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彼女の言った場所に、どこか心の中で困惑は覚えてしまうものの、それでも私は言葉を飲み込んで、そして彼女の言うままに私服へと着替えていく。
「制服でラブホとか、なんか補導されそうだしね」
「そ、そもそも、未成年がラブホテルを使っちゃっていいの、かな……?」
不安に思った私の言葉だったが、彼女は快活な雰囲気で、大丈夫大丈夫、とはっきり答える。
「私、今日のお姉ちゃんのためにいろいろ調べてきたんだぁ。だから、大丈夫だよ」
具体的な根拠は提示しないものの、それでもはっきりと答える蜜柑の様子に、私はなんとなく頷いてみる。彼女がそういうのであれば、別に不安を抱く要素はないのだろうと思う。……それよりも、早くしたい、という気持ちが不安よりも強いだけかもしれない。
「あっ、お母さんに連絡入れておいてね」
「えっ……」
「今日は、“お泊まり”なので。ちなみに私はもうラインしたから」
「えっ、えっ」
ふふ、と彼女は困惑する私を他所に、私服姿で何か準備をしているようだった。中身が見えない黒い革の鞄を持っていて、どうやらそれを一緒に持っていくらしかった。
「……でも、なんでお泊まり?」
私が予想していたのは、そういったことをやるにしても数時間はいかないくらいだと思っていた。だから、蜜柑にそう聞くけれど、彼女は当然のように応える。
「そりゃ、明日は祝日だしさ、せっかくのご褒美、お姉ちゃんをいっぱい楽しませないとなって!」
元気よく蜜柑はそう返す。私はそれにどう反応すればいいのか、よくわからなかった。
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私服に着替え、各々が準備を終わらせた後、私たちは家を出た。片手間にスマートフォンを出しながら、頭の中で思いついた嘘の言い訳を打ち込みながら、お母さんに連絡をする。友人間との泊まりの遊びは今までにもあったから、別に大丈夫だと思うけれど、それはそれとして嘘をつくということが少し心苦しかった。
なんとか文面を打ち終えて送信。そんな様子を眺めていた蜜柑は「嘘ついちゃったね」と小悪魔のように笑う。
「み、蜜柑だって」
「うんっ、お姉ちゃんと“そういうこと”がしたいから、嘘ついちゃった」
「……」
「そして、お姉ちゃんも私としたいから嘘をついたんだもんね。仕方ないよね」
私の中に宿る罪悪感に逃げ場を与えるように、彼女はそう言う。私はそれに頷きもしないまま、蜜柑が先導する道を、彼女と手をつなぎながら歩いていく。他の誰かがこんな様子を見ていたのなら、ただ姉妹で仲睦まじく出かける様子にしか見えないだろうな、と思う。
でも、目的はえっちなことでしかない。
改めてそう考えると、顔に熱が溜まるような感覚がした。
十数分ほど歩いて、駅前の方までたどり着く。駅前にはビルのいくつかが立っており、それ以外に特に目ぼしいものは立っていない印象。高校生の間であれば、こんな場所に寄るようなこともなく、近場にあるショッピングモールやカラオケなどで時間を潰していくだろう。だから、見慣れない感覚の方が強い場所を、堂々と歩く蜜柑の姿は、どこか大人のようにも感じた。
駅前の方を歩いて、路地の方へ。どこか不良が溜まりそうな怖そうな雰囲気の場所、たまに大々的な落書きも見かける。私はそれに内心ひるんでしまうけれど、蜜柑はこれまた堂々としている様子で、ただ目的地に向けて歩いていく。
そして──。
「──ついたね」
私たちは、目的地とするラブホテルについた。
