これまで、少なくとも俺は吸血鬼は三人と出会った。
その三人の誰もが普通の人間では決して勝てない。
それ程の力を持っていた。
だからこそ、俺は命懸けでキスショットと契約する形で自分の身を守ろうとした。
だが、その結果。
「はぁ、家に帰りたい」
「えっと」
眼前でこれ程やる気のない吸血鬼は見た事ない。
なぜ、吸血鬼かと思ったのか。
その理由としては、その容姿は、キスショットと似た要素が多く見られる。
「・・・あのぉ」
直感ではあるが、とりあえず話しかける。
「・・・うわぁ!?嘘!あっさりと見つかったぁ!」
俺が話しかけると、彼女は驚いた様子だった。
そしてすぐに立ち上がる。
そのまま、彼女は、俺の方を見る。
「えっと」
「あっえっと」
何やら、慌てた様子で、あたふたしているのも少しの間。
少しだけ息を吸うが。
「わっ我が名はテラコマリ・ガンデスブラッド!我が一族の名において、吸血鬼の王であるお前を、我が一族の「あぁ、連れ去るというのか」ごめんなさい、許してください」
目の前にいるテラコマリが、自己紹介をして、まさしく威厳のある態度で言う。
だが、その途中で来たキスショットの睨みと共に、すぐに土下座をして謝ってきた。
「えっえぇっと」
「ほぅ、あの一族が、儂の得物を狙うという訳か」
「いえ、滅相もございません。ただ、少しだけ血を分けて頂くて。その、私自身じゃなくても良いので。本当に、ちょびっとだけでも」
「駄目だな」
「ですよねー」
キスショットの言葉に、がっくりと項垂れるテラコマリ。
しかし、そんな彼女に対して、キスショットが言う。
「それで、その一族がなぜ、儂の所有物を」
「いやぁ、私も大変不本意でしたけどねぇ、一族の命令で、この日本に行かされてしまったんですよ。正直に言うと、血とか苦手で、普段は親戚のドラルク叔父さんと一緒に対戦ゲームをしているぐらいで」
「血が苦手な吸血鬼って、いるんだ」
そのテラコマリの発言を聞いて、俺は思わず突っ込んでしまう。
対して、テラコマリは。
「いやぁ、だって、生臭いもん」
と言ってきた。
まあ確かに。
血液というのは独特の匂いがある。
けど、まさか吸血鬼の中で、苦手な奴がいるとは、予想外だった。
「ふむ、まぁ、こいつを狙わないんだったら、別に良いが」
「ほっ本当ですか!」
「けど、そういう風に命令された以上、知られたら、一族から刺客が送られるんじゃないのか。お前の暗殺も含めて」
キスショットの、その一言。
それを聞くと、テラコマリの顔は青くなった。
ふと、振り返ると、こちらを見ているカラスが一匹。
カラスは、そのまま、バサバサっと飛んでいく。
「・・・あれって、もしかしていわゆる使い魔的な」
「ああぁぁぁぁっぁぁ」
俺の言葉が正解なのか、テラコマリは、その場で四つん這いになってしまった。