ハートフルワンダーランドに友達と行ってきた 作:A00913
9月10日(土曜日)
天気曇り 今日は待ちに待った、遊園地に行く日。
32日から楽しみすぎて眠れなかったし、朝も早起きしすぎて、待ち合わせの時間まで一時間以上も早く来ちゃった。
待ちあわせ場所は、遊園地の正面ゲートの前。
近くのお店も全然開いてない時間なのに人はけっこう来てる。
家族連れや友だち同士のグループ、それにカップルも。
列をなしている人たちを横目に、僕は手持ち無沙汰に、近くの壁に貼られた遊園地のポスターをぼんやり眺めていた。
ハートフルワンダーランド。
それがこの遊園地の名前。
名前の通り、テーマはハートフル。
つまり、「心温まる」ってことを第一にしてる遊園地。
ここは、僕のお父さんが、「人と人が心温まる場所を」と一念発起して作った遊園地。
だからこそ、僕は誰かと遊園地に行きたかったんだ。
開園時間まであと30分、というところで、あの四人が見えた。
僕は思わず顔がほころびそうになるのを我慢しながら、四人に手を振った。
「おはよー」
「ココロちゃん、おはよう」と拓也が返してくれました。
拓也は、カジュアルな私服で、黒のジャケットの下には白シャツ。
首に赤いネックレス。
そして、ジーンズとスニーカーという格好です。
全裸で来たらどうしようかと思ってたけど、そこはちゃんと服着てきたんだ。
「ちゃん付けはねーだろ、ちゃん付けは!」と、レオが突っ込みながら、笑顔で僕に近寄ってきました。
「どう、調子は?」と、レオは爽やかに言いました。
前会った時とは違って、気さくで親しみやすい感じがしました。
「うん、ぼちぼちだよ」
「そっか」と嬉しそうに笑い、「天気も良くてよかったね」と青空を見上げました。
「うん、晴れ男だからね、俺」と拓也が僕らの間に入りました。
「え、そうなの?」「いつもキメションの雨を降らせるくせに?」「豪雨を降らせるよりマシだろ」と苦笑いを浮かべてました。
入り口の前には長蛇の列ができていたけど、僕らは特別なチケットを貰っていたので、並ばずに遊園地の中へ入れます。
なので僕らは、列を横目に入り口を通り、入場ゲート前まで向かいます。
拓也が途中並んでいる人々に対し、「うぇ~い」とピースサインをしてました。
一部の人は怒ったのか拓也のお尻をビンタしています。
入場ゲートは遊園地の名前通りハートフルで、大きなピンク色のリボンが飾られて、「ようこそ」と書かれている看板がありました。
その前で開演を今か今かと待っていると、仮面をつけた男の人がやってきました。
顔が見えなくてもわかります、僕のお父さんです。
「ココロ!」と僕を呼んだので、僕は嬉しくなってお父さんに駆け寄りました。
「初めまして、私はハートフルワンダーランドの園長の夢幻フシギと言う。
君たちがココロのお友達.......かい?」お父さんは若干引いたような口調で4人に挨拶しました。
「あっ、は……はい!」と拓也が胸を揉み御しだきながら、おずおずと答え、「は……初めまして。
敏感な拓也は拓也って言います」と、緊張してる感じで頭を下げます。
「初めまして」とセンパイも会釈し拓也の横に並びます。
お父さんは怪訝な表情を浮かべながらも、「そうか……君たちが……」と何かを納得した様子で頷いてました。
それからしばらく4人を見回し、センパイの格好に目が留まり、「君……」と彼のパンツの端をつまみました。
「その格好は……何なんだい?」
この時のセンパイの格好は拓也以上に変態的です。
上半身は裸、そして下半身はパンツ一枚、しかもあの時の拓也と同じ姿だったのです。
「え?何?」とセンパイが首を傾げると、お父さんは困惑しながらも「いや、何でもない」と言って手を離しました。
お父さんは一瞬怖い顔になっていましたが、すぐに元の顔に戻り、「ココロから話は聞いている。
楽しんで行ってくれ」と、4人に言い園内へ入っていきました。
