※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

101 / 125
sR【パルデア編/熟練極限バトル】芹沢あさひvs大地のサカキ

 

 単身敵地に乗り込み、多勢に無勢を切り抜けて、ラスト一匹。

 満身創痍の銀髪少女は、最後のモンスターボールを握り締める。

 

 眼前に屹立するはドリルポケモン。陸上怪獣の名はドサイドン。

 その傍らには、大地の首魁が半裸で仁王立つ。

 

(頭が、クラクラする……血が、足りない……流しすぎた……)

 

 頭からボタボタと、粘ついた血溜まりが落ち続ける。

 その代わり思考は明敏となり、今まで沸騰していた憤怒は通り過ぎた。

 

「……冬優子ちゃんを返せ。円香ちゃんと羽那ちゃんも……そして────」

 

 モンスターボールのスイッチを押す。

 飛び出したるは、くっつきポケモン。

 

 高さ0.1mもない極小生物にして、最強の切り札。

 

「果穂ちゃんと────」

 

 昆虫電蜘(でんく)の名は────バチュル。

 

「────ハナワカの仇だ」

 

 白銀の前髪が靡き開かれ、光跡の炯眼が昇る。

 射抜くべき強敵を、切り札と共に睨めつける。

 

 刹那、男と少女の鋭く冷たい声色が交差した。

 殺し合いの始まりだ。

 

「隠匿岩石・砂嵐(撒け)」

「降らせ、雨星(あまぼし)」

 

 怪獣は体内から莫大な岩・地面エネルギーを放出。周囲に隠匿岩石(ステルスロック)と砂嵐を生み出し、特防向上、視界不良。

 

(ドサイドンの種族は特防が低い。その弱点を砂嵐でカバーした────)

 

 電蜘は体内から大量の水・無エネルギーを放出。上空に雨雲を形成し、雨を降らせる。続いて頭上に五つの速射星(スピードスター)を生成し、雨雲に向かって速射。雨雲内を通過したスピードスターは水エネルギーを纏って属性変化、水タイプのスピードスターとして、雨粒より速く降り注ぐ。

 

「鈍化(のろい)、穿(うが)て、備えよ」

「戦術シークエンス・雷速(らいそく)領域」

 

 怪獣は鈍(のろ)く鈍(にぶ)くなる代わり、肉体表面の耐熱強度装甲(プロテクター)を強化、攻防向上。続いて頭上に五発の岩石を射出。鈍速の発射と弾速だが、極限まで訓練された射撃精度は百発百中。五つの雨星を撃砕した。

 

(ドサイドンは片腕に三発装填の生態……だから残弾一発────)

 

 電蜘は複合技に複合技を重ねる。まず口から速射した大量の糸(いとをはく)に電磁波(でんじは)を纏わせて疑似電網(エレキネット)を作成し、戦闘領域に張り巡らせる。続いて蓄電袋から大量の電気エネルギーを取り出し、再び電磁波(でんじは)を発動、電網に流し、電網自体が電荷の放電を阻止、空気の絶縁破壊が起きるほど膨大な高電圧を発生させ、電蜘は電荷のプラス・マイナスを戦闘領域に分布。重力を歪めるほどの圧倒的大規模の引力電線と反発電線を布陣。

 

「岩石砲(壊せ)」

「跳べ、三点着糸(さんてんちゃくし)」

 

 少女疾走、電蜘跳躍。対する怪獣は砂嵐の中、極小生物を見失わず、恐ろしいことに照準を狂わせない。残弾一発しかないはずの両腕から発射された六発の岩石砲。少女の瞳孔と電蜘の複眼は共に動揺する。というのも首魁は先ほど隠匿岩石(ステルスロック)を撒いていた。それは交代阻害ではなく砲弾補充のために撒いておいた、文字通りの布石だった。

 

(さっきのステルスロックを装填していた────!?)

 

 迫り来る陸殺(ろくさつ)砲撃。

 初撃は、少女の疾走前・電蜘の跳躍前、それぞれの地点の中間に着弾、地面爆砕。破裂した砲弾は手榴弾の如く。岩石の破片を撒き散らし、少女の胴体側面に多数被弾。苦悶の声と共に鮮血と肉片が飛び散る。

 一方の電蜘は命令通り一本目の糸を速射、岩肌に付着、糸を吸い込んで高速移動、二発目の岩石砲を躱す。迫り来る三発目の岩石砲に対し、すかさず糸を噛み切って直線軌道を解除、空気抵抗に従ってふわりと浮上し躱す。滞空したまま二本目の糸を速射、地面付着、吸収移動、四発目の岩石砲を躱し、糸切断、下降の軌道変化で五発目の岩石砲も躱す。落下ざまに三本目の糸を速射、怪獣の胴体に付着、高速吸収、最後の岩石砲が糸上に沿って発射されたのに対し、糸を切────

 

「ヅッ……!! Distant Giga Drain(ディージーディー)!」

 

