俺が蚊帳の外になってしまう。いや、違うな。
そもそも、蚊帳の中にさえ入っていないのだ。
俺はただ、蚊帳の外側で、見ていることしかできない。
見ることさえ、許されない。
キスショットが成長した姿になった事で。
その手に持つ刀。
それが周辺の建物の被害など構わずに振り回される度に、コンクリートの壁が割れて、ガラス窓が砕けて、鉄筋のビルさえも切り裂かれる。
それを受け止めるのは、もちろん、テラコマリだ。
先程の戦いで見えた圧倒的な力。
それでキスショットの刀を正面から受け止めた。
だが、それでもテラコマリには勝てる要素はないように見える。
「カカカッ、潜在能力はさすがと言った所だろう!けれど、いまだにそれが慣れていない事が、命取りになるぞ!」
「・・・」
しかし、キスショットの攻撃を真正面から受けながら、テラコマリは無表情だった。
無言のまま、戦いを眺めていた。
それは、まるで他人事のように。
自分とは関係ない事だと言わんばかりに。
キスショットが飛び退くと、一瞬遅れて、地面が大きく抉れた。
それを見ながらも、やはり表情は変わらないまま、彼女に俺は。
その声はとても冷たく、感情の起伏を感じさせない、そう、まるで機械のような。
彼女に。
「止めろ、二人共」
そんな声をかける事しかできなかった。
俺の言葉に二人は動きを止めると、こちらを見た。
「ちっなんじゃ、そんな風に言われても、止まる訳が」
そう、キスショットは、そのままテラコマリの方に目を向ける。
だが、その時の彼女は、まるで戦意を失ったように、気絶した。
「・・・なんじゃ、つまらん」
その言葉と共に、キスショットは、その身体を元の少女の姿へと戻る。
「これは一体」
「さぁな、だが、お主の言葉に応えたとでも考えても良いんじゃないか?」
キスショットは、それだけ言い、姿を消した。
そんなキスショットを余所に。
俺は彼女を、テラコマリを抱き抱える。
「大丈夫か、テラコマリ?」
俺は、気絶しかけているテラコマリに問いかける。
だが、テラコマリは気絶しており、返答はなかった。
「さすがに、このまま放っておく訳には行かないよな」
そう言って、とりあえず彼女を背負いながら、家まで運んで行く事にしたのだった。
背中に感じるテラコマリの体重は、とても軽かった。
けれど、確かに存在する重さを感じながら、歩いて行った。
先程までの圧倒的な力で吸血鬼を蹂躙していた少女とは思えない程に。
「・・・これからも、こんな事が続くのかな」
そうして、俺が見たのは。
先程までの戦いが行われた現場だった。