マネージャーが唖然とした様子でセンパイの姿をまじまじと見ていましたが、センパイは平然とした顔で「ここ、けっこういい場所だね」と、センパイは遊園地を見て言いました。
どういうところを見てそう思ったのか、僕にはわかりませんでした。
10時、いよいよ開演です。
ファンファーレが鳴って、お客さんが全員拍手しました。
紙吹雪が舞い、拓也はそれをキャッチして、「一番取れなかったやつは種マンだぜ!」
と叫びました。
すると紙吹雪が拓也の周りに集中して、体中にちり紙の如く張り付きました。
3人はそれを笑い、全部取っていきました。
「これでお前が種マンか?」とセンパイが呟くと、「あ、いや……」と拓也が気まずそうに言い返します。
ですがセンパイは、「マジだよ」と言って拓也の肩を叩き、レオとともにしょんぼりとした拓也を近くの茂みまで連れていきました。
「ねぇ、あの3人、何しに行くの?」とマネージャーに聞くと、「ああ、彼らはこれからこの街の清掃活動に行くんです」と虚ろに答えます。
「清掃活動?」と聞き返すと、「ええ、彼らが街にいるゴミを全部掃除するんです。
ちょっと時間かかりそうなんで先入ってましょう」
「う、うん……」と僕はマネージャーに促されるまま、入場ゲートを通ります。
ギィ……という変な音を立てて、不思議の国への門は開かれました。
チケットの確認は終わり、その先では、僕たちを待っていたように、一匹のウサギが手を広げていて。
今にも動き出しそうなほどに色とりどりの建物が、お客さんを出迎えて。
愛くるしいイルカやウニが手招きして、絵本の世界へと進み。
みんなが笑顔でした。
僕たち二人がそんな楽しい場所でボーっと立っていると、あの3人がやってきました。
「あ、終わったの?早いね」「ああ」とセンパイは頷きます。
拓也はハァハァと息を荒くしながら、「さっさと終わらせたぜ」と言っていました。
なぜか服装がセンパイとほぼ同じの拓也は、「早く行こうぜ!まず何から行く?」とウキウキした様子で、僕に聞いてきました。
「え、えっと……じゃあ、ジェットコースター!」
「お!いいね!」と言って拓也は僕の手を引いて歩き始めました。
僕はこの日のために、遊園地について色々と調べて来ました。
そしてアトラクションに乗ったらどんな感じなのかを想像し、ワクワクしていました。
この遊園地にあるのは「スリル・オブ・ザ・ドラゴン」というジェットコースターです。
これは、この遊園地で1番怖いと言われているアトラクションで、パンフレットには「時速90キロの恐怖を味わえ!このスリルは、まさにドラゴン級!」と書かれています。
「これ落下角度100度くらいあるだろ」センパイはパンフレットを見ながら、静かに呟きました。
「え?センパイビビってないよねまさか、どんな調教も躊躇なくやるあのセンパイがビビるとかありえないっすよね?」拓也がセンパイを煽ってるように聞こえたので、僕はセンパイの腕をひっぱり「ビビってるの?やっぱり拓也の言うとおり?」と笑いながら言うと、センパイは顔を真っ赤に染めて僕を睨みつけました。
「あ?誰がビビるかよ」と言って僕の手を振り払い、入場ゲートへ歩いていきました。
「え?ちょっと……」僕が呼び止めようとしたら、レオに肩を叩かれました。
「まぁ、見てなって」センパイがセンパイたる所以を、見せてやるということでしょうか、重い足取りを見届けながら、僕はジェットコースターに期待を寄せました。
後ろにいるマネージャーが「あんなの乗っちゃ……」と肩を落としながら呟いていました。
「どうしたの?」と聞くと、「あ……いえ、何でもありません」と言っていました。
ジェットコースターが苦手だったのかな。
さて、僕らはジェットコースターの乗り場までやってきました。
乗り物自体がこの遊園地のマスコットであるワンダーアニマルをモデルにした形をしていて、とてもカラフルで綺麗です。