 ────血を吐く少女の朱き叫令。

 電蜘は覚悟した。糸越しに十億吸収(ギガドレイン)を発動。虫エネルギーで編まれた糸を介し、草エネルギーによる巨人(ギガ)級の超巨大吸収を以て怪獣の生命力を喰らい尽くすべく、回避を捨てた。

 電蜘に岩石砲が直撃する。四肢で受け止めるも効果抜群、岩エネルギーの大衝撃が矮躯に駆け巡り、岩石は電網を巻き込んで地面に着弾、電網の一部が火花(スパーク)を散らして大地と共に爆砕、破片爆風が周囲を浚う。

 なおも怪獣の胴体に緑色発光する糸は付着したまま。怪獣の生命力が吸い尽くされていった。

 

「■■■■────!!!!?」

 

 怪獣の断末魔が上がる。たかだか全長0.1mの死神に命を吸い尽くされた巌の怪獣は両膝を着いて沈黙。たとえ四倍弱点を特性ハードロックで三倍弱点に低減した上で、砂嵐による特防上昇効果を得てもなお、電蜘との属性不一致とはいえ草エネルギーの大火力を喰らっては無事で済むはずがない。結果、一撃瀕死に追い込まれた。

 

 秒数(ターン)が経過し、雨雲と砂嵐が晴れていく。

 

 首魁は目を瞑り、片側の口角を釣り上げて拍手。惜しみない賞賛を送った。

 

「ドサイドンの灼熱自棄(やけ)を読んでいたか。バチュルが安全策を取って躱し、反動で動けないドサイドンにギガドレインをぶち込んだところで、そこで倒しきれていなければ意味がない。次の瞬間には、岩石砲の技を外し、且つ反動で威力が向上した炎エネルギーの大火力(やけっぱち)によって、君たちは水エネルギーの土砂降りによる鎮火も狙えず広範囲をエレキネットごと焼き尽くされる。故に君は相討ちを狙ってきた。見事な先読み戦術だ。が────決着を逸(はや)ったな」

 

 首魁は二個目のモンスターボールから毒蜂ポケモンを繰り出す。

 昆虫槍王の名はスピアー。Rと赤く刺繍されたメガストーン付きのスカーフを首に巻いている。

 

「止目針(殺せ)」

 

 二本の針槍で、少女の両眼あるいは脳髄心臓を穿つべく、毒蜂は高速飛翔突貫。

 地に伏す少女は死を覚悟────

 

「何を勘違いしてるっすか?」

 

 ────電蜘、雷速の連続斬撃(れんぞくぎり)。

 電網の上を落雷の如く迸った閃光は、音速900号を叩き出す超速を以て、戦場を縦横無尽に蹂躙走破し、毒蜂を文字通り八つ裂きにした。

 

 超高圧の電気エネルギーによる自然発火によって焼き尽くされた翅が、儚く舞い散る。

 

「────なん……だと……っ!! 何が、起きた……!!?」

「落雷の速度は音速(マッハ)に直すと300から30万っす。枝分雷撃(ステップトリーダー)と帰還雷撃(リターンストローク)の速度幅っすね。ハナワカが教えてくれたっす。そして電気属性の携帯獣が生態的に耐えられる速度は、伝説級でもなければ音速30万までとされている。だからハナワカが考案した、電気タイプにおける新速度の定義────“雷速”は、1号から1000号まであるっす。ちなみに、わたしのバチュルの最高雷速は────まだ3号。でも……視(・)え(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)っすよね?」

「……ッ!!」

「岩石砲の着弾時、瀕死になる瀬戸際で、運良く電網に引っ掛かって、落雷の速さで逃げ切ることができた。つまり岩石砲に押し潰されてないんすよ。破片爆風も全部躱した。特性・複眼を使えば良く視えるから、速度さえ伴っていれば当たるわけないっす。あんなデカイだけのヒョロ玉……。──もちろん瀕死寸前だから危なかったっすけど、そのぶんギガドレインで体力回復したから差し引きゼロ……あとは、もう分かるっすよね? もう負けを認めたほうがいいっすよ。体力全快したバチュルに、殺し返されたくなければ……」

 

 電網の持続時間は五十数秒(5ターン)。今の会話含め、残り十秒弱で解除される。故に。

 首魁は三個目のモンスターボールを取り出そうとするが、雷速を相手に間に合うはずがない。

 

「雷速砲(レールガン)」

 

 電蜘は無エネルギーを大量に放出し、九つの速射星(スピードスター)を生成。

 電網に沿って速射。

 雷速1号(マッハ300)の速度を以て、首魁の手首・脚・胴体に、九点の風穴を刳(く)り貫(ぬ)いた。

 

 首魁は苦悶の声を上げる余裕もなく絶命────否、命までは取っておらず気絶を強いる。

 対する銀髪の少女も、自らの血で作られた池の上に、ゆったりと顔半分を沈ませていった。

 

(ああ……勝ったっすよ……冬優子ちゃん……みんな…………────────)

 

 

 

          §

 

 

 





