※この作品はR-18です。

【小宮果穂とちょいワル男子のオトナ甘くてコドモ苦い】ぷらすえっくす!   作:形のない者

114 / 125
sR【甜花先輩の由来】花海咲季・大崎甜花

 

 ある日のレアモン勝負。

 チーム・ピーちゃんvs花海咲季のレアモン探し勝負に決着がついた。

 

 真昼の公園で高笑いが上がる。

 

「あーっはっはっはっはっはっはっ! わたしの勝ちよぉおおおおおおおおお────!」

「あう……咲季ちゃん、強い……甜花、負けた……」

「ほわっ……束になっても、勝てなかったね……」

「……ごめんね、甜花ちゃん……」

「むぅ……次こそはリベンジ……!」

「いつでも受けて立つわ!」

 

 そして白熱の勝負が終われば、温和な会話が始まる。

 

「それで甜花先輩。次は何して勝負する?」

「えと……次は、甜花、勝負じゃなくて……普通に、遊びたい……レアモン交換、とか……? あ、でも、疲れたから、ちょっと休みたい、かも……」

「なら日向ぼっこでもしましょう! あっちにベンチあるわよ! そして疲れた時には、この花海咲季特製SSD!」

「あ、ありがと……でもそれ、いらない……」

「あら。甜花先輩、好き嫌いはダメよ?」

「あう……それは、好き嫌いじゃない……」

「え?」

 

 さすがの大崎甜花も断り方に力が入る。

 SSDとは、それほどの劇物ということか。

 

 四人でベンチに着く。一息ついて穏やかな時間。

 そこで郁田はるきが問いかけた。

 

「そういえば咲季ちゃん。前から気になってたんだけど~」

「はい、なんですか?」

「それそれ~。敬語じゃなくていいのに~」

「あ、そうなの? えっと、じゃあ……」

「はるきでいいよ~。──真乃ちゃんは~?」

 

「ほわっ……! あ、えっと、わ、わたしも……! ……わたしも、呼び捨てして、ほしいな……?」

「あら、そうだったのね? 分かったわ!」

 

 花海咲季は笑顔で承諾する。

 対する櫻木真乃は、郁田はるきに囁いた。

 

(あ、ありがとね、はるきちゃん……!)

(ううん~! よかったね、真乃ちゃん!)

(うん……!)

 

「それで、はるき。気になってたことって、わたしの敬語のこと?」

「あ、うん。というより……甜花ちゃんの呼び方について、かな?」

「甜花先輩の?」

「そうそう。なんで甜花ちゃんのこと、学校が違うのに“先輩呼び”なのかな~? って!」

「ああ、それは────」

 

 花海咲季は「ほわんほわん」と思い浮かべながら、過去を語った。

 

          §

 

 それはプチパレスに引っ越した直後の出来事。

 

 大崎甜花は二階の憩いの場のソファでくつろいでいる。

 そこへ通りかかった花海咲季は、まだきちんとした挨拶を交わしていなかったため声をかける。

 

「あ、大崎さん!」

「──ひゃい!? ……ふぇ? え、な、なに……?」

「あっ……ごめんなさい、驚かせてしまって……同じプチパレスの住人として、きちんと挨拶しておこうと思ったんです。改めて、よろしくお願いします! 大崎さん!」

「あ、えと……は、ひゃい……! ……よ、よろしく……」

 

 大崎甜花は戸惑いながら会釈する。

 それが嬉しかった花海咲季は、しれっと隣に座った。

 

「でも大崎さん。たしか双子の妹さんがいるんですよね? 以前も遊びに来ていましたし」

「あ、う、うん……! なーちゃん、甜花のこと、心配してくれて……よく来る……」

「本当にそっくりでびっくりしました。そのとき声を掛けようと思ったんですけど、苗字が同じだと紛らわしいなと思って……ならフルネームで、と考えていたら、声をかけるタイミングを逃しちゃったんです」

「……あ、そ、そうだったんだ……えと……ごめん?」

「いえ。それで……もし失礼がなければ、大崎さんのこと、これから名前で呼ばせていただいても構いませんか?」

「────へ……?」

 

 大崎甜花は目を点にする。

 何を言われたのか頭に入っていない。

 ある意味では、夢のような申し出とも言える。

 それほどの衝撃だった。甜花史上、最大の好機だった。

 

「あ……やっぱり嫌でしたか?」

「う、ううん……! て、甜花……甜花のこと、名前、呼ぶの……い、いいと、思う……! ま、まぎわらし、まぎらわ、あ、あれ? まぎわ……あれ? ────い、いいと思う……! 甜花、オール、オッケー……!」

「ほんとですか? よかったー! では、これからは『甜花さん』って呼びますね!」

「────!!!!!!!!!!」

 

 大崎甜花は、自分の学校における生徒の中で、今まで下の名前で呼ばれたことがなかった。

 

 ────大崎。

 ────大崎甘奈の姉。

 ────大崎甘奈じゃない方。

 