身長制限に引っかかることもなく、僕たちは全員乗り込むことができました。
先頭に乗ったので、周りがよく見渡せます。
後ろにいるセンパイとレオ、さらにその後ろにいるマネージャーとマスクグラサンをつけた人。係員の人、先頭車両に付いている宝石、レール、カプセルの機械。隣に座る拓也。この時はドキドキとワクワクで慌てていたのかもしれません。
ひたすら意味もなく周りを見渡していただけでした。
そんな僕に拓也は、「そんなに周りばっか見渡してさ、怖いのか?」そんなことを不意に言われたらなぜか拓也にムカッときて、「そっ、そんなことないよ!」と強く言ってしまいました。
ジェットコースターぐらいならなんともない!……そう心の中で何度も言い返すようにしましたが、いざとなると少し緊張します。
大きな音とともに、ゆっくりとジェットコースターは動き始めました。
そしてどんどん上っていきます。
さっきまでの恐怖が嘘のように、今はワクワク感の方が勝っているような気がします。
「下見てみろ」と拓也が言うので僕は見てみると、いつの間にかすごい高さまでジェットコースターが登っていました。
「わぁ……すごい……」「だろ?」と拓也が得意げに言いました。
ジェットコースターの乗客全員が広大な景色に感動している時、動きが一瞬止まり、そして。
「行くぞー!」と拓也の掛け声が響いたかと思うと、ジェットコースターは落下し始めました。
慣性の法則によって体が後ろへ引っ張られます。
「うわわわわ」僕は思わず大きな声が出てしまいましたが、周りのみんなも同じような声を出していましたので、少し安心しました。
一瞬で景色が目まぐるしく変わります。
スピードも徐々に上がり、風で髪の毛がバサバサと暴れます。
遊園地のアトラクションなのに無茶苦茶生命の危機を感じるほどスリルがり、怖かったです。
「ココロ……俺もう我慢できねーわ」「え?」僕が聞き返そうとした瞬間、拓也は自分の安全バーを外してジェットコースターの上にたち、後ろに向かって歩み出します。
「え、ちょっと!」「おい何やってんだお前!」センパイと声が重なり、僕らは拓也に叫びます。
しかし拓也は笑顔で、「あーセンパイ、快感で全身が痙攣するオレしゃぶりますね」と、センパイに言い放ちました。
「は?」センパイの返事を待つ間もなく拓也はセンパイに飛びかかります。
「おい!やめろって!」「へへ、いただきま~す」と拓也がセンパイのズボンを脱がそうとしました。
ですがちょうどその時、ジェットコースターの進路には一回転に差し掛かっており、そのまま拓也は投げ出されました。
「あ」
拓也はそのまま投げ出され、地面へ向かって真っ逆さまになる、はずでした。
なんと拓也は回り終えたジェットコースターに再び乗り込んだのです。
「え?なんで?」僕が言うと、拓也は目をギラリと光らせながら、センパイに再びに近づいてきます。
「センパイ、俺もう我慢の限界っす。」といった瞬間、後ろを向いていたからか、再び一回転することに気づかず、そのまま拓也はまたジェットコースターから放り出されました。
「あ」
奇跡は二度起きてくれません。
そのまま拓也は地面に頭から激突しました。
ドシンと、大きな音と共に土煙が舞いました。
僕は思わず目を背けます。
「おーい!拓也ー!」レオとセンパイが呼びかけると、土煙の中から拓也の声が聞こえました。
「いてー!くそ、痛ぇ!」まるで無傷のような口ぶりで、センパイとレオは安堵しましたが、僕は少し不安でした。
なんであんな事したのかわからないけど、とりあえず無事でよかったです。
ジェットコースターに降りた後、拓也はみんなからこっぴどく叱られました。
センパイは「お前、次やったら殺すからな」と睨みつけていましたが、拓也はなぜか笑顔で「ウッス!」と返事していました。
奇妙だなとは思ったけど、それ以上にそこまで言い合える仲なのが羨ましく感じました。