間に挟む男や女がいたら殺処分するので……。それくらい本気にごっこです。
それを踏まえてご覧ください。
……あと、今回はそのための導入なのでエロないです。
第四十六話
◇
「……さむい」
自室、独りぼっち、ただ暗くて寒いだけの空間。
ヒーターがあるのだから、別にそれをつければいいのに、と自分自身で思っているものの、それでも布団と毛布をかぶって、ただ静かに時間を過ごしている。
本当だったら受験勉強とかをやらなきゃいけない。けれど、そのための気力というものが今の私にはない。だから、あえてヒーターをつけずに布団にくるまって、勉強できない理由を勝手に作り出すことを選択している。
「……はあ」
どうしてこうなったんだろうなぁ、ってここ最近で何回考えたことだろう。
──あの私から吹っ掛けた喧嘩から、もう三週間ほどが経過してしまっている。
その間、姉妹の空気は冷めきっている。冷めきっているというか、私が柚子にちょっかいをかけなくなっただけの話ではある。
それでも柚子は何度も部屋の扉をノックしては私の名前を呼んでくれるけれど、それに付き合う義理はない。なんというか、誠意というものを感じないし、私がしてほしい行動を理解していてなお行動していないのだから、それまではもう関わらない、と心に強く決めた。
その結果がこの三週間である。
今までは毎週、というか三日に一度以上は営まれていたえっちも、一切することはなかった。
いつか柚子にしたみたいな禁欲状態に少しだけ似ているような気がする。……まあ、今回の場合は二人でやらなくなった、というだけの話で、別に各々で性欲を発散できる。
ちなみに、私はそういった行為は自分でもしていない。
なんというか、する気が起きない。
ずっとお姉ちゃんのことばかりを考えていて、どのタイミングで許してやろうかな、とかを考え続ける。でも、朝とか夜、無遠慮に普通の顔して話しかけてくる柚子の姿を見ると、途端に苛立ちが吹き返して、それで結局仲直りというものができていない。
柚子はそれをずっと気にしているみたいだけれど──。
『──ぁっ、ぁぁ、んっ』
──気にしていてもオナニーはできるんですか。はー、そうですか。
……と、私の気持ちなんかも無視して、一人でハッピージョブできるくらいには順風満帆な生活、性活を送っているらしく、なおさら許す気なんてなくなる。
というか、これ、ほとんど毎日オナってんじゃん。
なにそれ、意味わかんないんだけど。あてつけ? あてつけってやつですか。あー、はい、そうなんでしょうね。私とえっちできないけれど、別に私なんていなくても気持ちよくなれるからー、って、それを行為で示しているわけですか。そうですか、だとしても私の部屋に届くくらいの声を出していちゃ、家族みんなに気づかれると思いますけど。まあ、別にどうでもいいけど。
「……はあ」
本当、嫌になる。
こういうときの自分の性格も、こういうときに普通に過ごしている柚子の姿にも、全部全部嫌になる。
……正直、自分が悪いな、とは思っていたりはする。
そりゃあ女性同士で、姉妹同士でそんな恋愛関係をいきなり両親に告白する、とか、そういうのは難しいよな、ってちゃんとわかっていますとも。
でも、それでもいつかは話さなきゃいけないことだとは思っていて、そのような姿勢が柚子から見られないのが、いつまでも腹が立って仕方がない。
そしてこの三週間で、柚子は私を気にしているふりをして、それで勝手にオナニーを繰り返している状況。ここで私が求める行動とは、少しでも関係を前に進めるために、いろいろと両親にさらけ出すことなのに、未だに彼女は行動しようとはしていない。
結局、柚子にとってはそんなもんなのだ。あれだ、セックスフレンドってやつなんだ。
……フレンド? セックスシスター? ……どっちでもいいか。
そして私も、そんな行動を求める自分が嫌になる。柚子には無理だろうなってわかりきっているのに、それでも彼女が行動を起こしてくれるまで許す気になれない自分が嫌になる。
どこかで妥協をして、きちんと仲直りをしたい。それで、溜まりまくっているこの性欲を発散したい気持ちもあるし、真正面からこの関係性に向き合って、さらっと心の中のモヤをなくしたい気持ち。
でも──。
『──イく、イくぅ──』
やっぱり平然とオナニーされていると、どうしたって仲直りする気にはなれない、というループです。
「……マジでどうしよ」
布団の中、酸素が薄くなっている中で、誰にも聞かれないようにそんな独り言を呟いてみる。
なんというか、独り言を呟く癖が最近になって出てきた。以前までは、なんなら柚子とえっちをするまででも、そこまで独り言を呟くようなキャラじゃなかったのに。
ぜんぶ、ぜんぶ柚子のせい。……まあ、私も悪いとは思うけれど。
「なんとか、お姉ちゃんを沼らせたいんだけどなぁ……」
今までは肉体的に沼らせていたけれど、今回の場合は精神的に。
だって、精神的に同性愛、姉妹愛を受け入れていないからこそ、現状のような感じになっているわけで、なんとか精神的に、私へと沼らせたい気持ち。
……でも、方法とか思いつかない。そんな方法があったら、とっくにお姉ちゃんは私の腕に抱かれてるか、私が抱かれているかしているわけだし。
「はー……」
布団から脱け出して、薄い酸素から脱却する。
少しの爽快感、それでも感情が晴れることはない。
こういうときは一発、柚子が今しているみたいにオナニーでも決めてスッキリすればいいのかもしれないけれど、こうなったら意地、お姉ちゃんと仲直りするまでは、その指を秘部に入れたくない。
というか、正直お姉ちゃん以外の指とかもう入れたくないし。
「……」
