◇
口づけを交わすたびに、お姉ちゃんの呼吸が私の中にあふれていく。
あやふやになっている彼女の息、私はそれを吸い込んでは息を吐き、人工呼吸の真似事のようなことをひたすらに繰り返していく。
お姉ちゃんの舌はだらしなく垂れ続けていて力はない。それを口の中でしゃぶっていく。一瞬乾こうとした彼女のベロは、いつまでも私の唾液におかされていて、くちゅ、くちゅ、と私の口の中で弄ぶことができる。
「ちゅっ、ちゅう、ちゅっ……」
お姉ちゃんの口をついばみながら、ただひたすらにキスを繰り返していく。別にそこに味なんてないはずなのに、それでも甘い蜜をすするような、そんな錯覚を感じて、いつまでもそんな行為に興じることができてしまう。
お姉ちゃんのための日、という名目がある以上、私に対して何かをしてもらう、ということはできないため、口づけの快感を与えるという建前で、私はお姉ちゃんに甘えている。
口づけなんて、きっと隠れながらだったらいつでもできるんだろうけれど、こうして人形のように意識がとんでしまっているお姉ちゃんとキスをする機会なんてなかなかない。今まではどれだけの快感を与え続けていても、ここまで絶頂を迎えることがないのだから、そんな今だからこそできることを私は続けていきたい。
「ちゅ、ちゅっ。れろ、れろ、れろ」
まあ、呆然としているからその甲斐というか、反応は全くないのだが。いつもであれば私の舌に応えるように、上あごを撫ぜるように舌は反応を返してくるけれど、本当に今は私にもてあそばれているまま。
──でも、反応はなくとも気持ちはいいようで、ずっとお姉ちゃんの下腹部からは、潮なのかおしっこなのかわからないものが弾けたり垂れ流れていたりする。
「……本当にかわいいなぁ」
なんとも心地がいい感覚。お姉ちゃんをここまで気持ちよくさせたのが私だという実感、それに伴う快感、征服感。言葉に使用もないほどに心の中が満たされていく気持ち。実際、お姉ちゃんには私が好き、って言わせることができたし、これでお姉ちゃんが私から逃げるとか、離れようとするとか、そんなことはないはずだ。
もう、私の手でイくことでしか快感を得られないだろうから。
「……でもなぁ」
女性同士で性行為を重ねるのにも限度がある。正直、本当に考えたくないけれど、もしお姉ちゃんがこのまま生きていくうえで、さらに私ではない好きな人ができたとして、そしてその人が男だったとして、私から離れてしまう可能性だってゼロじゃない。
それは、本当に嫌だ。いや、誰にとられるのだって嫌なものは嫌なんだけれど、性別によってそこに差異が生まれることが本当に嫌で仕方がない。
「……ふむ」
こうなれば、肉体的にも、精神的にも、私がいないと生きていく体にするしかない。肉体の快楽で考えられることはすべてやっておきたいし、男を好きにならないように、精神的にも更に屈服させなければいけない。あらゆるリスクには備えておいて、あらゆることに布石を打っておく。それが、今の私にできることなのではないだろうか。
……まあ、すぐに思いつくほど、私も器用じゃないのだけれど。
「……とりあえず、お姉ちゃんの愛液でも啜りながらオナるかなぁ」
どうせ、今は失神、もしくは失禁だろうか。さらに言えば気絶かもしれないけれど、ともかくとしてそんな状態だ。
それならお姉ちゃんが目を覚まさないうちに、お姉ちゃんの愛液だったり、おしっこであったり啜るくらいは許されるだろう。
「よーし、それじゃあいただきまーす」
そんなことを小声で宣言しながら、私はお姉ちゃんの秘部まで移動して、さっそく事を致していくことにした。
◇
結局、お姉ちゃんはそのあともなかなか目を覚ますことはなく、私の自慰行為は滞りなく行われた。
クリトリスを刺激すれば、ぷしっ、と尿道が反応するし、小陰唇を舌でなぞるようにすれば、じょろじょろ、と滲むようなおしっこがあふれていたけれど、それ以外にお姉ちゃんの体が反応することはなかった。
それなら中からの刺激で起こしてあげればどうかな、とかそう思って、それで指を入れたり、届く限り舌を膣内に含ませて舐めるようにしてみたけれど、それでも一瞬、びくっ、と動く以外には何も反応がなく、正直つまらなかった。
それはそれでも興奮はするから、それをオカズにしながら私は自分の秘部を触っていく。
お姉ちゃんを逃がさないようにしていた手錠とかはすべて外していた。お姉ちゃんがずっと目を覚まさないのをいいことに、お姉ちゃんの指を勝手に使って、そのままおまんこをいじってみたり、お姉ちゃんの口に当てて、それとなく顔面騎乗というものをやってみたり。……まあ、それで引っ掻いてくれたり、舐めてくれたりはしないから、そこまで気持ちよくはなかったけれど、それでもお姉ちゃんの息が秘部に当たるたび、くすぐったさが快楽につながるようなことは少しだけあった。
