◆
お姉ちゃんの腰は何かを求めるように、腰を浮かせている。腰を浮かせて、こちらに媚びるかのような動きを何度も繰り返している。部屋の内装による明かりが柚子の秘部のてかりを反射させて、とても卑猥だな、と私は思った。
「うん、だから、もう私は触らないよ! だから、安心してね! せっかくのご褒美だもんねぇ?」
──うん、しばらくは触らない。
だって、これは彼女に対する罰なのだ。
彼女が、私から距離を置こうとした罰なのだから。
◇
「え?」
「えっと、だからね……?」
柚子は私を部屋に呼び出した後、すごく困ったような表情を浮かべていた。何を言おうにも、すぐに躊躇ってしまっては息を吐こうとする。何か良くないことでも起こるんじゃないかなって、正直私は気が気じゃなかった。
そして、実際にそれは現実になった。
「しばらくね。……その、ああいうことはお休み、したいな、って」
ああいうこと、と言われて過ることは、いつも家に二人だけいる状況で行われる秘密の遊び。それ以外に思い当たる節なんてない。
「ほら! お姉ちゃん、部活とかもあってさ! 最近、顧問の先生に怒られちゃったんだよね。身が入ってないぞー! って。……だから」
誤魔化すように言ってはいるけれど、それでも実際に言われたことなのだろう。顧問の言葉らしい部分だけは妙にはっきりと声音が伝わってくる。
「しばらく、お休みしない? しばらく、……いや、ちょっとだけでも」
私は、お姉ちゃんの言葉を受け止めて、心臓が針に差されるような感じを覚えた。
──強引にこの関係に持ち込んだことを、やはりお姉ちゃんは納得していないのかな。
不安になる。どこまでも不安になってしまう。そりゃあ、毎日お姉ちゃんを気持ちよくさせている自信はあるけれど、それでも不足があったのではないかと不安になる。そして、その上で現実にも支障が出た、ということは、それを言い訳に今後も秘密の遊びをすることはできないのではないか。そんな不安が大きくなる。
そして、思い返した。
私からお姉ちゃんに、好き、と何度も声をかけたことはあっても、お姉ちゃんから私に、好き、と伝えられてきたことはない。
結局、身体だけの関係なのだ、私たちは。
そう思うと、心が苦しすぎて、立てなくなるかと思ったほどだ。
だから──。
「──いいよ」
──私は、お姉ちゃんの言葉に同意した。
──私なしで生きていくと、どれだけ辛いことになるか。私の指だけで刻まれている快楽が、どれだけ大きなものなのか。
それを、この期間でお姉ちゃんには覚えてもらおう。
そんな気持ちで、彼女の禁欲生活を私は始めたのだった。
◇
だから、これはお姉ちゃんに対しての罰だ。
私のことを認めないような、そんなことをするお姉ちゃんに対しての罰。だから、焦らして、焦らして、焦らしまくる。そして、最後には私の指で、彼女をずっと気持ちよくさせて、それこそ頭がぼうっとなってしまうほどに、大きな快楽を刻み込んでやる。
私はそれを、お姉ちゃんが禁欲を始めたときから考えていた。念入りにアダルトグッズを探したりして、それでようやくこの状況を作ることに成功したのだ。
……というか、さっきだってそうだ、私の指だけが好き、みたいな言い方を柚子はした。だから、私のことを好きじゃない、ということがわかってしまって、心苦しい気持ちになる。
だから、このホテルでの一日を通して、柚子を私のものにする。柚子の心を私のものにする。
◆
「じゃあ、ちょっと休憩してくるね? 私、お風呂入ってくるから」
私は柚子にそう言い残して、それから彼女が繋がれているベッドから距離を置こうとする。実際に足音を響かせるように、シャワールーム近くの洗面台にまで足を運んでいく。
私が離れるたびに、縋るような声が聞こえてくる。
「み、蜜柑? 蜜柑? ね、ねぇっ?!」
「……」
「蜜柑、蜜柑! 蜜柑っ! ねえ! 本当に、本当にお風呂、行っちゃったの?」
「…………」
「ほ、本当はそこにいるんでしょ?! ね、ねぇ、お願い、お願いだから……」
懇願するようなお姉ちゃんの声。そして、その声の通りというべきか、私はお風呂になんか入っていない。洗面台からお姉ちゃんの姿を観察しながら、私は静かに座り込んだ。
私のことを求めるように、腰が浮いては沈んでいく。ただ、お姉ちゃんの秘部を埋めるための指を探して、くね、くね、とこちらを誘うような動きをしている。
