・フレージャーの左ジャブで吹き飛ばされた警備員が、残る警備員すべてを巻き込んで吹き飛ばされて全員意識を失った。
「え? もう帰るの? 仕方ない……お詫びに夕飯を奢るよ」
「……イラナイ……」
「まぁそう言わずに。これから
「……。……チャーハン……」
「おっ。中華料理か。いいね! オススメの店を知っているんだ。紹介するよ」
電波塔を降りて一階ロビーのエレベーターから出た二人の前には、騒ぎを聞きつけた警備員が十数名ほど待ち構えていた。遠くでパトカーのサイレンが鳴り響く。
「じゃ、よろしく。ロバート」
「……Fuck you……」
今日の夜空に一台のパトカーが舞う。
「やぁ☆ ちょっと話があるんだけど♪」
夜の神浜を闊歩する二人の前に現れた青年。その手元には白い翼を生やすリングが嵌められている。
「僕の名前は
────伝説の予兆は、ここから始まった。
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