ハートフルワンダーランドに友達と行ってきた 作:A00913
ワンダー城の入口に向かってみれば、すでに長蛇の列が建物をぐるりと取り囲むようにできていました。
「これは……すごいな……」
しんどそうな表情を見せながらレオが言いました。
「まぁツアーなんで仕方ないですね」となだめるマネージャーのそばで拓也は「やったぜ!」と喜んでいます。
「どうして喜んでいるの?」と聞くと、「だってみんな俺を見てるから!きっと俺が南佳也に似てゲキエロだから、目線を離せないんだな」と返答してきました。
拓也は自分のことを人気アイドルかなにかと勘違いしているようです。
「でもみんな、拓也のことが嫌いで目を離さない訳じゃないと思うよ」僕は親切心でそう言いました。
「そうなのか!じゃあこれもアイドル活動みたいなもんだな!」と拓也は列に並んでいる人に対してポーズをとり始めました。
かっこいい人の前に立っておしりを向けて、「淫獣拓也のケツでも見ててくれよ!」と言ったり、色黒のお兄さんに「おい、お前いいケツしてんじゃねーか!」と絡まれたりしてました。
ツアーが始まるのが待ち遠しいです。
16時になってみれば、最前列にいるスタッフさんが、「それでは皆様、ただいまより、ワンダー城案内ツアーを開始いたします。列を崩さず、お気をつけてお進みください」
と言い、列が動き出しました。
ワンダー城は、その名の通り華やかな装飾が施された、とても立派なお城でした。
見ているだけでも楽しい気分になってきます。
そろそろ僕の前の人たちも進んでいきそうなのでとりあえず後ろにいる拓也に声をかけようとしたら10人ぐらいの人と仲良くしていました「すごいね拓也!人気じゃん!」と言うと、拓也は「へへっ!そうだろ?もっと俺たちのセックス見てくれてもいいんだぜ」と自慢げに言いました。
とりあえず僕たちは列に準ずる形でスタッフさんに誘導されながら進みました。
城内は入り組んでいましたが、スタッフさんの誘導が上手だったので、特に迷うことはありませんでした。
まるで本当のお城に入ったみたいで、レッドカーペットが敷かれ、シャンデリアが煌びやかに光ってます。
家具もきれいな白い石だったり、つやつやの皮だったりして、とてもおしゃれです。
しばらく進んでいくと1本道になり、その通路の左右には点々と壁画が描かれています。
その壁画を一つ一つ指差しながら、スタッフさんは丁寧に説明してくれます。
「それではこれから、皆様に、ここ、ハートフルワンダーランドがどうやって誕生したのか、についてお話いたします」拓也は「なんの話だ?」と首をかしげ、スタッフさんに向かって、「お前がなんで生きてるのか教えてやろうか?」と言ったのでした。
スタッフさんは無視して、説明を始めます。
「とある男は不遇な人生を送っていました。両親を早くに亡くし、親戚の家を転々とたらい回し。最愛の妻にも先立たれ、おしりも開発済みでした」
そう話すスタッフの指先にある壁画には、おしり開発済みのお父さんが、若い女の子にペニバンでアナルを掘られて昇天している絵が書かれていました。
その表情は、とても辛そうです。
覚えている中で一番昔のお父さんを思い出してみれば、いつも辛そうな、でも優しい顔をしていました。
僕の前にいる時は何とか笑顔を作ってくれようとしていたのですが、逆に辛そうな顔に見えてしまっていました。
表情を思い返すと、ただの笑顔も辛く見えてしまいます。
「絶望に染まり、自暴自棄になった男。自殺を試みようとしました。するとその男の前に、美しい神が舞い降りたのです。神様は男に見かねて、男に土地と労働者と知恵を提供しました」
二枚目の壁画には、うずくまっているお父さんと、その周りにいるたくさんの人。
そして、1人の神様が描かれています。
その姿は、拓也そっくりでした。
いや、そっくりじゃないかな?髪型は拓也と同じで、顔は拓也の半分ぐらいの大きさで整っています。
改めてみれば全く似ていません。
「そして、神様はこう言いました。『ここを遊園地にしなさい。さすれば、私の花嫁にしてあげますよ』男はその提案に乗りました。そして男は神様から与えられたものを駆使して国を創ることにしました」
3枚目の壁画には、遊園地を創っているお父さんとスタッフさんの姿がありました。