 あとがき

【芹沢あさひのバチュル】
 反応力A→S 記憶力C→B 学習力B→A 応用力B→A 協調力B
 ※捕獲時→育成時のランク変化。

 生態:蓄電袋・電気吸収
 特性:複眼 ※緊張感・虫の知らせは未保有。

 習得技:いとをはく(吐け)・でんじは(麻痺れ)・あまごい(降らせ)・スピードスター(撃て)・れんぞくぎり(斬れ)・ギガドレイン(吸え)
 ※芹沢あさひは「れんぞくぎり」と「いえき(侵せ)」をよく交換する(覚え直す)。
 ※スピードスターは速射星(そくしゃぼし)とも。

・複合技
 いとをはく×でんじは=電網(でんもう) ※実質的なエレキネット
 スピードスター×エレキネット=R誘雷(アールユウライ) ※ロケット自然雷誘導の意。
 スピードスター×でんじは=雷星(らいせい) ※スピードスターを電気タイプに属性変化。必中麻痺。
 スピードスター×あまごい=雨星(あまぼし) ※スピードスターを水タイプに属性変化。ただし雨雲を通過する必要がある。
 スピードスター×いえき=毒星(どくぼし) ※スピードスターを"タイプ無し状態"にする。ただし、この複合技を極めることで熟練状態にした時、スピードスターを毒タイプに属性変化するが、代償に必中特性が消える。
 いとをはく×ギガドレイン=遠隔吸収(Distant Giga Drain) ※草は虫に弱いため、虫属性の糸に草属性の吸収作用を持たせる複合技の開発には、非常に苦労した経緯がある。応用力Aランクでも完璧な技の完成には至っておらず、本来のギガドレインの八割前後しか性能を引き出せていない。

・応用技
 いとをはく:《立体機動》《網作り》《包帯(ギプス)作り》《複点着糸:全く同時に吐ける糸の本数・現状最大三点が限界》
 でんじは:この技を駆使して雷雲を形成する手順が存在する。地面加熱や空気中水分の振動、特性プラス・マイナスの電荷付与や放電誘発など、様々な要素を複合させて作り上げる小雷雲とのこと。

・戦術シークエンス
 雷雲形成 電磁波を駆使して自然雷雲を形成。自然雷を誘発して蓄電袋に電気タイプのエネルギーを貯める。
 雷速領域 バトルフィールドにエレキネットを張り巡らし、広大な陣地を形成。でんじはの応用で、特性プラスの電荷・特性マイナスの電荷を、エレキネットの局所に付与。同極反発・異極引力を駆使し、雷速級の移動を実現する。それは実質的な高レベル個体のこうそくいどうor高レベル個体のしんそくに匹敵する。また、雷速領域にスピードスターを乗せることでレールガンのように打ち出すことも可能。本来なら雷速に耐え切れず消滅する通常物体も、タイプエネルギーによって形成された特殊物体であるなら、あまり壊れることはない。



【サカキのドサイドン】
 反応力C→B 記憶力B→S 学習力C→A 応用力B→A 協調力B
 ※捕獲時→育成時のランク変化。

 生態:掌孔岩石射出・鼻先ドリル・耐熱強度装甲(プロテクター)
 特性:ハードロック・捨て身 ※避雷針を敢えて省いた二重特性。破格個体。タマゴから厳選・育成した。

 習得技:ステルスロック・ドラゴンテール・のろい・かみなりのきば・がんせきほう・やけっぱち・じだんだ・ゆきなだれ・すなあらし・つのドリル
 短縮技名:隠匿岩石(ステロ)・竜尾(りゅうび)・鈍化(のろえ)・雷牙(砕け)・岩石砲(壊せ)・灼熱自棄(やけ)・地団駄(轟け)・雪崩(埋めろ)・砂嵐(荒べ)・角螺旋(決めろ) / 掌孔岩石射出(撃て)・鼻先ドリル(貫け)・耐熱強度装甲《耐えろ》

・複合技
 ステルスロック×すなあらし=撒け ※特防強化と布石強化の一発命令。
 掌孔岩石射出×ステルスロック=穿てor備えよ ※射出指示or即時装填。即時装填と大量射出の観点から、実質的なロックブラストorがんせきふうじorうちおとし。なお装填する岩石はステルスロックに限らない。通常の大岩やイシツブテ・ダンバルなど、装填可能な存在を見つけ次第、なんでもかんでも両腕内部に装填する。
 がんせきふうじ×つのドリル=降せ ※岩石の大量射出で逃げ道を塞ぎ、一撃必殺の技で仕留める。この決め技で数匹の伝説ポケモンを倒してきた実績を誇る。

          ◆

 ────強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手。
 ────勝(・)手(・)というのは種族値等の人が決めた定義のこと。

 ────本当に強く弱くなるかはトレーナーの育(・)成(・)し(・)だ(・)い(・)。
 ────訓練と戦術性であらゆるポケモンは手強く化ける。

 ────だから、ポケモンバトルは面白い……!!!!!!
 ────好きな手持ちで勝てる余地がある……!!!!!!

 ────だから甜花、アルセウス使うね……!!!!!!!

          §


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。