吸血鬼に狙われる生活。
それは慣れれば自然と油断があるのだろう。
けれど、これまで幾度となく、命の危機があった。
だからこそ、油断をしてはいけない。
それを理解していたはずだった。
けれど、その認識は甘かった。
俺を狙っているのは、吸血鬼に関連している奴らだけだと。
そう考えていた。
けれど、俺は、俺自身の価値を、あまりにも知らなすぎた。
「どうでしょうか、雅様!」
その言葉と共に、俺は、俺を攫った人間に抑えつけられながら、献上しようとしている男に向けられていた。
昼間、油断はなかったつもりだった。
警戒しているつもりだった。
ただ、太陽の陽が当たっている所で、道を尋ねられた。
だからこそ、俺は、親切心で案内する事にした。
けれど、それが裏目だった。
「ほぅ、確かに、そいつが噂に聞く吸血鬼の王である事は間違いないようだな」
響く声。
同時に、身体の底から凍るような感覚に落ちる。
寒いわけではない。ただ恐ろしいのだ。それだけだ。目の前にいる男は、人ではないと思えた。人の形をしているけれど、中身は全く別物なのだと思うことが出来た。恐怖による寒気以外の何者でもない感覚が、全身を支配した。
「くくっ、そんなに怯える必要はない。私が望むのは血だ。そして、永久的な絶対的な地位。それを得る為には、お前に死なれては困るのだから」
そう言った奴は、雅は俺に問いかける。
「そして、それにはお前が協力的でなければならない。どうだ?お前が言う事を聞くというのであれば、悪いようにはせんぞ?」
そう、こちらに問いかける。もちろん、抵抗しない訳がなかった。
けれど、どれだけ暴れても無駄なのは解っていたし、そもそも今の自分にはどうしようもなかった。
だからこそ、助けを求める事も出来ず……いや、ここで助けを呼んだところで間に合うはずもない事を瞬時に悟ってしまった時点で――、もう詰んでいたようなものかもしれない。諦めてしまう事が最善だとしか考えられなかったんだろうな。
ただ……それでも、俺の心はまだ死んでいなかったようで、
「あぁ、そうかもしれないな、確かに楽かもしれないな」
「よく分かっているじゃないか」
「俺も命の危機はあった。それこそ、何度もな」
「あぁ、理解しているさ」
「だからこそ、言わせて貰うぞ」
「何かな?」
「断る」
その言葉に、一瞬驚いたように見えた。だが次の瞬間には笑っていたよ。あれは間違いなく作り笑いだろうが、まぁ、どうでも良い事だ。重要なのは俺の意思なのだから。
「くくっ、なるほどなるほど!つまり私に協力して生きるくらいなら、死ぬ方がマシという事だな!」
「それも違うぞ」
「なんだと?」
それに対して、雅は、疑問に思ったように俺を見つめる。
「・・・正直に言って、今も嫌になる。けれど」
「けれど?」
「何度も、食べられるとさ、自然と互いに距離が分かるみたいだよ。嫌になるけど」
その言葉を最期に、俺の近くにいた人が斬り裂かれる音。
同時に俺の首筋に痛みが走る。