お父さんは僕に会った時も、遊園地を創ることに夢中になっていました。
こういうアトラクションをつくるだとか、お客さんにどんな楽しみを味合わせるか、だとか。
いつもお父さんの顔は真剣そのものでした。
よく面会中に電話が鳴って、『ごめん!ちょっともういくね!』と急いで出ていったことも珍しくありません。
寂しい思いをすることも多かったですが、それでも僕はお父さんが遊園地を創って欲しかったので、我慢しました。
「労働者は男に無条件で従いました。男のデカマラに魅了されたからです。
しかし、男に限界がきました。男一人では毎日のセックスに疲れ、労働者に指示を出し、国を作るのに途方も無い労力が必要だったからです。そんなときに、男の前にイルカ、ウニ、ゴブリンなどの不思議な動物たちが現れました。『我々の王よ。我々はあなた様のために働きます』と、動物たちは言い、その日から男のセックスを手伝い始めました。男はその生物たちのことを、『ワンダーアニマル』と呼ぶことにしました」
4枚目の壁画には、全裸でワンダーアニマルに犯されながら必死に働くお父さんの姿が映されました。
このころになると、お父さんは痩せ細って、顔色も悪くなっていました。
面会に来ることも少なくなり、僕の病気に対する不安を相談できることが少なくなりました。
ひとりぼっちで病気と闘う日々はとても不安でした。
「毎日の仕事がすこし楽になった男は、ついにひとつの国を創りあげました。神は再び現れます。『よくぞやった。褒美として、お前の望みを叶えてやろう、あとついでに花嫁にしてやろう』男は神にこう願いました。誰も死ぬことのない不死の世界、永遠の楽園を造ってくれ、と。その男こそが現在のハートフルワンダーランドの王、フシギ様なのです」
その話が終わったタイミングで通路が開け、目の前に大きな扉がありました。
話の内容はよく分かりませんでしたが、このワンダーランドがとても素敵で、不思議で、ロマンチックだということは伝わりました。
最近はなかなかお見舞いに来なかったお父さんがどれだけこのワンダーランドに命をかけていたのか、そして、今お父さんが何をしているのか、少しだけ分かったような気がしました。
「ここは、王の間。フシギ様の部屋となっております。この先に入ることは出来ませんが、記念撮影を行うことは出来ますので、ご自由にどうぞ!」スタッフさんが説明すると同時に、拓也が「うっひょー!はいるぜ!」と叫びながら中に入っていこうとしましたが、すぐに「おい、お前!何勝手に入ってんだよ!」と怒られてしまいました。
「じゃあ、皆で記念撮影しないか?」レオが大声で言いました。
「いいね!撮影は……このスタッフさんにお願いしようか」
センパイはレオの提案に賛同し、スタッフさんを呼びました。
「はい。
かしこまりました!」とスタッフさんは笑顔で答え、僕たちを大きな扉の前に誘導してくれました。
「はい、チーズ!」拓也はカメラの前で、口をだらしなく開けながら、両手を頭の上に乗せてダブルピースをしています。
僕もカメラの前でポーズをとりました。
拓也ほどではありませんが、かっこよくきまってるといいなと思います。
そうして写真を取った後、僕たちはスタッフの呼びかけに従って、城から出ました。
外に出ると、もうすっかり夕暮れ時で、夕日がとても綺麗でした。
「すっごい楽しかった!この後は、パレードだー!」夜には、ハートフルワンダーランドでパレードが行われるのです。
「ココロ、パレード楽しみだよな!俺、待ちきれないぜ!パレードの中で、一番目立つのは俺だ!」
拓也は自信満々で言いました。
「何をする気なの?」と聞くと、「そりゃもちろん、パレードの先頭でセックスするんだぜ!」
拓也は自信満々に答えます。
セックスが何なのかよくわかりませんが、とにかく目立つことなのでしょう。
「いやセックスじゃなくて、拓也に人間便器マスクをつけて、そこにおしっこするってのはどうかな?セックスだと拓也がエロすぎて、汁気たっぷりのケツやチンポに目が行って、パレードどころじゃなくなって乱交パーティーになっちゃうからさ!」センパイの提案に拓也は「なるほど!さすがセンパイだぜ!」と納得していました。
そんなよくわからない会話を聞いていると、急に背後から「あ……あぁ……ココロ……ココロじゃないか……」と声をかけられました。
