◇
「……ん」
それからも、お姉ちゃんは私の肩、そして背中へと丁寧な揉捻を続けてくれている。マッサージを味わったことがないせいか、こんなに艶っぽい声を自分自身で出すことになるとは思っておらず、度々背中に触れられるたびに変な声が生まれてしまう。
なんというか、背中が熱い、というか。指圧で背中を揉み解されている部分が、なんだか熱い。別にこれは性的な意味でほてっている、とかそういうわけじゃないんだろうけれど、それでもそんな熱を感じる。
そんな声を私は吐き出し続けていたけれど、それでもお姉ちゃんは気にしないように、ずっと私の背中に触れ続けている。特にいやらしいことはしてこないまま。
「いやー、本当に蜜柑ちゃんの身体って柔らかくていいね。……癖になっちゃいそう」
「ん、……そう、かなぁ。お姉ちゃんの、方が柔らかい、って、そう思うけど……」
私が返事をすると、お姉ちゃんは「そんなことないよー」と間延びした声を出す。いやいや、それこそないでしょ、って私が更に声を返すと、ふふ、とお姉ちゃんは笑みを浮かべているようだった。
「やっぱ、自分の身体じゃそういうことってわからないよねぇ。私、そんな自覚ないもん」
「えー……? お姉ちゃん、すっごくもちもちして……、それでハリがある肌している感じ、……じゃない、かな? それこそ、私も癖になってるもん……」
まあ、私がお姉ちゃんに触る場合は、ほぼ性的なことに関連してだけれど。なんなら性的なこと以外でお姉ちゃんに触れたことなんて、あんまりないような気がするけど。
でも、実際お姉ちゃんの身体を触ることは癖になる。特におっぱいとかはそうかもしれない。お腹とかも少し触っていたくなる柔らかさがあるけれど、それ以上に胸に触れていたい時間を増やしたくなる。
指で押せばそのまま沈む、かと思えばその先端をいじくるようにすると、途端に弾力を思い出すように跳ね返してくる。もちもち、とも言えない不思議な感触──。
「──こんな具合、に?」
そうして、私がお姉ちゃんの胸の柔らかさを思い出している最中で、そんな声がかかって──。
──指が、胸に触れた。
「ひぇ」
背中にあった手の温もりがすっと移動して、ベッドに載せている胸に触れられている。タオルの上から滑り込ませるようにして、それから温かいと感じる熱が、ただただ胸の大半を刺激してくる。
「お、お姉ちゃん……?」
私がそう訝しいような声を出すと、うふふ、と背中ら声が聞こえてくる。後ろを振り向きたい衝動があったけれど、それでもお姉ちゃんが背中に乗っかっているからそうすることはできない。
「いやあ、やっぱり蜜柑ちゃんのお肌は柔らかいよー。だって、本当にずっと触っていたくなるもん」
──もみ、もみ。もみ、もみ。
ただただ滑り込ませている手で、胸を包んで刺激してくる。それは先ほどから行われているマッサージと同じように、ただ揉み解すことを意識しているような触り方で。
「蜜柑ちゃんのおっぱい、本当にやわらかーい。私のはただの脂肪って感じがするけれど、蜜柑ちゃんこそハリがあっていい感じなんだよねぇ」
「そ、そう、──ん、……か、な」
正直、それについてはよくわからない。私はお姉ちゃんよりも控えめでしかない胸だから、自分自身のそれに自信はない。
「……っていうか、お姉ちゃ、──あっ」
──こり、こり。
全体的に包んでいた感覚から、一気に点で刺激するみたいに、指が乳首へと触れていく。
つまむように、にじるように。
「──んっ、んん、んふぃ」
声が、声が漏れてしまう。あまり出したくない声が漏れてしまう。
自分なんてお姉ちゃんみたいに可愛くないのに、それでも変な声が出てしまってしょうがない。
「蜜柑ちゃん、すごくこりこりしてるよー? 気持ちいいってこと、だよね?」
「んん、う、うん……。き、気持ち、いいけれ、ど……」
い、いや。そういった気持ちよさを今味わうタイミングじゃないじゃん。だって、これ、普通にマッサージするやつでしょ?
