アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
黒江は疑問に思っていた。悪魔の魅了の話から推察するに、どうやら悪魔契約にはきちんとした愛情が必要らしい。しかし出会ってまだ一日も経っていない男女の間に愛なんてものが出来るのだろうか。愛とは互いを思いやる深い気持ちのことだ。悪魔はどう思っているのか知らないが、黒江は魔法少女を辞めたい一心で体を張っている。つまり黒江は自分のために頑張っている。はたしてそこに、悪魔への愛はあるのだろうか……?
「────────」
悪魔によって強引に払われたシーツ。
それにより黒江の素肌があらわとなり、思わず胸と局部を手脚で隠す。
「あ、あっ、あの、あの……っ!?」
「黒江。今度はお前の話を聞かせてくれ」
悪魔の冷たい手が黒江の肌をさする。
そのたびに黒江は体が反応して腰が浮く。悪魔の魔の手から逃れようと反射的に体が逃げる。
「悪魔契約には愛の誓いが必要だ。けれど一晩の逢瀬で愛が芽生えるなんて、そんなの一目惚れ以外ないように思う。でもやりようはある。
希望だけでは何も変わらない。
絶望だけでは誰も救われない。
しかし愛を使えば何かが出来る。
祈る手は誰の為にある。
使う手は伸ばす為にある。
願うな。呪うな。動かないのであれば何も思うな。
願うなら動け。呪うなら動け。そんなことを言われずとも、愛ある者ならとっくに動いている。
それが愛だ。
それが愛なんだ。
故にこそ────願いも呪いも、愛の前には前戯に等しい。
「黒江────」
「はぁ、はぁっ、悪魔さん────」
悪魔の手足は、黒江の体中を触れ終えていた。あらゆる部位に優しく冷たい愛撫の刺激を与えられた黒江は、まるで自分の体の全てが支配されてしまったかのような心地良さを得る。それは性的興奮以外の何ものでもない。脱衣による羞恥。愛撫による快感。接吻まであと一ミリの吐息の掛け合い。股の下は弄られて濡れきって、そんな中で黒江は不思議がっていた。
(私……悪魔さんのこと、そんなに嫌いでもないし、好きでもない……だから愛なんてないし、きっと心のどこかでは冷めてるから興奮なんて出来ないと思ってた……それは今でも変わらない……けどなんで……)
たしかに黒江は、悪魔に対して特別な感情は持っていない。心もどこかで“なぜこんなことをしているのだろう”という疑問が脳裏をよぎり冷めているところもある。だが興奮はしていた。それはなぜだろうと考えて、黒江は単純な解答に行き着く。
「ひゃっ……!」
「────かわいい」
耳元で囁かれる褒め言葉。それだけで脳がとろけそうになる。意識が知らない場所に飛んで行きそうになる。感情が持って行かれそうになる。嫌悪感も抵抗したい意思も根こそぎ認められて受け入れられてしまう。悪魔の中で全ての反抗が赦されてしまう。
(あぁ……そうか……単純に巧いんだ……悪魔さん……女の子を乗せるのが、すごく上手だ……好きでもないのに、こんなに気持ちいいのは……反則だよ……いったい、今まで、どれだけの、女の子と……)
「────黒江。そろそろ唇を許してほしい」
「────────」
男女の唇が薄く触れ合う。悪魔が食んだ。食んだ。食んだ。思わず黒江は舌をチロリと伸ばす。そこまでする必要なんてないのに、どうしてもそうしたいと思ってしまった。
「……黒江。快楽に身を溺れさせるのは少し違うぞ」
「────?」
「黒江の気持ちを赤裸々に打ち明けてくれ。全てを投げ打つ覚悟がないと、悪魔契約は認めてくれない。口先だけの愛はひどいものだが、体だけの愛はもっとひどいぞ」
「…………」
唇を食まれて食み返しながら、前後運動を受けて股に硬いものがこすれ続ける。その中で赤裸々に語れと言われた。どんなに体は開けっ広げになっても、さすがに心は恥も外聞も気にしてしまう。それでも語らなければならないと悪魔は目でモノを言う。なんなら言わないと気持ちいいところをずっといじめられてしまう。
「……わたしは……」
黒江が口を開いた瞬間、悪魔は狙いすましたかのように挿入した。
「あぁんっ!!」
「本番開始だ。全てを明かさないと終わらないぞ」
風船が割れるような破裂音が絶え間なく連続する。同時に破裂音に合わせた喘ぎ声が「あっ、あっ!」といたいけに響く。滲む汗。弾ける光。ゆがむ顔。たわむ体。ゆれる胸。くっきりと浮き出る鼠径部。
「はんっ! っう、くぅ~……あっ、あっ、やめっ! はやっ、いぎっ、んんっ────!!」
いじらしい叫び。それを耳にしてしまっては抑えが効かなくなる。が、悪魔はそこを死ぬ気で堪えて、自分だけ絶頂しないよう機械的に激しい前後運動を続ける。緩急は付けない。ただただひたすら強く打つ。完璧な前戯で股は濡れているので怪我する心配はない。やがて黒江の目尻からひとしずくの涙がこぼれ落ちる。それを見て申し訳なく思った悪魔は小さくなる。が、やはり勢いは衰えない。黒江の快楽も衰えないどころか徐々に盛り上がるばかり。そして、どんどん腰は天に昇り、頭と足は伸びきって地に這いつくばり、その体は弓のようにしなってしなって、ひどいことに突き上げられては覆いかぶさる男によって叩き落とされる叩き潰される突き抜かれる突き上げられる。
「はっ、はっ、はっ、はぁんっ! ────こ、こんな、んっ! で! どう、やっ、て!? は、はなせ、はな、はにゃ────!?」
「心の中で思えばいい。早くしろよ。百回戦までするつもりか?」
「んっ! んっ! ぅんっ! んぁ!! んんぁん!? んんんぁんっ!!?」
頭の中が真っ白になる。
心の中は真っ黒になる。
意識は光に包まれて、色を失い、音を失う。
(は、話せって、何を話せば……心の中で思えばいいって、だから何を……? どうすればいいの……何をすればいいの……何をどうやれば、これは終わるの……? 思うって何よ……早くしろってそんな……なんで悪魔さんは教えてくれないの……? いじわる……いじわるだよ……こんなの……いたくて、つらくて、きもちいーだけ……)
黒江のソウルジェムに波が発生する。ソウルジェムの下部に溜まる濁りが波によって打ち上げられては掻き乱されて、怒濤のように荒れ狂う。そして魂に包まれた濁りや穢れが、泡のようにブクブクと上昇して溺れていく。
(わ、わたし、わたしは────)
愛なんてわからない。
ただ私は救われたいだけ。
ただ私は報われたいだけ。
そう思った時、黒江の脳裏に浮かんだ言葉。
それは“人生”というワードだった。
(わたしの人生は、わたしのもの────わたしの人生……わたしだけの人生……それをわたしは、どうしたかったんだろう……?)
