ハートフルワンダーランドに友達と行ってきた 作:A00913
「じゃあ次何をする?」と拓也が聞いてきましたが、乗りたいものがいろいろとありすぎて、アトラクションを決めきれませんでした。
するとレオが「じゃあ、これなんてどう?」と言って指さしたアトラクションは、「観覧車」でした。
首をかなり上にしないと全部見れないとても大きな観覧車です。
4人乗りなので、一人乗れません。
すると、「じゃあ、俺一番上に乗るっす。」と拓也が言い、アクションゲームみたいに大きなカプセルの上に乗った後、一人で僕たちが乗るゴンドラの上に乗っかりました。
係員は「え?」と驚いていましたが、特に止めようとはしませんでした。
皆渋い顔をしていましたが、僕はできるだけ皆と一緒に乗りたいので、少し申し訳ないなとも思いつつも拓也が乗ったゴンドラに乗りました。
「俺って高い所が好きなんだよね。」ゴンドラが緩やかに上がる中、拓也はそう言いました。
するとレオが、「バカだから?w」と笑いながら煽ると「そう、俺ってバカだから!」と笑いながら答えました。
悪口を言われたのに、のんきだなぁと思ってしまいました。
そしてゴンドラがちょうど一番上に来た瞬間、「あ、みんな見て! 人がゴミのようだ!」センパイが高らかに笑ってました。
レオも僕も「え?」と言って外を見たら本当にたくさんの人が小さく見えていてとても面白かったです。
すると、「おいみんな!そろそろ刺激が欲しいか!」と拓也が急にゴンドラを思いっきり揺らしてきました。
僕はとっさに手すりにつかまりましたが、センパイとレオは「うわぁぁぁ!」と叫びながら床に転がっていきました。
拓也はニヤニヤ笑いながら、「お前らそんなんじゃまだまだだよ!!」と更にゴンドラを揺らします。
「ちょっ、ちょっと拓也!」と僕が叫んでも拓也は聞いてくれません。
「拓也!もう降りろ!」センパイがそう叫ぶと「え?でも俺乗ってないっすよ?」と別のゴンドラに飛び移って言いました。
「そうじゃねぇ!この観覧車から降りろって言ってんだよ!」とレオも叫びます。
マネージャーも「拓也、降りてください!」と冷静に言いました。
すると、「えーなんで? ここから見る景色、最高に気持ちいいのに!!」と言ってきましたが、「おい拓也!てめぇぶっころすぞ!」とレオが怒鳴っても相変わらずニヤニヤしたままでした。
僕は内心かなり焦っていました。
もしここで落ちてしまったら……と思うと気が気でならなかったからです。
そしてついにレオもゴンドラを飛び出し拓也を引きずり降ろすべく後を追いました。
「ちょっと待って!レオ!!」マネージャーがそう言って引き戻そうとしましたが、レオは止まりません。
「おい拓也、ココロが困ってんだろ!」レオが叫ぶと、拓也は「ココロ?」と聞き返してきました。
するとレオは一瞬迷いましたが、「そう! 友達のココロを困らせんじゃねぇよ!!」と言った瞬間、拓也は急に真顔になってレオの方を見ました。
そして、「……てめぇ、ココロのことを呼び捨てにしてんのか? 調子に乗るなよ!!」と言い放ちました。僕はその言葉に恐怖を感じました。
この人はとりあえず理由を適当に見繕ってキレているのだと分かりました。
レオが「おい拓也、いい加減にしろ! ココロを困らせるな!」と拓也に蹴りを食らわせましたが、拓也は痛がる様子も見せずにレオに殴りかかりました。
センパイが「おい、やめろ!」と叫びますが、二人の喧嘩は止まりません。
いつの間にか2人は一つ後ろのゴンドラの中で殴り合っていました。
ゴンドラにはマスクをつけグラサンをかけた人が乗っていて、2人にとてもビビっています。
「お前らやめろ!さっさと戻ってこい!」2人が抱き合ったところでセンパイが止めに入りました。
その時、観覧車は丁度一周し、僕たちは無事に降りれました。
センパイが「お前ら、喧嘩はやめろ! 」と怒鳴っても二人は「快感で全身が痙攣するオレは悪くない!」の一点張りです。
拓也のあの行動は、悪意があってやったわけではないのは分かっています。
純粋に楽しんでいるだけなんです。
寄ってたかって拓也にアレコレ言うのは違うんじゃないか、と思ったので、僕は思わず「拓也、ごめんね」と謝りました。
拓也は最初無言で戸惑っていましたが、「いや、ココロが謝る必要はねぇ。
淫獣拓也が悪いんだ」と僕に頭を下げました。
それをみたセンパイは「もう喧嘩するなよ」とだけ言いました。
