微エロくらいの内容となっております。
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「んっ、んんっ、あぁ、あっ──」
──どうして、来てくれないの?
私は自分の秘部をかき回すように指でなぞりながら、普段なら抑えている声を、わざと大きく出している。
くちゃくちゃ、と大げさなくらいに、泡立つように秘部に触れては、その刺激に声を出す。それは自然とした声ではあるけれど、抑えなきゃいけないものをわざわざ出している時点で、不自然なものには変わりなかった。
「──みかん、みかん、んっ、みかんちゃ──」
──蜜柑が私とえっちをしなくなってから、もう四週間も経過してしまった。
それまでの間、私たちの仲は進展しなかった。
肉体的な接触というものもないし、この前までは姉妹らしくありふれていた会話だってあったはずなのに、そのひとつでさえもなくなってしまっている。
だから──。
「──しゅき、しゅきしゅきっ、しゅきなのっ」
──だから、私はわざと彼女を呼び寄せるように、隣の部屋へと聞こえるように、ひたすらにオナニーを繰り返している。
普段でもここまでオナニーをした経験はない。そもそも性的なことに興味がなかったというか、そこまで知らなかったし、やる気にもならなかった。
けれど、今では毎週やっていた性行為もゼロになって、満たされない体に喘ぐことしかできない。
「──ねぇ、ねぇっ! おねがいっ、おねがいっ──」
そうして私のアソコをかき回してくれる蜜柑の指を想像しながら、彼女なら届いてくれる奥の場所を、その前後をなぞることを繰り返している。
それでも、指は思うように届いてくれない。体勢を変えれば、きっと奥に届いてくれはするんだろうけれど、これはそういう問題でもない。
「──みかん、みかんっ、みかんちゃんっ──」
ただ、私を愛してくれる指を、──ううん、そうじゃなくて、私を愛してくれる彼女を求めて。
私はそれでも来てくれない彼女の名前を呼んでは、むなしく自分を慰めることしかできなかった。
□
それは、私が悪かったのだと思う。
「──なんでお母さんにバレちゃいけないわけ?」
二人きりのお風呂場。すぐそばには誰もいない空間の仲、蜜柑は私に怒りをぶつけるように声を吐き出していた。
「だ、だって、そんなこと言えるわけ──」
「いや、まあわかる。わかるけどさ。でも、いつかは言わなきゃいけないんだし、いつかはバレることじゃん。ほぼ家にいるときにはえっちなことをしているわけだし、お母さんじゃなくたってお父さんとかも察するときが来ると思うけど」
「……それは」
私は蜜柑の声に窮してしまう。
彼女の言いたいことはわかる。わかるけれど、それを素直にお母さんへと伝えられるかと言われれば別問題でしかない。
女の子同士で、それも血のつながっている姉妹同士で、こんなことをしているなんて知られてしまえば、それだけで私たちの関係は終わりを迎えてしまうかもしれない。
別に、私はどうなってもいい。なんで姉が妹を性的な目で見ているのか、とか、姉がどうしてそんなことをしているのか、とか、糾弾されても別にいい。本当にいい。
けれど、怖いのだ。
私が糾弾されるだけならまだしも、まだ中学生の彼女が迷惑を被る事態は避けなければいけない。それこそが私が姉として彼女にやれることであり、それ以外を選択してはならない。
もちろん、両親の悲しい顔だって見たくない。別に両親は厳しいわけじゃない、すごく優しいことを私は知っている。けれど、それでも私たちがこんな関係だって知っていたら、絶対に悲しんでしまう。素直に祝福をされる関係ではないのだ、私たちは。
女性同士のこういう関係を、私は問題だとは思っていない。もうずぶずぶに結ばれてしまった蜜柑の関係を踏まえて、世の中にはそういった人がいることをよく理解したし、もう私自身もそういう性の持ち主であることを理解している。
けれど、世間の目というものが存在するのだ。それを密かに営む分には問題ないけれど、どうしたってそれを公にする選択をしてしまえば、確実に辛い未来が蜜柑の身に降り注ぐことを、私は容易く想像することができてしまう。
だから、私は母に対して口を噤んでしまった。
誤魔化してしまった。
蜜柑と二人で一緒にいるお風呂場の状況を、私しかいないように振舞ってしまった。
それが心底気に入らないのだろう。蜜柑は捲し立てるように私を糾弾した。
だから、捲し立てられた言葉に、私は反射的に返してしまった。
