生き残った夜から一日が経った。
一日の内に、たった数時間だけだったかもしれない。
だけど、これまで命の危機など感じた事のない俺にとっては、それはあまりにも疲労が溜まるのには、十分過ぎる出来事だった。
家に帰った後の記憶はなく、ベットの上でぐったりと寝込んでいた。
だから、既に昼頃になっていたのに、気づいていなかった。
「はっはは、本当は夢だったりしないのかなぁ」
俺は部屋の中で、思わず笑みを浮かべながらも呟いてしまう。
もしも、あの出来事が夢だったら、どれだけ気が楽なのか。
最も。
「そんな都合の良い考えは早くに捨てる事だな」
「っ」
俺に話しかける声。
見ると、俺の部屋にある椅子に座っているのは、キスショットだった。
「やっぱり、夢じゃなかったのか」
「あぁ、そうだな、それにしても」
そう、椅子の上で、俺の方を見つめる。
その目はまるで興味深い物を見るように。
「吸血鬼の王の噂を聞いていたが、まさか、ここまでの力を持っているとはな」
「どういう事?」
キスショットの言葉。
それに俺は思わず疑問に思った。
だが、キスショットは、そのまま俺の方に近づく。
「吸血鬼にとって、太陽の光は数少ない弱点の一つだった。それを克服しているのは、始めから人間と吸血鬼のハーフぐらいしかいなかった。
だが、お前の血を飲んだ儂は力を取り戻すだけではなく、こうして太陽の下で活動する事も出来る」
そう少女の身体で、キスショットは俺の方に近づいてくる。
そして、俺の首筋に顔を近づけると……
ペロッ! っと、首筋を舐めた。
突然の行動に、俺は動揺する。
すると、キスショットは顔を上げて言った。
ニヤリとした笑みと共に。
ペロリッ!! 今度は唇で、首を舐めてきたのだ。
それはまるで犬のように。
「きっキスショット」
「あぁ、にしてもヤバいのぉ♡これは」
そう、俺の身体を舐めていた。
「血は極上だと知っているが、まさか汗も何もかもが甘く感じるとは思わなかったぞ」
そう言って、キスショットは再び、舌を出して、俺の首筋を舐める。
先程よりも強く、長く。
その行為によって、俺の顔が赤くなる。
「おっおい!」
「ん?どうした?嫌か?」
「そんなのっいきなりこんな事をされたらっ」
「カカカッ、童貞にはちとキツかったか?」
「それは」
俺は反論する事は出来なかった。
命の危機に、必死になって逃げている間に。
自然と、そういう事を思ってしまったかもしれない。
「吸血鬼の王は極上の餌というのは、嘘ではないな。ならば」
そう、キスショットは、俺の胸元を掴むと。
強引に、自分の方へと引き寄せた。
ドサッ! キスショットは、俺を押し倒すように倒れ込む。
俺は地面に仰向けになり、その上にキスショットが乗る形になった。
つまりは、俺が押し倒されているような形だ。
しかも、キスショットは両手で俺の腕を押さえつけており、全く動かせない。
その状況の中、キスショットは言った。
「血というのは極上では間違いない。だがな、お前の全てが極上という事で、試したい事が出来た」
「試したいって、何を」
「カカカッ、淑女の言葉から出させるのか、けど、もしもこれが上手くいけば、儂は助け続けるかもしれないなぁ」
そう言うと、キスショットは…………ッ!? そして、キスをした。
キスショットからの口づけだった。
しかし、それだけではなかった。
キスをしながら、彼女は口を開けていたのだ。
そして、彼女の舌が俺の中に入ってくる。
「んっ!?」
突然の事に驚きながらも、それでも抵抗する事は出来ない。
全身に電気が走ったかのように、体が震える。
何が起こっているんだ!? どうしてこうなった!?
いや、むしろ抵抗しようという考えすら浮かばなかった。
そんな暇もなく、ただ受け入れるしかなかったのだ。
キスショットはそのまま、俺の口の中に唾液を流し込んでくる。
その味は甘美で、頭がクラクラしてくるような物だった。
それが喉を通る度に身体が熱くなり、力が抜けていくような感覚に襲われる。
そうして、数分の間続いただろうか。
ようやく口を離すと、互いの口に銀色の橋がかかるのが見えた。
「ぷはぁ、唾液でもこれとはなぁ」
「キスショット」
「あぁ、本当に、魅了されるとはこういう事かのぉ♡」
その言葉に俺は、呆然と聞くしかなかった。