……そんな意見、言葉を伝えてやりたい気持ちはあったけれど、結局そんなことはしないまま、ただお姉ちゃんの指に私は弄ばれていく。
──こり、こり。ぎゅい、ぎゅいぃ。
タオルの中に挟まれている手で、無理くり乳首をつままれ、引っ張られる。少し痛さにも似ているかもしれないけれど、それでもそれが電流のように背中に伝って、更にその衝動は下腹部への快楽へと繋がっていく。
(ふ、普段から乳首でオナニーしているせいか、お姉ちゃんに触られても反応しちゃう……)
そんな心の声が、ただただ喘ぎを孕んだ息としてこぼれていく。
それを、お姉ちゃんは、ふふ、とただ笑みを声で浮かべながら、ひたすら乳首を刺激してくる。
……え、え、ど、どういうこと? わ、わからないんだけど、この状況。よく、わからないんだけど。
「お、お姉ちゃ、──んっ、あ、あの、もっと違──、っひぐぅ、う、ところも、マッサージ、してほしい──ひゃっ、んだけ、ど」
喘ぎを交じらせながらつぶやく言葉。背中にあった身体の火照りは確かな欲求になっていく。
けれど、それでもあくまでマッサージという姿勢は崩さないように、私はお姉ちゃんへと声をかけていく。
あのお姉ちゃんがえっちなマッサージをするわけがない。だって、あのお姉ちゃんなんだもの。
そして、私の予測の通りにお姉ちゃんは「あ、そうだね!」と気づきを得たような声をあげる。
「蜜柑ちゃんのお胸、本当に柔らかかったから、いつの間にか手が伸びちゃった。ごめん、ごめんね」
──そう言いながら、ゆっくりと私の胸にあった彼女の手は、静かに離れていく。
それでも一瞬、その柔らかさというものを味わうように、手のひらで、指先でなぞりながら。
──やばい、ちょっとお胸をいじられただけでイキそうになっちゃった。
そんな感想を、私は口から漏らすことなく、下腹部に募った欲求をこの後どう発散しようか、そんなことばかりを考えていた。
◇
それからもお姉ちゃんのマッサージは続いていく。
上半身にあった手は、背中の揉捻を終えたのか、次第に下半身へと移っていく。
「よっこらしょ」とお姉ちゃんは声を出しながら、身体の方向を足の方へとむけていく。そうして手は私の足の指先へと伸びていき、再びゆっくりとマッサージは始まった。
「ふっ」
足の裏をマッサージされた経験なんてもちろんない。
これに関しては指圧されるマッサージ、というよりも、くすぐったさの方が強くて、ふとした時に笑い声が漏れてしまいそうになる。そんなくすぐったさが蟠るせいか、次第に乳首をいじられたことによる性的な衝動はすり替えられるようになっていく。
「くすぐったい、かな?」
「ふ、ふふっ。そう、だねぇ……。でも、別に嫌な気持ちはしない、よ?」
私の声に、お姉ちゃんは「よかった」と安どの声をこぼして、それからも右足、左足とマッサージを続けていく。
……かと思えば。
──こしょこしょこしょ──。
「ふ、あひゃ、ははっ! ちょ、ちょっとお姉ちゃ──」
──こしょこしょこしょ──。
「くすぐったいっ、くすぐったいよっ」
どうしようもなく漏れる笑い声。笑いたいわけじゃないのに、それでもくすぐられる反射で、私はどうしても笑い声を堪えることができない。
「足裏ってやっぱくすぐったいよね」
「う、うんっ、だ、だからね──ふっふふ──、や、やめてほしいなって──」
「──お願いしてくるみかんちゃん、かわいい」
私のお願いに、お姉ちゃんはそう言葉を返しながら──。
──こしょこしょこしょこしょ。
「ひゃっ、あは、あははははっ!! な、なんで──」
「──もっと、もっとお願いとかおねだりとか、してほしいなぁ──」
──こしょこしょこしょこしょ。
「あははははっ! ま、まって、おねえちゃ──、は、あはははは──」
──やばい、これ。これ、このまま続けられると、マジでまずい。
嫌悪感、とかそういうことじゃなくて、笑うと緩んでしまうものがある。身体の筋肉に力がいれられずに、いろいろなことに対する操作権を、私は失ってしまう。
──尿道が緩む感覚。
──笑い続けることで、したくないのに、それでも漏れてしまいそうな、滲んでしまいそうな、そんな感覚が私の下腹部にある。
「──お、お姉ちゃん! ほ、ほんとうに──あひゃひゃひゃっ──や、やめぇ、てぇ?! おし、おしっこ! もれちゃ、もれちゃうから──」
「みかんちゃん、子どもの頃から笑ったらおもしらししてたもんねぇ」
「そ、そうなの! だ、だから──」
今は幼い頃にあった恥ずかしい記憶を語られるよりも、今お姉ちゃんにされていることで恥ずかしい記憶を作る方が嫌だった。だから、抵抗するように足をじたばたさせる、けれど──。
「──いいよ、出しちゃえ」
「────ぁ」
そして。
──じょろ、じょろろろろろ──。
途端にくすぐっていた手の感覚は足からなくなっていく。
「──あ、ぁぁあ……」
自分自身がこんな年齢になって、くすぐられただけでお漏らしをしてしまった。
──そんな、恥ずかしい気持ちだけでいっぱいになる。
いい年にもなって、くすぐられているだけで、おしっこをもらしてしまった。
──じょろろろろろ……。
「とま、とまっ──」
止まってほしい、これ以上、恥ずかしい姿を自分自身で見たくないし、お姉ちゃんに見られたくない。
だから、自らに懇願するように声を出すけれど、それでも止まらない。
「──あぁぁ……」
そして、出し切ってしまった自分の尿の感覚。敷かれているタオルに、体温以上の温もりと湿度とは言えない確実に水浸しとなっている感触の嫌悪感。
「う、うぅ……」
……やばい、なんか泣きそう。
自分のみじめさに、なんか泣きそうになってしまう。
「ど、どうして──」
悪戯でもやっていいことと悪いことがある。
私はそんな気持ちを声に含めて、言葉に出そうとした、けれど──。
「──よくできたね、みかんちゃん」
「えっ……?」
「……ごめんね? 私、みかんちゃんの可愛いところが見たかったから──」
──そんな言葉が、耳元でささやかれていく。
そして、言葉を確かに理解したタイミングで──。
「んふっ──」
「────」
──いつの間にか、お姉ちゃんの顔は近くにあって。
────そしていつの間にかに、私は近くにあったお姉ちゃんに顔をそらされて。
──────唇を重ねている。そんなことに、今さら気が付いた。
「──本当に可愛いよ、みかんちゃん」
ぼうっとする頭の中。確かにお姉ちゃんが私にそう声をかけていたことを、私はただただ聞いていた。
くすぐりによるおもらしってめっちゃえっちだと思っててぇ……。
……ごめんね? 蜜柑ちゃん。衝動をこらえられなかったんだ……。