『──蜜柑ちゃんとは、今だけの関係だから』
『きっと、蜜柑ちゃんには私以外のいい人が見つかると思うから──』
それは本心からのものではなかった。そんなことを彼女に伝えたかったわけじゃなかった。
でも、心の中には過っていた、確かに過っていた感情、想像、そうであってほしくはないけれど、予感のような気持ちで口に出してしまっていた。
今の蜜柑は思春期で、たまたま女性に対して関心を抱いているだけ。
そんな彼女の身近に私がいただけで、いつかは興味を失って、ほかの人に恋愛感情を持つのかもしれない。
それはそのまま女性かもしれないし、男性かもしれない。
いつだって想像していた、自分が苦しいだけの未来。
それを反射的に返して、そうして呟いた言葉に自分で苦しんでいる。
……うん、きっとそうだ。
きっと時間が過ぎれば、いつかはそんな未来が来てしまう。
蜜柑は、私以外のいい人を見つけて、近親愛というものを正しくないものを捨て去って、正しい未来を歩んでいく。
それは私の願いであり、私の願いたくもない未来。
それでも、過り続けていた未来を、私は口にしてしまっていた。
「──もう、いい」
そして私が並べた言葉に、彼女は声に温度を感じさせない返事だけをして、お風呂場から去っていく。
「もう、お姉ちゃんとは、──そういうことしない」
そんな捨て台詞。きっと、一時的だと思う憤り。
私は、それでもすぐに仲直りができることを考えながら、独りだけ取り残されたお風呂場の、その寒さに身を震わせることしかできなかった。
□
そうして、今である。
「はあ、はあ、はあ……」
自分を慰めるだけの作業を終えて、それでも満たされない快楽や、心の中を思って、ため息を吐くことしかできない。
心のどこかでこういう未来が来ることは想像していたはずなのに、いざ直面してしまえば、蜜柑が恋しくて仕方がない。
けれど、それも仕方ない。想像していたよりも早くそんな未来が来ただけであり、私にはそれを受け入れるしかないのだ。
それでも──。
「──蜜柑ちゃん……」
彼女を求める気持ちは、果てなく強くなり続けるだけなのだけど。
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そんな、ある日のことだった。
□
クリスマスイブの前日。
いつも通りの日課になってしまった自慰行為に励もうと、乱れることはわかっているのに、それでもシーツを伸ばすようにしてからベッドに転がると、そのノックの音は部屋に響いた。
「えっ!」
一階から上ってきた足音はしなかったし、そもそもこんな夜の時間に両親は私たちの部屋にはやってこない。
だから、自ずとそのノックをしているのが誰なのかということがわかってしまって、うれしくて大げさなくらいに反応してしまう。
「み、蜜柑ちゃん?」
それでも、一応確かめることを忘れないようにして、ベッドの上からゆっくりと起き上がる。
「……うん」
そして、私が予想していた通りに蜜柑ちゃんの声が返ってきて、私は急いでドアのほうへと向かっていく。自分でもここまでテンションを高くしているのはおかしいな、とか思いながらも、それでも跳ねてしまう衝動を抑えることができなかった。
ぎぃ、と蝶番の軋む音を聞いて、それからドアの先にいる蜜柑の姿を確認する。
「み、蜜柑ちゃんっ!」
都合のいい未来を想像してしまう。それがひどく自分勝手であることは理解していても、それでも彼女が私の部屋に来てくれたことが心からうれしく感じて、夜なのに大きな声で彼女の名前を呼んでいた。
「……テンション高いね」
そんな私を嘲るように、彼女の視線はどこか凍っていたけれど。
「そ、それで、どうしたの?」
浮つく気持ちを抑えながら、私は蜜柑をベッドの上に座らせて、自分は学習机の椅子に座り込む。視界の片隅に彼女の姿をとらえながら、どのような用件で彼女が来てくれたのかを確認した。
「いや、……えっと」
気まずそうにしている蜜柑の姿。
……まあ、そりゃあ気まずいよね、という気持ち。
私たちは四週間ほど関わらなかったわけで、そして蜜柑が私を無視していたわけで、いきなり部屋に上がってくるのは気まずいと思う。
でも、私はそんなことなんて気にしない。ただ、彼女が来てくれたことがうれしくて、どこかルンルンとした気分で彼女の顔を見ていた。
な、仲直りしたい、とかかな。それとも、もう我慢できなくなっちゃった、とかなのかな。私の身体で遊びたい、とか?
