※この作品はR-18です。

吸血鬼の王   作:ボルメテウスさん

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枷

「紅様」

「…あやめか」

 

あの戦いが終わった後。

紅の元に一人の女性が来た。

その女性は、槇島あやめ。

彼女に従う従者であり、今回の作戦で紅の協力者である。

 

「どうしますか、このままあの男を放っておいても」

「そうだな、彼に関しては、暗殺はしない方向で進めようと考えている」

「それは、本気でしょうか」

 

その一言に対して、あやめは驚きを隠せなかった。

 

「なぜですか、吸血鬼の王を放っておけば」

「確かに危険だ。けれど、今回の一件で分かった事が一つある」

「それは?」

 

あやめは、ゆっくりと紅を見つめる。

 

「彼は、既にキスショットの枷となり始めている」

「枷?」

 

その言葉に疑問に思った。

 

「あのキスショットが、殺し合いをして、彼女の大切な人を殺そうとした。そこまでをした相手を目の前にして、彼の言葉で止めた」

「っ」

 

その言葉の意味を理解したあやめは目を見開く。

 

「つまり、それは」

「彼が生きている限り、キスショットは実質、封印されている状態になる。そして、キスショットがいる状態ならば、彼に手を出す吸血鬼はほとんどいないし、殺される」

「っ」

 

その事実に、あやめは驚きを隠せなかった。

 

「それが、本当でしたら、吸血鬼の王の力とキスショットの災厄が同時に防げる」

「あぁ、だが、これはかなり危険な関係だ」

 

紅は、そのまま続ける。

 

「キスショット自身がそれに気づいてしまえば、それを自ら壊す可能性がある。そして、彼が殺されれば、その時点でキスショットは、世界を破壊する存在となる。それを考えれば」

「彼を殺さない事が最優先事項になる訳ですね」

 

紅は、それに頷く。

キスショットが脅威である事を考え、最初は彼女を殺す事を考えていた。

幸い、吸血鬼の王の力があれば、紅の力を高めて、倒す可能性があった。

しかし、それを叶う事は出来なかった。

だが、それ故に見えた可能性でもあった。

 

「それを考えれば、任務の難易度は大きく上がりますよ」

「…分かっているわ」

 

そう、呟く。

 

「奴が、既にここに向かっている事が」

「えぇ」

 

同時に頷く。

 

「奴が、ここに来れば、彼の血を奪われば、この世界は終わってしまいます」

 

あやめの言葉と共にその吸血鬼の名を呟く。

 

「雅、奴に決して彼の血を奪われてはならない。それを考えれば」

「えぇ、最強の吸血鬼に対抗するには、皮肉にも同じ最強の吸血鬼しかいない」

 

そうして、紅は、そのまま月を見つめる。

 

「無辜の民の為にも、そして何よりも私の命を救ってくれた彼の為にも。私は、この命を懸けて戦う。だからあやめも」

「本当に、紅様は」

 

そう呟きながら、見つめた先。

そこにいた紅の頬が赤くなっていた事にあやめは見逃さなかった。

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