「──お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ」
お姉ちゃんの口元で、膣を指で引っ掻きながら、そうして自慰行為を繰り返す。
私が漏らしてしまう愛液の一滴ずつを、お姉ちゃんは垂れさがった舌で口に含んでいき、そうしてそれらを呑み込んでいく。ほぼ失神に近いような状態のはずなのに、それでもそれを行ってくれるのはどこか人間の神秘、というか生存本能って感じがする。
「……イクっ」
──そうして走るような潮の感触。ぷしゃ、ぷしゃ、とお姉ちゃんがそうするよりも勢いが強いものを、柚子の口に漏らしていく。それも何事もないように呑み込むのだから、ただ私はそんな自慰行為を繰り返していった。
◇
そして、朝がやってきた。
何時まで自慰行為に励んでいたのかは覚えていないし、その間、何度もお姉ちゃんを起こそうとしたけれど、ずっと快感を走らせっぱなし故の疲れのせいか、お姉ちゃんが起きることはなかった。次第に私も自慰行為に疲れて、そのままお姉ちゃんの秘部を間近にしながら眠っていた。
「な、なにこれぇ……」
そして、私はそんなお姉ちゃんの困惑する声によって起床した。
目が覚めたときに感じたのは、ただただ水気のある感触。端的に言えば不快なものであるのには違いないし、妙に酸味のある匂いが鼻腔をくすぐったが、起きた瞬間にそれを不快だと思うことはやめた。だって、お姉ちゃんが私の快楽に溺れた証拠だから。
そんな不快な感覚に包まれているのか、お姉ちゃんはただ困惑する声を上げた。
私とお姉ちゃんはシックスナインをするときの姿勢のままで眠りこけており、私の重さに気づいたお姉ちゃんは、何度も「みかん! みかん、起きて!」と声をかけてくれる。私はそこで悪戯のように少し眠っているふりをしたけれど、お姉ちゃんが何か私に悪戯をするようなことはなかった。
ちょっと残念な気分になったけれど、それでも眠たげな雰囲気を忘れることはなく、私はお姉ちゃんに、おはよー、と間延びした声をかけた。
そうして、ようやく私たちの少し非現実的なえっちな体験は、その朝に終わることになった。
◇
「ね、ねぇ?! これってどうやったら出られるの?!」
ラブホテル内の片付けを二人でした後、荷物を持って外に出ようとすれば、慌てた声でお姉ちゃんは私の顔を見つめてくる。
「うん? 普通に開ければいいじゃん?」
「いや、なんかね、開かないの!」
がちゃ、がちゃ、と何度もドアノブをお姉ちゃんは引っ張るけれど、言葉の通りに開かないらしく、ただただお姉ちゃんはその扉を焦燥感のあるような目で見つめていた。
「……うーん」
──普通に、まだ部屋の中で清算していないのだから、開くはずはないんだけども。
ただ、それを普通に口にしてもなんか味がないし、ちょっと反応を見てみたいような気もする。
だからわざと「まだ出られないのかもね?」とくすぐるような声でお姉ちゃんへと呟いてみる。
「えっ」
「ほら、だってお姉ちゃん、昨日気絶しちゃったでしょ? もっときちんとえっちしないと出られないかも……」
「えぇっ!?」
私がそんなことを言うと、思いっきり肩を落として落ち込むような振舞いをするけれど、その割にはあっさりと諦めて、まだ水気の残り続けているベッドの方へと戻ろうとして行く。
……なんだ、やっぱりまだし足りないんじゃん!
そんなことを呟こうと思ったけれど、流石にそれはやめておいた。
なんというか、私もオナニーやクンニを続けていたせいで、筋肉痛みたいな感覚が節々にあったから。
結局そのあと、私は事前に清算をするシステムがあることを正直に告げた。それに更に驚くような表情を見せるお姉ちゃんだったけれど、それでも帰れることに安堵をしたのか、特に何か私に文句を呟くことはなかった。
そして、一緒の帰り道。
子どものように、……もしくは恋人のように指を絡ませながら、一緒に家の方まで歩いていく。
きっと、誰かが私たちを見ても仲のいい姉妹としか思わないだろう。
でも、本当は恋人なんだけどね。
そんなことを通りがかる人たちに思いながら、私はご満悦の気分でお姉ちゃんと一緒に家へと帰っていった。
というわけで、今回で絶頂管理編については終了です。
次回からは閑話休題として、手マンカラオケ編を数話ほど書こうと思います。お楽しみに!