……と、そんな都合のいい妄想を広げては、蜜柑の愛おしい顔を覗いて、その言葉の続きを待つ。
そして、蜜柑は言った。
「──明日、時間、ある?」
──やった、と私は思った。
「あ、明日? 明日って、クリスマスイブ、だよね」
「うん、クリスマスイブ」
「う、うんっ! ぜんぜん空いてる! そ、そもそも私、あれだから、みかんちゃんのために空けてたから──」
「──あ、そう、……なんだ」
ウキウキで返してしまう自分の声音が愚かしい。愚かしいけれど、そうしてクリスマスイブの予定を聞いてくれた蜜柑にうれしい気持ち。
……それはそれとして、蜜柑の声音がいつまでも気まずいままというか、冷たい感じがするのは苦しいけれど。
「明日、お父さんとお母さん、出かけるんだって。だから、夜、空けてほしくて」
「ぜんぜんだいじょうぶっ! もう冬休みだし、部活とかももうないし! ずっとおうちいるよ──」
「──あっ、私はちょっと予定があるから、おそらく十時くらいになると思うんだけど」
「……十時?」
夜の? と聞けば、うん、と蜜柑はこくりと頷く。
「あ、あー、そうなんだ。……もしかして、友達と遊ぶ、とか?」
「……まあ、そんな感じ、かな」
わかんないけど。
そう蜜柑は付け足していくので、なんかよくわからない不安が重なる、けれど。
「と、ともかく、明日の夜は、私と一緒にいてくれる、ってことでいいんだよねっ、ね?」
「……まあ、うん。それで、いいよ」
「……そ、そっか」
どこまでも反応がぶっきらぼうで、冷たく感じる。
それでも──。
(──ようやく、仲直りできるんだ)
それも、聖夜に仲直りができるんだ。
きっと蜜柑はこの日にこそ私と結ばれたいんだ。
いろいろ喧嘩っぽくなっちゃったけれど、それでも私と仲直りしたいんだ。
そうだ、だから照れくさくって、反応も素っ気ない感じなのかも。
「わかった! じゃあ、じゃあ明日は、私、ずっと待ってるから!」
「……うん、よろしくね」
「うんっ!」
彼女の声に元気に返事をすれば、それを合図に蜜柑はそっとベッドから立ち上がって、ドアへと歩いていく。
そして、ドアを後ろ手に閉めようとしたとき──。
「──それで、終わりだから」
「──え?」
終わり? 何が終わり? 喧嘩が? ……この関係が?
そんな不穏としか思えない言葉に、私の心臓に棘が巻かれたような苦しさを抱いてしまう。
がちゃっ、とドアは閉まって、足音は遠ざかっていく。
でも。
「け、喧嘩が終わり、ってことのはずっ」
言い聞かせるように、私はそんな独り言を呟いては、今日の日課はやらないことを決めてベッドに転がった。
蜜柑「──それで、終わりだから(喧嘩もそうだし、自作自演のオナニーも)」
という意味合いで彼女は呟いています。普通に本心だけど、不穏な演出としてぴったしなセリフですね。