第十話
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まずいことになってしまった、と私は思った。
「……はあ」
夕陽が窓辺に垂れ込んでくる自室の中、私は重いため息をついてしまった。
電気をつけないまま、オレンジ色になっている部屋の彩、学習机に向き合っているというのに、勉強は何も進んでいない。
教科書、そして授業中にとったノート。夏休み前に買った参考書をそれぞれ机に広げているけれど、それでも何かが始まるわけでもない。気力もない、というか、そんな余力が私には残っていない。
「はああ……」
これが何度目のため息になっているのかもわからない。ここ最近はため息をつきすぎていると思う。数を数えるのも面倒くさい。
頭の中で問題ごとがちらついたまま、ただもやもやとした気持ちが反芻する。解決策はないか、とかいろいろ考えてはみるけれど、そんな考えは現状に対する打開策を思いつくこともなくって、苦しいだけの感情が私の中を渦巻いていく。
何事も進展しないまま、停滞することを意味するように世界はより暗くなっていく。オレンジ色は赤色に近くなっていって、夜が来ることを知らせてくる。
──そして、部屋に転がるノックの音。
ああ、そうか。今日は母さんがパートに行っているから……。
頭の中で独り言を響かせて、ノックの主には聞こえないように小さくため息をつく。
返事は特にしないまま、私は、すう、っと息を吸い込んだ後、決意を孕ませるように立ち上がる。無視するという選択肢は私の中にない。彼女を待たせないようにドアを開けた──。
「──今日も、一緒に勉強しよ?」
──そして、当然のことであるかのように部屋に入ってくる妹、蜜柑は妖艶な笑みを浮かべながら、私の背中をくすぐるような声音でそう言った。
■
「──あ、っあぁ」
情けない声が私の口から漏れ出てしまう。こんな声を自分があげることになるなんて、昔の自分であったなら想像することもできなかっただろう。
「ふふっ」と蜜柑は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、私の様子を眺めている。
「だめだよお姉ちゃん? これは、ただのマッサージなんだからさ」
蜜柑はそう言いながら、私の下腹部、というか下半身をまさぐるようにしてくる。秘部を包むようにしている厚みのある肉を、確かにマッサージするかのように指圧をしている。でも、指圧の中心にあるのはそんな大陰唇とかではなく、マッサージのような快楽ではなく、性的な快楽だけが背中に響く、そんな感じ。
ああ、ダメだ。こんな声を出してしまってはなおさら蜜柑を調子づかせるだけになってしまう。そうしたら、もっとすごいことをしてくるから、なるべく声を抑えないと──
「──んふっ」
「──!」
そう思った矢先、口の中に入り込む歪な形のようなもの。
自分の唾液を上書きするように、絡ませてくる蜜柑の舌の動き。口蓋をなぞるようなくすぐったさ、それでも止まらない下半身への指圧。
「んぁぁ……!」
我慢しようと思った瞬間に、そんな私を嘲るような悪戯。我慢は反発へと変わって、より大きな声に変わっていく。
「……ぷはっ、本当にお姉ちゃんは可愛いなぁ」
恍惚とした表情で蜜柑はそう言う。きっと、本心からそんな言葉が出ているのかもしれないけれど。
「み、蜜柑……、やっぱり、だめだよ……」
──女の子同士で、それも、血のつながっている姉妹でこんなことをするなんて絶対によくない。
どれだけ蜜柑が私のことを思ってくれていたとしても、それでもこんなことをしてはいけない。多様性だとか、そういった言葉はあるけれど、それでも姉妹のそれを肯定するような何かはこの世界にはないのだから。
でも──。
「──お姉ちゃんはうそつき、だね」
私のすべてをくすぐるような、そんな柚子の悪戯っぽい声音。
「体は正直、ってよく言うけど本当にその通りなんだもん。お姉ちゃん、口ではだめっていつも言ってるけど、ほら──」
──そう言いながら、間接的に刺激を与えていた彼女の指が、直接私の中に入ってくる。
「──ぁあっ!」
私の中を指の腹で味わうように、膣液になじませた後、慣れたように私が心地よく感じるポイントをこすったり、押したりしてくる。たまに、引っ掻くように指で中を持ち上げたりして、自分の指では届かない場所を刺激してくる。
「や、やめ──」
「──やーめないっ」
私ははしたないと思いながらも、それでも嬌声をあげることしかできない。
こんなの、卑怯じゃないか。
自分の指では届かないところを、蜜柑はずっと刺激し続けてくる。彼女がいないと満足できない心地を、蜜柑は的確に刺激し続けてくる。
頭の中でだめだということがわかっていても、それでも彼女の指ひとつにさえ抗うことはできない。それが悪いことだということを理解していても、彼女に求められるたびに応えてしまう自分がいる。
「お、もういきそうだね」
私は何も言っていないのに、それでもタイミングを理解している蜜柑は、にっこりとしながらそう言ってくる。実際、彼女の言葉の通り、頭が白くなるような絶頂がすぐそこにやってきているのはわかるから、悔しいけどそのまま指先に委ねたくなる。
「いいよ、イって?」
快楽の行く先を見つめることができないまま、私は彼女の体にしがみつくように指を絡ませていく。それでも蜜柑は指を止めることはなくて、確かに私をいかせるために──。
引っ掻く。
「──ぁあああっ!」
悲鳴にも似ている嬌声。こらえきることのできない喘ぎ声。口を抑えることにさえ意識は向かなくて、私が絶頂で弾むたびに、それに応えるよう蜜柑の指が何度も膣の中を引っ掻いていく。
「だめ、それだめっ」
いけない、はしたない。蜜柑が指を私の膣内と連動させるたびに、そう思っていても抗えない下腹部の柔らかさがすべてを弛緩させていく。
「いいよ、もっと気持ちよくなっちゃお?」
「やだぁ! やだよぉ!」
子どもみたいな懇願の声。これ以上されたら、またシーツを汚してしまうことに繋がるのがわかっているのに、それでも蜜柑の指は止まらない。
くい、くい、と私の中で膀胱を刺激し続けるように──
──ぷしぃっ、ぷしっ。
「──ぁぁあああっ……」
体内から漏れ出てしまう、口では表現したくないもの。
もう子どもでもないのに、子どものように行われてしまったおもらしのすべて。
ただでさえそんな自分が嫌でしょうがないのに、漏れ出る体液のせいで、より自己肯定感は薄くなっていく。
……でも。
「──本当にお姉ちゃんは可愛いなぁ」
蜜柑は、そんな私を肯定するように、再び私の口を塞いで、愛していることを示すように舌を私の中に絡ませていった。