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本当に事前に調べていたらしい蜜柑は、エントランスの方に入った後、テキパキと部屋を選ぶ機械のようなものを選択していった。私に何度か「どの部屋がいい?」と聞いてきたけれど、勝手がわからない私は蜜柑に任せることにして下を向いていた。もし、こんなところを他の大人に見つかったらどうしよう、という不安だけがあった。
でも、その不安も虚しく、誰か大人が通りがかることはなく、私たちはエレベーターに乗った。蜜柑が選んだ部屋の階にまでたどり着いて、また蜜柑が先導する。旅行とかで行くようなホテルとは異なる、暗い雰囲気の廊下が印象として強く記憶に残った。
鍵はかかっていないようで、そのまま「お邪魔しまーす」と蜜柑は言いながらドアを開けていく。私もそれに続いて室内の方へと入っていった。
暗めのピンクと黒で彩られている部屋だった。
あからさまにそういったことをするダブルベッド、ベッドからでも見ることのできる大画面のテレビ、そしてソファー。
「ここがラブホなんだねー」と蜜柑は落ち着いた様子で持ってきていた荷物をソファーに置く。私は勝手がわからないまま、強くなる鼓動の感覚に頭がぐるぐるとしてしまっていた。
──ここで、私は蜜柑と、そういうことをするのだろう。
一週間、いや、十日くらい我慢したこと。本来ならば姉妹ではやってはいけないこと。でも、今日はそういうことをするためだけの場所に来ている。しかも、本来やるべきことをほっぽりだし、家族にも嘘をついて。
どくどく、と心臓の鼓動が重くなる。けれど、下半身の、下腹部の疼きもそれに呼応して強くなる。もやもやがはっきりと形になって、子宮の部分が音を出しそうなほどに窮屈になっているのを、私は確かに感じた。
「それじゃあまずは……」
そう言いながら蜜柑は、するする、と服を脱いでいく。
「えっ」と、どこか展開の早さと、これから起こることに対しての期待で私は固まってしまうけれど、そんな私を他所に彼女はさっさと裸になった。
「あれ? お姉ちゃんは脱がないの?」
「えっ、あ、うん……」
彼女の質問にうろたえながらも返答をして、続けるように脱いでいく。外気が直接肌に触れる感覚が既にこそばゆく感じたけれど、それでももう始まるという期待に、私は裸になった後、ベッドの方に腰を掛けた。
「……お姉ちゃん」
蜜柑は、そんな私を悪戯する笑顔で見つめながら続ける。
「お姉ちゃんがそれだけ待ち遠しいのはすごーく嬉しい、けどね? ……まずはシャワー、入ろうよ」
「……!」
彼女の言葉に、私は顔に熱が上るのを確かに感じた。なんだか、私だけが思い上がっているというか、そういうことしか頭にないというか、そんなことを思ってしまって、赤面してしまうばかり。恥ずかしすぎて、私は顔を両手で隠すことしかできない。
「本当にお姉ちゃんは可愛いね?」
蜜柑はそんな私を揶揄うように笑う。私は渋々、という具合で蜜柑の後ろについていった。
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室内については、ラブホテルだな、という感想を抱いたけれど、設置されているシャワー室については、他の普通のホテルとは大して変わらないような気がした。というか、なんか勝手にすべてが透明か曇りガラスの場所を想像していただけに、少し呆気ないような気持ちを抱いた。
「じゃあ一緒に身体洗っちゃお」
そうして蜜柑はシャワーの蛇口のようなものを捻っていく。最初は冷水が出て、ひんやりと寒い感覚。でも、徐々に水は温まっていく。
「はーい、お姉ちゃーん」
シャワーのノズルを私に向けて、温水を浴びせる蜜柑。
「……自分で洗えるよ」
「まあまあ、せっかく二人で入ってるんだし、遠慮しないで」
そう言いながら、彼女は私の身体の方へと水をかけていく。私は蜜柑に背を向けている状態で、蜜柑は私の背中、足元にシャワーのノズルを向けていた。
