◇
──空虚。
途端に、すべてが何もなかったかのように空虚になる。
私の中にあったお姉ちゃんの指。それが引き抜かれたというだけで、満たされていた身体も心も、そのすべてが空虚になる。
「や、やだ、なんで、なんで」
やだ、やだやだやだ。気持ちよかった。すごく、すっごく気持ちがよかった。でも、なんで、なんで止めるの。違う、違うじゃん。今のは、今のはそう言うのじゃないじゃん。
「──だって、みかんちゃんがわがままだから」
「──え」
私にはお姉ちゃんの言葉がわからない。
よくわからない感覚。わからない、何がわからないんだろう。頭が白いからわからない。
でも、違うし違くないし、わからない。
私は変態さんじゃない。お尻で、お尻の穴で気持ちよくなるような変態じゃない。
だから、違う。違うんだ。お姉ちゃんが言ってるみたいに、私がえっちなのとは違うはずだ。
でも、でも指、指。
指がない。今、私の中にお姉ちゃんの指がない。
それだけで、とても苦しくて、切なくなる。
「ご、ごめん、ごめん。ちが、違くはないけど、ちがうの、違うんだよお姉ちゃん」
「うんうんそうだね。違うんだよねぇ」
そうしてお姉ちゃんは私の足元に置いていた色々な荷物、というか用意していたタオルとかを片付けようとする。
なんで、なんで。だから、だから違うって言ってるじゃん。私が悪い、私が悪かったって言ってるじゃん。……言ったっけ、わからない。でも、でもこんな中途半端なところで終わるなんて、いやだ、やだやだやだやだやだ。
「なんで、なんで片付けちゃうのぉ」
「ん? いや、ほら、もう終わりかなって」
「なんで終わりにしちゃうのぉ」
「だってみかんちゃん言ってたじゃん。そろそろお母さんが帰るとか、私はお尻なんかで感じないとか」
「ち、ちがう……、ちがうよぉ」
泣きそうになる。訳が分かんなくて泣きそうになる。苦しくて切ない。心が痛い気がする。でも、そうじゃなくて、途端にお姉ちゃんに見放されたみたいにされているのが、本当に嫌でやだで仕方がなくて。
でも、何が違う、ちがわないんだろう。わかんない。頭が白くなりすぎてわからない。思考がまとまらない。余白がない。さっさとお姉ちゃんに指で触れてほしい。奥深く、私の好きな部分を触ってほしい。それはお尻であってもいい。私はお尻で感じちゃうような変態じゃないけれど、でも、お姉ちゃんがそうしたいなら、別にそれでいい。
「い、いいよ。お姉ちゃんが私のお尻で遊びたいなら、遊んでいいから、ね、ね? ほら、見て?」
私はそう言いながら、自分自身の秘部を指で広げてみる。
愛液や尿に染まって、指で開こうとすると滑って仕方がない。でも、慣れているからどういう風に押さえれば広がるかわかる。大陰唇のふちを抑え込んで、それでくぱぁ、と広げるように。
「ね、ね? ぱくぱくしてる、してるでしょ。私、お姉ちゃんが欲しい。お姉ちゃんが欲しいの」
「……」
「いっぱい、いっぱい指でかき回してほしい。お尻の穴でサンドイッチしてほしいぃ、……んです……」
「……」
精一杯、私にできる精いっぱいでお姉ちゃんのことを誘惑する。これが誘惑になるのかはわからない。でも、素直になりながら猫撫で声でお姉ちゃんに言葉をかける。
「み、見て」
私はそう言いながら、今度は広げていたそれに、自分自身で指を入れてみる。
……足りない。私の指じゃ好きなところに届かない。届くけれど、そうじゃない。自分、自分じゃない指で刺激されたい。お姉ちゃんにだけ刺激されたい。
「ね、ねぇ、足りない。やっぱり足りないよ。お姉ちゃんの指、もっとほしい。ちょうだい、お願い、本当に、大好き、大好きだから──」
ぐにゅぐにゅ、ねちょねちょ。
自分のあそこをかき回しながら、音をどうやって出すか工夫しながら。
──でも。
「──何やってるのみかんちゃん? もうお母さん帰って来るって」
──お姉ちゃんは、そんな私を素知らぬように扱う。
お姉ちゃんの勉強机に置かれていたオイルやローション、タオルはクローゼットの奥まで片されようとしてる。よいしょ、なんてわざとらしい声を出して、本当に終わりです、って私に教えるみたいに。
ふー、と腕を伸ばしながら、まるでひと仕事を終えたみたいに息を吐く。そのまま私のもとから離れるように。
──私のもとから離れるように。ずっと、ずっと?
「やだ、やだやだぁ! やだぁ! おねえちゃんっ! ゆずおねぇちゃん!!」
まだ部屋の中にいるけれど、このままだと本当に私から離れていってしまいそうで怖くなって叫ぶ。
もうお母さんが帰ってくるとかどうでもいい。私がお尻で感じる変態であってもどうでもいい。もうお姉ちゃんが今日私の中に指を入れなくてもいい。
だから、だからお姉ちゃんにはずっとそばにいてほしい。私のそばにいてほしい。私に興味を失くさないでほしい。私に関心を抱き続けてほしい。それは性的なことであってもいいし、姉妹としての仲であってもいい。でも、恋人でいたい。だから、だからお姉ちゃんがそんな風に離れるのは、ずっと離れようとするのは嫌だ。せっかく、せっかくこんな関係になれたのに、それを解消するみたいに離れようとするのは──。
わかってる、わかってるわかってる。お姉ちゃんが私のことを嫌いになる、とか、離れようとする、とか、そんなこと、言ってないしやってもないことはわかってる。でも、不安、不安になっちゃう。一瞬でもそんな風に放置されたらそうなるのかなって不安になる。
「──ごめ、ごめんなさいっ。私が、みかんが悪かったです。うそ、うそついてごめんなさいっ、ほんとうに、本当にごめんなさいっ」
おまんこをかき混ぜながら、私はお姉ちゃんに声をかける。
私の謝罪に、ちらり、とクローゼットで荷物をしまっているお姉ちゃんの視線が触れる。
「なにが、ごめんなの?」
「う、うそついたこと、大好きなお姉ちゃんにうそをついた、そのことですっ」
「どんなうそをついたの?」
「そ、それは──」
建前が心を邪魔する。お尻の穴で感じてる事実が恥ずかしすぎる。お母さんのことなんて正直どうでもよくなっているなんて、そう語るのなんて恥ずかしすぎる。だって、それを口にしてしまったら、私はどこまでも変態になる。変態さんになってしまう。
でも、でも。
「──わたしはお尻の穴で感じちゃう変態さんでしゅっ、お母さんに覗かれてもどうでもいい変態さんですっ、変態、変態なんですっ、うそ、嘘つきました。私、変態だったんです、お姉ちゃんがいないとどうしようもないへんたいなんでしゅ」
「……それで、そんな変態なみかんちゃんは私にどんなことをしてほしいのかな?」
にやり、とお姉ちゃんの口角が緩むのが見えた。
だから、クローゼットにいるお姉ちゃんに、あそこを見せつけるようにして。お尻の穴を広げるようにして──。
「──わたしのあな、ぜんぶめちゃくちゃにしてくらさいっ」
そんな恥ずかしすぎる言葉を、私は恥ずかしげもなく吐き出した。
滅多にいじわるしないお姉ちゃんにそうされただけでパニクッてしまう蜜柑ちゃん可愛い、とてもかわいいよ……。
……それはそれとして、いつかの蜜柑ちゃんも柚子ちゃんにやってたんだけどね。