(……甜花のこと、『甜花』って呼んでくれる人は……学校では、なーちゃんしか、いなかった……)

 

 双子の妹を『友達』と呼んでいいのかは不明だが。

 少なくとも大崎甜花の友達は、学校で一人しか居なかった。

 

(────だから────)

 

 大崎甜花の顔が、ほころぶ。

 

「に、にへへ……花海さん、いい人……」

「あら? ……甜花さん。実は────わたしも、双子の妹がいるんです」

「────へ? そうなの……?」

「はい。わたしと相部屋の子ですよ。花海佑芽って言うんです。可愛いですよね!」

「……! うん、可愛い……! ……でも────似て……る? あれ……似て……ない……?」

「たしかに、あまり似てるとは言われませんね?」

「……そっか……じゃあ、花海さん、甜花と、おんなじ……!」

 

 それは何を以て“おんなじ”と言ったのだろうか。事と次第によっては失礼に当たるかもしれない。

 だが、今まで友達が居なかった点は、たしかに同じかもしれなかった。

 

「あ、また!」

「……へ?」

「もう……わたしも佑芽っていう、同じ『花海』がいるんですよ? だから、わたしのことも下の名前で呼んでもらわないと、紛らわしいと思いますし?」

「……──! あ、そ、そっか……! 花海……佑芽ちゃん、だから……じゃあ……さ、咲季ちゃん……?」

「はい!」

「……に、にへへぇ……なんか、照れる……友達、みたい……」

「! ……もしかして、年功序列とか気にした方が良さそうですか?」

「……へ?」

「うーん、それなら……、そうだ! 学校は違いますけど、甜花さんのことを『先輩』って呼ぶのはどうですか?」

「へ? え、な、なんで……? 甜花、別に……甜花のままで……えと……」

 

 少し考えすぎた花海咲季の申し出に対し、大崎甜花は戸惑ってしどろもどろになる。

 

「? すみません。よく聞き取れませんでした。もう一度いいですか?」

 

 それはコミュニケーションが下手な子にとってはトドメになる一言だった。

 

「ひぃん……! そ、それで、いい、でしゅ……!」

「わかりました! では甜花先輩! 改めて、これからよろしくお願いしますね!」

「…………」

「……? 甜花先輩? どうしたんですか?」

「あ、えと、あの……その……やっぱ、タメ口、で……」

「! じゃあ……甜花先輩、でいいのよね?」

「! う、うん……! あ、あと……甜花、先(・)輩(・)になっちゃったから、ひとつ、命令、ある……!」

「はい! なんでも言ってください!」

「────甜花のこと、朝、起こしてほしい……!!」

 

          §

 

 ────というようなことがあった。

 

 昼下がりの公園。

 花海咲季は、自らの視点でその事を語る。

 

「だから甜花先輩なのよ!」

「ほわっ……そうだったんだね……!」

「ふふ……わたしも、咲季ちゃんにタメ口、お願いできた時……嬉しかったな……」

「にへへ……」(ほんとは、先輩、なくても良かったけど……でも、先(・)輩(・)って、読んでもらえるの、全然ないし……だから、むしろ良かったかも……!)

「そうなんだ~! 意外と歴史があった……! でも、先輩呼びなのに砕けた口調なのか~。──あ、別に悪い意味じゃなくてね!? ちょっとした疑問というか!」

「! たしかに……郁田さんの言う通りね。どうしてなのかしら、甜花先輩?」

 

「────ふぇ!? え……えと……甜花も、わかんない……」

「あらそう……まぁなんでもいいわよね! ──それより、そろそろ休憩終わりにしない? わたし、動きたくてたまらないわ!」

「え……て、甜花……まだ休みたい……歩き疲れた……」

「わたしは勝つために走り回ったけど……」

「で、でも、咲季ちゃん、ぜんぜん汗、流してない……」

「それは鍛えているからよ!」

「ひぃん……有栖川さんみたい……」

「仕方ないわねぇ……はい、SSDを飲めば、すぐに疲れが取れるわよ!」

「……………………甜花、それ…………まずいから、イヤだ……」

「えっ────!?」

 

 大崎甜花は目を逸らしながら、いつもなら減らすはずの口で付け加える。

 

「あと……ゲーミングは、飲むものじゃない……」

「げ、ゲーミングぅーっ!? これのどこがゲーミングなのよっ! というかゲーミングって何よぉ!」

「あう……ググって……」

 

 そのやりとりを見ていた櫻木真乃と幽谷霧子と郁田はるきは、ひたすら目を丸くする。

 よもや大崎甜花が辛(・)辣(・)な(・)ツ(・)ッ(・)コ(・)ミ(・)側(・)に(・)回(・)る(・)とは、誰も予想だにしていなかったのだ。

 

「くぅ~! なによ! ググればいいんでしょう!?」

 

 花海咲季はググる。

 次の瞬間、衝撃を受けたのか画面を凝視、硬直していた。

 

「────たしかにこれは、ゲーミングだわ……」

 

          §

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。