──やばい、これだけでなんかクる……。
さっきも、わざとカウントをずらしたときも、それだけでイってしまいそうだった。自分のあそこには何も触れていないのに、お姉ちゃんが感じている声を上げるたび、どんな感覚なのかを想像して、それだけで濡れてしまう自分がいた。
もう、我慢できないかもしれない。
私は、そうして私自身の指を、秘部にあてがう。
「──っ」
声は出さないように、声は出さないように。
今、柚子は私がお風呂に行っていると思っているはず、だから、それがばれないように。ばれても問題はないけれど、こういうのは放置プレイの方が心に来るような気がするから、あえて彼女には声をかけないまま、私は柚子の姿を覗く、覗き続ける。
「み、みかん、お願いっ、お願いがあるのっ」
「──ぅ……」
くちゅ、くちゅ。なるべく、音は立てないように。
小陰唇を撫でるだけで、私もお姉ちゃんと同じくらいにぬれているのがわかってしまう。縦に指をこすりながら。
「あのね、あのね。わ、わがままかもしれないけどね? わ、私のね、あそこをね、あの、……お、おまんこを、ね? 触ってほしいの、掻いてほしいの」
「──……ふっ」
息が漏れる、息が漏れる。音を出さないように気を付けているけれど、この状況というだけで声が漏れてしまいそうになる。
あのお姉ちゃんが、今まで性的なことなんて知らなかった柚子が、私の価値観で歪められてしまっている。おまんこ、なんて露骨な言葉、今日まで使うことなんてなかったのに。
──指を秘部に入れる。お姉ちゃんの愛液に浸かって、少しふやけそうな指。ただの自慰行為のはずなのに、それだけでもお姉ちゃんと体を重ねているような、そんな錯覚。
「あつい、あついの、か、かゆくて。おねがい、蜜柑、そこ、そこにいるんでしょ? 本当はお風呂なんていってないんでしょ。焦らしてるだけでしょ? ね、ねぇ? ……本当にお風呂行っちゃったの……?」
「──はっ……」
どたどた、とベッドから音が聞こえる。抵抗するみたいに腰を動かしては落としている音。あの、成績優秀で、運動も得意な、性的なことも知らなかったお姉ちゃんが、情けない姿で私に媚びている。
息が漏れる、息が漏れる。私は乳房に手を伸ばした。お姉ちゃんの愛液をローション代わりにして、それでくりくり、と指の腹でこするようにする。乳首をこすって、私の内側もこすっていく。好きなポイントに指がたどり着いて、それでひっかくように、お姉ちゃんにしてあげたように。
──あ、ああ、だめだ。お姉ちゃんの指が、お姉ちゃんの舌が欲しい。自分だけでは得られない感覚を、お姉ちゃんに与えてほしい。で、でもだめ。だめだ。今日はお姉ちゃんを堕とす日なんだから、ぜったい堕とす日なんだから、自分ばっかりのことに夢中になっちゃだめだ。
──でも、せめて、今だけは──。
くり、くりくり、ぎゅううう、と乳首を遊ばせて。
ぬり、ぬり、ぐにゅり、ぐにゅり、と膣内を引っ掻いていく。
お姉ちゃんも、これが気持ちよく感じてくれていたのかな。それなら嬉しいな。もっと私の指で感じてほしいな。
待ってね、待っててね。あともう少し、もう少しだから。
くり、くりぃ、ぎゅうううう、ぐにゅり、ぐにゅり、ぐにゅうり、ぐにゅうり。
「み、みかんっ……、みかんちゃん……」
「──っく……」
お姉ちゃんの切ない声。私の名前を呼ぶ声。それも、私の指に依存して、姉妹同士だったらやっちゃいけないことを、それでも求める、切ない声。
それを聞いて、──私は、……イった。
「──」
声は出さない、声は出さない。声を出しちゃいけない、ってだけで、快楽が内側から爆発するように、じんわりと広がっていく。
「──」
じょろ、じょろろろろ。
ベッド以外汚しちゃいけないのに、緩やかに流れていく快楽の波。子供がやってしまうような、おねしょみたいな、そんな──。
「──っ、……はぁぁっ、はぁぁっ」
声を出さないように気を付けながら、小さく息を連続させる。息を連続させて、なんとか私がそこにいることを知られないように。
──やばっ、やっぱ私のお姉ちゃん、可愛いがすぎるでしょ。
絶頂を迎えながら、私はそんな感慨を改めて実感するのだった。
「……やば」
このあと蜜柑ちゃんは汚してしまったところをお掃除するのでした。
次回、柚子、絶頂祭り開幕。お楽しみに。