振り向くと、そこにはマスクにグラサンをかけて、帽子を深く被った変な人がいました。
見覚えがあったんですけど、誰だかわかりませんでした。
「あ、あの……誰ですか?」
僕が聞きますが、その人は答えず僕にじりじりと近づいてきます。
段々怖くなってきたので、僕は助けを求めるようにキョロキョロと周りを見渡すと、拓也が僕の前にやってきて、「ココロ、逃げろ!」と叫びました。
「おい、お前何やってるんだ?ココロが怖がってるだろ!」とその人に威嚇していましたが、ゆらゆらとした足取りを全く崩さなかったのでセンパイとレオが「おいお前!ココロに何するつもりだよ!」と言ってその人の腕を掴みました。
するとその人は急に、「うおーっ!放してくれ!」と叫び出し、センパイとレオを振り払い襲いかかってきました。
僕は怖くて動けませんでしたが、拓也が僕を庇ってくれました。
「おい!ココロは俺が守るんだ!」そう言って拓也はその人に体当たりしましたが、その人は拓也の腰に手を回して、そのまま投げ飛ばしてしまいました。
センパイとレオは、その瞬間、すぐに飛びかかりましたが、その人に蹴散らされて、地面に倒れてしまいました。
僕は拓也が助けようとしてくれたのに怖くて何もできない自分が情けなくて、なんだか目頭が熱くなってきたところで、「やめてくれ!ココロが、ココロが目の前にいるんだ!僕は……!」と何かその人が言おうとしてましたが、マネージャーがその人を背後から蹴飛ばしました。
「ぐほっ」と言ってその人は倒れました。
「大丈夫?ココロ?」マネージャーが僕に駆け寄り、僕の無事を確認します。
倒れた姿を見てこの人は何で僕のことを知っていたんだろう。
そう思いながら、その人がスタッフさんに運ばれていくのを見ました。
「おい、レオ!センパイ!しっかりしろ!」拓也が叫びます。
「大丈夫ですか!?」マネージャーも、拓也に続いてそう言います。
センパイとレオ兄ちゃんは目を覚まして「ああ、大丈夫だ」「俺も平気だ。
それよりココロは?」
「無事っす!それより、あの変態は誰っすか?」「さぁな、ショタホモのストーカーか、あるいは……」「ココロを誘拐するつもりだったのかもしれません」拓也とマネージャーとセンパイの3人は、あの人が連れていかれるのを見ながらひそひそ話していました。
僕は少し怖くなりました。
「とりあえず、今日は帰りましょう」マネージャーさんは言いました。
「いいや、逆にパレード見ようぜ!ここにいれば、またあいつが来てもすぐわかるしな!」拓也が提案しました。
「それは良いアイデアだな」センパイはそれに乗り、「雄膣の穴から精液垂らした俺も賛成だ」レオも頷きました。
僕も怖かったけど、とりあえずパレードを見に行くことにしました。
夜のパレードは19時で、その時の時間は18時半でした。
パレードまでの30分間、僕たちはワンダーランドのお土産屋に行きました。
「ココロ、これ見てみろ!かっこいいだろ!」拓也は僕に大きな剣を見せました。
「うん、かっこいいね」と僕は答えました。
すると、センパイが「おいおい、そんなおもちゃよりこっちの方が絶対良いぜ?」と言い、手錠を拓也に渡しました。
「へー、こんなのも売ってるんだな」と興味深そうに眺めていました。
「ココロはなんかいいもの見つけたか?」センパイが聞いてきます。
「うん、これとかどうかな?」と僕は答えました。
それは小さな箱で、開けると中には指輪が入っていました。
その指輪はハートの形をしているものでした。
「おお!ココロ、お前センスあるな!」拓也はそうほめてくれました。
この指輪は、お母さんに似合いそうだな。
と僕は思いました。
「みんな、そろそろパレード始まるから行きますよー」というマネージャーの呼びかけに、「よし、行くか!」拓也はそう答えると僕に手を差し出しました。
僕はその手をしっかり掴んで歩き始めました。
そして僕たちは、パレードの行われる場所まで歩きました。
そこは大きな広場になっていて、すでに大勢の人で賑わっていました。
「うわー!すごい人だなー!」拓也は興奮気味に言いました。
僕もワクワクしてきました。
「よっしゃ、この人だかりの前で派手にやるぜ!」拓也は言います。
