第一話
◇
「よく寝てますねぇ……」
へへ、と悪戯心を含ませた笑いを浮かべながら、私はソファに寝転がっている彼女を見て呟いた。
リビングという空間の中、彼女が横になっているソファーの目の前にはミニテーブルが置かれている。その上には翌週に控えているテストに向けての勉強材料であったり、眠気覚ましのコーヒーであったり。
リビングの壁に賭けられている時計は、深夜二時半であることを示しており、よいこは寝る時間である、ということを私に肯定させてくる。
「ま、コーヒーに睡眠導入剤を入れられるとは思わないよね」
寝ている彼女──姉の柚子──にネタバラシをするように呟くけれど、その声が誰かに届くわけもない。
両親は結婚記念日にかこつけた二泊三日の旅行に出かけているし、目の前にいる姉についてはすやすやと寝息を立てているので、この言葉が独り言である、という実感が私にイケナイ気持ちを湧き立たせて仕方がなくなる。
「……というわけで、ぐずぐずしていると起きてしまいそうだから、今のうちに楽しんじゃおうかなっ!」
少しばかり大きな宣言をしながら、柚子のほうに視線を向ける。深夜にしては目立つような声の大きさだったけれど、やはり彼女は夢の中で安寧を過ごしているようで、全く起きる気配はない。
長くてつやっとしている黒髪が枕にしているクッションに挟まれて、朝になったら寝ぐせでもついてしまうんじゃないか、そんなことを思いながら、私は姉の頭を撫でた。
「偉いねぇ、偉いねぇ」
こんな深夜まで頑張ってテスト勉強をするなんて、本当に偉いと思う。それほど頑張ってまで両親や周囲の期待に応えようとするなんて、本当に偉いと思う。嫉妬してしまいそうになるくらい。
少しの苛立ち、というか、こいつめっ、という気持ちで頬をぷにってしてみる。指の腹でつまんだ彼女のほっぺはつるつるとしていて、指先でも心地よさに浸ってしまいそうな、そんな沼に陥りそうだった。
「……さて、どうしようかな」
数十秒ほどほっぺで遊んではみたけれど、それで彼女の睡眠する時間を無駄に過ごしてしまうのはよくない。時間は有限なので、もっとそれらしい悪戯をしなければ。
使命感にも似たような気持ち。別に誰かに強いられているわけじゃなく、私がそうしたいだけではあるのだけど、それでもなんとか時間を無駄にしないように気を付ける。
頬を撫でた拍子に、唇をつまんでみる。寝息が漏れている口からだらしなくよだれが垂れている様。キスでもしようかと思ったけれど、寝ている間に口をふさがれれば、呼吸が苦しくなって起きてしまう可能性がある。
「それは今度、今度にして……」
私は彼女の下腹部の方へと手を伸ばした。
夏場ということもあって彼女は薄着だ。中学時代から着用している可愛らしいクマのイラストが描かれたシャツと、ピンクの大人っぽい下着が視界に入る。急な眠気に襲われたのだろう、シャツははだけていて、彼女のへそ部分がよく見える。へその少し下は少しだけ膨らみがあって、男の人が好きそうな身体をしているんだろうな、と思った。
「……えいえい」
ちょっとくすぐるような感覚で、彼女のへそをつんつんと突いてみる。穴の周囲をなぞるようにしながら、これが心地いいのかどうかを考えてみる。そのあと、実際に私自身で自分のへそを触ってみるけれど、特に心地よさとかはなかったからすぐにやめた。
「ええと、確か……」
心地よくなるマッサージを思い出すために、私はポケットに入れていたスマートフォンを取り出して、いつか購入した漫画を開いてみる。私が必要としている情報のページには栞が挟んであり、容易くマッサージする場所と方法を思い出すことができた。
「ぽるちお、マッサージね」
よくわからない単語ではあるけれど、私が見た漫画では、女性が女性に施しているマッサージであった。これであれば直接的に彼女の秘部を触らなくとも、そこそこの心地よさ、気持ちよさというものが生まれるらしい。
へそのちょっと下、少し膨らんでいる部分を目印に、私はそこを圧迫するように指で圧してみる。
腹の感触、というか皮膚の感触の、その奥の方に、なにか固く感じる感触がある。言葉では表現しづらいような、少し大きな筋肉のような、何とも言えない塊を指先に、手のひらに感じる。
「ここを押せば気持ちよくなるのかな」
一度、私も試したことがあるけれど、いまいち心地よさというものを感じることはできなかった。少しの息苦しさを覚えるばかりで、それが本当に快楽に続くのかは疑問だ。けれど、これが『開発』というものにつながるのならば、いろいろと試してみるのは悪くないような気がする。
ちょっとの力でそれを圧すことができなかったので、できる限り圧としては強めの感覚でそれをじんわりと押していく。少し苦しそうな、それでいて艶やかな姉の声が耳に届いた。
「……」
そんな様子を見ていると、だんだんとむらっと湧き立つ衝動のようなものが生まれる。ただの悪戯だけで終わらせようと思っていたのに、間接的な部分だけで満足しようと思っていたのに。
「柚子が悪いんだからね」
私は、そうして彼女の下半身に、太ももで閉じられている部分に手を伸ばすことにした。
───キャラクター紹介───
蜜柑
今作の主人公の女の子。中学二年生。性的なことに関心がある。両親に姉と比較されることが多く、そのことで姉のことが嫌いだったが、いつからか嫉妬心が転換し、姉を性的に襲いたい、という気持ちに変わっちゃった可愛い女の子。家の外では陽気的な振る舞いをしており、親しい友達が何人もいたりする。よく卑猥な漫画を電子上で買っていたりする。
柚子
今作のヒロイン。蜜柑の姉。高校一年生。長女ということで両親から期待されており、またその期待以上に応える優秀なスペックの持ち主。性的なことに知識はあるものの、特に関心はなく、毎日勉強や部活で大忙し。妹である蜜柑には申し訳ない気持ちでいっぱいであり、柚子から話しかけたい気持ちはあるものの、ぶすっとした態度をとる蜜柑に近づけず、嫌われていると思っている。