身体は、完全に縄によって拘束されている。
周囲の、部屋を見ても、ここがどこなのか分かる手掛かりがまるでない。
何よりも、目の前にいる紅さんから、逃げる自信がまるでない。
「詰んだ」
「それは、私に殺されるような事をした自覚があるからか」
俺の一言を聞いて、紅さんは質問する。
それに対して、俺は少し考えた後。
「その、そもそも、俺をここに捕らえたのは、俺の血。吸血鬼の王だからじゃないんですか」
「それも確かにあるな」
そう、決して否定をせずに紅さんは頷いた後。
「だが、私が聞きたいのは、その力を使って、何をしたいのか。それを知る為でもある」
「・・・何をしたいのか」
その問いかけに、俺は言葉が止まってしまう。
何をしたいのか。
どう答えれば正解なのか。
そんな事を考えるよりも先に思った事として。
「俺自身、望んだ力じゃないですから。何よりも、これは力というよりも、ただの餌になる為の力というのが、正しいんじゃないですか」
これから先。
俺は吸血鬼の王という名の餌。
それが決められたような人生を歩まなければならない。
それで、何をしたいのかと問われても。
嘘偽りのない言葉で、紅さんに言うと。
「そうか、では、君が今、関わっている吸血鬼。彼女達から離れる事を条件に、保護されるつもりはないか」
「えっ」
その提案は、俺にとっては予想外の事だったからだ。
「君の吸血鬼の王の血は、確かに吸血鬼に奪われたら、人類は終わりだろう。
だが、それは同時にこれまで隠れていた吸血鬼達を言い方は悪いが餌となる。
しかし、私が必ず君を守る事を誓おう」
「いや、それは、それで紅さんに何の得が」
「人を守るのが、私の使命だからな」
そう言った紅さんの提案は、俺にとっては蜘蛛の糸だろう。
これを逃したら、きっとこの先の人生に幸福はない。
そう、分かりきっているはずなんだが。
「・・・それって、つまりはテラコマリやトガちゃんは、殺すんですか」
俺は、思わず問いかける。
「・・・二人に関しては、調査を行った。場合によっては殺す可能性はある」
「そうですか」
それを聞いて、俺は。
「テラコマリは、テラコマリで家の事情があって、苦労していました。トガちゃんは、自分の生まれ持った種族で苦しんでいました。だから、二人は」
「・・・なるほど、確かに君の意見も最もだし、私もその方向で行きたいという考えはある」
それと共に、俺に寄り添う。
紅さんに対して、俺は。
「くっ紅さん」
「なるほど、確かに厄介であるが、君の人柄に、私もまた気に入ったからな」
拘束され、身動きが取れない。
故に。
「我慢も出来ないようだ」
それに逃れる術はなかった。