「え、こんなところで?」と僕は驚きました。
その時、優雅なパレードが始まりました。
暗闇に染まったワンダーランドを明るく照らす大きく派手な乗り物とそれに乗って手を振ったりダンスをしたりしているワンダーアニマルとテイマーたち。
そんな様子に見惚れていると、急に拓也は僕の手を引っ張りながら、パレードの先頭に向かって歩き出しました。
そして、そこで立ち止まります。
「おい、みんな!よく聞けよ!」拓也が叫びます。
すると周りから拍手が起こりました。
「俺は南佳也だ!」拓也は大声で名乗ります。
「今日は俺のために集まってくれてありがとう!今からここで俺は人間便器マスクをつけて、パレードの先頭でみんなのおしっこを受け止めてやるから、ありがたく思えよ!」すると周りから「うぉー!すげえぜ!」とか「素敵っす拓也先輩!」という歓声が上がりました。
僕は戸惑いながらもセンパイやレオ兄ちゃんを見て助けを求めましたが、二人とも興奮しているようで何も言ってくれません。
するとそこに、変なおじさんがやってきました。
その人が「俺は一気に野獣モードも手伝うぞ」と言うと、さらに「俺は一気に野獣モードも協力するよ」と別の人も現れました。
「よし、じゃあまずは俺からだな」拓也はそう言うと、近くのワンダーアニマルに乗り込んで、その動物の上から拓也におしっこをかけている人を見下ろせるような体勢で立ちました。
「よし、いいぞ!」拓也が言うと、そのワンダーアニマルとおっさんは拓也に向かって放尿し始めました。
「うぉー!」拓也は叫びながらも、それを全て受け止めます。
「次は俺だ!」とまた別の人がやってきて同じようにおしっこをかけます。
するとまた次の人が……という風にどんどん続いていきます。
僕はその光景を見て、感動しました。
各方面からライトで照らされ、拓也の周りはおしっこで水たまりができているように見えます。
周りの人たちはみんな興奮している様子でした。
そしてついにたくさんの人が拓也に向かっておしっこをかけ始めました。
「うぉー!気持ちいいぜ!」拓也は興奮しきった様子でした。
はたから見て奇妙な光景でしたが、皆、笑顔を浮かべていました。
拓也という奇妙な存在が、ますます気になってきたのです。
そして、「ラストだ!」と言って拓也はお尻をこっちに向けて、ポーズを取りました。
その瞬間、今までにないほどの勢いで大量の尿が降り注ぎます。
「うわああああ」と僕は叫びました。周りの人たちも歓声を上げています。
「うぉー!最高だぜ!」と言いながら拓也は全身でその雨を受け止めていきます。
その姿はとてもかっこよくて、まるで英雄のように見えました。
やがておしっこの勢いが弱まってくると、拓也はゆっくりと立ち上がって、その場から立ち去っていきます。
僕は、拓也の姿を追いかけました。
拓也が向かったのは、ワンダー城の前、彼はそこで立ち止まり、寝っ転がっていました。
「拓也、大丈夫?」と僕は声をかけました。
「ああ、俺は平気だぜ!でも、ちょっと疲れたから休憩だ」と言って彼は寝転びながらワンダーランドの夜景を眺めます。
僕も隣に座りました。
しばらく沈黙が続いた後、僕は拓也に聞きたかったことを聞いてみました。
「ねぇ、拓也には叶えたい夢はあるの?」
友達が沢山いて、人と自由にコミュニケーションを取れて、好き勝手に行動できる今の拓也に夢なんてあるのかな、と僕は思いました。
「うーん、あるぜ」拓也は少し考えてから答えました。
「どんな夢?」
「それはな……ココロ、お前にだけ教えてやるよ」拓也は僕に耳元で囁きました。
「ハァハァ喘ぎ続ける拓也の夢はな……」拓也は少しためてから言いました。
「本命クンに振り向いてもらうことさ」
「え?」僕は驚きました。
それってどういうこと?どういう意味なんだろう?「だから、俺が本命クンに振り向いてもらえるようなエロ男になってやるってことさ!」拓也は自信満々に答えました。
「え?それって……」僕は混乱しました。
拓也の言ってることはよくわからなかったけど、なんだか少し嬉しかったです。
「ああ!俺は絶対に諦めないぜ!ココロも応援してくれよな!」拓也は笑顔で言いました。僕もつられて笑ってしまいます。
「うん!頑張ってね!」
「おう!任せとけ!」そう言って僕たちは笑いあいました。