単純だ。考え直す必要なんてない。
かっこいい言葉では飾れないくらい、それは醜い感情だ。
(わ、わたし……)
言いたくない。
(わ、わたし、は……)
認めたくない。恥ずかしい。聞かれたくない。分不相応だ。
「わたしは────
それが一番ほしかったもの。
だが、それはもう叶わない。
なぜなら彼女は、だれかの期待に応える力を、いま自らの意思で手放さんとしていたのだから。
「────上出来だ」
矛盾こそ葛藤の最高潮。希望でもあり絶望でもあるが、希望でもなければ絶望でもない。アンビバレンスの飽和エネルギー。それはある場所からある場所へ流れる相転移エネルギーとは別種の状態。飽和エネルギーとは、ただ全てに満たされた状態のこと。希望に満たされ絶望に満ちた、どうしようもない遣り場のないムシャクシャしてモヤモヤして遣る瀬無い不条理なやり切れない────大きな感情。
(こんなの嫌だよ)(どうして?)(死にたくない!)(だって怖いよ!)(戦いたくない!!)(なんでわたしはこんな目に遭ってるの!?)(どうして!?)
(頑張りたい)(強くなりたい)(報われたい)(役に立ちたい)(誰かを助けたい)(それで認められたい)(そしていっぱい褒めてほしい)
(でもうまくいかないな)(期待に応えられなくてごめんなさい)(勉強も部活も期待通りじゃなくてごめんなさい)(恋人として全然でごめんなさい)(ごめんなさい)(ごめんなさい……)(ごめんなさい────)
無意識下に抑圧された両輪的感情。それは心がはちきれそうな切願からなる穏やかな自愛と激しい他激。それは純白の欲求と漆黒の殺意。いわんやリビドーとデストルドー。全ての欲望と死への情動。
それを解放しろ。
それを絶叫しろ。
それを放出しろ。
それを咆哮しろ。
「アッ!! アアァッ!!! アァアァ────ンッッッ!!?!?」
かくして黒江は肉体の絶頂を迎えた。膣内に大量射精された熱い液体。それは熱湯のごとし熱さと、食らいついて離れない粘り気があった。
「ハっ、ッぅ、グっ……ウっっっ────ぎっっ────ァっっっ────」
意識は電撃に焼かれたように朦朧としている。
肉体は感電死したかと思うほど痙攣している。
浜辺に打ち上げられた魚のように、黒江の全身がびくんびくんと快楽を訴えている。全身が(きもちいー、きもちーよ……っ!)と叫びを上げている。快楽の絶叫はしばらく止まらない。うっとりとした表情に反して、肉体はリズミカルな躍動を繰り返す。そうして黒江は余韻に浸る。頭はぼーっとして手足は動かない。動きたくない。それは麻痺とは異なる充足の悦楽。もう悪魔契約のことなんてどうでもいいと思ってしまうような満足感。好きでもないので二回戦をしたいとは思わないが、もし彼が望むならイヤではない……そんな漠然とした思考が脳裏をよぎる。
「ァ……ぁ……ン……ン……」
そして悪魔は後戯に入る。優しさに包まれるような抱擁があったかい。耳元への息吹がくすぐったい。腰や背中への愛撫でまたイってしまう。惜しむような前後運動がかわいらしい。やがて黒江の中から現実感というものが吹き飛ばされる。今にも昇天しそうな意識。真っ白に染まっていく視界。もはや天地左右がわからない。
────黒江。ソウルジェムを出してくれ────
夢うつつの中、そんな声が聴こえたような気がした。
黒江はおぼろげな意識の中で、言われた通りソウルジェムを出現させる。普段は銀色の指輪として嵌めているそれをどうするのか。黒江は深く考えることができなかった。
────口を開けて。だいじょうぶ。呑み込んで────
夢心地の中、口の中に大きなものが押し込められる。連想したものは悪魔の男根。あんな大きなものを入れてくるなんて。と、黒江は嫌悪とも興奮とも付かない気分の中で、それを抵抗せず受け入れた。
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