アクマレコード 魔法少女ヒットマンDIAVOLO! 作:形のない者
時刻は六時を回った。もう校舎の中に生徒はあまり残っていないだろう。日も暮れかかり、完全下校時間が迫る。
「……まぁ、今日はこんなところデショ。アリナ帰る」
「えっ……! ま、待つの! わたしも……これ……だけで……っ! お、終わったの! キリがいいところで!」
「完成したワケ?」
「ま、まだ最終ページが残ってるの……明日には完成させるの……!」
「あっそ」
アリナは漫画が完成していたら目を通し、評価を付けるつもりだったようだ。それに気付いた悪魔は、自分の事しか気にしないアリナは、意外と芸術関連の人物が相手なら最低限の目を掛けることがあると知る。
(…………。……アリナとの親睦を深めるなら、オレも何か芸術を……?)
悪魔の中で、ふとした案が閃きかかった時。
突として部室の戸が開かれた。見知らぬ女子生徒は生気のない顔で立ち尽くす。
「? ま、またしてもどちら様なの……?」
御園かりんの疑問。
直後、悪魔は直感していた。目の前の女子生徒は明らかな害意を持って、この部室に来たことを。
「────ねぇ、アリナさん。御園さん。あなたにも……お願いがあるの」
「ワッツ? 突然来るなりどういうワケ? ここは何でも屋じゃないんデスケド」
その女子生徒は──アリナ・グレイ、御園かりん、悪魔──三人の顔を見て依頼する。
「────私のカラダを探して────」
刹那、その姿は忽然と掻き消えた。
「────!」
アリナは目を見開く。突然人間が消失した事に驚き、テレポート魔法かと思うが、魔力パターンが無いことから魔法少女ではないことが分かる。では魔法以外で姿を消した? アリナ・グレイの考察は行き詰まる。
対する御園かりんはガクガクと震えていた。それは目の前で人が消えるという怪奇現象を目撃した、というだけの理由ではない。何かを知っているのか、頭の中は複雑怪奇に覆われて、今夜の零時を怯えるように苦心していた。
「……かりん。何か知っているのか?」
「────っ!」
「……? デビルボーイ。どういうコト?」
「いや……」
悪魔とアリナの視線が御園かりんに集まる。震える彼女は絞られた喉を懸命に開き、知っていることを語り始めた。
「────、…………じ、実は、最近……“カラダ探しのうわさ”が、学校で広まっているみたいなの……」
────うわさ。その言葉を耳にした悪魔は、疾く“ウワサ”との関連を疑う。
「それで?」
「……っ。た、たしか……うわさの内容は、こんなのだったの……」
御園かりんは歌うように内容を語る。それは悪魔にとって聞き覚えのある語り方だった。
《アラもう聞いた? 誰から聞いた? カラダ探しのそのウワサ
それは神浜市の学校にランダムで現れるデス・ゲーム!
ソレを見たら振り返るな 八つ裂きにされて隠される
ソレに殺されたが最後 「カラダを探して」と頼みに来る
深夜零時 仮想の校舎 結界に守られし秘匿の遊戯
隠れ鬼 見つかるな 探せ探せ 殺されるまで
ソレは歌う ほろびの歌を 背中にギュッと かわいいな
歌い終われば殺される 永遠のキノウがアスとなる
全てのカラダ見つけし時 生きていれば思い出残る
キャーコワーイ!》
(────。これは……確実にウワサだ……!)
そこで悪魔は直感した。アリナ・グレイも“ウワサ”について考えている。
「アリナ。お前、魔女に似たウワサについて知っているのか?」
「……イエス。最近この街で暴れてる魔女でもない“ナニカ”デショ? 知ってて当然なんデスケド」
「う、ウワサ……?」
アリナ・グレイの言葉に嘘はない。
そして御園かりんはウワサとは何かと説明を求める。
「ウワサ……それは都市伝説が実体化したような魔女に似た敵性存在だ。詳しい事は分かっていない。詳細を知りたければ七海やちよに聞くといい」
「えっ……やちよさんって……あれ? そういえば今、普通に《魔女》って言葉を使ったの……」
「ハァ……フールガール。まだ分からないワケ? このデビルボーイは、完全にコッチ側の人間なんデスケド」
御園かりんは驚いた顔で腰を抜かす。「えぇ!?」と声を上げたあと、魔法少女の世界に男が入っていいの!? という心の声が聞こえてくる。
それより悪魔はウワサの内容から考察を進めていた。
「おそらく深夜零時に“カラダ探し”とやらが始まる。オレたち三人は強制的に、その“標的”または“参加者”にさせられたと見るべきだ。そして“ソレ”とは、おそらく“隠れ鬼”の鬼側を指している。ソレに見つかれば追いかけられ、追いつかれたら抱きつかれる。そして鬼は歌を歌い、歌い終われば絞め殺される。それが全ての体を見つけるまで永遠に続く」
「……?!? な、なんで、これだけの情報で、そこまで分かるの……?」
「フールガールには分からないだろうケド、デビルボーイは中々のキレ者というワケ。かくいうアリナも驚き中……」
悪魔はこの一年で磨き上げた考察力を発揮して可能性を伝える。
「ここからは憶測だ。まず“仮想の校舎”というのがまだよく分からないが、おそらくそれは“永遠のキノウがアスとなる”に関係してる。また、全てのカラダを見つけた時、生きていればカラダ探し中の記憶が残る、というのは……死ねば記憶が残らないということか。だがゲームが終わるまで永遠に一日を繰り返すというのは有り得ない。宇宙規模の魔力係数を持たなければ不可能な事象だ。つまり“仮想”────なるほど、そういうカラクリか……繰り返す一日は検証すればすぐに判明する。それは疑似的な死と引き換えだろうけど」
悪魔はブツブツと呟きつつ、考察を切り上げる。
「おそらくオレたちは午前零時にウワサ空間に飛ばされる。そこで全てのカラダを見つけるまで殺され続ける。何度も死にたくなければ早くカラダを見つけるしかない。そこで作戦を立てよう。こういう手合いは初見殺しの隠しルールが必ず存在するから、今立てた作戦は全て無意味になるかもしれないが、無駄にはならないかもしれない。まずオレが鬼側を引き付ける。その間にアリナとかりんはカラダを探してほしい。オレが死んだら次はお前ら二人の番だ。あまり悠長にしてくれるなよ」
そこまで話した悪魔に対して、御園かりんは縮み上がるように否定した。
「で、でも! ただのうわさかもしれないの! 本当だとはまだ分からないのっ!!」
「かりんの言うことは尤もだ。何事もなければそれでいい。だが何かあったら今の作戦を思い出してくれ」
「アリナは“ホント”に一票。フールガールは怖いならアリナの後ろに付いてくればいいダケなんデスケド」
そうして三人は帰路に就いた。
悪魔はみかづき荘に帰宅する。そこで七海やちよから着替えを返してもらおうと思ったが、なんと余りにも汚すぎたためクリーニングに出したという。戻ってくるのは早くて二日、長くて数日後。ともあれ悪魔は寝室に戻り、黒スーツを脱いでベッドに向かう。だがもしウワサが本当なら、パンツ一丁でウワサ空間に飛ばされるのか? そう考えて黒スーツを着直した悪魔は、折り目が付かないよう深夜零時になるまで椅子の上で眠りに就く事にした。
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