そして今度は逆に、「なあココロ、お前は夢とかあるのか?」拓也は僕に聞きます。
僕は少し考えてから答えました。
「普通の生活送って、お父さんに楽させたい」
「普通の生活?それってどういうことだ?」拓也が聞き返してきます。
「お父さんは、いつも大変そうだった。普通じゃないことして、ずっとずっと頑張ってくれたから....。だから、恩返ししたいんだ」「ふーん、そっか……わかるぜ、お前の気持ち」どこかさみしいような笑顔で拓也は言いました。
そして僕を抱きしめてくれました。
僕はとても嬉しかったです。
「俺もお母さんにいっぱいお返ししたかったからさ.....きっとなれるよ、ココロなら」しばらくワンダー城を二人で眺めていると「お前ら、そろそろパレード終わっちまうぞ」センパイが後ろから僕たちを急かしました。
「そうだな、じゃあココロ、行くぜ!」拓也はそう言うと立ち上がりました。
それから僕たちはワンダーランドの中央広場に戻って、パレードを楽しみました。
楽しいこの日がもうすぐ終わるのが、とても寂しい気分になりました。
「なんだかんだ、楽しかったよ今日!ずっとこういう時間が続いたらな」途方もなく寂しくなって、少し泣きそうになりました。
「ココロ」拓也は僕の頭を優しく撫で「大丈夫、また会えるよ!だから泣くなって!寂しくなったら呼んでくれよ、二つ返事で駆けつけるから!」笑顔で言ってくれました。
「うん、わかった!ありがとう!」僕は元気よく答えました。
その時でした。
突然、地面が揺れ始めます。
「うわ!なんだこれ!」拓也は叫びます。
その揺れは誰も動けなくなるぐらい、強い揺れでした。
「きゃああ!」センパイとレオも叫びます。
僕は恐怖で動けません。
周りの人たちもみんな、地震に驚いています。
でも、不思議なことにパレードは止まりません。
「なんでだ?どうしてパレードは止まらないんだ!?」拓也が叫ぶと同時に、ワンダーランドが真っ暗になりました。
建物とか外灯で凄く明るかったはずなのに、ほぼ何も見えません。
「な、なんだよこれ!」拓也は叫びます。
「拓也!霧が!」マネージャーの言う通り、霧が出てきました。
「霧?」「おかしいだろ、霧が出るなんて予報は出てなかったはず……」レオが呟きます。
「おい、なんか変だぞ」センパイは何かに気づいたようです。
その意味が最初はわかりませんでしたが、次第に少し息苦しいような気がしました。
「おい、これ霧じゃないぞ!」レオが叫びます。
「え?」僕は周りを見渡そうとしました。
しかし、あまりにも強い風がさっきからずっと吹いているため、周りが見えません。
「なんだこれは!」センパイも叫びます。
やっと周りが見えるようになってくると、異変に気付きます。
空の雲一つ一つが、僕らに近づいてきていました。
「拓也、これヤバいんじゃないか?」センパイが言います。
でも、拓也は反応しません。
ただ黙ってその雲を眺めていました。
意識が朦朧とするような、そんな感覚がしてきます。
「拓也!おい!」センパイがまた呼びかけます。
それでも拓也は反応しません。
ただずっと雲を眺めています。
その時でした。パレードの先頭でおしっこをかけている人が、急に倒れました。
それを皮切りに、沿道に立っていた人たちが次々と倒れていきました。
さっきまで楽しそうに笑っていたはずの人たちが全員無表情で倒れている光景は不気味でした。
僕たちは恐怖を感じつつも周りを見渡していましたが誰も助けてくれる気配はありません。
全員倒れたあと、僕たちの前にいつの間にかワンダーアニマルとスタッフの人たちが立っていました。
「ココロ……拓也……レオ……チンポ……心臓」その内一人がブツブツ言っています。
はっきりと聞き取れませんが、何か恐ろしいことを言っている気がしました。
「みんな!逃げろ!」センパイが叫びます。
その瞬間、ワンダーアニマルの閉じていた目が開きました。
その目は赤い光を放ち、僕たちを睨んでいます。
その瞬間、急に眠くなってしまいます。
「ココロ!拓也!センパイ!」レオが叫んでいるのが、少し聞こえてきましたが、もう意識を保つことができなくなってしまいました。
拓也は、みんなはどうなっちゃうんだろう。僕はとても不安でしたが、迫りくる無に耐えることはできませんでした。