でも、てぇてぇ成分はいれといたので許してください。
◇
「……それでマッサージ?」
「そう! マッサージなのです!」
私の言葉にお姉ちゃんは何度も頷きながら、すごく楽しそうな表情で言葉を返してくる。結構お姉ちゃんの言葉は大きく響いてしまって、これがもしいかがわしい会話だったのなら両親に聞こえちゃうな、とか一瞬そう思った。まあ健全な話だからどうでもいいけれど。
事の始まりはお姉ちゃんが部活から帰宅してからのことだった。
『ようやくお願いごとが決まりましたぁ!』
帰宅してすぐ、お姉ちゃんは私の部屋まで急いでかけてくると、はあはあ、と息を漏らしながらそう言ってくる。それで何をお願いしたいのかなぁ、えっちなお願いかなぁ、いじらしくお願いするお姉ちゃんとかたまんないなぁ、とかいろいろ期待をしながら聞いてみると、その答えがマッサージと来たもんですよ。
……ふーん、へぇ。なるほどね?
まあ、そんなもんだよね、わかってました、わかってましたもの。
あのお姉ちゃんが私にえっちなお願いをしてくるわけがないっていうことくらい、そんなの理解していましたとも。もしそういうお願いをしてくるのであればベッドの上で、とか、プレイ中、とか、そんな空気の中でしかないだろうし、うん、わかってた。本当にわかってましたとも。
でも、納得はいかない。こちとら最近ムラムラが強くて仕方がないのに、お姉ちゃんはそれを気にしていないようにマッサージを提案してくる。それがちょっと悲しい、というか、むずむずする。
まあ、お姉ちゃんはバレー部で活動しているわけだから、相応に疲労がたまっていることは理解できる。真剣に取り組んでいるからこそ、その疲れを解放するためにマッサージを求める、というのも理にかなっていると思う。だからわかる、わかるんだけども……。
「……まあ、うん、いいよ」
……できれば、えっちなマッサージとか、そういうプレイであったほうが嬉しかった。あのカラオケで敗北したことはやはり間違いだったのだ。私の淡い期待はそうして打ち砕かれたのであった。
「……え、蜜柑ちゃん、なんか不機嫌?」
「いや、別にそういうんじゃないけど……」
露骨にがっかりしてしまったことが声に出てしまったのか、お姉ちゃんは私の表情を見て不安そうな表情を浮かべた。
いや、まあ不機嫌ですよ。週一でしかえっちできていないことに相当不満がたまってますとも。今この瞬間でも押し倒して膣液すすってやりてぇな、とか思ってますとも。
……でも。
「ん?」
……何もわからない、というように純粋なまなざしで私を見つめてくるお姉ちゃんの瞳。不純さなど一つも混じっていない健全な目に、そんな卑猥な感情は抑えられてしまう。
……お姉ちゃんも、頑張ってるんだもんね。しかも、きちんと週一で私とのえっちにも応えてくれているし、ここで無理に襲う、っていうのは本当に私のわがままでしかない。
せっかくいい関係性が、適切に作れているというのに、それを私の独りよがりで壊してしまうのはよくない。
それだったら、もう私がお姉ちゃんを適切にマッサージをして疲れを癒すことで体力を回復させて、それでえっちの頻度を高めたほうが理にかなっていると思う。うん、そっちのほうが私もうれしいし、お姉ちゃんもダブルで気持ちよくなってくれるはず。
「……じゃあ、今からしよっか。肩とか、腰とか? ふくらはぎとかもきつい感じ?」
バレーは体育でしかやったことないから、体のどの部分に疲れが溜まっていくのかはわからない。わからないから適当に使っていそうな部位を言葉に並べながら聞いてみるけれど……。
「へ?」
当の本人は、何を言っているんだ? ってくらいにとぼけた笑顔でニコニコとしていた。
「え? だから、マッサージでしょ?」
「え、うん。そうだけど……」
「じゃあ、それなら早く横になりなよ? 私の指圧パワーでお姉ちゃんのコリをほぐして──」
どうしても露骨に不機嫌さが声に出ちゃっていたのかな、と思って気丈に声を出してみるけれど、そこでようやくお姉ちゃんが「あ、違う違う!」と返してくる。なるほどね! といつまでもニコニコとする表情をやめることはせず、お姉ちゃんはそうして言った。
「──
◇
「……えっ? ……私?」
ちょっと意味が理解できなくて、お姉ちゃんに聞いてみると彼女は元気よく、うん! と頷いてくる。その頷きで尚更私はよくわからないというようにジェスチャーした。
「別に私は疲れてないんだけど……?」
「疲れてなくてもマッサージは気持ちいいもんだよ?」
まあ、そうだろうけれど、どちらかといえば私はお姉ちゃんとエッチなことをしたい、というふしだらな気持ちが体に滲んでいるだけで、それ以上のことはない。でも、お姉ちゃんはそれを理解できないというように言葉を並べてくる。
「……いや、それはそうかもだけど──」
「──もしかして、私にマッサージされるの、……嫌?」
「──っ」
お姉ちゃんは途端にすごく寂しそうな表情で私の目を見つめてくる。本当に残念そうな、そんな子供のような表情を浮かべながら。
……いや、その顔は反則じゃん。
「ぜ、全然いいけど? ……っていうか、本当に私がマッサージされる側でいいのかな、ってそう思って。お姉ちゃん、バレー部とかで疲れているだろうし、私がマッサージして癒せたらなぁ、って──」
──途端、柔らかい感触が顔に、そして景色が暗くなる感覚。
ぽんぽん、と頭を優しく撫でられながら、その上で私の身体を抱き寄せてくるお姉ちゃん。
(へっ? へっ!?)
目の前の現実に対して信ぴょう性がない。一応、混乱と嬉しさを態度には出さないように気を付けながら、そのままお姉ちゃんの抱擁に私も応える。
「蜜柑ちゃんは優しいね。本当に大好き。でも、でもね、私は大丈夫。私が蜜柑ちゃんを労わってあげたいなぁ、ってそう思ったから、ね?」
「……」
え、やばい。なんか泣きそう。えっち以外のときにこんな言葉かけられたことないし、なんかやばい。普通にこのままお姉ちゃん沼に頭の先まで沈んでしまいそう。いや、まあ沈んでるんですけど。もうキスしたくてたまらないんですけど。
「だから、今日は私が蜜柑ちゃんをマッサージ。今度、機会があったら私をマッサージしてくれると、お姉ちゃんうれしいなぁ──」
「──! うんっ! わかったぁ!」
お姉ちゃんの言葉がすべてうれしくて、私は子犬のようにそんな返事をしてしまう。正直、これ以上お姉ちゃんに恋してしまう自分の好意が暴走しないか、それだけが不安でしょうがなかった。
この姉妹可愛いと思います。マジで。
そしてだんだんとさいつよに近づいていく柚子ちゃん、これが本当によくってぇ……。