僕はこの二つのアトラクションを通して、拓也のことがちょっとわかってきました。
この人はちょっと変わってるけど、根は純粋でいい人なんだって。
たぶん。そうだと信じたいです。僕たちは観覧車を降りて、時間を確認するために携帯電話を開くとちょうどお昼時だったので、レストランに向かうには丁度いいころだと、マネージャーが提案しました。
皆それに賛同し、向かいます。
レストランは遊園地の一番奥にありました。
大きなお城のような形をしていて、中もとても綺麗です。
店名は『ドキドキ☆ラブホで大作戦』でした。
すっごい混雑していましたが、外の景色が良く見えるいい席が予約席で取れていたので、皆そこに座りました。
「ココロくん、何にする?」メニューを渡され、僕は悩みます。
ハンバーグがおいしそうだったのでそれにしました。
「じゃあ僕もそれで」とマネージャーさんも言ってきました。
拓也は「メニューがでかすぎて選べない」と言い、レオは「ステーキにする」と宣言。
「そんなに大きいの?このメニュー」と拓也に聞くと、「そう、2メートルくらいはあるだろこれ」と答えました。
センパイが「いや、さすがにそんなにはないと思うけど……」と苦笑いしていましたが、確かに僕の背たけを超えるほどあったと思います。
「じゃあ僕と同じのを食べなよ」「いいのか!?じゃあそうする」拓也は目を輝かせて喜びました。
僕たち3人が注文したハンバーグは、3メートルくらいありました。
そしてレオ兄ちゃんが頼んだのは、拓也の顔と比べて半分以下の量の野菜炒めでした。
「なんでだよ!おかしいだろ3メートルのハンバーグって」「これ持ち帰れます?」店員は拓也と僕の分のハンバーグを手で持ちながら、「少々お待ちください」とキッチンへ消えていきました。
「タダだからいいけどよぉ....この量食えるやついんのかよ……」と言いながら、拓也は目の前の3メートルハンバーグにフォークを突き立てました。
そしてナイフで切り取り、口に放り込みます。
「どう?美味しい?」と僕が聞くと、「おう!うまいぜ!」と答えてくれました。
なので僕も一口食べてみることにしました。
「うん、おいしい!!」と僕が言うと、拓也は嬉しそうに笑っていました。
このハンバーグは大きさこそ常識を置いて行ってますが、美味しさは今まで食べた料理の中で一番美味しかったです。
おいしすぎて、そのままハンバーグの中に入ってしまいました。
「おい!ココロ大丈夫か!?」拓也はハンバーグから引きぬいてくれました。
僕はその時、幸せすぎたから、つい言ってしまったのです。
「うまい……こんな美味しいもの、食べたことないや……今まで入院生活だったから……あっ、えと、なんでもない……」その瞬間、皆食事をやめて僕のことを一斉に見ました。
それどころか場がシーンとなってしまいました。
皆すぐに何かを察して、「そっか……」とだけ言って静かに食事を再開しました。
だから言いたくなかったんです。
こんな空気にしたくないから、ずっと我慢してきたのに。
僕はただ、皆と一緒に楽しく過ごしたかっただけなんです。
不安の種が、また一つ成長してしまいました。
どんどんこの場から、逃げたくなってきました。
「いや……その……あの……」僕がしどろもどろになっていると、拓也が突然立ち上がりました。
「ココロ、行くぞ!」拓也は僕の腕を引っ張って走っていきます。
僕はついそれにつられてついていきましたが、意味がわかりませんでした。
「拓也、どうしたの?どこ行くの?」「黙ってついてこい」拓也は僕を見てそう言ってくれました。
なんだか頼もしく感じてしまって、その通りにしてしまいました。
そしてしばらく走ると、着いたのはメリーゴーランドでした。
「これがどうしたの?拓也」「乗ってみるんだよ!」そう言って拓也は強引に僕をイルカみたいな動物の上に乗せました。
拓也も隣の恐竜の上に乗っかります。
「うおおーっ!すっげぇーな!ほのかに暖かくてマジの動物に乗ってるみたいだぜ!」拓也は興奮しながら言いました。
僕の座席はほのかに暖かく、本当に生物の皮膚に触れている感覚がありました。
でも、隣にある本当に温かさに比べたら、僕の座席はなんてことないです。
「ねぇ拓也、これ凄いね!!」「ああ!マジすげーよ!」と興奮して言い合ってると、メリーゴーランドは動き出します。
「うおーっ!すげぇ!」拓也は叫びます。
叫ぶほど激しい動きではないと思いましたが、大興奮なのはいいことです。