いつもとは違う水の感触、自分じゃない誰かにあてがわれる水流の感覚が懐かしくて、なんとなくくすぐったい感じ。
「ふふっ」
ちょっとこらえきれなくなったくすぐったさに笑みを漏らすと、蜜柑もくすくすと笑う。曇り始めた鏡に反射する蜜柑の笑顔。とても楽しそうな様子。
「髪を濡らしちゃうと、あとで乾かすの面倒だから、ちょっと持っててくれないかな?」
「あ、わかった」
蜜柑の言葉に従って、私は片方の手で伸びている後ろの髪をまとめて上にあげる。そして──。
「──ひゃうっ」
──蜜柑の口が、首を撫でてくる。
ちゅっ、ちゅっ、と音を立てながら、くすぐるようにそれは撫でてくる。
れろ、れろ、と舌を突き出しながら、首筋を、うなじを、丁寧に舐めるようにしてくる。
いきなりやってきたその刺激に、私は思わず髪から手を放してしまう。
「あーっ! だめだよお姉ちゃん! 我慢しなきゃっ」
「だ、だっていきなり──」
「だってもでももないのっ。ほら、もういっかい!」
彼女の声に従って、私はもう一度髪を上げる。そして。
「──んちゅっ、ちゅっ、ちゅう……」
「──あっ、あはっ、はぁっ……」
──首に対して、口づけをするように。吸っては舐めて、吸っては舐めて。
さっきは突然の刺激だったからこらえきれなかったけれど、来るとわかっている刺激であれば、声を出すだけで我慢できる。蜜柑の言葉に従い続けながら、私は髪を何とか上げながら、くすぐったさと気持ちよさのちょうどいい塩梅の中に溶け込んでいる。
「……よし、それじゃあ、今度はこっち向いてー」
うん、と彼女の声に頷いて、今度は互いに向き合うような立ち姿勢。シャワーのノズルを、私の胸に向けたり、また足元、……重視するように下腹部のところを。
「──っ……」
声が少し出そうになるけれど、別にこれくらいはひとりのシャワーの時でも感じる刺激。だから、いちいち声には出さないように気を付けながら。
「ふふ、我慢してるの? かわいい」
揶揄うような彼女の声に「我慢なんか、……してないもん」と返答する。もん、とつけてしまった自分の子供のような部分に、私は少し恥ずかしくなる。
くすくす、と彼女は笑いながら、シャワーのノズルを、元あった引っかける場所に置いていく。水は出しっぱなしのまま、私の体には向けないように気を付けているようだ。
そして、それから──。
「──はむっ……」
「──ぁはぁっ……」
──口による、乳房の刺激。
手で私の胸を触ることはなくて、ただ乳房を、乳首の周辺を甘噛みするように唇だけで食んでくる。
あむっ、あむっ、と柔らかいけれど確かな圧力。でも、それが乳首に届くことはなくて、ただただもどかしい気持ち。
──でも、……気持ちよかった。
「あむっ、はむっ、ちゅっ、ちゅっ」
わざとらしく声を出しながら、蜜柑は私の胸を味わっていく。
「あっ、……それっ、い、いい」
それに声を我慢することはできなくて、自分でも大きいとわかるくらいに、あからさまな声が出てしまう。
直接、快楽を与えてくれる乳首の刺激が欲しくって、私は自身の両の手をそこに伸ばそうとする。もう、いいよね、そんな気持ちで。
でも──。
「──だーめ」
途端、蜜柑の口は私の体から離れて、伸ばした私の両腕を掴むようにする。
「せっかくしばらく我慢したのに、すぐに気持ちよくなったらもったいないよー?」
「で、でもっ」
「──後で、本当にすごいこと、してあげるから」
ふふふ、と彼女は含みのある笑みを向けた後、「それじゃ、軽く水に流すね」と、それ以降私の体に直接触れることはしない。シャワーの水を体に当てるだけ当てて、手でも、口でも触ってくれることはない。
(はやく、気持ちよくなりたいな……)
シャワーの終わり際にはそんなことしか考えられなくなっていて、私はさっさと蜜柑とそういうことをしたい気持ちだけでいっぱいになっていた。
じらして、じらして、その先は──。