そう思いながら、私はぼうっと枕横においてある充電済みのスマートフォンを手に取ってみる。
オナニーなんてしない、とは決めてはいるものの、それでもブラウザーにはそういったエロ系統のブックマークが増えてきている。いつかこれで発散するんだー、とかそういう気持ちで溜めたブックマークの数々。なんとも意味のないエロの塊。
そのうちの一つを開いてみて、そのページからサイトのランキングを表示してみる。
……やっぱ百合ものって少ないんだよなぁ。女性向けって、なんかイケメンの男子に徹底調教される系統のやつが多いけれど、私はそういうのに惹かれないし。
そういう暇つぶし。エロサイトから現状を打開する何かなんて得られるわけもないのに。
「……略奪、ねぇ」
そうしてランキングを一個ずつ拝見していくと、やたらと略奪系、……俗に言うと寝取られ系? みたいなやつが多いことに気が付く。
「自分のものを誰かにとられるって、そんなの嫌でしかないじゃんね」
ぶっちゃけお姉ちゃんと今は喧嘩しているけれど、そんな喧嘩をしている最中に柚子が他の男や女と付き合ったら、その対象者をぶち殺すくらいの自信がある。それくらい寝取られという概念についてはよくわからないし、嫌い。だって、普通に浮気じゃんか。
「……」
──もし、私が誰かにとられたら、柚子は反応してくれるのかな。
「──」
いやいやいや、無理無理。マジで無理。振りとかじゃなくて、想像するだけでも気持ち悪い。
父さん以外の男とか関わらなければ一生それでいいと思っているくらいに興味ないし、女に関しても柚子以外を対象にするとか難しい。
というか、結局ブックマークに溜めてもオナニーできていないのは、柚子以外のことを考えたくないからだし。……かといって、前とった柚子の動画で致すのも負けた気がするからやれないんだけどさ。
「……でも」
──もし、私が誰かにとられたりしたら、柚子はどんな反応をするんだろう。
相手を殺す、とか? ……柚子の性格から考えれば絶対にそんなことはないけど、なんか私に対して独占欲とか覚えてほしいな。殺す、とかはなくても、なんというかあの柚子が本気で怒って、それで他人をぶん殴って成敗するくらい……。いや、全然想像できないな。
「……」
でも、だからこそ気になる。想像できないからこそ気になってしまう。
というか、これでお姉ちゃんの気を引くことができるのではなかろうか。気を引くというか、それ以上に、お姉ちゃんが私をどう思っているか、ということがはっきりするんじゃないだろうか。
ただの性欲処理としての妹として見ているのか、それとも恋愛対象として私という存在を見ているのか。
「……」
ただ、他の人に抱かれるとか嫌すぎるんだけど。マジで気持ち悪いが?
なんか前見たことある漫画とかだと、ビデオをとって、それを寝取られている本人に送りつけるとか、そういうのがあった気がするけれど、それを私がやるとなると、普通に無理過ぎる。
「……」
なんとか自作自演して試せないかな。……でも、ビデオだと後ろに誰かがいないとすぐに嘘だってバレるし。
──音声でやってみちゃう?
あっ、結構いいかも。私、声とか変えるの得意だし、ちょっとお姉さん系の声とか出してみて──。
「──あ、あー」
試しにちょっと低くしてみた自分の声を録音して、それを聞いてみる。
『あ、あー』
──やばい、これ、マジでいけちゃうやつだ。
そうして聞こえてきた私の声は、どこか艶のあるOLお姉さんのような雰囲気がした。自分の声とかあんまり好きじゃなかったけれど、でもこうして自分じゃない風に演技をした声を聞いてみると、なんかいけそうだし、だいぶとありかもしれない。
「……これなら」
お姉ちゃんに対して仕掛けることもできるし、実際には私が一人で演じているだけだから、そういった寝取られとか浮気とか、そういうやつには全然ならない。
なにより、本当に全部自分で自演するから、単純にオナニーをしていた、というオチで片づけることが出来る。
……自分自身でオナニー? ナルシスト入り過ぎでは?
と、一瞬だけ思ったけれど、そこはいい感じに柚子でオナれば問題はない。とりあえず私がオナって喘いでいる声に、それっぽくさっき演技したみたいにOLお姉さんの声を入れれば、寝取られ音声テープは完成するのではなかろうか。
これで、柚子の反応が見れる。
「……と、今日いきなりやってもリアリティは生まれないから──」
とりあえず決まった方向性から、確実にお姉ちゃんを追い込むための計画を立てる。
計画というか、自分の演技力とかの相談。ただオナニーをして、なんか寝取られているだけの演技をしても、柚子ならもしかしたら見抜くかもしれないし。
あ、そうだ、あとは台本、台本とか作ればいいんだ。台本を作って、それで本気の演技というものを録音して、それで柚子に聞かせて──。
「わ、ワクワクが止まらなくなってきたぜ……」
私に創作力があるかは微妙なところではあるけれど、別に時間なんて山ほどある。なんなら今禁欲しているエネルギーを全部創作に向けて、それを発散すればいい。
そして、柚子を、お姉ちゃんの反応を見る。見るだけに収まらず、私だけに独占欲を働かせるように仕向けて、絶対に私との関係性を公にできるぐらいにずぶずぶにしてやる。
「ま、待ってろよぉ……」
既に隣からは聞こえなくなった柚子の声に立ち向かうように、そんな独り言を呟いてみる。
とりあえず明日から寝取らせ音声を作るための行動を、私は開始することにした。
蜜柑ちゃん……、勉強も大事だぞ……。
それはさておき、これでごっこだということが確定しましたね。
みんな、本当に安心してくれ、ごっこ以外は書かないから。
断じて純愛派だから。