吸血鬼の王。
そう呼ばれる力がある。
その血を吸えば、吸血鬼にとって、最強の力を得る事が出来る。
だが。
「・・・まさか、お前が血を飲まないとはな」
それと共に、紅さんは、目の前にいるキスショットに向けて呟く。
雅との戦いが終わった後、元の日常が戻ってきた。
その日常の最中で。
その質問をキスショットに尋ねた。
「カカカカッ、何を言うかと思えば、血は吸っているだろ、幾度となく」
「そういう意味ではない」
キスショットがはぐらかす言葉に対して、紅さんは睨みながら呟く。
「全盛期以上の血を吸える事も出来るはず。あの時、あの瞬間でも」
「あぁ、出来たかもしれんの」
「だったら、なぜ」
紅さんは、そう疑問をぶつける。
その答えは。
「味変と言っても信じるか」
「味変だと?」
その答えは、答えになっていなかった。
しかし、キスショットは続ける。
「長い長い時間を、生きてきた儂にとっては、あやつと一緒にいる時間は新鮮じゃった。ただの食料としか見ていなかったがな」
それは、これまでの態度とは変わらなかった。
今は、全盛期の姿ではなく、幼い姿である。
それでも、そこから出ている迫力に、警戒を続ける。
「だが、奴と過ごしている間に、様々な変化があった。恐怖を抱きながらも、様々な感情の変化。それらは、血を吸う度に、変わっていく」
「まさか、それを味わう為に」
「そうじゃよ」
「・・・ふざけたことを!」
その一言に、紅さんは思わず怒鳴ってしまう。
それだけの怒りを感じた。
「ふざけているか、まぁそうだな確かに不真面目なことをしたかもしれない」
しかしキスショットはその様子にも動じなかったように言った。
「だが、儂にとっては、それが生きるのに一番重要な事だからのう」
「どういうことだ」
「長い時間を生きる。それは吸血鬼にとっては退屈である。他の奴らは強さを拘るが、既にその頂点にいる儂にとっては退屈こそが問題であり唯一の悩みである」
だからこそ彼女は。
「そんな意味では、こいつと一緒にいる日々は儂に、とても充実していたと言えるであろう。今まで感じたことの無い高揚感。自分がまだ生きているのではと思える幸福感」
人間とは比べ物にならない程長く、人間の領域から外れた時間を過ごした彼女はこう言った。
「お前達人間が言う所の時間というものが曖昧になったが故に実感出来なかったものを取り戻させてもらったと思っているぞ」
「・・・ならば、それは、これからも彼を守る。そう考えても良いんですね」
「当たり前じゃ、なんだって、こやつは」
そうキスショットは。
「儂にとっての王じゃからな」
「ッ!?」
そんな、驚きの言葉で終わる
今回の話にて、吸血鬼の王は最終回とさせて貰います。
ここまで、応援してくれた皆様、ほんとうにありがとうございます。