◇
「……あのさ」
私が台所で夕飯の片づけをしていると、ふとリビングの方から声がかかってくる。私が洗浄をしている水の音、食器の音に紛れた時計の針の音をかきけして、確かに柚子からのものだった。
私は一瞬視線を合わせた後、それからすぐに視線を逸らす。
「なに」
カチャカチャ、と陶器を重ねた音をわざと響かせて、私は今家事をしている、ということを彼女に誇示する。大した作業でないことは重々承知しているけれど、それでも彼女の言葉に嫌な予感を覚えたから敢えてそんなことをしている。
「……ごめん、やっぱりなんでもないや」
「そ」
何も感じていない、発言に興味がないことを示すような、愛想の欠片もない声音を出してしまったと思った。自分自身で呟いていてもどかしく感じてしまう声。それを彼女に対して自然とむけられてしまう自分が浅ましいと思ってしまう。
だが、それにほっとしている自分もいる。
柚子の体に触れて、それで態度をいつも通りに突き通せている私に、そして踏み込んではこない柚子のふるまいに。それがどうしようもなく進展しないことがよくわかって安堵感を覚える。
大丈夫、バレていない。バレていたとしても、彼女から私に何かを聞いてくることはない。それでいい。それがいい。
「……今日もコーヒーいる?」
食器を片付けながら、私は柚子にそう声をかけている。昨日よりも早いタイミングで声をかけたことに、少しやらかしたかな、という気持ちと、少し無愛想な声で返答をしてしまったことが私にそうさせてきた。
「え? あ、ああ、うん。じゃあ、貰ってもいい?」
「はいよー」
困惑している彼女に間延びした声を返して、さっさと目の前の家事を終わらせる。コーヒーといっても市販のインスタントのものでしかないから、大した労力もかからないままマグの中に粉とお湯を注いで、彼女にそれを渡しに行く。……ついでに入れてはいけないだろうものを含めて、ティースプーンで誤魔化しながら。
彼女の方へとマグを持っていくと、やはり勉強道具がミニテーブルの上にはおかれている。今日も今日とて勉強をするみたいで、昨日よりも気合を入れているらしいことを示すような前髪をあげるためのカチューシャが視界に入る。みんなの期待に応えようと頑張っている彼女を見て、少しだけ申し訳ない気持ちになる。
「はい、コーヒー」
「……ありがとうね」
そんな彼女の言葉に罪悪感を覚えてしまう。私の声音も、振舞も、そしてこれからすることに対しても。
「本当にありがとうね」
重ねて感謝を示す彼女の声に、私は苦笑を返すしかなかった。
◇
「……寝たよね?」
時刻はおおよそ九時ごろである。昨日よりもだいぶと早い時間から柚子が寝息を立てている様を見て、私は改めて確認するように言葉を紡いだ。
その声に返答されることはなく、変わらず彼女は寝息を立ててすやすやと夢の世界に入っている。私はそれにほっとして、彼女の頬をぷにぷにと遊んでみる。
「さっきは焦っちゃったなぁ」
むにむに、むにむに、と彼女の頬をつついてほぐすようにしながら、先ほどの場面を頭の中に回想する。いつもであれば私に対して遠慮がちな柚子が、私に向けて声をかけようとしたのだから、それがどれだけ私の焦燥感を煽ったことか。
「でも、コーヒー飲んでくれたし、きっと違うことだったかな」
そのおかげで彼女は今眠りについている。それに私は心の底から安堵して、ふう、と息をついた。
さて、今日は何をしようか、と自分の心に問いかける。
やめる、という選択肢は柚子を寝させてしまった時点で消失している。昨日感じた興奮も冷めやらぬまま、また彼女の体で自分を慰めることを求めてしまっている自分がいる。
彼女の体を使うと、充足感があるのだ。いつまでも虚しい気持ちに光をともすような、いつもの自慰とは異なる満足感があるのだ。
だから、今日は今日で少し趣向を変えてみたい気もする。
昨日は逸った気持ちで彼女の下腹部しか見つめていなかったけれど、今日は彼女の胸に視線が行く。
昨日と同じように彼女はソファーの上で横たわっており薄着だ。キャラものではない無地の服に着替えている彼女のそれは下着を透かしている。今日は淡い水色のものをつけているようだ。
「……ふむ」
