※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

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sR【あいらぶオクターブ!】小宮果穂

 

 休日の昼間。

 今日も平和な小宮邸。

 

 台所ではバシャバシャと水音。

 窓辺では健やかな寝息。

 リビングではテレビの音。

 ソファではゲーム機の音。

 同じくソファから着信音。

 

「あれ? だれだろ……」

 

 小宮果穂はスマホを手に取り、画面を見るなり。

 

「あっ!」

 

 と叫んで、すぐ耳元に当てる。

 

「────はいっ! もしもし?」

 

 小宮果穂はソファから席を外すことなく、その場で電話を始める。

 一応、父親が見ているテレビの音を邪魔しないように小声で話している。そして窓際に移動しようか、別の場所がいいのかと、どこに行けば良いのか視線を彷徨わせていた。

 

「────えへへっ。今リビングなんですっ! お父さんがテレビを見ていて~。お兄ちゃんはゲームしてて~。お母さんは洗い物してて~。マメ丸はひなたぼっこ中です! ……あたしですか? あたしもひなたぼっこ中でしたーっ!」

 

 電話の相手は誰だろうか。

 小宮果穂は話し終わったのか通話を切ろうとする。

 

「はい。……はい! 分かりましたーっ! ちゃんとカレンダーに書いておきますねっ! ……はいっ! プロデューサーさんっ!」

 

 通話を切る。スマホをソファに置く。

 小宮果穂は視線を振って、ソファを共有する兄と父に問いかけた。

 

「えっと……うるさくなかった?」

「別に?」

「父さんは大丈夫だぞ」

「……そっか!」

 

 緩やかに時が流れていく。

 不意にソファから着信音。

 

「あれ……またプロデューサーさんかな?」

 

 小宮果穂はスマホを手に取り、画面を見るなり。

 

「────あっ!」

 

 ふいに甲高い声色で立ち上がり、すぐ耳元に当てる。

 

「────はいっ。もしもし……?」

 

 それは、ただの小声ではなく、密やかな囁き声だった。

 思えば立つ必要はなかったと思い出したように、ゆっくりとソファに落ち着いていく女の子の体。無意識なのか背もたれには腰掛けず、ピンと背筋を立たせたまま、姿勢よく視線をスマホの方に流して発声する。

 

「…………えへへっ……! ……はいっ。……そうなんですか? ……ふんふん。なるほど……じゃあ、あたしからもいいですか? それは絶対に……黄色がいいですっ!」

 

 電話の相手は誰だろうか。

 そんなもの、妹の声色の変化を耳にすれば一聴瞭然であると、小宮兄は言いたげに固まっていた。もはやゲームのボタンを押してストーリーを進行させる余裕は失せている。

 

 なぜならば。

 

 ────妹の声が、明らかに高くなっているのである。

 ────しかし時に、何かしらの威厳を示すためか、妙に声を低く取ることもあった。

 

 まだ幼い妹の女の子な一面に、兄は驚くばかりである。

 

 最初は小さな違和感だった。

 徐々に大きな気づきを得ていた。

 やがて先程の電話を思い出して比較。

 現在は明確に識別しており衝撃を受けている。

 

 思わず兄は振り向いた。片眉を上げながら妹を指差して、事態の共有を目で訴えかける。

 息子に見つめられた父親は、ただただひたすら、うんうんとうなずくばかり。

 

 そして父兄は一斉に、台所へと振り返った。

 母親は知らんぷり。されど、どことなく微笑んでいるようだった。身に覚えがあるのだろうか。それは同じ声色を何度も聴いてきたという意味か、あるいは自らの過去にも同様の経験があるという意味か、そのどちらもか。

 

「はーいっ! じゃあまた……あ、はいっ! ……じゃあ、またあとで……すぐ電話します! ……では、また……! ────はい! またです、アルファさん……!」

 

 名残惜しそうに、時間をかけて、そっと通話を切る。

 スマホをソファに置かず、しばらく握ったまま膝の上に置く。

 

 小宮果穂は視線を振ると。ソファを共有する兄と父が、目を丸くしてこちらを見ていたので少し驚いた。

 

「っ……? お兄ちゃん、お父さん、どうしたの? ────あっ! も、もしかして、うるさかった……!? ご、ごめん……! 次は、また電話あったら、自分の部屋に戻るから……!」

「……い、いや……別に、そこまでうるさくはなかったけど……つか、気にしすぎだけど……むしろ会話聞いちゃっていいのかって感じなんですけど……」

「…………そうか。果穂も、大きくなったなぁ……」

「??」

 

 小宮果穂は首をかしげる。

 小宮母は吹き出した。

 

「何よお父さん。大きくなったって……ちょっと黙ってなさい」

「だってぇ……」

 

 そこで小宮兄が何かに気づいたのか、焦ったように問いかける。

 

「ち、ちょっと待った! も、もしかして俺も、リビングで電話してる時、なんかその、えっと……!!?」

「お兄ちゃんはそういうとき自分の部屋にいそいそ行くでしょ」

「だ、だよな……! ……? ……────???????!!!!!」

 

 兄は赤面する。なぜそういう時、いそいそ自室に行くことが母親にバレているのか。

 穴があったら入りたいと言いたげに、ソファの上でもんどり打つ。

 

「お、おい! 急になんだ……!? おい、リモコン蹴飛ばすな……!」

「わわ、お兄ちゃん……? どうしたの……?!」

 

 小宮兄、撃沈。

 ソファの座席に背中をつけて、床に後頭部を打つという、だらしのない恰好で沈黙。

 

 父親は察したのか、そっとしてあげることにしたようで、リモコンを拾い上げ、テレビの録画を巻き戻し、続きを見直す。

 

「……?」

 

 一方の妹は首をひねる。

 ともあれ行動あるのみ。

 

「マメ丸! いこっ! ひなたぼっこ終わり!」

「──! ワフッ!」

 

 小宮果穂はマメ丸を連れ立って、スマホを握りながら、ウキウキと自室に戻っていった。

 

          §

 

 

 

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