「ココロ!楽しいな!」「うん、楽しい」緩やかに動くメリーゴーランドは、とても心地いいものでした。
動揺が次第に落ち着いてきます。
きっと拓也は、僕の心に生じた不安を察して、楽しいことをしようと僕を連れてきてくれたのだと感じました。
拓也は優しいから。
「なぁココロ! 一緒に写真撮ってくれよ!」突然拓也がそう言って、携帯を取り出します。
でも拓也がカメラを向けるのが早いので、変顔をしてしまいました。
そしたら拓也が大笑いしたので、僕もつられて笑ってしまいました。
それに呼応するかのようにメリーゴーランドも揺れました。
「ありがとう、拓也。」「気にするな!ここには遊びに来たんじゃんか!」拓也は笑ってそう言いました。
メリーゴーランドはゆっくりと止まり、僕たちはおりました。
近くにあるカプセル状の機械の前で、僕たちはほかの3人を待ちます。
拓也はさっきの写真を嬉しそうに見返していました。
「この写真、マジサイコーだな!!」拓也がそう言ってくるので僕も嬉しくなりました。
合流すると、センパイが「ココロ、大丈夫か?」と聞いてきました。
「うん、大丈夫!」センパイはそれならよかったと言ってくれましたが、あまり信用してないみたいでした。
「変に手を出してなくて良かったぜ」レオは笑いながら言いました。
そんなやり取りで一息つく中、僕はみんなに、自分のことを話す勇気が湧いてきました。
「あの、みんな改めて言うけど……その、僕今まで入院してたんです。
それも今までずっと……」「今までずっと!?どうして?」マネージャーが今日一番の大声で聞きました。
「その、お医者さんからは未知の心臓の病気って言われてて、なにもわからないって」
「マジかよ、じゃあ今も病気なのか?」「うん、ただ今はそこまで重たくないし、外に出れるんだ」
「じゃあ、もう大丈夫なんだな?」二人の問いかけに、僕は「うん」と答えました。
ただ正直、まだ不安はあります。
いつまたあの胸に響くチクチクとした痛みが襲ってくるか分かりませんし。
「まぁ、今は俺たちがいるからいいじゃねえか!なぁ、ココロ!」と強く拓也が励ましてくれました。
たしかに今の僕は、拓也とレオやセンパイ、マネージャーだっています。
今一人で不安を抱える必要はないんだと安心しました。
病院にいる時と違って、僕の手を取ってくれる人がいます。
だから、もう大丈夫なんです。
「うん、だから今日だけはみんなと思いっきり遊ぼうかなって思って」
僕はそう言って笑いました。
「よし!じゃあ次はあれに乗ろうぜ!」
と拓也が指さしたのは、「お化け屋敷」でした。
マネージャーが「え、それはちょっと……」と渋い反応を見せました。
「なんでだよ!お化け屋敷なんて遊園地の定番だろ!」と不満を訴える拓也に対し、マネージャーは断固として拒否しました。
「だって怖いの嫌ですもん」「え~ココロは怖くねぇよな?」拓也が僕に同意を求めてきたので、僕は首を縦に振りました。
皆がいれば、お化け屋敷なんてへっちゃらです。
そんな言い合いをしていると、前から僕のお父さんがやってきました。
「ん?ココロじゃないか、それにみんなも……どうだい? 楽しんでもらえているかな?」
お父さんは引きつった笑顔でみんなに話しかけました。
「まぁ、それなりに」「そうか、それは良かった。」更に表情が険しくなったお父さんは、拓也を見て言いました。
「君……その、色んなアトラクションを派手に楽しんでいるようじゃないか」
「おう!それがどうした?」拓也はお父さんの言っていることが本当の意味でわかっていないようです。
「拓也、お父さんが言いたいのは……」と僕が言いかけると、「ココロ!お前が言う必要はない」と遮られてしまいました。
「……ココロは体が弱くてね。あまり激しい刺激は良くないんだよ」グッと本音をこらえながら拓也にいいます。
「じゃあ、悪かったぜ……」拓也が申し訳なさそうに謝ると、素直に誤った拓也にびっくりしながら、「いや……分かってくれたらいいんだ。」と言いました。
「あ、そうだ。この後、丁度ワンダー城案内ツアーがあるんだ。一日一回しかやらない貴重なツアーだから、是非参加して欲しい」
とお父さんが僕らに呼びかけます。
「お、それはいいな!」とレオが言うと拓也も賛成し、「じゃあココロ、一緒に行こうぜ!」と言ってくれました。
僕は頷きました。
「よし、じゃあ私はこれで失礼するよ」そう言ってお父さんはそのあと、忙しそうにどこかへ行ってしまいました。