昨日は下着が事情によって脱がせられない、ということで何もできなかったけれど、別に下着をずらしてしまえばどうにかなるような気もする。実際、彼女の秘部を守る下着もそれでなんとかなったのだから、特に気にしなくてもなんとかなる。
「よし」と意気揚々、というか、これからやるべきことを見定めて、そうして彼女の体へと手を伸ばしていく。今日は胸というターゲットを見出して。
白い無地のシャツを捲っていき、上半身から上を肌色に染め上げていく。シャツ越しにも見られた水色のブラが彼女の大きな胸を隠している。
「わっ」
服を着ていてもなかなか大きいな、とは思っているけれど、実際に目の当たりにすると特に大きいな、と思う。しかもフロントホック。
「きっとこの胸に惚れている人とかもいるんだろうなー」
そう言いながら、これは好都合ということで前からブラを外していく。ずらそうかな、とか考えていたけれど、フロントホックなら後処理も楽だし、なによりずらして窮屈になる目の前の胸を思うと、少し可哀そうだなと思った。
ホックを外して露になった大きな果実。私はそれをつん、つんと人差し指で突いてみる。私よりも何倍も大きい彼女のそれは私が触れるたびに波を起こして揺れている。本当に大きい。
指先に残る弾力のある感触。頬のぷにぷにとしたものとは異なって、確かにハリのある肌のつやが指先にかえってくる柔らかさがある。
「すっご……」
私の体では確かめることもできそうにない胸の柔らかさ。正しくおっぱいと表現するべき代物。目の前の双丘、というか二つの山を見据えて、私は、えいっ、と手でそれをわしづかみにする。
手のひらにあたる彼女の乳頭。特に勃つ様子はなく、ただ私の手が彼女の胸に沈んでいく。
もに、もに。
わぁ、と声が漏れてしまう。これは癖になる感触。日常的に触れていたいような、そんなことを思ってしまうほどに柔らかさに酔いしれてしまいそうになる。
「いつか彼氏とかできたら、ずっと揉まれちゃうんだろうなぁ」
そんな想像、嫌な想像を働かせて、一瞬胸に針を刺すような痛みを心に覚える。柚子が誰かのものになるなんて嫌だなぁ、と思いながら、私は手のひらに収まりきらない彼女の胸をずっと揉み続けている。
「ん……」
「うおっ……」
起きたかな、と反射的に彼女の胸から手を放してしまう。でも、それはただの寝息だったらしく、私は、ふう、と安堵の息を吐く。
「どうせなら吸っとくかぁ」
私はやるべきことを口に出しながら、そうして再び手と、そして唇を彼女に近づけていく。これから味わうものは彼女の乳首であることを頭に刻みつけながら、左手の指でひとつの乳頭をつまみ、まだ残されているそれに唇をあてがう。
はむ、と唇で甘噛みをしてみる。私にはできないことなので、それが気持ちいいことなのかはわからない。けれど、唇の先で転がす彼女の胸の味わいがどこかにあるような気がする。また指先でくりくり、と刺激をするのもなんか楽しい。
手のひらで揉むのと指先で悪戯するのを忘れないようにしながら、唇で彼女の桃色をした乳首を嗜んでいく。甘噛みするだけじゃ物足りなくなって、吸ってみたり、舌で舐めてみたり。
特に味は感じない。強いて言うなら、入浴剤の匂いがある気がする。
舌で乳頭を転がすと「んふ……」と笑い声が耳に届く。彼女の乳を咥えながらそちらに視線を向けると、まだ寝息を立てて微笑を浮かべている柚子の姿。まだ起きてはいないみたいだ。
大丈夫、大丈夫なはず。今日は少し多めにお薬を入れたから、これくらいではまだ起きない。昨日の悪戯でも起きなかったのだから、これくらいで起きてしまわれるとすごく困る。
だんだんと舌と指先にある乳首がかたくなってくる。
「ぷはっ……。お姉ちゃんは舐められるのが気持ちいいんだね」
彼女の乳頭から口を離して、今度は指先でいじめていた方を口に含む。私の唾液でまみれている乳頭に指を添えて、揉んだり、つまんだり。
よだれに染まった乳首に息を吹きかけてみたりして、びくっ、と震える彼女の姿を楽しむ。
やばい、これで一生を過ごしても悪くないかもしれない。
そんなことを思ってしまう自分がいるけれど、それで時間を過ごすのは少しもったいない。
「そろそろ本番にいきまーす」と謎の宣言をしてみて、今度は下腹部を攻めようと私は視線を変えた。